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酵母の浸透圧ストレス応答 - J-Stage

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化学と生物 Vol. 50, No. 6, 2012

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今日の話題

オースとグルコースを生じるエンド型の酵素であった.

PyLam38の糖転移活性はかなり高く,様々な単糖やア ルコール,キシロオリゴ糖などを受容体として,様々な ヘテロオリゴ糖や配糖体を合成することができた(図 1-C).

これらラミナリナーゼの酵素特性には,海産軟体動物 の生活環境と関連した違いがみられた.たとえば,生息 温度が15℃程度のアワビやアメフラシの酵素の熱安定 性は,10℃以下のホタテガイのPyLam38のものよりも 高かった.また,珪藻などの微細藻類を摂餌しているホ タテガイのラミナリナーゼは,そこに含まれる直鎖状の

β

-グルカンを良く分解するが,アラメなどの褐藻に含ま れる側鎖の多いラミナリンは分解しにくい.一方,アラ メやコンブなどの褐藻を摂餌しているアワビやアメフラ シのラミナリナーゼは,直鎖状のラミナリンだけでなく 分枝の多いラミナリンも分解できた.これらの酵素特性 の違いを利用すれば,より多様な構造の

β

-グルカンの断 片化やオリゴ糖の作出が可能になると思われる.

これまで紹介した軟体動物のラミナリナーゼ,Hd- Lam33, AkLam36, AkLam33, およびPyLam38の一次構 造をcDNAクローニングにより解析した結果,これら はいずれも糖質加水分解酵素ファミリー16 (GHF16) に

属することが明らかになった.これらの軟体動物のラミ ナリナーゼと他の

β

-1,3-グルカナーゼの一次構造情報に 基づき分子系統樹を作成した(図1-D).その結果,軟 体動物の酵素遺伝子は原核生物と真核生物の分岐後に真 核生物の祖先遺伝子から派生したと推定された.海産軟 体動物のラミナリナーゼは,生物進化の過程で珪藻や褐 藻を摂餌するようになったのに伴い,それらに含まれる ラミナリンの分解・糖化に適した特性に分子進化した可 能性が考えられる.

  1)  O.  Rop,  J.  Mlcek  &  T.  Jurikova : , 67,  624 

(2009).

  2)  Z. Pang, K. Otaka, T. Maoka, K. Hidaka, S. Ishijima, M. 

Oda & M. Ohnishi : , 69, 553 

(2005).

  3)  N.  Miyanishi,  Y.  Iwamoto,  E.  Watanabe  &  T.  Oda : , 95, 192 (2003).

  4)  Y.  Kumagai  &  T.  Ojima : , 

154, 113 (2009).

  5)  Y.  Kumagai  &  T.  Ojima : , 

155, 138 (2010).

  6)  Y. Kumagai, A. Inoue, H. Tanaka & T. Ojima : ,  74, 1127 (2008).

(熊谷裕也,尾島孝男,北海道大学大学院水産科学研 究院)

酵母の浸透圧ストレス応答

アクア(グリセロ)ポリンの生理機能と制御機構

浸透圧ストレス応答は細胞が外界の環境変化に適応す るための必須な機構であり,出芽酵母 

 において最も研究が進んでいる(1).酵母は高 浸透圧ストレスに曝されると急激な脱水により一時的に 収縮し,適合溶質としてグリセロールを蓄積すると再び 水を吸収し元のサイズに戻る(図1.この過程で生じ る膨圧の変化を細胞膜上の浸透圧センサーが感知し,そ の下流にある Hog1 MAPK (mitogen-activated protein  kinase) 経路がグリセロール合成遺伝子の誘導など様々 な応答を制御している.さらにHog1は,ここで取り上 げるアクアポリンとアクアグリセロポリンの制御を介し て細胞内の水とグリセロール量を調節していると考えら れている.アクアポリンとは生体膜を介して水の選択的 透過を担う水チャンネルであり,グリセロールなどの小 物質の輸送にはアクアグリセロポリンが関与してい

(2).この2つは系統樹解析でも明確に区別され,酵母 ではアクアポリンが2つ (Aqy1, Aqy2) とアクアグリセ ロポリンが2つ (Fps1, Yfl054c),ヒトでは合計10種類 以上存在する(図2ここでは,筆者が所属するス ウェーデン・ヨーテボリ大学のHohmannグループが進 めてきた酵母のアクア(グリセロ)ポリンの生理機能と制 御機構について紹介する.

