線型代数学 I ( 2 組)前期末テスト 解答
以下において、V3,Rn,Cn 等の記号の意味は、テキストの通りとする。
[1] 連立方程式
( x + 2y + z = 2
3x + y + 2z = 1 の表す直線を ` とする。
(1) ` のベクトル表示を求めよ。
(2) ` の点で、原点までの距離が最も小さいものを求めよ。
(1) 直線`は2点
0 1 0
,
−3 0 5
を通る。従って求めるベクトル表示は、t ∈ Rを媒介変数と
して、
x y z
=
0 1 0
+t
3 1
−5
などとなる。
解答は一意には決まらないが、方向ベクトルは
3 1
−5
の定数倍となる。
配点10点
(2) 直線`上の点
x y z
と原点との距離dは、前問のベクトル表示を用いれば、
d2 = x2+y2+z2
= (3t)2+ (1 +t)2+ (−5t)2
= 35 µ
(t+ 1
35)2+ 34 352
¶
と表せる。従ってt=−351 に対応する点で距離dは最小値をとる。この点は
−353 34 35 1 7
である。
配点10点 やり方があっていれば3点、最小値を計算して最小点を求めていない場合、あるいは、正しいt の値を求めている場合は7点。
[2] 次の行列が正則であるかどうか判定し、正則である場合は逆行列を求めよ。
(1)
4 0 5 0 1 −6 3 0 4
(2)
−1 3 5 1 1 3 1 0 1
(1),(2)ともに、行列式を計算して正則性の判定を行ってもよい。
(1)
4 0 5 1 0 0 0 1 −6 0 1 0 3 0 4 0 0 1
∼
1 0 5/4 1/4 0 0 0 1 −6 0 1 0 3 0 4 0 0 1
∼
1 0 5/4 1/4 0 0 0 1 0 −18 1 24 0 0 1 −3 0 4
∼
1 0 0 4 0 −5 0 1 0 −18 1 24 0 0 1 −3 0 4
従って、この行列は正則で、逆行列は
4 0 −5
−18 1 24
−3 0 4
である。
配点15点 方法によらず正則性の判定が正しくできていれば10点。逆行列が求まっていれば5点。
(2)
−1 3 5 1 1 3 1 0 1
∼
1 −3 −5
0 4 8
0 3 6
∼
1 −3 −5
0 1 2
0 0 0
∼
1 0 0 0 1 0 0 0 0
より、この行列の階数は2で、正則でないことがわかる。
配点10点 方法によらず正則性の判定が正しくできていれば10点。
[3] 次の方程式が解を持つように定数cの値を定め、その時の解を全て求めよ。
x1 + x2 + 2x3 = 2 2x1 + 3x2 + 2x3 = 5 3x1 + x2 + 10x3 = c
拡大係数行列をA˜とおくと
A˜=
1 1 2 2 2 3 2 5 3 1 10 c
∼
1 1 2 2
0 1 −2 1 0 −2 4 c−6
∼
1 1 2 2
0 1 −2 1 0 0 0 c−4
∼
1 0 4 1
0 1 −2 1 0 0 0 c−4
ここで、c 6= 4であればこの方程式は解をもたない。解を持つための必要十分条件はc = 4であり、
全ての解は、α∈Rを媒介変数として
x1 x2 x3
=
1 1 0
+α
−4 2 1
などと書ける。
配点15点 c= 4とあれば7点。全ての解が求まっていれば8点。
[4] n次正方行列 A について、次のことを証明せよ。
(1) A2 =A, A6=E ならばA は正則でない。
(2) A∗A=AA∗ ならばkAxk=kA∗xk が全ての x∈Cn に対して成り立つ。
(1) Aは正則であると仮定しよう。A2 =Aの両辺にA−1を掛ければA=Eとなるが、これはA6=E に反する。
(行列A, B ∈MnがAB=Oを満たしたとしてもA =OもしくはB =Oとなるとは限らないこと に注意せよ。)
配点10点
(2) 任意のx∈Cnに対して
kAxk2 = (Ax, Ax) = (A∗Ax, x) = (AA∗x, x) = (A∗x, A∗x) =kA∗xk2 であるので、題意は成立する。
配点10点
[5] 次のことを示せ。
(1) A, B はともにn次正方行列とする。Tr(AB) = Tr(BA)となる。(ただし、Trはtraceを表す。)
(2) AB−BA=E を満たす正方行列 A, B は存在しない。
(1) A= (aij), B = (bij)∈Mnとしよう。このとき、
ABの(i, k)成分= Xn
j=1
aijbjk, BAの(i, k)成分= Xn
j=1
bijajk
ゆえ
Tr(AB) = Xn
i=1
Xn
j=1
aijbji = Xn
j=1
Xn
i=1
bjiaij = Tr(BA).
配点10点
(2) (1)の結果からTr(AB−BA) = Tr(AB)−Tr(BA) = 0である。一方Tr(E) = nであるので、
AB−BA=Eとなることはありえない。
配点10点