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第 2 章
線型リー代数
この章では, 線型リー代数の基本的な事項を紹介する. 具体的な内容は,
• 線型リー代数の定義(2.1 節),
• 線型リー代数の例(2.2 節, 2.3 節, 2.4 節),
• 線型リー代数の同型(2.5 節)
である. この章の内容をもう少し詳しく述べておく. 2.1 節において, 一般線型リー代数 gln(R) の部分代数を線型リー代数と定義する. 2.2 節では, 実行列を使って表される典型 的な例(特殊線型リー代数 sln(R), 直交リー代数 o(n) など) を紹介する. 2.3 節では, 複 素行列を使って表される典型的な例(複素一般線型リー代数 gln(C), 複素特殊線型リー代 数 sln(C), ユニタリリー代数 u(n), 特殊ユニタリリー代数 su(n) など) を紹介する. また 2.4 節では, 線型リー代数の直和を紹介する. 最後に, 2.5 節では, 線型リー代数の同型の 概念を定義する.
この章を読むための予備知識は, 簡単な線型代数のみである. 線型空間に積が定義され ているもの (代数) を考えるので, 環や代数の扱いに慣れていた方が読みやすいが, 知らな くても差し支えは無いと思われる. また, 本章は, 第1章「線型リー群」の内容も仮定しな い. そのため, 必要と思われる箇所には, 第1章と重複した説明が書かれている.
2.1 線型リー代数の定義
この節では, 線型リー代数の定義を説明する. 線型リー代数は, 一般線型リー代数 gln(R) の部分代数として定義される.
まずは一般線型リー代数 gln(R)の定義を復習する. 本稿を通して, Mn(R) はn×n実 行列の全体を表すものとする.
第2章: 最終更新日2010/12/16
定義 2.1.1 ベクトル空間 gln(R) := Mn(R) に積を [X, Y] := XY −Y X で定義したも のを 一般線型リー代数*1 と呼ぶ. 積[,] を, 行列の積と区別するために 括弧積*2 と呼ぶ. 一般線型リー代数 gln(R) は, ベクトル空間と積の構造を持つことに注意する. このよ うなものを代数と呼ぶが, 代数の一般論には本稿では触れない.
定義 2.1.2 一般線型リー代数 gln(R) の部分集合 g が 線型リー代数*3 (正確に言うと, gln(R) 内の線型リー代数) であるとは, 次が成り立つこと:
(i) g は gln(R) の線型部分空間である,
(ii) g は括弧積に関して閉じている, すなわち, ∀X, Y ∈g, [X, Y]∈g.
線型リー代数 g も, ベクトル空間と積の構造を持つことに注意する. 定義から, gln(R) およびゼロ行列だけから成る部分集合 {0n} は, gln(R) 内の線型リー代数である.
2.2 線型リー代数の例 : 実行列の典型例
この節では, 実行列を使って表される典型的な線型リー代数の例を紹介する. §2.2.1 では, 特殊線型リー代数 sln(R), 直交リー代数 o(n) が線型リー代数であることを示す.
§2.2.2 では, 直交リー代数 o(n) が Rn の内積を保つ変換の成す代数であることを示す.
2.2.1 実行列を使った例
ここでは, 特殊線型リー代数 sln(R), 直交リー代数 o(n) が線型リー群であることを示 す. 行列 X のトレースを tr(X) で表す.
例 2.2.1 sln(R) :={X ∈gln(R)|tr(X) = 0} はgln(R) 内の線型リー代数である(これ を 特殊線型リー代数*4 と呼ぶ).
証明. 線型部分空間であることと括弧積 [,] に関して閉じていることを示せば良い. ま ずは線型部分空間であることを示す. 任意に a, b ∈ R と X, Y ∈ sln(R) をとる. すると sln(R) の定義より tr(X) = tr(Y) = 0 が成り立つ. よって, tr の性質より,
tr(aX +bY) =a·tr(X) +b·tr(Y) = 0 が成り立つ. 以上により線型部分空間であることが示された.
