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重大事由解除と反社会的勢力の排除について

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重大事由解除と反社会的勢力の排除について

弁 護 士 天 野 康 弘

第 1 反 社 と 暴 排 条 項

保 険 契 約 に お い て 排 除 す べ き 反 社 会 的 勢 力 ( 以 下 、「 反 社 」 と い う 。) と は 、

「 暴 力 団 」、「 暴 力 団 員 ( 暴 力 団 員 で な く な っ た 日 か ら 5 年 を 経 過 し な い も の を 含 む )」、「 暴 力 団 準 構 成 員 、暴 力 団 関 係 企 業 そ の 他 の 反 社 会 的 勢 力 」と さ れ て い る1

か か る 反 社 を 保 険 契 約 か ら 排 除 す る 方 法 の 一 つ と し て 、 各 保 険 会 社 は 、 重 大 事 由 に よ る 解 除 の 一 場 面 と し て 、暴 力 団 排 除 条 項( 以 下 、「 暴 排 条 項 」と い う 。)を 盛 り 込 ん だ 約 款 改 定 を 行 い 、約 款 改 定 後 の 反 社 の 排 除 は 重 大 事 由 解 除 の 一 場 面 で あ る 暴 排 条 項 に 基 づ い て 行 う こ と が 考 え ら れ る2

第 2 既 存 保 険 契 約 と 反 社 の 排 除 1 は じ め に

金 融 庁 の 保 険 会 社 向 け の 総 合 的 な 監 督 指 針 ( 以 下 「 、 監 督 指 針 」 と い う 。)

に お い て 、「 反 社 会 的 勢 力 と は 一 切 の 関 係 を も た ず 、反 社 会 的 勢 力 で あ る こ と

1 各 保 険 会 社 約 款 か ら 。

2 暴 排 に 関 連 し た 重 大 事 由 解 除 と 反 社 の 排 除 に つ い て の 文 献 は 、 大 野 他 「 生 命 保 険 分 野 に お け る 暴 力 団 排 除 の 方 策 に 関 す る 契 約 法 的 観 点 か ら の 考 察 ( 上 )」NBL930 21頁 以 下 、 大 野 他 「 同 ( 下 )」NBL931 35頁 以 下 、 鈴 木 仁 史 「 保 険 法 に お け る 片 面 的 強 行 規 定 と 暴 力 団 排 除 条 項 」金 融 法 務 事 情 18891頁(2010年 )、鈴 木 仁 史「 生 命 保 険・損 害 保 険 約 款 へ の 暴 排 条 項 導 入 」 金 融 法 務 事 情 1938 62頁 以 下 (2012年 )、 藤 本 和 也 「 暴 力 団 排 除 条 項 と 保 険 契 約 」保 険 学 雑 誌621 89頁 以 下(2013年 )、嶋 寺 基「 新 保 険 法 の 下 に お け る 保 険 者 の 解 除 権

― 重 大 事 由 に よ る 解 除 の 適 用 場 面 を 中 心 に 」 伊 藤 眞 = 松 尾 眞 = 山 本 克 己 = 中 川 丈 久 = 白 石 忠 志 編 ・ 石 川 正 先 生 古 希 記 念 論 文 集 経 済 社 会 と 法 の 役 割 839頁 以 下 (2013年 )、 落 合 誠 一 編 ・ 保 険 法 コ ン メ ン タ ー ル177頁 以 下〔 榊 素 寛 〕(2014年 )、山 下 友 信 = 永 沢 徹 編・論 点 体 系 保 険 法 1288頁 以 下〔 山 下 典 孝 〕(2014年 )、同・論 点 体 系 保 険 法 2214頁 以 下〔 山 下 典 孝 〕2014 年 )、第 一 東 京 弁 護 士 会 民 事 介 入 暴 力 対 策 委 員 会 編・保 険 業 界 の 暴 排 条 項 対 応( き ん ざ い 、2012 年 )、犬 塚 浩 = 加 藤 公 司 = 尾 崎 毅 編・暴 力 団 排 除 条 例 と 実 務 対 応 188頁 以 下( 青 林 書 院 、2014 年 ) 等 が あ げ ら れ る 。

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を 知 ら ず に 関 係 を 有 し て し ま っ た 場 合 に は 、 相 手 方 が 反 社 会 的 勢 力 で あ る と 判 明 し た 時 点 で 可 能 な 限 り 速 や か に 関 係 を 解 消 す る た め の 態 勢 整 備 」 や 「 反 社 会 的 勢 力 と の 関 係 遮 断 を 徹 底 す る 観 点 か ら 、 既 存 の 債 権 や 契 約 の 適 切 な 事 後 検 証 を 行 う た め の 態 勢 」 が 求 め ら れ て い る3

従 っ て 、暴 排 条 項 導 入 前 の 既 存 の 保 険 契 約( 以 下 、「 既 存 保 険 契 約 」と い う 。)

に お い て も 反 社 と の 契 約 が 明 確 に な っ た 場 合 は 、 保 険 契 約 関 係 か ら 排 除 す べ き こ と が 求 め ら れ る4

こ の 点 、約 款 改 定 後 の 暴 排 条 項 の 遡 及 適 用 自 体 は 、理 論 上 、困 難 と い え る5。 も っ と も 、 保 険 法 の 重 大 事 由 解 除 の 規 定 ( 同 法 3 0 条 、 5 7 条 、 8 6 条 ) は 、 保 険 法 施 行 前 の 保 険 契 約 へ の 遡 及 適 用 を 認 め て い る こ と か ら ( 保 険 法 附 則 3 条 1 項 、4 条 1 項 、5 条 1 項 )、保 険 法 の 重 大 事 由 解 除 の 包 括 規 定 で あ る 3 号 事 由 解 除 を 行 う こ と は 可 能 で あ る 。

こ の 場 合 、「 暴 排 条 項 を 重 大 事 由 解 除 に 位 置 づ け 反 社 属 性 を 有 す る こ と の み を も っ て 解 除 を 可 能 と す る 以 上 、 保 険 法 施 行 の 前 後 を 問 わ ず 旧 約 款 契 約 に お い て も 反 社 属 性 を 有 す る こ と を 根 拠 と し た 解 除 は 可 能 と な る の が 理 論 的 帰 結 」 と い う 考 え が あ る 一 方6、「 既 契 約 に つ い て は 暴 力 団 等 の 属 性 要 件 だ け で な く 、 行 為 要 件 も 勘 案 し 、 重 大 事 由 解 除 の 包 括 条 項 に 該 当 す る か 他 の モ ラ ル リ ス ク 事 由 と と も に 総 合 的 に 判 断 す る こ と に な ら ざ る を 得 な い 」 と の 指 摘 が あ る7

そ こ で 、 か か る 場 合 の 留 意 点 と し て 理 論 と 実 務 に つ い て 検 討 す る 。

2 理 論 上 の 問 題

⑴ 価 値 判 断

既 存 保 険 契 約 に お い て 、 あ る 保 険 契 約 者 は 、 保 険 者 に 対 し て 、 暴 力 的 な

3 金 融 庁 ・ 保 険 会 社 向 け の 総 合 的 な 監 督 指 針 「 Ⅱ - 4 - 1 0 」。

4 藤 本・前 掲 註 2)108頁 、藤 本 和 也「 保 険 契 約 お よ び 共 済 契 約 か ら の 反 社 会 的 勢 力 排 除 に お け る 実 務 上 の 課 題 」 共 済 と 保 険 通 巻66929頁 以 下 (2014年 ) も 同 旨 。