Peter Agre(2003年ノーベル化学賞受賞)らによっ てヒトの赤血球からアクアポリンが発見されて以降,酵 母,大腸菌,植物などにおいてもアクアポリンの存在が 確認されるようになってきた.特に,移動することがで きない植物は土壌から水を効率よく吸収するために 30  以上の遺伝子を有することが報告されている.興味深い ことに,Laizéらは様々な酵母株のシークエンス解析に よって,S288C株やW303-1A株などの実験室酵母のア

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今日の話題

クアポリン遺伝子は機能を失った変異型であること 

( はいくつかの点変異, は 11 bp の欠失), 野生型の酵母のみが機能性のアクアポリン遺伝子をもつ ことを明らかにした(3).酵母のアクアポリン遺伝子は実 験室環境ではネガティブ選択圧により変異が導入された と考えられ,逆に言えば,野生型酵母に特有な現象に関 与している可能性が示唆される.この点について以下の 2つの報告がある.

野生型酵母の一種である SK1 株は胞子形成能が非常 に高いことと,機能性 遺伝子をもつことでよく 知 ら れ て い る.Sidoux-Walterら は,SK1株 に お い て ノーザン解析および蛍光顕微鏡観察を用いてAqy1が胞 子特異的に発現していることを見いだした(4).   遺伝子を欠損させると胞子の生存率が低下するが,液体 窒素による急速冷凍に対して耐性能が増したことから,

実験室酵母では凍結保存の繰り返しによるネガティブ選 択圧で 遺伝子に変異が入った可能性が考えられ る.同じく野生型酵母の Σ1278b株は,機能性 遺 伝子を有し,栄養飢餓条件下において偽菌糸形成や侵入 性増殖を示すという特徴をもつ.古川らは,Σ1278b株 において, 遺伝子の発現が高浸透圧条件下で抑制 され,低浸透圧刺激で誘導 (抑制解除) されることを見

い だ し た(5).さ ら に, 遺 伝 子 の 発 現 は Hog1  MAPK 経路および偽菌糸形成を制御する Kss1 MAPK  とPKA (protein kinase A) 経路によっても制御を受 け,Aqy2を高発現させると高浸透圧感受性になるだけ でなく侵入性増殖やバイオフィルム形成が促進されると いう結果が得られた.このように,酵母アクアポリンの 生理機能は野生型に特有の現象に深く関わっているこ と,実験室における一般的な操作(凍結保存や浸透圧変 化)は機能を失った変異体の優先的な選択につながると いうことが考えられる.

一方,酵母のアクアグリセロポリンではFps1の研究 が比較的進んでいる.酵母はFps1を欠損しても高浸透 圧感受性にはならないが,低浸透圧刺激に感受性になる という特徴をもつ.これはすなわち,高浸透圧条件下で はグリセロールを細胞内に蓄積するためにFps1は閉じ た状態であり(欠損状態と変わらない),低浸透圧刺激 図1酵母の浸透圧ストレス応答

酵母は細胞内の水とグリセロールの量を調節することで細胞外の 浸透圧変化に応答している.Hog1 MAPK はグリセロール合成遺 伝子の誘導,リン酸化を介したアクアグリセロポリンFps1のゲー ティング,アクアポリンAqy2の発現抑制などに関与しており,

これらのいずれかに異常が生じると浸透圧ストレス感受性となる.

図2アクアポリンとアクアグリセロポリン

酵 母 (Aqy1, Aqy2, Fps1, Yfl054c),  ヒ ト (AQP0-10),  大 腸 菌 

(AqpZ, GlpF) が有するアクアポリンとアクアグリセロポリンは 系統樹解析によって明確に区別することができる.アクアポリン は水のみを輸送するのに対し,アクアグリセロポリンは水だけで なくグリセロール,ヒ素,二酸化炭素,尿素などの輸送にも関与 している.ともに,細胞質側にN末端領域とC末端領域をもつ6 回膜貫通型の膜タンパク質であり,4量体として存在している.

