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726 化学と生物 Vol. 53, No. 11, 2015

キチンオリゴ糖は受容体のサンドイッチ型ダイマー形成を介して植物免疫を活性化する

糖鎖を表と裏から認識するユニークな受容体活性化機構

菌類の細胞壁由来の代表的なMAMP(Microbe-Asso- ciated Molecular Pattern)であるキチンの断片(キチ ンオリゴ糖)は,イネやシロイヌナズナをはじめとする 多くの植物の防御応答を誘導する.また,その受容にか かわる分子として,原形質膜に局在する2種類のlysin  motif(LysM)型タンパク質,CEBiP(Chitin Elicitor  Bind ing Protein)とCERK1(Chitin elicitor receptor ki- nase 1)が同定されている(1).イネにおいては,キチン オリゴ糖に特異的に結合するGPIアンカー型タンパク質 であるOsCEBiPが,受容体キナーゼ型分子OsCERK1 とリガンド依存的に複合体を形成することにより,下流 のシグナル伝達系を活性化することが示されている.一 方,シロイヌナズナでは,AtCERK1が直接キチンと結 合する能力をもつこと,キチンオリゴ糖と結合した細胞 外ドメインの結晶構造が報告されていること(2),OsCE- BiPのホモログであるAtCEBiP(LYM2)がキチン応答 に関与しないこと(3, 4)などから,AtCERK1単独でリガ ンド受容とシグナル伝達を行っていると考えられてき た.しかし最近,シロイヌナズナの別のLysM型受容体 キナーゼLYK5が主要なキチン結合分子であり,LYK5 とAtCERK1が複合体を形成してシグナル伝達を行って いるとするモデルが提唱されており,これらのモデルの 妥当性について今後さらなる検討が必要となってい る(5)

これまでわれわれはイネ培養細胞を用いた解析から,

ある鎖長以上のキチンオリゴ糖(七量体や八量体)が nMオーダーという低濃度で防御応答を誘導すること,

またキチンオリゴ糖の脱アセチル体ではこうした応答が 消失することを報告してきた(1).しかし,これまでのと ころ,キチンオリゴ糖がどのようにして受容体を活性化 しているのか,また,どうして特定のサイズ以上のキチ ンオリゴ糖が必要なのかについては不明であった.こう した疑問に答えるため,最近われわれはイネキチン受容 体であるOsCEBiPとキチンオリゴ糖の相互作用に関し て詳細な解析を行った.OsCEBiPの細胞外領域には,

キチンとの結合に関与すると推測される3個のLysM構 造が存在しているが,これらのLysMをそれぞれ欠失さ せた分子,あるいは,キチン結合性をもたないシロイヌ ナズナのCEBiP型分子の対応するLysMと入れ替えた 分子を用いた実験の結果,細胞外ドメインの中央部に位 置するLysM(LysM1)がキチンの結合に重要であるこ とを見いだした(6).この結果は,シロイヌナズナAt- CERK1細胞外ドメインのX線結晶構造に基づくOsCE- BiPのモデリングとキチンオリゴ糖とのドッキングシ ミュレーションによっても支持された.一方,この LysM1を含むOsCEBiPの細胞外ドメインを大腸菌で発 現させ,キチンオリゴ糖との相互作用をSTD(Satura- tion Transfer Difference)-NMRによって解析すること により,エピトープマッピングを行った.その結果,キ チン八量体の両端を除く6個の -アセチルグルコサミン 残基のアセチル基が,受容体タンパク質との結合に強く 関与することが明らかになった.

キチンは2回らせん構造をとることが知られており,

その -アセチルグルコサミン残基のアセチル基の配向

今日の話題

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化学と生物 Vol. 53, No. 11, 2015

は隣接する糖残基とは逆向きになっている.このキチン の構造と,ドッキングシミュレーションでLysM1部分 に3個の -アセチルグルコサミン残基が結合していたこ とを考え合わせると,上記のエピトープマッピングの結 果は,1分子のキチンオリゴ糖に2分子のOsCEBiPが両 側からサンドイッチ状に結合していることを示唆するも のと考えられた(図

1

a).このモデルをさらに確認する ため,われわれはグルコサミン残基と -アセチルグル コサミン残基が交互に

β

1, 4結合したユニークな八量体

(N-NA)4(7)を用いた実験を行った.このオリゴ糖では,

アセチル基が分子の片側のみに配向するため,上記のモ デルではOsCEBiPと相互作用しても二量体形成は誘導 できないと考えられる(図1b).実際に(N-NA)4は,

OsCEBiP細胞外ドメインの二量体形成を誘導せず,ま た,イネ培養細胞におけるキチン誘導型活性酸素の生成 も誘導しなかった.さらに,(N-NA)4は(GlcNAc)8に よる活性酸素の生成を阻害した(6).これらの結果は,上 記のサンドイッチモデルをよく裏づけるものであった.

また,このモデルではなぜ七量体や八量体といったサイ ズのキチンオリゴ糖が強い生物活性を示すのかも理解で きる(両端を除く分子内にサンドイッチ型相互作用に必 要な数の -アセチルグルコサミン残基=アセチル基を もっている).実際にはこうしたOsCEBiPの二量体形成 が,受容体様キナーゼOsCERK1との受容体複合体形成

とシグナル伝達起動につながると想定されるが,この過 程の詳細は今後の課題として残されている.キチン受容 体を介した植物免疫活性化機構に関しては,最近,イネ およびシロイヌナズナのキチン受容体下流のシグナル伝 達機構の解析が精力的に行われ,重要な知見が明らかに なりつつある(8, 9).また,AtCERK1/OsCERK1ノック アウト植物を用いた解析から,CERK1がバクテリアの 細胞壁由来MAMPであるペプチドグリカンに対する防 御応答にも関与すること(10, 11),さらに,これらの防御 応答と一見相反する菌根菌との共生応答にもOsCERK1 が寄与することなどが明らかになっている(12).今後,

OsCERK1を含めたLysM受容体がどのように防御およ び共生応答にかかわるリガンドの認識・受容を行ってい るのか,また,どのようにして防御と共生という相反す る応答系の制御を行っているのかが明らかにされること が期待される.

  1)  賀来華江,新屋友規,渋谷直人:化学と生物,50,  52 

(2012).

  2)  T. Liu, Z. Liu, C. Song, Y. Hu, Z. Han, J. She, F. Fan, J. 

Wang, C. Jin, J. Chang  :  , 336, 1160 (2012).

  3)  T. Shinya, N. Motoyama, A. Ikeda, M. Wada, K. Kamiya,  M. Hayafune, H. Kaku & N. Shibuya:  ,  53, 1696 (2012).

  4)  C. Faulkner, E. Petutschnig, Y. Benitez-Alfonso, M. Beck,  S. Robatzek, V. Lipka & A. J. