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小胞体関連分解の新たな機構の解明

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化学と生物 Vol. 50, No. 7, 2012

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今日の話題

小胞体品質管理に関わるジスルフィド結合還元酵素 ERdj5 の構造と機能

小胞体関連分解の新たな機構の解明

小胞体は膜タンパク質や分泌タンパク質が新たに合成 されるオルガネラである.ここには,合成されたタンパ ク質の凝集を抑制する分子シャペロンやジスルフィド結 合 の 導 入 に 関 わ る Ero1 (endoplasmic reticulum oxi- doreductin 1)‒PDI (protein disulfide isomerase) 酸化 経路が存在し,タンパク質の正しい高次構造形成を助け ている.一方小胞体には,遺伝的変異や各種のストレス などによりミスフォールドしてしまうタンパク質も存在 し,それらは細胞の恒常性維持のため速やかに分解され る.このメカニズムは小胞体関連分解 (endoplasmic  reticulum-associated degradation : ERAD)  と 呼 ば れ,

酵母から哺乳類までの真核生物に保存された重要なタン パク質品質管理機構の一つである.この品質管理機構の 破綻はミスフォールドタンパク質の過剰な蓄積につなが り,アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性 疾患の一因にもなると報告されている.

小胞体で合成されるタンパク質の多くはAsn-X-Ser/

Thr (X

≠Pro) 配列を含み,そのアスパラギン残基に

はN型糖鎖と呼ばれる糖鎖が付加される.このような タンパク質は糖タンパク質と呼ばれ,そのフォールディ ングにはカルネキシン (CNX) やカルレティキュリン 

(CRT) が関与する.一方で,正しい立体構造をとれな かった糖タンパク質は EDEM1 (ER degradation en- hanc ing 

α

-mannosidase-like protein 1) によって認識さ れ,ERADが促進される(1, 2)

.EDEM1に認識されたミ

スフォールド糖タンパク質は最終的には小胞体シャペロ ン BiP (immunoglobulin heavy chain-binding pro tein) 

によって逆行輸送チャネル(ディスロコン)に運ばれ,

サイトゾルでプロテアソームによって分解される.この 際,誤った分子間ジスルフィド結合で会合した多量体は ディスロコンを容易には通れないため,ジスルフィド結 合は切断されると考えられていた.しかし最近まで,小 胞体内で還元酵素は同定されておらず,PDIがその役割 を担っていると考えられていた(3)

ERdj5は,永田和宏教授(京都産業大学)らの研究グ ループにより,EDEM1と相互作用するタンパク質とし て同定された(4)

.ERdj5はそのアミノ酸配列から約

90 kDaの分子量をもち,N末端側に HSP (heat shock 

protein)-40ファミリータンパク質に共通するDnaJドメ インとPDIファミリータンパク質が共通に有するチオ レドキシン (Trx) 様ドメインを4つ含むと予想された.

HSP40ファミリータンパク質はDnaJドメインを介して HSP70ファミリータンパク質に結合し協同的に働くこ とから,ERdj5は小胞体内在性のHSP70ファミリータ ンパク質であるBiPと協調しながらタンパク質の品質管 理やストレス応答において重要な役割を担うと考えられ る.またERdj5はチオレドキシン様ドメインをもつこ とから,小胞体における酸化還元反応に深く関わると予 想される.実際興味深いことに,ERdj5を過剰発現させ た細胞でジスルフィド結合を有するいくつかのERAD 基質の分解を促進することが判明した.また,インスリ ンに対する高い還元活性も示された.これらのことか ら,ERdj5は世界で初めて同定された小胞体内に存在す る還元酵素であることが明らかとなった.