5 山 下 友 信 ・ 保 険 法 117頁 ( 有 斐 閣 、2005年 ) は 、 変 更 後 の 約 款 は 、「 新 契 約 に つ い て の み 適 用 さ れ る 。」と し 、暴 排 条 項 に つ い て も 、藤 本・前 掲 註2)105頁 、一 弁 民 暴 編・前 掲 註2)

93頁 も 同 旨 で あ る 。 ま た 、 金 融 庁 パ ブ リ ッ ク コ メ ン ト 54番 で は 「 既 契 約 に 変 更 後 の 約 款 の 効 力 は 及 ば な い 」 と あ る 。

6 藤 本 ・ 前 掲 註 2)109頁 。

7 犬 塚 浩 = 加 藤 公 司 = 尾 崎 毅 編 ・ 前 掲 註 2)195頁 、 一 弁 民 暴 編 ・ 前 掲 註 2)95頁 。

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要 求 行 為 や 法 的 な 責 任 を 超 え た 要 求 行 為8を 直 接 的 に 行 っ て い な い が 、著 名 な 暴 力 団 員 ( 指 定 暴 力 団 の 組 長 等 ) が 保 険 契 約 者 で あ る こ と が 明 確 に 判 明 し た 場 合 、 保 険 者 と し て は 、 当 該 保 険 契 約 を 解 除 せ ざ る を え な い の で は な か ろ う か 。

上 述 の 通 り 、 監 督 指 針 は 反 社 と の 徹 底 遮 断 を 求 め て お り 、 明 確 に 判 明 し て い る に も か か わ ら ず 放 置 す る こ と は 行 政 処 分 の 対 象 に も な り か ね な い9。 ま た 、 全 都 道 府 県 で 暴 排 条 例 が 施 行 さ れ た 現 在 で は 、 反 社 排 除 は 社 会 的 要 請 で あ り 、 反 社 と の 取 引 維 持 は 社 会 的 に 許 容 さ れ ず 非 難 の 対 象 と な り う る か ら で あ る 。

そ こ で 、 社 会 的 要 請 並 び に 監 督 要 請 か ら 、 価 値 判 断 と し て は 、 既 存 保 険 契 約 に お い て も 、 属 性 要 件 の み を も っ て 保 険 契 約 を 解 除 す べ き 場 面 が あ り 、 実 際 に 解 除 す べ き と い う 帰 結 が 導 か れ る 。

で は 、 保 険 法 解 釈 上 、 ど の よ う な 解 釈 が そ の 有 効 性 を 担 保 で き る の か 。

⑵ 現 在 約 款 に お け る 有 効 根 拠

ま ず 前 提 た る 現 在 の 約 款 に お け る 「 暴 排 条 項 を 重 大 事 由 解 除 に 位 置 づ け 反 社 属 性 を 有 す る こ と の み を も っ て 解 除 を 可 能 」 と す る こ と の 有 効 根 拠 を 検 討 す る10

属 性 要 件 の み で 保 険 契 約 を 解 除 で き る と い う 見 解 で は 、 保 険 法 の 重 大 事 由 解 除 の 包 括 規 定 で あ る 3 号 に お い て 、 ① 文 言 上 、 行 為 は 要 求 さ れ て お ら ず11、 一 般 に 不 正 な 保 険 取 得 目 的 は 求 め ら れ て お ら ず12、 ② 保 険 契 約 は 射 倖 契 約 か つ 最 大 善 意 契 約 で あ る と こ ろ 暴 力 団 等 の 反 社 は 不 正 請 求 に 関 与

8 属 性 要 件 と は 、 暴 力 団 員 と い っ た 属 性 で あ り 、 行 為 要 件 と は 、 暴 力 的 な 要 求 行 為 や 法 的 な 責 任 を 超 え た 要 求 行 為 で あ る ( 一 弁 民 暴 編 ・ 前 掲 註2)2頁 )。

9 販 売 提 携 ロ ー ン 契 約 に 多 数 の 反 社 と の 取 引 が 存 し た が こ れ に 対 し て 長 期 間 、 不 対 応 で あ っ た こ と 等 を 理 由 と し て 、 平 成25 9月 、 み ず ほ 銀 行 に 業 務 改 善 命 令 が 出 て い る 。

10 大 野 ら ・ 前 掲 註 2)( 下 )40頁 は 、 属 性 を 理 由 と す る 重 大 事 由 解 除 に つ い て は 「 学 説 上 も こ の 点 を 真 正 面 か ら 論 じ た も の が 少 な 」 い と 指 摘 し て い る 。

11 嶋 寺 ・ 前 掲 註 2)838頁 以 下 。

12 山 下 友 信 = 米 山 高 生 編「 保 険 法 解 説 」577頁〔 甘 利 公 人 〕2010年 )、甘 利 公 人 = 福 田 弥 生

「 ポ イ ン ト レ ク チ ャ ー 保 険 法 」34頁 (2011年 ・ 有 斐 閣 )。 こ れ に 対 し 、 勝 野 義 孝 ・ 生 命 保 険 契 約 に お け る 信 義 誠 実 の 原 則454 頁(2002年 ・ 文 眞 堂 )は 、重 複 保 険 の 加 入 に 関 連 し て 、保 険 金 取 得 目 的 を 要 件 と す る 。

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す る 蓋 然 性 は 高 く 、 か つ 、 反 社 排 除 が 社 会 的 要 請 で あ る こ と か ら 、 文 言 上 の「 信 頼 を 損 な い 」「 契 約 の 存 続 を 困 難 」に す る 事 由 に 該 当 し13、③ 反 社 は 保 護 す べ き 弱 者 で は な く 違 法 な 集 団 で あ り 、 か つ 、 保 険 金 が 反 社 の 資 金 源 と さ れ る お そ れ が あ り 保 険 者 の 業 務 の 健 全 性 を 害 す る お そ れ が あ る の で こ れ を 排 除 す る こ と は 大 多 数 の 保 険 契 約 者 に 有 利 と な る か ら 、 契 約 者 保 護 と い う 片 面 的 強 行 規 定 の 趣 旨 に も 反 し な い14、 と い う こ と が 挙 げ ら れ て い る15

上 記 に つ い て は 、 い ず れ も 支 持 す る も の で あ る が 、 ② に つ い て 、 よ り 端 的 に 、 反 社 の 性 質 と 保 険 契 約 の 特 質 の 観 点 か ら 、 そ も そ も 信 頼 関 係 を 構 築 で き ず 信 頼 関 係 が 不 存 在 と い う 点 に 求 め ら れ な い か 。 か く 解 す る こ と が で き れ ば 、 既 存 保 険 契 約 で あ る か 否 か を 問 わ ず 、 属 性 要 件 の み で 解 除 す る と い う こ と の 理 論 の 強 化 に つ な が る と 解 す る 。

⑶ 保 険 契 約 当 事 者 と な っ た 場 合 の 反 社 の 性 質

保 険 契 約 当 事 者 と な っ た 場 合 の 反 社 の 性 質 を そ の 中 心 で あ る 暴 力 団 構 成 員 で 検 討 す る 。

法 令 上 、 暴 力 団 は 、「 そ の 団 体 の 構 成 員 ( そ の 団 体 の 構 成 団 体 の 構 成 員 を 含 む ) が 集 団 的 に 又 は 常 習 的 に 暴 力 的 不 法 行 為 等 を 行 う こ と を 助 長 す る お そ れ が あ る 団 体 」 と 定 義 さ れ16、 判 例 で は 「 そ の 共 通 し た 性 格 は , そ の 団 体 の 威 力 を 利 用 し て 暴 力 団 員 に 資 金 獲 得 活 動 を 行 わ せ て 利 益 の 獲 得 を 追 求 す る と こ ろ に あ る 。」「 暴 力 団 に お い て は ,」「 組 員 は , 組 長 に 対 す る 全 人 格 的 包 括 的 な 服 従 統 制 下 に 置 か れ 」「 暴 力 団 に と っ て , 縄 張 や 威 力 , 威 信 の 維 持 は , そ の 資 金 獲 得 活 動 に 不 可 欠 の も の で あ る か ら , 他 の 暴 力 団 と