アクア(グリセロ)ポリンは,タンパク質としての機能が類似して いる場合でも,発現様式や局在部位の違いにより特有の現象に関 与していることが知られている.

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今日の話題

では細胞内のグリセロールを細胞外へ排出するために開 いた状態であることを示している.このようなゲーティ ング機構に関して,Fps1は極端に長いN末端およびC 末端領域をもつことから,これらの領域がグリセロール の細胞内外への輸送を制御する鍵であることが以前から 推定されていた.TamásらはN末端領域のデリーショ ン解析により,高度に保存された特定の領域を欠損させ ると恒常的なオープン型となり,グリセロールの蓄積が できず高浸透圧感受性になることを見いだした(6).ま た,ThorsenらはFps1を欠損させるとヒ素の取り込み ができなくなることから,アクアグリセロポリンがグリ セロールだけではなくヒ素輸送体としても機能すること を示した(7).Hog1を欠損するとヒ素感受性となり,

Hog1の活性型変異株では逆に野生株よりも耐性になっ た.Fps1のN末 端 領 域 に はMAPKリ ン 酸 化 部 位 

(Thr231) が存在し,実際に   の実験ではFps1が Hog1によりリン酸化されることがわかった.これらの 結果から,Hog1はFps1のリン酸化を介したゲート開閉 を制御することによってグリセロールの蓄積に関与する ことが示された.

最後に,酵母のアクアポリンの構造解析で明らかに なった新規なゲーティング機構について紹介する.

Fischerらはメタノール資化酵母   由来の アクアポリンAqy1の結晶構造を膜タンパク質研究上で 最高の解像度 (1.15Å) で解析することに成功した(8). 構造解析によると,Aqy1は閉じた状態の構造であり,

これにはN末端領域の特定のアミノ酸残基(Tyr31 およ びSer107)が影響していると考えられた.これらのアミ

ノ酸残基を置換した推定オープン型変異株(Tyr31→  AlaおよびSer107→Asp)は水輸送活性が上昇し,急速 冷凍の繰り返し実験において生存率の低下が見られたこ とから,オープン型アクアポリンは過度な水の流入と流 出をひき起こし生育に悪影響を与えることがわかった.

さらに,分子動態のシミュレーション解析により,

Aqy1のゲーティングはリン酸化と機械的感受性の組み 合わせによって制御されていることが明らかにされた.

以上,酵母アクア(グリセロ)ポリンの生理機能と制御 機構について述べた.一般的な実験条件(培地組成や培 養温度など)は酵母が実際に存在する果実表面などの環 境とは大きく異なり,さらには変異体も得られやすい条 件であることから,酵母アクアポリンの本来の役割を見 誤っている可能性が考えられ,今後の詳細な解析が必要 であろう.また,ヒトアクア(グリセロ)ポリンは様々な 疾病へ関連していることが報告されており,酵母の変異 株を宿主として用いた機能解析や阻害剤のスクリーニン グなどが病態解明に向けた有効な手段として期待され る.

  1)  S. Hohmann : , 66, 300 (2002).

  2)  N. Pettersson  : , 97, 487 (2005).

  3)  V. Laizé  : , 16, 897 (2000).

  4)  F. Sidoux-Walter  : , 101

17422 (2004).

  5)  K. Furukawa  : , 74, 1272 (2009).

  6)  M. J. Tamás  : , 278, 6337 (2003).

  7)  M. Thorsen  : , 17, 4400 (2006).

  8)  G. Fischer  : , 7, e1000130 (2009).

(古川健太郎,スウェーデン・ヨーテボリ大学)

クワガタムシにおける空中窒素利用の可能性

里山の人気者は物質循環の立役者

空中窒素固定は一般には植物でよく知られている.古 くからダイズなどのマメ科植物が有名であり,近年に なって畑作物ではサツマイモなども仲間入りしている.

これらは地力の低い土地でも比較的生育が良い植物でも ある.

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供給してもらい,そのかわりに空中窒素固定で得た窒素 化合物を宿主に与えて生育を助け,ひいては種子の増産 にも貢献する.

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