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化学と生物 Vol. 50, No. 6, 2012

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今日の話題

植物のオーキシン生合成主経路の解明

TAA および YUCCA ファミリーによるインドール -3- 酢酸の生合成

オーキシンはダーウィン親子が1880年に発表した植 物の屈光性に関する研究をもとに発見された植物ホルモ ンであり,植物の形態形成や環境応答の制御において中 心的な役割を果たしている.植物の主要なオーキシンで あるインドール-3-酢酸 (IAA) の生合成経路の解明は,

植物の基本的な形態形成や環境応答のしくみを理解する ために不可欠であり,これまで60年以上にわたり植物 科学における重要課題のひとつであった.最近,ついに IAAの生合成主経路がモデル植物であるシロイヌナズ ナにおいて明らかになったので紹介する.

植物はトリプトファン (Trp) から複数の経路でIAA を合成することがこれまでに示されている.Trpを経由 しないIAA生合成経路も1990年代に提唱されたが,こ れが植物に存在するという遺伝子レベルでの確実な証拠 はまだない.シロイヌナズナにはインドール-3-アセト アルドキシム (IAOx) 経路,インドール-3-アセトアミ

ド (IAM) 経路,YUCCA (YUC) 経路,インドール-3- ピルビン酸 (IPA) 経路の4つが存在する可能性がある

(図1-A).このうちIAOx経路はアブラナ科植物固有の 二次代謝経路から分岐する特殊な経路であることが最近 明らかにされた(1).2つ目のIAM経路は様々な植物に存 在する可能性が示唆されているが,その役割については 不明である.

3つ目のYUC経路は植物に共通したIAA生合成経路 と考えられている. 遺伝子は様々な植物に存在し,

その欠損変異体は胚発生を含む様々な形態形成に異常を 示すことから,IAA生合成において重要な役割をもつ.

シロイヌナズナには11個の 遺伝子が存在し,その 多くが時空間的に制御された遺伝子発現を示す.これら を植物で過剰発現させると,IAA量が増加してオーキ シン過剰生産の表現型を示すことから,YUCはIAA生 合成の律速酵素と考えられている. 遺伝子はトリ

今日の話題

図1植物の推定IAA生合成経路図 イタリック文字はこれまでにシロイ ヌナズナから単離されたIAA生合成 遺伝子.点線の中はシロイヌナズナ で発見されたアブラナ科固有のIAOx 経路.IAN : インドール-3-アセトニ トリル, : アミダーゼ1,

: IAOx合 成 酵 素, : ア ル デヒドオキシダーゼ1

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今日の話題

プタミン (TAM) を酸化して -ヒドロキシトリプタミ ン (HTAM) を生成するフラビンモノオキシゲナーゼ様 タンパク質をコードすると報告されている.

4つ目のIPA経路も植物に広く存在するIAA生合成経 路と考えられている.2008年,植物が遠赤色光の割合 の高い光を受けたときに胚軸や茎を伸長させる反応(避 陰反応)を示さない ( ) 変異体 と,エチレン処理に対して弱い非感受性を示す

( ) 変異体がシロイヌナズナ で単離された.これらの変異体の原因遺伝子はともに TrpからIPAを合成するシロイヌナズナのトリプトファ ンアミノ基転移酵素 (TAA1) をコードしている.シロ イヌナズナの 相同遺伝子である と をそれぞれ単独で欠損した変異体は表現型を示さない

が, 二重変異体や 三重変異体は

胚発生を含む様々な形態形成に異常を示す.これにより IAA生合成における ファミリーの重要性が示され ている.

このように, および ファミリーはともに植 物の形態形成において重要な役割を担っているが,異な るIAA生合成経路に存在すると考えられていた(図 1-A).しかし,2011年にPhillipsらは,トウモロコシの ホモログを欠損した  ( ) 変異 体と, ホモログを欠損した 

( ) 変異体を用いて, 二重変異体と 変異 体が類似したオーキシン欠乏性の表現型を示すことを報 告 し た(2).ま た, 二 重 変 異 体 と 変 異 体 の IAA量はほとんど同じであった.これらの結果,VT2 とSPI1は同一経路に含まれる可能性が高いことが示唆 された.