13 鈴 木 ・ 前 掲 註 2193867頁 以 下 参 照 、 藤 本 ・ 前 掲 註297頁 以 下 参 照 。

14 鈴 木 ・ 前 掲 註 2)18891頁 。

15 他 方 で 、甘 利 公 人 教 授 は 、属 性 要 件 の み で 重 大 事 由 解 除 を 行 う の は 解 除 権 の 濫 用 で あ る 旨 を 指 摘 さ れ て い る( 共 済 と 保 険 通 巻 66825頁「 日 本 共 済 協 会 平 成 25年 度 第 1回 ・ 第2 共 済 理 論 研 究 会 報 告 要 旨 」)。 ま た 、 宮 根 宏 一 「 片 面 的 強 行 規 定 の 『 趣 旨 』 と の 抵 触 に 関 す る 判 断 と 脱 法 行 為 論 」 保 険 学 雑 誌614 6頁 注 釈12は 、 暴 力 団 と い う 属 性 等 の み で 解 除 に 値 す る 信 頼 関 係 破 壊 が あ っ た と い い う る か 問 題 と な り う る 、 と す る 。

16 暴 力 団 に よ る 不 当 な 行 為 の 防 止 等 に 関 す る 法 律22号 。

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の 間 に 緊 張 対 立 が 生 じ た と き に は , 縄 張 や 威 力 , 威 信 の 維 持 回 復 の た め の 組 織 的 対 応 と し て 暴 力 行 為 を 伴 っ た 対 立 抗 争 が 生 ず る こ と が 不 可 避 で あ る 」 と 認 定 さ れ1718、 警 察 は 「 多 種 多 様 な 資 金 獲 得 活 動 を 行 っ て い る 」「 活 動 実 態 等 の 多 様 化 ・ 不 透 明 化 」 が あ る と 明 ら か に し て い る19

こ れ ら は 、 反 社 で あ る 暴 力 団 員 の 性 質 を 分 析 し た も の で あ る が 、 保 険 契 約 の 一 方 当 事 者 の 性 質 を 考 え る う え に あ た っ て も 当 然 利 用 す る こ と が で き る と 解 す る20

⑷ 保 険 契 約 の 特 質21

保 険 契 約 が 有 す る 射 倖 契 約 性 と は 、 一 方 ま た は 双 方 の 当 事 者 の 契 約 上 の 具 体 的 な 給 付 義 務 が 発 生 す る か 否 か ま た は そ の 大 小 い か ん が 、 偶 然 な 出 来 事 に よ っ て 左 右 さ れ 、 従 っ て 、 当 事 者 の な す 具 体 的 な 給 付 相 互 間 の 均 衡 関 係 が 偶 然 に よ っ て 左 右 さ れ る こ と を い う 。 そ し て 、 射 倖 契 約 に お い て は 、 そ れ が 偶 然 に よ る 不 労 の 利 得 そ の こ と を 目 的 と す る 賭 博 的 行 為 に 悪 用 さ れ る 危 険 が あ る た め 、 こ れ を 防 止 す る 見 地 か ら 特 殊 の 法 則 が 認 め ら れ 、 及 び 偶 然 に よ っ て 事 を 決 す べ き こ と を 本 質 と す る 射 倖 契 約 に お い て は 、 当 事 者 の あ る 種 の 行 態 に よ り こ の 本 質 に 反 す る 結 果 を 生 ず る こ と を 抑 制 す る た め 、 当 事 者 間 の 衡 平 な い し 信 義 誠 実 則 を 特 別 に 強 調 す る 必 要 が 認 め ら れ る 。

そ の 結 果 と し て 、 保 険 契 約 に あ っ て は 契 約 関 係 者 に 特 別 の 善 意 と 信 義 誠 実 が 要 請 さ れ る と い う 特 質 が あ る 。

17 最 判 平 161112日 最 高 裁 民 事 判 例 集58 82078頁 。

18 大 野 ら ・ 前 掲 註 2)( 上 )21頁 で は 、「 近 時 、最 高 裁 を 含 め た 多 く の 裁 判 例 が 、暴 力 団 組 長 の 使 用 者 責 任 ( 民 法 715条 ) の 有 無 を 判 断 す る 前 提 と し て 、 暴 力 団 の 共 通 的 な 性 格 を 精 緻 に 分 析 ・ 判 示 し て い る 」 と す る 。

19 警 察 庁 ・ 平 成25年 の 暴 力 団 情 勢16頁 ・37頁 (2014年 )。

20 大 野 ら ・ 前 掲 註 2)( 上 )22頁 も 、 反 社 と 保 険 契 約 の 危 険 選 択 の 分 析 の 前 提 と し て 、 同 様 の 分 析 を 行 い 、「 こ れ ら は 、立 法 事 実 に 基 づ く 法 令 上 の 定 義 や 、裁 判 所 に よ る 認 定 、警 察 調 査 に 基 づ く 分 析 で あ り 、 危 険 選 択 と い う 観 点 か ら 暴 力 団 な い し 暴 力 団 員 の 特 質 を 類 型 的 に と ら え る 上 で は 、 こ れ ら の 認 定 を 前 提 と し て 検 討 す る こ と で 差 し 支 え が な い 。」 と す る 。

21 以 下 、大 森 忠 夫・保 険 法84頁 以 下・264頁(1952年・有 斐 閣 )。ま た 、勝 野・前 掲 註 12)

77頁 参 照 。

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⑸ 検 討

反 社 の 中 心 と な る 暴 力 団 員 で 検 討 す れ ば 、 集 団 的 に 又 は 常 習 的 に 暴 力 的 不 法 行 為 等 を 行 う こ と を 助 長 す る お そ れ が あ る 団 体 の 構 成 員 が 、 団 体 の 威 力 を 利 用 し て 、 多 様 化 ・ 不 透 明 化 し た 活 動 実 態 の も と で 多 種 多 様 な 資 金 獲 得 活 動 を 行 い 利 益 の 獲 得 を 追 求 し 、 そ の 際 に 、 他 の 団 体 と 緊 張 関 係 が 生 じ れ ば 、 全 人 格 的 包 括 的 な 服 従 統 制 下 の 団 体 の 構 成 員 同 士 が 、 不 可 避 的 に 、 組 織 的 対 応 と し て 暴 力 行 為 を 伴 っ た 対 立 抗 争 を 発 生 せ し め る と い う も の で あ る 。

こ れ で は 、 保 険 契 約 の 相 手 方 に 求 め ら れ る 特 別 の 善 意 と 信 義 誠 実 を 期 待 す る こ と は 到 底 で き な い と 評 価 せ ざ る を え な い 。

そ う す る と 、 保 険 者 は 、 暴 力 団 員 な ど 反 社 に 属 す る 者 に 対 し 、 信 頼 関 係 を そ も そ も 構 築 で き な い 。

