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観光資源と環境問題 - −海辺のポリシー・ミックス

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産研通信 No.59(2004・3・31)

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観光資源と環境問題

−海辺のポリシー・ミックス

中 崎 茂

1 観光資源の特性:海辺を中心 社会経済の発展に伴い多くの国民が観光旅 行に出掛けており、「旅行・行楽」をした人は 約 9144 万人(平成 13 年度)で、10 歳以上人 口の80.9%1)を占めるなど、今や国民生活に 定着してきた観がある。これに経済のサービ ス化や産業構造の高次化等も加わり、観光は 企業のビジネスチャンス、地域経済の活性化 の手段の一つあるいは国づくりの柱の一つと もみなされている。

この観光の対象となる観光資源は、スポー ツ・レジャー等の施設、自然景観・生態、歴 史文化財あるいはイベント・祭りなど多種多 様なものがある。考察の目的(利用・開発、保 全等)によって資源の注目点は異なるが、一 般的に観光資源の有無に関心が寄せられてい る。しかも観光資源は、社会経済や価値意識 の変化に影響され、ある時は軽視、ある時は 重視されるなど社会的な存在としての特性を もつ。例えば、イギリスの海辺について見る と、18 世紀頃の海辺は、生命・財産を奪う波 浪の恐怖、不可思議な生物の生息地、しかも 海からの略奪の侵入拠点であり恐ろしき場所 としてイメージされていた。 1750年にRichard Russelが海水に浸り,海水を飲み、オゾンの 空気を吸うことが健康に役立つと論文で発表 してから海辺の見直しが始まり、特権階級が 馬車で海辺に出掛けそこにリゾート地域が形 成(ブライトン、スカーベラ等)された。そ

の後に科学・生物的知見が蓄積され、産業・交 通革命で列車により大衆が海へアクセスでき るようになり、さらに特権階級のリゾート生 活が都市住民にデモンストレーション効果を もたらすようになると、海辺が観光資源とし て評価されマス・ツーリズム(本格化したの は第二次大戦後)が萌芽した 2)。2次大戦後 に国民的な観光資源として高く評価・利用さ れてきた海水浴場も、その後の高齢化やレ ジャー活動の多様化、紫外線の皮膚損傷の恐 れ等から、その見直しが行われている。

このように観光資源の社会的な評価・意義 は流動しており、海辺の利用や保全を環境と の関わりから考察する場合、これらの点に留 意する必要がある。

2 観光資源(海辺)の環境問題

多くの観光客を受け入れる地域は、インフ ラ,宿泊・飲食施設等の整備と、観光客の観 光行動(移動、宿泊、飲食、購買等)の双方を 通して、「環境の恩恵」(社会経済的な効果)と

「環境への影響」(自然・生態等)の双方を受 けることになる。環境を、人を取り巻く物理 的な存在の中で人が設計していない部分とす ると、観光が環境と関わる問題は、コスト・パ フオーマンスの面とその地域環境の許容量を 上回る影響面に大別される。

ここでは後者の影響面に限って考察すると、

観光に起因する影響内容は、水質汚濁、ゴミ

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の散乱等、観光の大衆化や受身的な観光行動 から能動的な活動を反映して多様なものとな り、また関係する主体も企業のみならず個人 の関与も軽視できない状況にある。それゆえ、

環境問題を単に企業の「外部不経済性」問題 として扱いそれを「内部化」する経済的手法 で対応することは不十分となる。この環境問 題の特性に応じた対応には、経済以外の手法 を含め複合的な対応が必要となる。そのため 観光と関わりの深い環境特性を、倉阪氏の論 説3)により時間軸、空間軸および社会軸と関 連づけ、それに応じた対応の方向性を考察し てみる。

環境問題は、影響として現れるまでに時間 がかかり、この時間軸からa)自動車の排気ガ スのように有る水準を越えたときに生じるも の、b)光スモッグのように化学的・物理的・

生物的反応により被害が生じるもの、またc)

土壌汚染のように分解しにくい汚染物質が環 境中に蓄積するもの、に大別される。また、環 境問題はその発生原因となる場所とその影響 をうける主体との場所に距離(空間軸)があ り、原因と結果の場所がア)同じ自治体にあ る「生活圏問題」、イ)同じ国内にある「国内 問題」、ウ)国を超える「国家間問題」に区分 される。さらに、環境問題はそれを発生させ た主体の形態(社会軸)にも由来することか ら、i)企業や個人の特定の行為を原因とする

「特定行為問題」、ii)社会全般のほぼ共通した 特定の行為を原因とする「特定様式の問題」

(例えば、多くの観光者がマイカー利用するこ とに起因する交通渋滞,駐車場問題等)およ び iii)地球温暖化などその原因を特定の行為 に限定することが困難な「普遍的問題」に区 分される。例えば、海辺の皮膚がんにかかわ るオゾン層破壊は{c)環境中に蓄積=ウ)国 家間問題= iii)普遍的問題}に関わり、また 海浜に流れ来るオイルボールは{B)化学変化