同じころ,MashiguchiらはTAA1とYUCが同一経路 に存在する可能性を検証するため, と の共 発現体をシロイヌナズナで作製し,その表現型とIAA 生合成量を解析した(3).すると は単独で過剰発 現させても明確な表現型を示さないが, と共発現 させると 過剰発現体のオーキシン過剰な表現型を 顕著に促進した.また, と の共発現体では IAA生合成量も著しく増加した.これらはTAA1と YUCが同一経路に存在する可能性が高いことを示唆し ている.さらに,LC-ESI-MS/MSによりIPA量を分析 すると, 過剰発現体でIPA量が顕著に増加し,

と の二重欠損変異体でIPA量が減少していた.

一方, 多重変異体では野生型よりもIPA量が増加 し, 過剰発現体でIPA量が減少していた.これに より,TAAがTrpからIPAを合成し,YUCがIPAから IAAを生成している可能性が高くなった.最終的には,

大腸菌で調製したYUCタンパク質を用いた酵素活性試 験により,これまで提唱されていたYUCの酵素活性は 誤りで,YUCはIPAからIAAを生成する酵素であるこ とが証明された.また,これまでの予想と異なり,イン ドール-3-アセトアルデヒド (IAAld) がIPA経路に含ま れないこともLC-ESI-MS/MSを用いた分析から示唆さ れた.これらの結果,IPA経路がシロイヌナズナの IAA生合成における主経路であり,YUCはその律速酵 素であることが明らかにされた(図1-B)(3)

多重変異体と 多重変異体はともに胚発生や維 管束形成の異常などを示す.一方, 変異体が示す避 陰反応異常や,エチレンおよびオーキシン輸送阻害剤 

(NPA) に対する根の応答異常は,これまでに報告され た 多重変異体では見られなかった.最近,Wonらは これまでに報告されていた組み合わせとは異なる 五 重変異体をシロイヌナズナで作製し,これが 二重変 異体と同じくエチレンやNPAに対する根の応答異常を 示すことを明らかにした(4).さらに, 二重変 異体は不稔であるため,弱い アレル ( )  と の二重変異体を用いて,これが避陰反応を示さ ないことも報告した.また, 多重変異体において 遺伝子を高発現させると, の活性依存的に 表現型が回復した.これらとIPA分析の結果などから,

WonらはシロイヌナズナにおいてYUCはTAAの下流 に存在し,IPAからIAAの生成に寄与すると結論した.

さらに最近,Stepanovaらは および ファミ リーの両方を欠損した様々な多重変異体をシロイヌナズ ナで作製し,これらの表現型がそれぞれ ファミ リーのみ欠損した多重変異体と変わらないことを示し た(5).これはPhillipsらがトウモロコシで報告した結果 とよく一致している(2)

これら2011年に発表された複数の研究によって,こ れまで60年以上謎であった植物のIAAの生合成主経路 が明らかにされた.「オーキシンの生合成経路は複雑で ある」という古くからの予想に反し,実際はTrpから わずか2段階のシンプルな経路でIAAは合成されてい た.今 後 はTAAお よ びYUC酵 素 阻 害 剤 の 開 発 や,

および ファミリーの遺伝子発現制御に関する

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今日の話題

研究などが急速に進むと考えられる.また,IAA生合 成の全容解明に向けて,IAMやIAAldを含む経路の詳 細な研究も展開されるであろう.

  1)  S. Sugawara : , 106, 5430 

(2009).

  2)  K. A. Phillips : , 23, 550 (2011).

  3)  K.  Mashiguchi : , 108

18512 (2011).

  4)  C.  Won  : , 108,  18518 

(2011).

  5)  A. N. Stepanova  : , 23, 3961 (2011).