し た が っ て 、 両 者 の 間 に は 「 信 頼 を 損 な い 」 以 前 に 「 信 頼 関 係 は 存 在 せ ず 」、「 契 約 の 存 続 は 困 難 」ど こ ろ か「 契 約 の 締 結 か ら し て そ も そ も 不 可 能 」 と い う 帰 結 に な る22

保 険 契 約 の 引 受 時 に 保 険 契 約 者 が 暴 力 団 員 な ど の 反 社 に 属 す る 者 で あ る こ と が 判 明 し た 場 合 、 保 険 者 は 契 約 を 締 結 し な い が 、 監 督 要 請 や 社 会 的 要 請 に 加 え て 、 上 記 の 通 り 、 保 険 契 約 の 特 質 か ら 反 社 に 属 す る 者 と そ も そ も 信 頼 関 係 を 構 築 で き ず 、 契 約 の 締 結 か ら し て そ も そ も 不 可 能 で あ る 点 に 理 論 上 は 求 め る こ と が で き る 。

そ し て 、 契 約 締 結 後 に 、 暴 力 団 員 等 で あ る と い う 反 社 属 性 が 判 明 し た 場 合 は 、 そ も そ も 信 頼 関 係 が 構 築 で き な か っ た に も か か わ ら ず 契 約 を 締 結 し た に す ぎ ず 、 契 約 の 前 提 を 欠 く こ と か ら 、 当 然 に 重 大 事 由 解 除 の 包 括 条 項

22 大 野 ら ・ 前 掲 註 2)( 上 )24頁 は 「 暴 力 団 構 成 員 等 に 、 保 険 契 約 を 維 持 ・ 継 続 す る 上 で 不 可 欠 と さ れ る 『 特 別 の 善 意 と 信 義 誠 実 』 を 要 請 す る こ と は お よ そ 困 難 と い え 、 保 険 契 約 を 締 結 す る 上 で の 重 要 な 前 提 を 欠 く 」と し 、大 野 ら ・ 前 掲 註2)( 下 )40頁 で は「 暴 力 団 構 成 員 等 に と っ て 偶 然 に よ る 不 法 の 利 得 そ の こ と を 目 的 と す る 賭 博 的 行 為 に 悪 用 す る こ と の で き る 保 険 契 約 は 格 好 の タ ー ゲ ッ ト で あ り 、 保 険 加 入 動 機 に 不 純 な 目 的 が 混 入 し や す く 、 逆 選 択 の 心 理 も 働 き や す い 。 か よ う な 暴 力 団 構 成 員 等 と の 間 に は 、 保 険 制 度 の 本 来 的 要 請 で あ る 「 特 別 の 善 意 と 信 義 誠 実 」 は お ろ か 、 通 常 の 信 頼 関 係 を 構 築 す る こ と 自 体 が そ も そ も 困 難 で あ る 」 と す る 。

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7 の 適 用 が あ る23

⑹ 既 存 保 険 契 約 に つ い て の 帰 結

以 上 の 通 り 、 反 社 に 属 す る 者 と は 、 高 度 な 信 義 誠 実 と 最 大 善 意 が 求 め ら れ る 保 険 契 約 の 特 質 上 、 信 頼 関 係 を 構 築 で き ず 、 こ れ ら の 者 と 保 険 者 と の 間 に は 信 頼 関 係 が 存 し な い と 考 え る こ と が で き る 。

そ し て 、 既 存 保 険 契 約 の 保 険 契 約 者 が 反 社 に 属 す る こ と が 明 確 に 判 明 し た 場 合 、 保 険 者 は 契 約 を 解 除 す る 必 要 に 迫 ら れ る が 、 そ の 理 論 は 、 か か る 保 険 契 約 者 と の 間 に は 「 信 頼 関 係 が 構 築 で き な い 結 果 、 信 頼 関 係 は 完 全 に 喪 失 」し 、「 契 約 の 締 結 か ら し て そ も そ も 不 可 能 で あ っ た の で 、当 然 、契 約 の 存 続 は 困 難 」 と い う こ と に な る 。

契 約 当 事 者 間 の 信 頼 関 係 は 、 社 会 規 範 の 変 化 と と も に 変 容 し う る と さ れ る24。 そ う だ と す れ ば 、 保 険 契 約 は 上 記 の 通 り 、 高 度 な 信 義 誠 実 と 最 大 善 意 が 求 め ら れ る 結 果 、 社 会 規 範 の 変 化 に は 敏 感 に な ら ざ る を え な い 。

政 府 指 針 か ら 始 ま っ た 徹 底 的 な 遮 断 を も と め る 反 社 排 除 の 動 き は 価 値 観 ・ 規 範 の 転 換 で あ る25

そ し て 、 信 頼 関 係 を 破 壊 す る 事 由 や 契 約 存 続 を 困 難 な ら し め る 事 由 に つ い て は 、 重 大 事 由 解 除 の 遡 及 適 用 が 可 能 な も の と し て 、 保 険 法 も 許 容 し て

23 榊 ・ 前 掲 註 2)177頁 は 、 属 性 要 件 の み で 解 除 事 由 と す る 暴 排 条 項 の 有 効 性 の 説 明 の 一 つ と し て 、「 反 社 会 的 勢 力 に 該 当 す る 者 は 、1 号 や 2 号 に 直 接 に 匹 敵 す る 事 項 で あ る と い う よ り は 、 保 険 者 が 信 頼 関 係 を 形 成 す る 意 図 を 一 切 有 さ ず 保 険 契 約 を 締 結 す る こ と も な い 者 に 該 当 す る こ と を 意 味 す る の で あ る か ら 、 そ も そ も 保 険 者 と の 間 に 信 頼 関 係 を 形 成 す る こ と は で き な い 立 場 に あ る 。 そ の た め 、 反 社 会 的 勢 力 該 当 は 、 契 約 締 結 当 初 か ら 該 当 し て い た に せ よ 、 契 約 締 結 後 に 該 当 す る に 至 っ た に せ よ 、 信 頼 関 係 破 壊 そ の も の で は な い け れ ど も 、 契 約 を 存 続 さ せ る 前 提 で あ る 信 頼 関 係 の 不 存 在 に な る 点 が 共 通 す る こ と を 理 由 に 、 包 括 条 項 に 該 当 す る と い う 説 明 が 考 え ら れ る 」 と す る 。

な お 、藤 本 ・ 前 掲 註 2100頁 註 36)は 、属 性 要 件 の み で の 解 除 を 認 め る こ と は 、「 将 来 に お い て 保 険 金 の 不 正 取 得 に 手 を 染 め る 可 能 性 が 高 い 集 団 に 属 す る 者 を 3 号 に 基 づ き 排 除 す る こ と を 可 能 と す る こ と に つ な が る 考 え 方 と い え よ う 。 保 険 約 款 へ の 暴 排 条 項 導 入 の 許 容 は 、 3 号 に よ る 重 大 事 由 解 除 の 適 用 領 域 を 拡 張 す る 契 機 を 有 し て い る の で は な い か と 思 わ れ る 。」

と す る 。

24 一 弁 民 暴 編 ・ 前 掲 註 2)91頁 は 、「 政 府 指 針 の 公 表 後 、 反 社 排 除 の 動 き が 進 展 し 、 暴 排 条 項 が 重 大 事 由 解 除 の 具 体 化 と し て 盛 り 込 ま れ る こ と に な っ た こ と か ら も わ か る と お り 、 何 が 信 頼 関 係 を 破 壊 し 、 保 険 契 約 の 存 続 を 困 難 に す る の か は 、 社 会 規 範 の 変 化 と と も に 変 容 し う る 」 と し て い る 。

