代数学Iの目標 (2017.7.10.)
今学期の代数学Iで理解・習得しておくべきこと(≒期末試験で問うこと)を挙げますの で参考にして下さい。線形代数学 II などで学んだことも含みます。また、基本的な例題 を挙げるので、問題の意味と解き方をしっかり理解しておいてください。
期末試験では、後半に重点を置いて出題します。
• 線形空間の定義(公理)、線形空間のいくつかの例(数列の空間、関数の空間、多項 式の空間、行列の空間など)
例題 実数列(an)∞n=1全体の集合V は、(an)∞n=1+(bn)∞n=1 := (an+bn)∞n=1,c(an)∞n=1 :=
(can)∞n=1 によりR上の線形空間をなすことを示せ。(公理をおぼえておきましょう。) 例題 線形空間において、等式「 (−1)v =−v」の意味するところを説明し、証明 せよ。
• 以下のものの定義: 部分空間、基底、次元、線形写像、表現行列
例題 実数列のなす線形空間V において、W :={(an)∞n=1|an+2 = 4an+1−4an(∀n≥ 1)} は部分空間をなすことを示せ。W の基底を与え(一般項を具体的に与える必要 はない)、W の次元を求めよ。T :W →W を T((an)) := (an+1)で定めるとき、T が線形写像(線形変換)であることを示せ。また、上で与えた基底に関する表現行列 を求めよ。
• ベクトルの生成する部分空間・一次独立性に関する議論
例題 v1, . . . ,vk を V の元とする。また、f :V →W を線形写像とする。
(1) v1, . . . ,vk−1 が一次独立、v1, . . . ,vk が一次従属ならばvk∈ ⟨v1, . . . ,vk−1⟩ であ ることを示せ。
(2) f(⟨v1, . . . ,vk⟩) =⟨f(v1), . . . , f(vk)⟩ を示せ。
(3) f(v1), . . . , f(vk) が一次独立ならばv1, . . . ,vk は一次独立であることを示せ。
• 固有値・固有ベクトル・広義固有空間
例題 上のT の固有値・固有ベクトル・固有空間・広義固有空間を求めよ。
• 次元公式
例題 f :V →W を線形写像、dimV =n, dimW =m とする。dim Kerf =n−m ならばf は全射であることを示せ。
• 基底と成分表示、表現行列
• 表現行列と基底変換の関係(変換式は暗記しなくても結構ですが、理屈を理解して おいてください。)
• 内積・エルミート内積の定義
例題 V = {一次以下の実多項式}, (f, g) := ∫1
−1f(x)g(x)dx とする。(,) が V 上 の内積であることを示せ。
• 二次形式の標準形の計算
例題 q(x1, x2, x3) := x1x2 +x2x3 を、 txAx の形であらわせ。また、この二次形 式を標準形に変形せよ。(変数の変換式も述べよ。)
• 実対称行列の直交行列による対角化(およびエルミート行列のユニタリー行列によ る対角化)
例題 A:=
2 1 1 1 2 1 1 1 2
を、直交行列により対角化せよ。
例題 二次曲線x2+ 3xy+y2 = 1 を直交変換によりax2+by2 = 1 のような形に変 形し、概形を描け。
• ジョルダン標準形の求め方
例題 次の行列のジョルダン標準形を求めよ:
(1)
1 2 −1
−1 4 −1
−2 6 −1
(2)
3 9 −2
−3 −7 1
−4 −9 1
• ジョルダン標準形の応用: 行列の巾、線形漸化式、その他 例題 前問の各行列のn 乗(n は自然数)を求めよ。
例題 漸化式an+2 = 4an+1−4an の一般項を求めよ。
参考問題(期末試験では出題しません) 線形常微分方程式 {
u′(t) = u(t) +v(t) v′(t) = −4u(t)−3v(t)
の一般解を求めよ。
例題 複素 2 次正方行列 A について、A2 が対角化可能かつ A2 ̸=O ならばA は 対角化可能であることを示せ。
• 直和、商空間(期末試験では出題しません) 例題 R2 =⟨
( 1 1
)
⟩+· ⟨ (
1
−1 )
⟩ (内部直和)であることを示せ。
例題 R2/⟨ (
1 2
)
⟩ の基底を一つ与えよ。