筆者らは,ERADにおけるERdj5の作用機序を明ら かにするために,ERdj5のX線結晶構造解析に取り組ん だ.幅広い結晶化スクリーニングを行ううえで大量の精 製サンプルが必要であることは言うまでもない.しかし ながら,リコンビナントERdj5はいずれの発現系を用い ても発現効率が悪く,また高い凝集性のため,結晶化の ためのサンプル調整および結晶化スクリーニングは難航 した.発現系およびコンストラクトをいろいろ試す中 で,理由は定かでないが,活性部位のシステインをすべ てセリンに置換したERdj5変異体は,大腸菌中での発 現が野生型に比べ格段に高いことがわかった.また凝集 性を抑えるため,NDSB201 (non-detergent sulfobeta- in ; 通称マジックパウダー)という変性作用はないが,

タンパク質の溶解性を上げる試薬を精製バッファー中に 加えることで,最終収量が大きく向上した.粘り強くサ ンプル調整と結晶化スクリーニングを続けた結果,2.4Å 分解能でERdj5全長の結晶構造解析に成功するに至っ た(5) (図

1

ERdj5は当初,チオレドキシン様ドメインを4つもつ と予想されたが,Trx1ドメインとTrx2ドメインの間 に,さらに2つのチオレドキシン様ドメイン (Trxb1,  Trxb2) をもつことが判明した.しかし,この2つのチ

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オレドキシン様ドメインはCXXC活性モチーフを含ん でおらず,これらが直接酸化還元反応に関わるとは考え にくい.興味深いことに,Trx1 〜4およびTrxb1, b2の 6つのチオレドキシンドメインは同一平面上に並び,J ドメインのみがこの平面から外れ,Trx2ドメインの CXXCモチーフを塞ぐかたちで位置していた(図1)

さらに,すべてのCXXCモチーフが共通してJドメイン 側に存在することも判明した.これらの特徴は,他の PDIファミリータンパク質には見られない非常にユニー クなものである.PDIは4つのチオレドキシン様ドメイ ンがU字型に並び,両端の活性ドメインのCXXCモ チーフが内側を向き,中央部には疎水性ポケットが存在 する.この疎水性ポケットに基質が結合し,両端の活性 ドメインによりジスルフィド結合の導入や組換えが行わ れると考えられている.これに反し,ERdj5の中央にあ るポケットは特に疎水性が高いわけではなく,いずれの チオレドキシン様ドメインのCXXCモチーフも中央の ポケットには向いていない.以上のことから,ERdj5は PDIとは異なる機構で基質に対し酸化還元を行うことが

示唆された.また,ERdj5はTrx2とTrx3の間のリン カ ー 領 域 で2つ の ク ラ ス タ ー(Jド メ イ ン,Trx1,  Trxb1, Trxb2, Trx2を含むN末端側クラスターとTrx3,  Trx4を含むC末端側クラスター)に大きく分断できる ことも明らかとなった(図1)

以上の構造情報をもとに,ERdj5によるERAD基質 のジスルフィド結合還元メカニズムを解明することに取 り組んだ.重要な問題として,6つのチオレドキシン様 ドメインのうち,どれが主たる基質還元ドメインか同定 する必要がある.この目的のため,各ドメインの活性中 心(CXXCモチーフ)をAXXAに置換した変異体を系 統的に作製し,パルスチェイス実験によりERAD基質 の分解促進効果を調べた.その結果,Trx1およびTrx2 の活性部位を不活性型にした変異体は野生型と同様に ERAD促進活性を維持していたのに対し,Trx3および Trx4の活性部位を不活性型にした変異体はERAD促進 活性を完全に失っていた.この結果から,ERdj5の主な 還元活性部位はC末端側クラスターに存在することが示 唆された.このことは, でのインスリンに対す

図1ERdj5の結晶構造と各クラス ターの機能分担

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る還元活性を調べることでも確認できた.すなわち,C 末端側クラスターに存在するTrx3, Trx4がインスリン に対する特に高い還元活性をもつことが示された.これ に対し,Trx2ドメインはインスリン還元活性を示さず,

このことはTrx2ドメインのCXXCモチーフがJドメイ ンによって塞がれているという構造的知見から説明でき る.また,各ドメインの酸化還元電位を測定した結果,

主要な還元部位であるTrx3,Trx4が強い還元的性質を もつことも明らかになった.