25 大 野 ら ・ 前 掲 註 2)( 上 )19頁 も 「 パ ラ ダ イ ム 転 換 の 理 解 は き わ め て 重 要 」 と し て い る 。

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8 い る 。

従 っ て 、 既 存 保 険 契 約 に お い て も 属 性 の み で 解 除 で き る と 解 す る こ と が 理 論 的 帰 結 で あ る 。

3 実 務 上 の 問 題

上 記 の 通 り 、 既 存 保 険 契 約 に つ い て 、 属 性 と し て の 反 社 性 が 明 確 に 判 明 し た 場 合 は 、 重 大 事 由 解 除 を 行 う こ と は 理 論 的 に は 妨 げ に な ら ず 、 ま た 、 監 督 要 請 や 社 会 的 要 請 か ら 、 保 険 者 は 、 契 約 の 解 除 を せ ま ら れ る こ と に な る 。 し か し な が ら 、 反 社 属 性 の 判 断 に つ い て は 、 警 察 へ の 照 会 及 び そ の 情 報 開

示 が 重 要 と な る が 、 現 状 で は 、 警 察 の 情 報 開 示 は 、 暴 排 条 項 導 入 義 務 を 前 提 に 開 示 が な さ れ る た め 既 存 契 約 に お い て は 情 報 の 提 供 が 不 十 分 と な る 可 能 性 が 指 摘 さ れ て い る26

従 っ て 、 属 性 と し て 反 社 性 が 明 確 に 判 明 し た 場 合 は 格 別 、 そ う で な い 場 合 は 、 立 証 で き る だ け の 属 性 状 況 に 加 え て 、 行 為 状 況 を 加 味 し た 総 合 考 慮 を す べ き で あ る2728

解 除 権 の 濫 用 と の 評 価 に 該 当 し な い た め に 、 立 証 の 可 否 を 中 心 に 外 部 の 専 門 家 ( 弁 護 士 等 ) と も 協 議 を し た う え で 、 立 証 で き な い と 合 理 的 に 判 断 さ れ る 場 合 は 、 解 除 を し な い と い う 選 択 も 許 容 さ れ る と 考 え る 。

26 藤 本 ・ 前 掲 註2)106頁 、 藤 本 ・ 前 掲 註 4)27頁 以 下 。 但 し 、 右 文 献 で 指 摘 さ れ て い る 平 231222日 付 警 察 庁 通 達 「 暴 力 団 排 除 等 の た め の 部 外 へ の 情 報 提 供 」 は 、 現 在 で は 廃 止 さ れ 、 新 し く 平 成251219日 付 警 察 庁 通 達 「 暴 力 団 排 除 等 の た め の 部 外 へ の 情 報 提 供 」 が 発 令 さ れ て お り 、 今 後 は 、 当 該 通 達 に 基 づ き よ り 積 極 的 な 情 報 開 示 が 期 待 さ れ る 。

27 鈴 木 ・ 前 掲 註2)193869頁 参 照 。

28 こ の 点 に 関 し て 、 東 京 地 裁 平2412 14日 判 決竹 内 朗 「 証 券 会 社 が 暴 利 力 段 関 係 者 と の 証 券 取 引 を 解 約 し た 事 例 」別 冊 金 融 商 事 判 例・反 社 会 的 勢 力 を 巡 る 判 例 の 分 析 と 展 開 107 頁 (2014年 )) が あ る 。 当 該 裁 判 例 は 、 右 文 献 が 指 摘 す る 通 り 「 グ レ ー ゾ ー ン に 位 置 づ け ら れ る 『 暴 力 団 関 係 者 』 と の 取 引 を 解 約 」 し た 事 例 で 、 属 性 要 件 に 関 す る 警 察 情 報 に 依 拠 す る こ と な く 立 証 に 成 功 し た 事 例 で あ る 。 当 該 裁 判 例 の 事 例 は 証 券 業 界 の 事 例 で あ る が 、 反 社 の 主 張 立 証 自 体 の 方 法 は 、 保 険 業 界 に お け る 重 大 事 由 解 除 に お け る 反 社 の 主 張 立 証 と 共 通 性 を 有 す る の で 、 参 考 と な る 。

(9)

9

第 3 表 明 確 約 に つ い て

1 実 務 的 取 り 扱 い

反 社 排 除 に お い て は 、 契 約 時 に 、「 暴 力 団 関 係 者 で な い こ と の 誓 約 書 」( 以 下 、「 表 明 確 約 書 」 と い う 。) を 取 得 す る こ と が 多 い 。

保 険 業 界 と 同 じ 金 融 業 界 で 比 較 す る と 、 銀 行 業 界 と 証 券 業 界 で は 、 取 引 開 始 時 に 、 顧 客 が 反 社 会 的 勢 力 で な い こ と 等 に つ い て 、 顧 客 か ら 表 明 ・ 確 約 さ せ る 手 続 を 行 っ て い る 。

こ の 点 、 保 険 業 界 で は 、 生 命 保 険 の 銀 行 窓 口 販 売 を 除 き 、 表 明 確 約 書 の 徴 取 は な さ れ て い な い の が 実 情 で あ る と 理 解 す る29

他 方 で 、契 約 時 に 顧 客 に 交 付 す る 注 意 喚 起 情 報 と 契 約 の し お り に は 、「 保 険 金 等 を お 支 払 で き な い 場 合 」の 1 つ と し て 、「 保 険 金 等 を 詐 取 す る 目 的 で 事 故 を 招 い た と き や 、 契 約 者 、 被 保 険 者 ま た は 保 険 金 等 の 受 取 人 が 、 暴 力 団 関 係 者 、 そ の 他 の 反 社 会 的 勢 力 に 該 当 す る と 認 め ら れ た と き 等 、 重 大 事 由 に よ り ご 契 約 が 解 除 さ れ た 場 合 」 が 印 刷 の 色 を 変 え て 強 調 し て 記 載 さ れ て い る30。 ま た 、 上 記 の 通 り 約 款 に は 暴 排 条 項 が 記 載 さ れ て い る 。

2 保 険 契 約 法 理 と の 間 の 問 題 点

こ の 点 、 保 険 契 約 法 理 と の 間 の 問 題 点 と し て 、 こ れ ま で の 議 論 の 中 で は 、 重 大 事 由 解 除 の 濫 用 と の 関 係 、 詐 欺 取 り 消 し ( 詐 欺 無 効 ) と の 関 係 が 挙 げ ら れ て い る 。

⑴ 前 者 に つ い て は 、「 表 明 保 証 さ せ る 手 続 を 履 践 す る こ と に よ り 、虚 偽 申 告 が 判 明 し た 場 合 に は 重 大 事 由 該 当 性 の 根 拠 を 補 強 す る と こ ろ と な り 、 暴 排 条 項 の 裁 判 規 範 と し て の 機 能 を 高 め る こ と が で き よ う 。」 と 指 摘 さ れ て い る31

も っ と も 、 上 記 の 通 り 反 社 と は 、 信 頼 関 係 が 構 築 で き ず 信 頼 関 係 の 不 存

29 但 し 、 確 認 で き た と こ ろ で は 、 損 害 保 険 会 社 の う ち イ ン タ ー ネ ッ ト で 申 込 み を 行 う 自 動 車 保 険 で は 申 込 前 の 確 認 事 項 と し て 羅 列 さ れ た 項 目 の 一 つ に 、 大 要 「 契 約 者 が 反 社 で な い 旨 」 の 記 載 が あ り 、 次 の 画 面 に 進 む た め に は 画 面 上 の 確 認 ボ タ ン を 選 択 す る 必 要 が あ る 。