(笠原博幸,増口 潔,神谷勇治,理化学研究所植物 科学研究センター)

海産軟体動物から得られる多様なラミナリナーゼ

動物種の生活環境と関連した酵素特性の違い

ラミナリンは,コンブなどの褐藻の貯蔵多糖として知 られる

β

-1,3-グルカン(以下,

β

-グルカン)の一種で,

β

-1,3結合により重合したグルコースの主鎖のところど ころに

β

-1,6結合によりグルコース側鎖が結合した構造 をもつ.レンチナンなどの担子菌由来の

β

-グルカンに は,マクロファージの活性化作用やアレルギーの低減作 用,免疫賦活作用などの生理活性があることが知られて いるが(1),ラミナリンにも免疫賦活作用や糖尿病改善作 用がある(2).また,ラミナリンを酵素分解して得たラミ ナリオリゴ糖には,ヒト単球のTNF-

α

分泌促進作用が あるとされる(3).このような

β

-グルカンの生理作用が,

どのような

β

-グルカンの糖鎖構造に基づくのかは未だよ くわかっていないが,これを明らかにするには

β

-グルカ ンに特異的な分解酵素により各種断片を作製し,それら を用いて構造・機能連関を解析することが有効と思われ る.

β

-グルカンを特異的に分解する酵素として,

β

-グルカ ナーゼ(EC 3.2.1.6, EC 3.2.1.39, およびEC 3.2.1.73)が知 られている.この酵素はこれまでに細菌,真菌,酵母,

植物,および無脊椎動物などに分布することが明らかに されているが,最近筆者らは,海産軟体動物のアワビ,

アメフラシおよびホタテガイから,

β

-グルカナーゼの一 つであるラミナリナーゼ (EC 3.2.1.6) を単離し,それら の基本性状を解析した(4〜6).これら軟体動物のラミナリ ナーゼの作用特性は多様で,様々な

β

-グルカン断片の作 製に有用と思われた.ここでは,これら海産軟体動物の ラミナリナーゼの基本性状について紹介したい.

アワビ の消化液からは,分子

量33,000のラミナリナーゼHdLam33が得られた(4).本 酵素は,ラミナリンやラミナリオリゴ糖を分解して主に ラミナリビオースとグルコースを生じ,リケナンのよう

β

-1,3および

β

-1,4結合により重合したグルカンを分解 して主に4- -グルコシルラミナリビオースを生じた.ま た,ラミナリンからはその分枝部分由来の四糖である 6- -グルコシルラミナリトリオースを生じた.これらの 結 果 は,HdLam33が

β

-1,3(4)-グ ル カ ン の 内 部 領 域 の

β

-1,3結合を切断する,エンド-1,3(4)-

β

-グルカナーゼ 

(EC 3.2.1.6) であることを示している.一方,アメフラ シ からは分子量約36,000と約33,000の2 種類のラミナリナーゼ,AkLam36およびAkLam33が 得られた(5).AkLam36はアワビのHdLam33と類似の エンド型の酵素であったが,AkLam33はエキソ型の

β

- グルカナーゼであった.すなわち,本酵素はラミナリオ リゴ糖の還元末端からグルコースを1残基ずつ遊離し,

同時にグルコース1残基分小さくなったラミナリオリゴ 糖を生じた(図1-A).また,ラミナリンに作用させる とオリゴ糖を生じずに直接グルコースを遊離した.一 方,本酵素はラミナリビオースを分解しなかったことか ら,

β

-グルコシダーゼではないことが確認された.これ らの特性に基づき,筆者らはAkLam33が

β

-グルコシ ダーゼではなくエキソ型の

β

-グルカナーゼであると結論 した.この酵素は,これまでに軟体動物で報告のない新 奇のエキソ型

β

-グルカナーゼである.

これらアワビやアメフラシのラミナリナーゼは,いず れも糖転移活性を示すリテイニング酵素であった.この 活性を利用すると,本来分解されなかったラミナリビ オースが,ラミナリトリオースとの糖転移反応を経て分 解されるという興味深い結果が得られた(図1-B).こ れは,軟体動物が摂餌した褐藻のラミナリンをより効率 的にグルコースに分解するのに都合が良い性質と思われ る.

一方,二枚貝のホタテガイ の

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