次に,筆者らはEDEM1との結合部位を免疫沈降実験 により調べた.ERdj5のN末端側クラスターのみあるい はC末端側クラスターのみを,EDEM1とヒト細胞に共 発 現 さ せ,ERdj5抗 体 で 免 疫 沈 降 を 行 っ た と こ ろ,

EDEM1はERdj5のC末端側クラスターと特異的に結合 することがわかった.ERAD基質であるNHK(

α

1アン チトリプシンの変異体:null Hong Kong)を同時に発 現させた場合,ERdj5‒EDEM1複合体にこの基質が含ま れることもわかった.以上の結果から,ERdj5は基質を

リクルートしたEDEM1とC末端側クラスターを介して 結合し,EDEM1が提示した基質をERdj5のC末端側ク ラスターが還元することが強く示唆された.

この後のステップとして,還元された基質はBiPに受 け渡され,ATPの加水分解によってERdj5から乖離し たBiPがディスロコンに基質を輸送すると予想される

(図

2

.このことを確かめるため,ERAD基質である

NHKを パ ル ス ラ ベ ル し,免 疫 沈 降 法 に よ りNHKが ERdj5と結合した後,どの因子と相互作用するかを詳細 に解析した.その結果予想したように,基質がERdj5 複合体からBiPへ移行する過程が観測できた.以上の実 験によりERdj5によって促進される一連のERAD機構 モデルの妥当性が強く示唆された.

今回の我々の研究により,ERdj5が媒介するERAD 経路の分子基盤を確立するに至った.しかし,ERdj5を ノックダウンしたマウスにおいて,特に異常がないとい う報告もあるように,この経路は数あるERAD経路の 一つに過ぎないことも十分に考えられる.今後,糖鎖の

図2ERdj5が促進する小胞体関連分解機構

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ない基質やジスルフィド結合をもたない基質など様々な 基質のERADを網羅的に解析することが最重要課題で ある.また,比較的酸化的な環境である小胞体において ERdj5に還元力を供給する因子の同定も重要な課題であ る.その因子としてグルタチオンやERFADなどが候補 に挙がっているが,まだ確証を得るには至っていない.

今後の解析が強く待たれる.

  1)  N.  Hosokawa,  I.  Wada,  K.  Hasegawa,  T.  Yorihuzi,  L. O. 

Tremblay,  A.  Herscovics  &  K.  Nagata : , 2,  415 (2001).

  2)  Y. Oda, N. Hosokawa, I. Wada & K. Nagata : , 299,  1394 (2003).

  3)  B.  Tsai,  Y.  Ye  &  T. A.  Rapoport : , 3, 246 (2002).

  4)  R. Ushioda, J. Hoseki, K. Araki, G. Jansen, D. Y. Thomas 

& K. Nagata : , 321, 569 (2008).

  5)  M.  Hagiwara,  K.  Maegawa,  M.  Suzuki,  R.  Ushioda,  K. 

Araki,  Y.  Matsumoto,  J.  Hoseki,  K.  Nagata  &  K. 

Inaba : , 41, 432 (2011).

(前川憲一,稲葉謙次,九州大学生体防御医学研究所  蛋白質化学分野)

大 澤  拓 生(Takuo Osawa) <略 歴> 2003年九州大学農学部卒業/2008年同大 学システム生命科学府システム生命学科博 士課程修了(2006 〜 2008年日本学術振興 会特別研究員DC2)/2008年産業技術総合 研究所研究員/同研究所にて,2010年日 本学術振興会特別研究員PD,現在にいた る<研究テーマと抱負>生体高分子複合体 の構造機能解析.構造とそれに基づく生化 学的解析から,分子が機能する上で重要な メカニズムを明らかにしていきたい.

