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高等植物のペクチン生合成および分解に関与する糖質関連酵素群

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454 化学と生物 Vol. 55, No. 7, 2017

高等植物のペクチン生合成および分解に関与する糖質関連酵素群

高等植物におけるペクチン合成および分解メカニズム解明の夜明け

ペクチンは高等植物のみに見られる酸性多糖類の総称 であり,レモンやオレンジなどの柑橘類の皮およびトマ トやリンゴなどの果実より熱水やキレート剤によって抽 出される.ペクチンは細胞分裂の最初に合成される一次 細胞壁および隣接する細胞間の薄い層である細胞間層

(または中葉)に存在し,細胞壁の基本骨格を担うセル ロース微小繊維間の隙間を埋めるマトリックス多糖,お よび細胞接着に関与している.ペクチンは,ガラクトー スの6位のヒドロキシメチル基がカルボキシル基にまで 酸化されたD-ガラクツロン酸(GalUA)を主要構成成分 としている.ペクチンの化学構造は古くから解析が進ん でおり,ホモガラクツロナン(HG),ラムノガラクツロ ナン-I(RG-I),ラムノガラクツロナン-II(RG-II)の3 つの構造領域に分類されることが知られている(1)

HGはペクチンの中で最も多量に含まれる構造で全ペ クチンの60%以上を占めている.HGは

α

1,4-結合したポ リガラクツロン酸を主骨格とし,6位のカルボキシル基 の約80%がメチルエステル化,2および3位の水酸基の 約10%がアセチル化修飾を受けている.また,

β

-1,3-D- キシロース(

β

-1,3-Xyl)修飾を受けたHGも存在しキシ ロガラクツロナンと呼ばれている.水棲植物特異的に,

水田やため池などで見られる浮草( )や海草 の一種である甘藻(アマモ, )などにおい て,HGの2位にD-アピオース(Api)が

β

-結合したアピ オガラクツロナンが見られる.

RG-IはL-ラムノース(Rha, 6-デオキシ-L-マンノース)

とGalUAの二糖繰り返し構造([4-GalUA

α

1,2-Rha

α

1-])

を主骨格に有し,主要成分として

α

-L-アラビノースや

β

-D-ガラクトース(Gal)から,また植物種によっては 微量成分として

α

-L-フコース(Fuc)や

β

-D-グルクロン 酸からなる側鎖が[4-GalUA

α

1,2-Rha

α

1-]内のRha残基 の4位に結合している.水分を吸収した種子が分泌する ムシゲルにもRG-Iが豊富に含まれているが,細胞壁に 含まれるRG-Iと異なり,このRG-Iではこれらの側鎖構 造が付加していないことが知られている.

RG-IIはHGを主骨格とし,4つの異なる側鎖A‒Dが 結合し,ペクチンのなかでも最も複雑な構造領域であ る.これらの側鎖は希少糖であるApi, 2- -メチル-Xyl, 

2- -メチル-Fuc, L-Gal, 3- -カルボキシ-5-デオキシ-L-キシ ロース(L-アセル酸),3-デオキシ-D- -ヘプツロサル 酸(Dha),および3-デオキシ-D- -オクツロソン酸

(Kdo)を含み,少なくとも12種類の単糖が20種類以上 の異なる結合様式で結合している.驚くべきことに RG-IIは非常に複雑な構造をしていながら,進化の過程 で非常によく保存されており,コケ植物以降のすべての 陸上植物に含まれている(2)

植物粗抽出タンパク質を用いたペクチン生合成関連酵 素の 活性測定などの生化学的解析,およびペク チン特異的抗体などを用いた細胞生物学的解析により,

ペクチンの生合成は主にゴルジ体で行われ,分泌経路に 乗って細胞壁へ運ばれること考えられている.(1)ペク チンは非常に複雑な化学構造を有すること,(2)個々の 単糖残基が異なる様式のグリコシド結合で付加されるこ と,(3)単糖成分および部位特異的にメチル基やアセチ ル基修飾されることを考慮すると,少なくとも糖転移酵 素とメチル基転移酵素のような修飾酵素を合わせて67 種類の酵素群がペクチンの生合成にかかわっていると考 えられる.ペクチン生合成酵素の分子同定はほかの細胞 壁合成酵素に比べて遅れていたが,2006年のHG合成に か か わ る

α

1,4-GalUA転 移 酵 素 を コ ー ド し て い る 遺伝子の同定を契機に(3),現在までに,ほかに もそれぞれRG-I側鎖であるガラクタン合成にかかわる 

β

1,4-Gal転 移 酵 素( ),RG-II側 鎖A内 の

α

1,3- Xylの転移にかかわる

α

1,3-Xyl転移酵素( ), キシロガラクツロナンの

β

1,3-Xyl側鎖の転移にかかわる

β

1,3-Xyl転移酵素( )遺伝子群が遺伝子産物の

酵素活性とともに同定されている.