=ウ)国家間問題= i)特定行為問題}に関わ ると区分できる。この 3 つの軸はすべての環 境問題を包含できるわけではないが、多面性・

流動性をもつ環境の特性に対応する一次アプ ローチとして有益であろう。

3 外部性対応からポリシー・ミックスへ 観光サイドからみた海辺の環境問題にオゾ ン層破壊、オイル・ボール、水質汚染があり、

これらの特性に応じた対処が必要となる。オ ゾン対策にはフロンガスの無害化、回収の技 術開発、地球レベルの環境教育・倫理の普及、

国際的な取り決め(例えば、ウイーン条約、モ ントリオール議定書)の遵守、オイル・ボー ル対策には海洋汚染防止の条約(ロンドン条 約、マルポール条約、国際海洋法条約)、国際 機関の活用(監視、除去・処理等)が基本と なる。また、浜辺の水質汚染対策には、その 海辺を含む流域の産業活動や生活様式の改変 が必要となる。 特に水質汚濁は、都市型の生 活様式や利便性を優先した生活廃棄物として のプラスチック・ゴミ等に由来し、1990 年代 の規制や経済的な手法(外部性)だけで解決 し切れない面がある。経済的手法とは、環境 負荷を多く出している人・企業等はそれに応 じた経済負担するか、環境負荷の軽減に応じ た助成を行うものである。そのため、この i)

経済的手法、ii)規制(流入河川の汚濁水の流 入阻止)に加えて、iii)河川等の浄化能力の向 上(例えば、自然型河川整備)、iv)情報の提 供(汚染の状況と関係機関等の取り組みとそ の成果)および v)見学・体験教育の普及、な どの多面的な取り組みが必要となる。しかも、

これらの公共機関、団体等の取り組みの他に、

さらに個人が一人称で海辺の環境を享受し、

その保全に関与する仕組み(公共機関、団体 等はそれを補完し誘導する役割に移行する)

が、受益者負担の原則や低経済成長による行

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政の財源不足等の懸念のもとでは指向される

べきであろう。

このような環境問題に法的に対応するため、

1967年の公害基本法では規制措置、施設整備 が基本であったが、1993年の環境基本法では この 2 つの条文に経済的手法,環境に優しい 製品の普及、環境教育・学習,自発的な活動 が加えられた。さらに1999年に河川法が改正 され、水質事故等の原因者の費用負担、不法 係留の対策、さらに2000年の海岸法施行令(一 部改正)により海岸環境の整備と保全、海岸 の適正な利用が明記され、自動車乗り入れ禁 止、油・有害物質・粗大ゴミ・建築廃材等に よる海岸汚染防止、貴重な動植物の生息地の 保護対策等および地域住民(行政)の関与を 強め、海辺環境の保全の実効性を高めようと している。しかし、現実には、環境(海辺)に 不要なものを排出した人・企業等にその処理 に見合う費用を十分に負担させる仕組みに なっていない。また、多くの人々が海辺のレ クリエーション関連の商品を購入する場合に、

価格以外にそれらの廃棄後の環境問題にまで 思いを馳せ、店頭で必要な情報を得たり時に 自粛することは稀である。さらに海辺環境の 快適性/清浄性の良し悪しが観光入込み動向 や地域住民の愛着・郷土愛の醸成に大きな影 響を与えることから、海辺のレクリエーショ ン関連ビジネスも環境の保全とリンクすべき であるが、多くの場合にまだ軽視されている。

このような現実を認識し、持続性のある快 適な環境・観光活動空間を享受・保全するた

め、①個々人や企業等の環境に対する主観・評 価に加えて、海辺環境の現状・推移、生活・産 業活動が海辺環境にどれだけ負荷を与えるか 等のデータの広報。②企業が、再生可能資源 と経営資源(労働、資本、技術、等)を効率 的に活用し、資源生産性を高め(企業収益)る とともに地球・地域環境の保全(環境改善)に 努める−eco-efficiency4)−ように社会的責任 の自覚を促す5)。あわせて③守り維持する環 境の水準を、環境特性の科学的知見の蓄積と あわせ生活スタイル、企業の活動実態等(資 源、技術、製品、廃棄物等)に配慮して、明 確にし共通認識とすること、が肝要である。

海辺環境の実効性のあるゼロ・エミッショ ンのため、このような ミックス・ポリシーを 展開し、かつ見直しを重ねることで、人間活 動(生活・生産・観光)と自然・生態環境と の望ましい共存・共創関係(ホスピタリティ・

マネジメント)が築かれることを期待したい。

1) 総務庁(2002)「平成 13 年社会生活基本 調査 結果概要」

2) 拙著(2001)「リゾート地域の変遷とその 要因に関する考察」流経大論集 , 35-3 3) 倉阪秀史(2003)『エコロジカルな経済学』

ちくま新書 p 165 〜 174

4) 堀内行蔵(2000)「環境マネジメント論序 説」法大、人間環境論集 1-1 p 44・45 5) 宇沢弘文(1995)『地球温暖化を考える』

岩波新書、p 137

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