30 大 手 生 命 保 険 会 社 に お け る 一 時 払 終 身 ・ 養 老 ・ 年 金 保 険 約 款 の 場 合 な ど 。

31 鈴 木 ・ 前 掲 註2)1889 1頁 。

(10)

10

在 で あ り 契 約 締 結 は 不 可 能 で あ る こ と か ら 契 約 が で き な い こ と が 理 論 的 な 帰 結 で あ り 、 か く 解 す れ ば 、 必 ず し も 既 に 存 在 し た 信 頼 の 破 壊 と い う 点 に 焦 点 が 向 け ら れ て い る わ け で は な い こ と 、 現 状 の 実 務 で も 、 保 険 業 界 と 各 社 が 反 社 排 除 を 公 言 し そ の 態 勢 を 構 築 し て い る こ と が 周 知 で あ り 、 か つ 、 上 記 の 通 り 、 約 款 に 記 載 が あ る ほ か 、 同 様 に 記 載 が あ る 注 意 喚 起 情 報 と 契 約 の し お り に つ い て は 受 領 署 名 を 取 得 し て い る こ と な ど か ら す れ ば 、 表 明 確 約 取 得 し て い な い こ と は 、 約 款 の 裁 判 規 範 性 に は 影 響 を 与 え な い も の と 理 解 す る 。

⑵ 後 者 に つ い て い え ば 、 暴 力 団 構 成 員 等 の 拠 点 と し て 用 い る 意 図 を 秘 し て 建 物 賃 貸 借 契 約 を 締 結 し た ケ ー ス ( 刑 法 上 の 詐 欺 罪 の 成 否 該 当 性 が 問 題 に な っ た ケ ー ス ) を あ げ 、「 こ の 事 例 で は 、 暴 排 条 項 の 存 在 の み な ら ず 暴 力 団 構 成 員 等 と の 契 約 を 拒 否 す る 貸 主 の 意 思 が 契 約 段 階 で 相 手 方 に 伝 わ っ て い る こ と が 詐 欺 を 認 定 す る 上 で の 重 要 な フ ァ ク タ ー と さ れ て い る 」 こ と か ら 、「 注 意 喚 起 情 報 等 、 重 要 事 項 説 明 書 面 の 何 に 、 暴 力 団 構 成 員 等 の 保 険 契 約 申 込 み は 引 き 受 け ら れ な い 旨 の 記 載 」 を す る こ と が 指 摘 さ れ て い る

32

確 か に 、 刑 法 上 の 問 題 で は 、 暴 力 団 員 で あ る こ と を 秘 し て ゴ ル フ 場 を 利 用 し た 行 為 に 詐 欺 罪 が 成 立 す る か 否 か に つ い て 、 最 高 裁 は 平 成 26年 3月 28日 に 3 つ の 事 案 に つ い て 判 旨 を 行 い 、有 罪( 長 野 県 の 1 例 )と 無 罪( 宮 崎 県 2 例 ) の 異 な る 判 断 を 行 っ て い る と こ ろ 、 ゴ ル フ 場 が 属 す る 県 の 業 界 の 姿 勢 に 加 え て 、 暴 力 団 関 係 者 で は な い こ と を 保 証 す る 誓 約 書 を 取 得 し て い る か ど う か が 判 断 を 分 け て い る 。

こ れ ら は い ず れ も 刑 法 上 の 詐 欺 罪 該 当 性 の 事 案 で あ る が 、 欺 罔 行 為 の 認 定 の 判 断 ス キ ー ム に お い て は 民 事 で も 参 考 に さ れ る 可 能 性 が あ る の で 、 保 険 契 約 に お い て も 、 詐 欺 取 消 ( 詐 欺 無 効 ) と の 関 係 に お い て 、 少 な く て も 上 述 の よ う な 記 載 を す る こ と は 検 討 の 余 地 は あ る も の と 理 解 す る 。

32 大 野 ら ・ 前 掲 註 2)( 下 )38頁 ・39頁 。

(11)

11

ま た 、「 保 険 募 集 時 の 表 示 の 内 容 は 、」「 あ ら ゆ る 関 係 遮 断 法 理 を 補 強・補 充 す る 間 接 事 実 と な る の で あ る か ら 、 保 険 会 社 は 募 集 資 材 等 ( パ ン フ レ ッ ト 、 注 意 喚 起 情 報 、 申 込 書 、 各 種 保 全 移 動 帳 票 等 ) 上 に 『 保 険 契 約 者 、 被 保 険 者 、 又 は 受 取 人 が 反 社 会 的 勢 力 に 該 当 す る 場 合 、 契 約 の お 申 込 み を お 断 り し ま す 」 と い っ た 旨 を 明 記 す る な ど 、 表 示 の 強 化 に 今 後 も 継 続 的 に 取 り 組 む べ き で あ る 。」と の 指 摘 も あ り33、表 明 確 約 書 の 取 得 の 問 題 は 措 い て も 、 表 示 の 強 化 の 検 討 に は 、 実 務 的 視 点 か ら は 歓 迎 す べ き も の と 考 え る 。

第 4 抗 争 状 態 下 で の 反 社 会 的 勢 力 の 排 除 に つ い て 1 は じ め に

激 し い 対 立 抗 争 を 繰 り 広 げ て い た 指 定 暴 力 団 体 の 組 幹 部 で あ る 被 共 済 者 が 殺 害 さ れ た 事 案 で 、 共 済 者 が 錯 誤 無 効 ・ 公 序 良 俗 無 効 ・ 私 闘 免 責 を 主 張 し た と こ ろ い ず れ も 排 斥 さ れ 請 求 が 認 容 さ れ た 裁 判 例 が あ る34

同 事 案 の 詳 細 ・ 評 価 に つ い て は 先 行 評 釈35に 詳 し い が 、 本 事 案 は 、 暴 排 条 項 導 入 前 の 既 存 契 約 で あ っ た 。 か か る 既 存 保 険 契 約 で は 、 反 社 の 排 除 と い う 観 点 か ら は 、 上 記 の 通 り 、 保 険 法 の 重 大 事 由 解 除 の 遡 及 適 用 の ほ か 、 本 事 案 の よ う な 主 張 が 考 え ら れ る の で 、 こ れ ら の 点 の う ち い く つ か に つ い て 検 討 す る 。

2 錯 誤 無 効

36

反 社 と の 関 係 で 錯 誤 無 効 ( 民 法 96条 ) が 認 め ら れ た 保 険 契 約 の 裁 判 例 は

33 大 野 徹 也「 契 約 者 が 暴 力 団 員 で あ る こ と を 理 由 と す る 生 命 共 済 契 約 の 錯 誤 無 効 が 認 め ら れ な か っ た 事 例 」別 冊 金 融 商 事 判 例・反 社 会 的 勢 力 を 巡 る 判 例 の 分 析 と 展 開107 頁(2014年 )。

34 福 岡 地 判 平 261 16日 金 融 ・ 商 事 判 例1438 36頁 ( 控 訴 審 も 一 審 を 維 持 )。

35 先 行 評 釈 と し て は 、金 融 ・ 商 事 判 例143836頁 、大 野 ・ 前 掲 註 31)、藤 本 和 也「 共 済 契 約 締 結 後 に 契 約 者 が 暴 力 団 幹 部 で あ る と 判 明 し た 場 合 に お け る 共 済 金 請 求 の 可 否 」 共 済 と 保 険 通 巻 679号 掲 載 予 定 ・ 頁 数 未 定 (2014年 ) が あ る 。