*1general linear Lie algebra
*2bracket product
*3linear Lie algebra
*4special linear Lie algebra
16 第2章 線型リー代数 次に, 括弧積に関して閉じていることを示す. 任意に X, Y ∈sln(R) をとる. すると
tr([X, Y]) = tr(XY −Y X) = tr(XY)−tr(Y X) = tr(XY)−tr(XY) = 0 となるので, [X, Y]∈sln(R) である. よって括弧積に関して閉じている. ¤
括弧積に関して閉じていることの証明に, X, Y ∈ sln(R) であることは使っていない. 実際, 任意のX, Y ∈gln(R)に対して, [X, Y]∈sln(R) が成り立つ.
例 2.2.2 o(n) := {X ∈ gln(R) |tX +X = 0n} は gln(R) 内の線型リー群である(これ を 直交リー代数*5 と呼ぶ). ここで, tX はX の転置行列を表す.
証明. 線型部分空間であることと括弧積 [,] に関して閉じていることを示せば良い. 線 型部分空間であることは, 転置をとる操作の線型性から容易に従う. 括弧積に関して閉じ ていることを示す. 任意に X, Y ∈o(n) をとる. すると, tX = −X, tY =−Y が成り立 つ. 転置行列の性質を使うと,
t[X, Y] =t(XY −Y X) =tYtX −tXtY = (−Y)(−X)−(−X)(−Y) =−[X, Y]
となるので, [X, Y]∈o(n) が成り立つ. よって括弧積に関して閉じている. ¤ 問題 2.2.3 sln(R)∩o(n) = o(n) が成り立つことを示せ. (すなわち, so(n) := sln(R)∩ o(n) と定義しても, 新しいものは出てこない.)
問題 2.2.4 次で定義される h3 が gl3(R) 内の線型リー代数であることを示せ(これを 3 次元ハイゼンベルグ代数*6 と呼ぶ):
h3 :=
0 x z
0 0 y
0 0 0
|x, y, z ∈R
.
2.2.2 直交リー代数の性質
ここでは, 直交リー代数 o(n) が Rn の自然な内積を保つ変換の成す代数であることを 示す. ここで, Rn 上の自然な内積は, Rn の元を縦ベクトルだと思うと,
hv, wi:=tvw (v, w∈Rn) によって定義されていたことに注意する.
命題 2.2.5 o(n) ={X ∈gln(R)| hXv, wi+hv, Xwi= 0 (∀v, w∈Rn)}.
*5orthogonal Lie algebra
*6the 3-dimensional Heisenberg algebra
証明. まずは (⊂) を示す. 任意に X ∈ o(n) をとる. すると, 任意の v, w ∈Rn に対し て, 次が成り立つ:
hXv, wi+hv, Xwi=t(Xv)w+tv(Xw) =tv(tX+X)w = 0.
よって X は示すべき式の右辺に入る.
次に (⊃) を示す. 示すべき式の右辺から任意に X をとる. ここで tX +X = (aij) と 成分表示する. 示したいことは tX+X = 0n, すなわち akl = 0 である. 任意の(k, l) を とる. Rn の標準基底を {e1, . . . , en} で表す. すると X の仮定より,
0 =hXek, eli+hek, Xeli=tek(tX+X)el=tek(aij)el =akl
が従う. よって X ∈o(n) が示された. ¤ 問題 2.2.6 行列 Ip,q を
Ip,q :=
· −Ip 0 0 Iq
¸
で定義する. このとき, o(p, q) :={X ∈ glp+q(R) | tXIp,q +Ip,qX = 0p+q} が線型リー 代数であることを示せ (これを 不定値直交リー代数*7 と呼ぶ). また o(p, q) は, 符号数 (p, q) の不定値内積
hv, wip,q :=tvIp,qw=−v1w1− · · · −vpwp+vp+1wp+1+· · ·vnwn を保つ変換の成す代数であることを示せ.