加納 ふみ(Fumi Kano) <略歴>1997 年京都大学・理学部卒業/ 2002年京都大 学・大学院理学研究科博士課程修了(理学 博士)/ 1999 〜 2002年日本学術振興会特 別研究員 (DC1)/2002 〜2003年日本学術 振興会特別研究員 (PD)/2003年より東京 大学・大学院総合文化研究科(生命環境科 学系)助教.その間,2007 〜 2011年JST さきがけ研究員兼任(生命現象と計測分析 領域).現在,細胞機能の構成的な理解と 制 御 領 域 のJSTさ き が け 研 究 員 を 兼 任

<研究テーマと抱負>セミインタクト細胞 リシール技術を用いた生命現象の徹底的再 構成<趣味>編み物

鎌 倉  昌 樹(Masaki Kamakura) <略 歴>1996年京都大学大学院農学研究科食 品工学専攻修士課程修了/同年天野製薬

(株)/ 1998年ポーラ化成工業(株)/ 2004

年富山県立大学工学部生物工学科助教/

2008年同大学同学部同学科講師,現在に いたる<研究テーマと抱負>膜翅目昆虫

(ミツバチ)における神経発生機構および 単為生殖機構の解析<趣味>読書,子供と 遊ぶこと

久 木 田 明 子(Akiko Kukita) <略 歴> 1978年九州大学農学部農芸化学科卒業/

1980年同大学大学院修士課程修了後,佐 賀医科大学共同研生化学教務員(農博)/

1987年米国テキサス大学医学部博士研究 員/1989年九州大学歯学部口腔解剖学第2  教室助手/ 1991年佐賀医科大学微生物学 教室助手/ 2000年同助教授/ 2007年佐賀 大学医学部准教授,現在にいたる<研究 テーマと抱負>破骨細胞の分化と機能制御 機構の解明,炎症性骨破壊のメカニズムの 解明とその制御法の開発<趣味>ウォーキ ング,バイオリン

久木田敏夫(Toshio Kukita) <略歴>

1978年九州大学農学部農芸化学科卒業/

1980年同大学大学院修士課程修了/ 1981 年同大学大学院博士課程中退,同大学歯学 部口腔解剖学講座助手(歯博)/1986年同 講座講師/ 1991年同助教授/ 2007年九州 大学大学院歯学研究院教授(硬組織再生制 御科学分野,2009年より分子口腔解剖学 分野),現在にいたる.この間,1987 〜 1989年米国テキサス大学医学部留学<研

究テーマと抱負>破骨細胞分化抗原に関す る研究,硬組織の発生と再生<趣味>ス ケート,電子工作

國 中  明(Akira Kuninaka) <略歴>

1951年東京大学農学部農芸化学科卒業/

1953 〜 2004年ヤマサ醤油株式会社(1986

〜 95研究開発本部長)/ 1964年恩賜発明 賞/ 1983年紫綬褒章<趣味>ドライブ,

ピアノ独習

齋藤 忠夫(Tadao Saito) <略歴>1975 年東北大学農学部畜産学科卒業/同年協同 乳業株式会社/ 1981年福島学院大学・非 常勤講師/ 1982年東北大学大学院農学研 究科博士課程修了/同年東北福祉大学社会 福祉学部産業福祉学科・助手/ 1987年米 国ブランダイス大学生化学部・博士研究 員/ 1989年東北福祉大学社会福祉学部講 師/ 2001年東北大学大学院農学研究科・

教授,現在にいたる<研究テーマと抱負>

ヒト腸管ムチンに高い特異的付着能を示す プロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス 菌)の探索システムの新規構築と付着性機 構解析および高度利用に関する研究.選抜 有用菌を用いて潰瘍性大腸炎などの炎症性 腸疾患を軽減するヨーグルトや経腸剤を開 発してみたい<趣味>国内外の学会懇親会 への出席,サスペンスアクションの洋画鑑 賞,ピアノ演奏

プロフィル

Referensi

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はじめに オートファジーは真核生物に広く保存された細胞内の 物質分解機構であり,細胞質のさまざまな成分やオルガ ネラを液胞(リソソーム)内部に運び込むことによって 分解する.この分子機構は,1990年代初めの出芽酵母 を対象にした大隅らの研究(1) を嚆矢としてその詳細が明らかとなってきた.酵母で見 いだされた多くのオートファジー関連タンパク質(Au-