36 民 法 96条 は 、 法 律 行 為 の 要 素 に つ き 錯 誤 が あ っ た 場 合 は 当 該 法 律 行 為 は 無 効 と す る 。 要 素 の 錯 誤 と は 、 表 意 者 が そ の 真 意 で な い こ と を 知 っ て い れ ば 意 思 表 示 を せ ず 、 か つ 、 通 常 人 で あ っ て も 意 思 表 示 を し な い 場 合 を い う 。 但 し 、 法 律 行 為 の 動 機 に 錯 誤 が あ る に す ぎ な い 場 合 は そ の 動 機 が 明 示 又 は 黙 示 に 表 示 さ れ る 必 要 が あ る( 最 判 昭 45 529日 判 時 59855 頁 等 )。

(12)

12 未 だ な い も の と 考 え る 。

従 っ て 、 保 険 契 約 の 錯 誤 無 効 を 主 張 す る に 際 し 、 実 務 的 視 点 で は 、 何 が メ ル ク マ ー ル に な る の か に つ い て は 、 錯 誤 無 効 が 認 め ら れ た 他 の 民 事 契 約 の 例 を 参 考 に 、 そ れ を 保 険 契 約 法 理 に 引 き 直 す 必 要 が あ る 。

⑴ 契 約 の 相 手 方 が 暴 力 団 員 の 場 合

「( 結 婚 式 ・ 披 露 宴 の ) ホ テ ル 利 用 契 約 は 要 素 の 錯 誤 に よ り 無 効 で あ る と さ れ た 事 例 」 で は37、 ① 暴 力 団 員 の 多 数 参 加 に よ る ト ラ ブ ル 、 他 の 客 の キ ャ ン セ ル 、 関 わ り を 避 け る べ き と い う 最 近 の 社 会 情 勢 か ら 、 当 該 ホ テ ル の 信 用 失 墜 に つ な が り 不 利 益 が 大 き い か ら 、 暴 力 団 員 か ど う か は 、 ホ テ ル 側 に と っ て 、 契 約 を す る か ど う か を 判 断 す る 上 で 重 要 な 事 項 で あ る こ と 、

② か く 解 し て も 、 契 約 当 時 の 社 会 情 勢 か ら み て 、 被 告 の 内 部 に お い て 規 約 が あ る だ け で な く 、 例 え ば 、 社 団 法 人 日 本 ブ ラ イ ダ ル 事 業 振 興 協 会 の モ デ ル 約 款 に も 上 記 規 約 と 同 旨 の 規 定 が あ る な ど 一 般 的 に も 予 測 可 能 、 と い う 点 が 挙 げ ら れ て い る 。

⑵ 契 約 の 相 手 方 が 密 接 交 際 者 の 場 合

「 ゼ ネ コ ン の 住 宅 建 設 請 負 工 事 契 約 が 動 機 の 錯 誤 に よ り 無 効 で あ る と さ れ た 事 例 」 で は38、 ③ 契 約 当 時 、 国 、 地 方 公 共 団 体 、 企 業 は 、 暴 力 団 だ け で な く 密 接 交 際 者 を も 取 引 か ら 排 除 す る 取 り 組 み を 実 施 し て い た 、 ④ こ れ を 受 け 、 契 約 当 事 者 で あ る ゼ ネ コ ン も 反 社 と の 関 係 遮 断 や 一 切 取 引 し な い こ と を 取 締 役 会 で 決 議 し 対 外 的 に 宣 言 し て い た 、 ⑤ ゼ ネ コ ン が 暴 力 団 と の 関 係 を た ず ね 、 契 約 の 相 手 方 は そ れ を 否 定 す る 発 言 を し て い る こ と 、 と い う 点 が 挙 げ ら れ て い る 。

37 広 島 地 判 平 22 413日 判 時 214558頁 。

38 東 京 地 判 平 24 12 21日 金 判 142148頁 。

(13)

13

⑶ 以 上 の 裁 判 例39を 保 険 契 約 法 理 に 引 き 直 す と 次 の 点 を 指 摘 で き る 。 ① に つ い て は 、暴 力 団 員 を 中 心 と し た 反 社 が 契 約 の 当 事 者 と な る こ と が 、

保 険 契 約 上 、 契 約 を す る か ど う か を 判 断 す る 上 で 極 め て 重 要 な 事 項 で あ る こ と を 詳 細 に 述 べ る 必 要 が あ る 。

す な わ ち 、 上 記 の 通 り 、 保 険 契 約 の 射 倖 契 約 性 か ら 高 度 の 信 義 誠 実 と 最 大 善 意 が 求 め ら れ る 保 険 契 約 で は 、 反 社 と は 、 信 頼 関 係 が 構 築 で き ず 、 か つ 契 約 締 結 が 不 可 能 で あ る こ と が 主 張 で き る 。 ま た 、 危 険 選 択 と い う 観 点 か ら も 、 暴 力 団 構 成 員 等 は 、 そ の 道 徳 的 危 険 ・ 実 態 的 危 険 は い ず れ も 著 し く 高 く 、 暴 力 団 構 成 員 等 の 危 険 を 被 保 険 者 集 団 全 体 で 負 担 す べ き も の で は な い40、 と い っ た 点 を 主 張 す る 必 要 が あ る 。

② な い し ④ に つ い て は 、 契 約 当 時 に お い て 、 保 険 業 界 の 反 社 に 対 す る 排 除 姿 勢 を ガ イ ド ラ イ ン や 宣 言 で 構 築 し 公 開 し て い る か 、 当 該 社 に お い て も 同 様 に ガ イ ド ラ イ ン を 設 け 反 社 排 除 の 姿 勢 を 対 外 的 に 鮮 明 に し て い る か を 主 張 す る 必 要 が あ る 。

⑤ に つ い て は 、 当 該 個 別 の 契 約 の 相 手 方 に つ い て 、 保 険 契 約 に お い て 、 契 約 時 、 ② な い し ④ の 事 情 と 密 接 に 合 わ さ っ て 、 反 社 と は 契 約 を 引 受 ・ 維 持 で き な い 旨 が 相 手 方 に 伝 わ っ て い る か 具 体 的 に 主 張 す る 必 要 が あ る 。 錯 誤 無 効 に つ い て は 、 要 素 の 錯 誤 又 は 動 機 の 錯 誤 の 認 定 に つ い て 、 以 上

の メ ル ク マ ー ル を 主 張 す る こ と に な る 。

3 私 闘 免 責

41

39 こ の ほ か 、主 債 務 者 が 反 社 で あ っ た 場 合 の 信 用 保 証 契 約 が 錯 誤 に 該 当 す る か 否 か の 裁 判 例 は 多 数 あ る が 、こ れ ら の 事 案 で は 、既 に 融 資 を し た 後 に 、誰 が 回 収 す る の か の 問 題 に つ い て 、 保 証 し た 信 用 保 証 協 会 と 融 資 を 行 っ た 金 融 機 関 の 争 い の 場 面 で あ り 、 直 接 に 契 約 関 係 か ら 排 除 す る 場 面 で は な い の で 、 と り あ げ な い こ と と し た ( 荒 井 隆 男 「 主 債 務 者 が 暴 力 団 関 係 企 業 で あ る こ と を 理 由 と す る 保 証 契 約 の 錯 誤 無 効 が 認 め ら れ な か っ た 事 例 」 別 冊 金 融 商 事 判 例 ・ 反 社 会 的 勢 力 を 巡 る 判 例 の 分 析 と 展 開98頁 (2014年 ) 参 考 )。