ペクチンの最も主要な構造領域であるHGはゴルジ体 での合成過程でペクチンメチル基転移酵素の作用によ り,GalUAのカルボキシル基が高度にメチルエステル 化された状態で細胞壁に運ばれる.その後,細胞壁中で 適宜ペクチンメチルエステラーゼ(PME)により脱メ チルエステル化を受け,メチルエステル化の度合いが時 空間的に制御される.PMEの作用により少なくとも9 残基の連続した脱メチルエステル化を受けた領域が生じ ると,カルシウムイオンを介したイオン結合により,

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化学と生物 Vol. 55, No. 7, 2017

HG鎖が会合し,ゲル化を引き起こし,結果として細胞 壁が硬化する(4).一方,また別のPMEの作用によりHG 鎖がランダムに脱メチル化されると,ポリガラクツロ ナーゼ(PG)やペクチン酸リアーゼ(PL)などにより 分解されやすくなり,細胞壁が軟化していく.また細胞 壁にはそれぞれのPME特異的にPME阻害タンパク質

(PMEI)が存在し,PMEに結合して,PME活性を抑制 している.これらの酵素タンパク質群が協調的に働き,

HG鎖のメチルエステル化の度合いを制御することで,

細胞壁の硬さや緩みなどの物理的強度がダイナミックに 調整されている.そのペクチンの物理的特性の変化が,

結果としてトマトなどの果実の成熟や,落葉時の葉の離 脱などの植物の成長や細胞・組織の形作りに影響を及ぼ している.

これらHG鎖の分解修飾にかかわる酵素群はそれぞれ が大きなタンパク質ファミリーを形成しており,たとえ ばモデル植物のシロイヌナズナではそれぞれ66, 69, 69,

および26種類のPME, PMEI, PG,およびPLが存在し ている.これらの酵素群の数を見ただけでも,植物がい かにHG鎖の修飾に多大なエネルギーを費やし,ペクチ ンの構造制御が植物にとっていかに重要であるかを物 語っている.そのなかでもPGは古くから研究されてき ており,特にトマトおよびメロン,バナナなどの果実の 成熟とともにPG活性が上昇することが数多く報告され

ている.PGは図1に示すように少なくともクレードA からFまで6つのクレードに分類されることが報告さ

(5, 6),果実の成熟に関与する分泌型PGはクレードA

に属している.クレードBおよびFに属する お よび 遺伝子は長角果(アブラナ科植物に見られ る果実の一種)の開裂に, および 遺伝子 は花粉四分子の分裂に関与することが明らかにされてい る.ほかにもクレードEおよびCに属する およ び 遺伝子が幼植物の伸長に関与していることが 報告されている.これらのPGは組換え酵素を用いて,

PG活性を有することが示されているが,そのほか残り のPGについては,ほとんど機能解析されておらず,こ れらが本当にPG活性を有しているかどうかですら定か ではない.上述したPGはすべて可溶性PGであり,細 胞壁に分泌されていると考えられる.一方で,アズキや ペチュニア花粉管のミクロソームを用いたHG合成にか かわる

α

1,4-GalUA転移酵素に関する研究で,ミクロ ソーム中にPG活性が見いだされている(7).未同定PGの なかにこのミクロソームに存在する膜結合型のPGがあ ると考えて,すべてのシロイヌナズナPGの推定アミノ 酸配列に対して,膜貫通ドメイン予測ツール(SOSUI およびTMHMM)を用いて配列解析を行ったところ,

複数の推定PGアミノ酸配列中に膜貫通ドメインが予測 された(8).従来の細胞壁分泌型PGとは全く異なり,膜 図1シロイヌナズナ由来PGタンパク質 の系統樹

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456 化学と生物 Vol. 55, No. 7, 2017

結合型PGがペクチン生合成の場であるゴルジ体を含む ミクロソームに存在すれば,従来に全くないタイプの PGとなり,非常に興味深い.しかし,これらの推定PG 中のどの遺伝子が膜結合型PGをコードしているか,膜 画分の中でも細胞内のどこに局在するのか,局在してい る細胞膜で何をしているのか(生体内の基質は何か)に ついては全くの不明である.今後,組換え酵素の酵素活 性測定解析,遺伝子変異植物を用いた機能解析が進め ば,これらの問に対する答えが垣間見えてくるであろ う.

  1)  M. A. Atmodjo, Z. Hao & D. Mohnen: 

64, 747 (2013).

  2)  西谷和彦,梅沢俊明: 植物細胞壁 ,講談社,2013,  p. 

25.

  3)  J. D. Sterling, M. A. Atmodjo, S. E. Inwood, V. S. K. Kolli,  H.  F.  Quigley,  M.  G.  Hahn  &  D.  Mohnen: 

103, 5236 (2006).

  4)  S. Wolf, G. Mouille & J. Pelloux:  , 2, 851 (2009).

  5)  M. Torki, P. Mandaron, R. Mache & D. Falconet:  ,  242, 427 (2000).

  6)  K.-C. Park, S.-J. Kwon & N.-S. Kim:  , 32,  570 (2010).

  7)  K. Akita, T. Ishimizu, T. Tsukamoto, T. Ando & S. Hase: 

130, 374 (2002).

  8)  大橋貴生,ムスタファナビラーサリ,松下宗義,三崎  亮,藤山和仁:日本農芸化学会2015年度大会シンポジウ ム 要 旨,https://jsbba.bioweb.ne.jp/cgi-bin/jsbba̲db/js- bba̲summary.cgi?id=48483

(大橋貴生,大阪大学生物工学国際交流センター)

プロフィール

大橋 貴生(Takao OHASHI)

<略歴>2002年大阪大学理学部化学科卒 業/2007年同大学大学院理学研究科博士 後期課程修了,博士(理学)/同年旭硝子株 式会社ASPEX事業推進部嘱託研究員(香 川 大 学 農 学 部 へ 出 向)/2008年 同 会 社 ASPEX事業推進部嘱託研究員(九州大学 大学院農学研究院へ出向)/2010年大阪大 学生物工学国際交流センター助教,現在に 至る<研究テーマと抱負>植物と酵母の細 胞壁多糖の生合成と分解<趣味>サッカー

(今は専ら観戦のみ),阪神タイガースの応 援

Copyright © 2017 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.55.454

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