2.3 線型リー代数の例 : 複素行列の典型例
この節では, 複素行列を使って表される典型的な線型リー代数の例を紹介する. §2.3.1 では, 複素一般線型リー代数 gln(C) の部分代数が線型リー代数となることを示す. これ を用いると, 複素特殊線型リー代数 sln(C), ユニタリリー代数 u(n), 特殊ユニタリリー代 数su(n) は線型リー代数になることが分かる. §2.3.2 では,ユニタリリー代数 u(n) がCn の自然な内積を保つ変換の成す代数であることを示す.
2.3.1 複素行列を使った例
ここでは, 複素一般線型リー代数 gln(C) の部分代数が線型リー代数となることを示す. また, これを用いて, 複素特殊線型リー代数 sln(C), ユニタリリー代数 u(n), 特殊ユニタ
*7indefinite orthogonal Lie algebra
18 第2章 線型リー代数 リリー代数 su(n) が線型リー代数になることを示す. 本稿を通じて, Mn(C) は n×n 複 素行列全体を表すものとする.
定義 2.3.1 ベクトル空間 gln(C) := Mn(C) に積 [X, Y] := XY −Y X を入れたものを 複素一般線型リー代数*8 と呼ぶ. この積 [,] も括弧積 と呼ぶ.
定義より gln(C) は実ベクトル空間と積の構造(すなわち代数の構造) を自然に持つ. 本 稿では, ベクトル空間は全て実ベクトル空間の意味で考えることに注意する. 複素一般線 型リー代数 gln(C) を線型リー代数と思うために,次の写像を考える:
f :Mn(C)→M2n(R) :A+iC 7→
· A −C
C A
¸ .
命題 2.3.2 gln(C) はf を通して線型リー代数と見なすことができる. すなわち, (1) f の制限写像は, gln(C) から f(gln(C))への, 括弧積を保つ線型同型写像, (2) f(gln(C))は gl2n(R) 内の線型リー代数.
証明. 写像 f が線型かつ単射であることは容易に分かる. また, f が行列の積を保つこ と, すなわち
f(XY) =f(X)f(Y) (∀X, Y ∈gln(C))
が成り立つことも, 簡単な行列の計算で分かる. これを用いて, (1) を示す. 写像 f0 :=f|gln(C) :gln(C)→f(gln(C))
が括弧積を保つ線型同型写像であることを示せば良い. 線型同型であることは明らか. 括 弧積を保つことは, f が線型かつ行列の積を保つことから従う.
次に (2) を示す. 線型部分空間であり括弧積に関して閉じていることを示せば良い. こ れらは, どちらも (1) から明らかである. ¤ 補題 2.3.3 g を gln(C) 内の, 括弧積に関して閉じている線型部分空間とする(このよう なものを部分代数と呼ぶ). このとき,g は写像f を通して線型リー代数と見なすことがで きる.
証明. 像 f(g) が gl2n(R) 内の線型リー代数であることを示せば良い. すなわち, f(g) が線型部分空間であり括弧積に関して閉じていることを示せば良い. 線型部分空間である ことは, f(g) が線型部分空間内の線型部分空間であることから従う. 括弧積に関して閉じ
ていることも, 容易に分かる. ¤
*8complex general linear Lie algebra
補題 2.3.3 を用いて, 複素行列を使った線型リー代数の例を構成することができる. 以 下, gln(C) の部分代数 g は, 正確には f による像が線型リー代数であると言うべきであ るが, 省略して単に線型リー代数であると言うこととする.
例 2.3.4 sln(C) := {X ∈ gln(C)|tr(X) = 0} は線型リー代数である(これを 複素特殊 線型リー代数*9 と呼ぶ).
証明. 例 2.2.1 と同様にして, sln(C) が gln(C) の部分代数であることが確かめられる.
よって, 補題 2.3.3 より題意は従う. ¤
例 2.3.5 u(n) := {X ∈ gln(C) | tX +X = 0n} は線型リー代数である(これを ユニタ リリー代数*10 と呼ぶ). ここで X は X の複素共役行列を表す.
証明. 例 2.2.2 と同様にして, u(n) が gln(C) の部分代数であることが確かめられる.
よって, 補題 2.3.3 より題意は従う. ¤
例 2.3.6 su(n) := sln(C)∩u(n) は線型リー代数である (これを 特殊ユニタリリー代 数*11 と呼ぶ).