40 大 野 ら ・ 前 掲 註 2)( 上 )23頁 。 同 論 文 は 、 暴 力 団 構 成 員 等 を 中 心 と し た 反 社 に つ い て の 生 命 保 険 契 約 に お け る 「 危 険 」 を 様 々 な 角 度 か ら 詳 細 に 分 析 し て い る 。

41 保 険 法 で は 犯 罪 行 為 免 責 は 削 除 さ れ て い る 。 こ れ は 、「 ど の よ う な 犯 罪 行 為 が 免 責 の 対 象 と な る の か が 必 ず し も 明 ら か で な い 」 等 が 理 由 に あ げ ら れ て い る ( 萩 本 修 ・ 一 問 一 答 保 険 法

2009年 ・ 商 事 法 務 )。 し か し 、 生 命 保 険 契 約 を 中 心 に 旧 商 法 の 適 用 が あ る 既 存 保 険 契 約 は 多 く 、 ま た 、 約 款 に 記 載 の あ る 契 約 に お い て は そ の 適 用 を 妨 げ な い 。

(14)

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旧 商 法 は 、「 決 闘 そ の 他 の 犯 罪 に 因 り て 死 亡 し た と き 」を 法 定 免 責 条 項 と し て い た が ( 改 正 前 商 法 680条 1 項 1号 )、 そ の 趣 旨 は 、 遺 族 等 に 保 険 金 を 残 し 安 易 に 犯 罪 に 走 る こ と を 防 止 す る 趣 旨 に あ る と さ れ る42

通 常 の 決 闘 そ の 他 の 犯 罪 の 場 合 で は 、 本 免 責 条 項 の 適 用 に お い て は 、 被 保 険 者 の 加 害 行 為 が 必 要 だ と 考 え ら れ 、上 記 裁 判 例( 註 釈 34の 裁 判 例 )で も 、 そ の 旨 が 指 摘 さ れ て い る 。

し か し な が ら 、 上 記 裁 判 例 の 事 案 の よ う な 対 立 抗 争 下 に お け る 組 幹 部 殺 害 の 場 合 で も 同 様 に 解 す べ き か 、 な お 検 討 す べ き 余 地 が あ る も の と 解 す る 。

す な わ ち 、 対 立 抗 争 下 で は 、 襲 撃 と 報 復 の 連 鎖 が 続 く こ と が 一 般 的 で あ る と い え る 。 襲 撃 や 報 復 は 、 対 立 目 標 の 隙 を 狙 い 機 会 を う か が っ て な さ れ る の だ か ら 、 時 間 的 近 接 性 に 欠 け る の は 当 然 の 前 提 と な る 。

し た が っ て 、 抗 争 状 態 下 で は 、 ひ と つ の 場 面 を 切 り 取 る こ と に あ ま り 意 味 を も た な い の で は な か ろ う か 。

そ し て 、「 組 織 的 対 応 と し て 暴 力 行 為 を 伴 う 」( 上 記 判 例 参 照 ) の が 対 立 抗 争 で あ り 、 そ の 状 況 下 で は 、 全 人 格 的 包 括 的 な 服 従 統 制 下 ( 同 判 例 参 照 ) に お い て い る 組 長 以 下 の 組 幹 部 の 指 揮 号 令 の も と 構 成 員 は い つ で も 、 暴 力 行 為 を 伴 う 加 害 行 為 を す る こ と に つ な が り 、 他 方 で 、 対 立 組 織 か ら は 、 組 幹 部 か ら 構 成 員 ま で 同 様 の 行 為 を 受 け る 状 況 下 に あ る 。

従 っ て 、 抗 争 状 態 下 に お い て は 、 抗 争 と い う 一 連 の 行 為 を 全 体 的 に 観 察 す る 必 要 が あ り 、 抗 争 下 の 暴 力 団 か ら 脱 し た な ど の 特 段 の 事 情 が な い 限 り 、 暴 力 的 な 加 害 行 為 の 連 鎖 が 、 対 立 暴 力 団 同 士 の 構 成 員 間 に お い て 継 続 し て い る と 考 え る 余 地 が あ る も の と 解 す る43

他 方 で 、 現 行 約 款 で は 、 災 害 特 約 等 に 犯 罪 行 為 免 責 が 規 定 さ れ て い る が 、 本 文 記 載 の 通 り 抗 争 状 態 下 で の 適 用 を 明 確 に す る た め に も 約 款 を よ り 具 体 的 に す る 余 地 は あ る も の と 考 え る

( 藤 本 ・ 前 掲 註 33) 頁 数 未 定 も 同 旨 )。

42 西 島 梅 治 ・ 保 険 法 ( 第3版 )363頁 (1998年 ・ 悠 々 社 ) 参 照 。

43 大 野・前 掲 註 31)107頁 も「 犯 罪 免 責 の 趣 旨 に 照 ら し 、そ の 対 立 抗 争 全 体 を『 決 闘 な ど の 犯 罪 行 為 に 準 ず る 闘 争 行 為 』 と 捉 え て 、 本 件 免 責 事 由 の 適 用 を 検 討 す る と い う 考 え 方 を 採 る 余 地 が な い わ け で は な さ そ う で あ る 」 と す る 。

藤 本 ・ 前 掲 註33) 頁 数 未 定 は 、 本 文 の 裁 判 例 の 事 案 で 、「『 私 闘 』 に よ り 死 亡 し た と 認 定 す る 余 地 も 十 分 に あ り 得 た の で は な い か 」と 指 摘 す る 。ま た 、暴 力 団 の 対 立 抗 争 の 性 質 に つ き 、

「 お 互 い に 構 成 員 の 誰 が 命 を 狙 わ れ る の か 明 ら か に な っ て い る 場 合 ば か り で は な い だ ろ う 。

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15

対 立 抗 争 は 、 発 砲 等 で 一 般 人 を も 巻 き 込 む こ と か ら 強 い 反 社 会 性 が 認 め ら れ る べ き で あ り 、 遺 族 等 に 保 険 金 が 残 る こ と か ら 安 易 に 一 般 人 を も 巻 き 込 む 対 立 抗 争 が 惹 起 さ れ る の で あ れ ば 社 会 秩 序 の 観 点 か ら 問 題 で あ ろ う 。

通 常 の 犯 罪 行 為 と 、 対 立 抗 争 下 と い う 極 め て 特 殊 な 状 況 下 の 犯 罪 行 為 を 同 様 の 法 解 釈 の 視 点 で 臨 む こ と は 、 本 免 責 条 項 の 趣 旨 を 没 却 し か ね ず 妥 当 性 に 欠 け る の で は な い か 危 惧 す る も の で あ る 。

加 害 行 為 を 行 っ て い た 者 が 報 復 を う け る こ と も あ れ ば 、 加 害 行 為 を 行 っ て い な い 者 が 突 然 狙 わ れ る こ と も あ る だ ろ う 。」 と し た う え で 、「 私 闘 」 の 解 釈 に つ き 、「 本 件 判 決 は 、『 私 闘 』 が

『 誰 が 狙 わ れ る か 分 か ら な い 暴 力 団 の 対 立 抗 争 』 を 含 む 趣 旨 で あ る の か 否 か を 明 ら か に し た 上 で 判 断 す べ き で あ っ た 」 と 指 摘 す る 。

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