証明. 部分代数と部分代数の共通部分が部分代数であることは, 容易に分かる. よって,
補題 2.3.3 より題意は従う. ¤
問題 2.3.7 次で定義される hC3 が線型リー代数であることを示せ(これを 3 次元複素ハ イゼンベルグ代数*12 と呼ぶ):
hC3 :=
0 x z
0 0 y
0 0 0
|x, y, z ∈C
.
問題 2.3.8 gln(R) は gln(C) 内の部分代数であることを示せ. また, これを用いて, gln(R) 内の線型リー代数は gln(C) 内の部分代数であることを示せ. (線型リー代数を
「gln(C) 内の部分代数」によって定義する場合もあるが,この問題と命題 2.3.2により, そ の定義と我々の定義が同値であることが分かる.)
*9complex special linear Lie algebra
*10unitary Lie algebra
*11special unitary Lie algebra
*12the 3-dimensional complex Heisenberg algebra
20 第2章 線型リー代数
2.3.2 ユニタリリー代数の性質
ここでは, ユニタリリー代数 u(n) がCn の自然な内積を保つ変換の成す代数であるこ とを示す. Cn 上の自然な内積は, Cn の元を縦ベクトルだと思うと,
hv, wi:=tvw (v, w∈Cn) によって定義されていたことに注意する.
命題 2.3.9 u(n) ={X ∈gln(C)| hXv, wi+hv, Xwi= 0 (∀v, w ∈Cn)}.
証明. 命題 2.2.5 と全く同様に証明できる. ¤
問題 2.3.10 問題 2.2.6 と同様に, u(p, q) := {X ∈ glp+q(C) | tXIp,q+Ip,qX = 0p+q} と定義する. これが線型リー代数であることを示せ (これを 不定値ユニタリリー代数*13 と呼ぶ). また u(p, q) は, 符号数(p, q) の不定値内積
hv, wip,q :=tvIp,qw を保つ変換の成す代数であることを示せ.
2.4 線型リー代数の例 : その他の例
この節では, いくつかの線型リー代数の例を紹介する. ここで紹介する例は, これまで の節で紹介したような典型的なもの以外の例を構成するときに, 有用である. §2.4.1 では, 線型リー代数と線型リー代数の直和を定義し, それがまた線型リー代数となることを示す.
§2.4.2 では, o(2) の具体的な表示を求める.
2.4.1 線型リー代数の直和
ここでは, 線型リー代数と線型リー代数の直和を定義し, それがまた線型リー代数とな ることを示す.
例 2.4.1 次で定義される glp(R)⊕glq(R) は, glp+q(R) 内の線型リー代数である: glp(R)⊕glq(R) :=
½· Xp 0 0 Xq
¸
∈glp+q(R)|Xp ∈glp(R), Xq ∈glq(R)
¾ .
*13indefinite unitary Lie algebra
証明. 線型部分空間であることと, 括弧積に関して閉じていることを示せば良い. どち
らも定義に従って計算すれば容易に示される. ¤
命題 2.4.2 g1, g2 をそれぞれ glp(R), glq(R) 内の線型リー代数とする. このとき, 次で 定義される g1⊕g2 は, glp+q(R) 内の線型リー代数である(これを 直和*14 と呼ぶ):
g1⊕g2 :=
½· X1 0 0 X2
¸
∈glp+q(R)|X1 ∈g1, X2 ∈g2
¾ .
証明. 線型部分空間であることは明らか. 括弧積に関して閉じていることも, [
· X1 0 0 X2
¸ ,
· Y1 0 0 Y2
¸ ] =
· [X1, Y1] 0 0 [X2, Y2]
¸
となることから, 容易に分かる. ¤
問題 2.4.3 gln(R)内の線型リー代数 gに対して,次で定義される diag(g) はgl2n(R) 内 の線型リー代数であることを示せ:
diag(g) :=
½· X 0
0 X
¸
∈gl2n(R)|X ∈g
¾ .
2.4.2 2 次直交リー代数
ここでは, o(2) の具体的な表示を求める. ここで, 次で与えられる行列 J を考える: J :=
· 0 −1
1 0
¸ .
例 2.4.4 o(2) ={cJ ∈gl2(R)|c∈R} が成り立つ. 特に, o(2)は 1 次元である.
証明. まずは(⊃) を示す. 任意にc∈Rをとる. このとき, cJ ∈o(2) であることは, 直 接計算で容易に確かめられる.
次に (⊂) を示す. 任意にX ∈o(2) をとる. 次のように X を成分表示する: X =
· a b c d
¸ .
直交リー代数の定義より tX+X = 0 が成り立つ. この条件を成分で表すと, 2a = 0, b+c= 0, 2d = 0.
これらの条件より, X =cJ と表すことができる. ¤ 問題 2.4.5 u(1) = {ci ∈ gl1(C) | c ∈ R} となることを示せ. (このことから, u(1) と o(2) の間には, 括弧積を保つ線型同型写像が存在することが分かる.)
*14direct sum
22 第2章 線型リー代数
2.5 線型リー代数の同型
線型リー代数に対して,同型という概念を定義する. また,線型リー代数として同型であ れば代数として同型である(すなわち括弧積を保つ線型同型写像が存在する) ことを示す. さらに, この主張の逆が成り立たないことの反例を挙げる.
定義 2.5.1 各 a∈GLn(R) に対して, 次の写像 Ada を随伴作用*15 と呼ぶ: Ada :gln(R)→gln(R) :X 7→aXa−1.
平面曲線に対しては, 回転と平行移動と折り返しという平面上の変換(実は等長変換の こと) がまず先に定義されていて, それで移り合うような曲線は合同であると定義した. 線型リー代数の同型もこれと同様に, gln(R) 上の随伴作用という変換がまずあって, それ で移り合う線型リー代数は同型であると定義する.
定義 2.5.2 gln(R) 内の線型リー代数g1, g2 が同型*16 とは, それらが随伴作用で移り合 うこと, すなわち, 次が成り立つこと: ∃a∈GLn(R) : Ada(g1) =g2.
命題 2.5.3 gln(R) 内の線型リー代数 g1, g2 が同型ならば, それらは代数として同型で ある.
証明. 任意の a ∈GLn(R) に対して, Ada は線型同型写像であり括弧積を保つ. 命題の
主張は, このことから直ちに従う. ¤
ちなみに, 命題 2.5.3 の逆は成り立たない. 次が簡単な反例である.
例 2.5.4 直和 {0} ⊕gl1(R) と diag(gl1(R)) (問題 2.4.3 参照) は, 代数としては同型で あるが, gl2(R) 内の線型リー代数として同型ではない.
証明. どちらも gl1(R) と代数として同型であることは明らか. ここでは, 線型リー代数 として同型でないことを示す. 同型であると仮定する. すると, 次をみたす a ∈GL2(R) が存在する:
Ada(diag(gl1(R))) ={0} ⊕gl1(R).
ここで
X :=
· 1 0 0 1
¸
∈diag(gl1(R))
*15adjoint action
*16isomorphic
を考える. このとき Ada(X)∈Ada(diag(gl1(R))) であり,
det(Ada(X)) = det(aXa−1) = det(X) = 1
が成り立つ. 一方で, {0} ⊕gl1(R) の任意の元の行列式が 0 であることが容易に分かる. これは矛盾. 以上より, 同型でないことが示された. ¤
命題 2.5.3 の逆が成り立たない理由を感覚的に述べると, 線型リー代数の同型は, 代数
の情報だけでなく, 「gln(R) への入り方」の情報も保たなくてはならないからである. こ れは, 円と楕円が平面曲線としては違うが位相空間としては同相である, ということと同 様の状況になっている.
問題 2.5.5 線型リー代数の直和 g1⊕g2 と g2⊕g1 が同型であることを示せ. (ヒント: g1 を gln(R) 内の線型リー代数, g2 を gln+k(R) 内の線型リー代数として良い. このとき
a:=
In Ik
In
で定義される随伴作用を考える.)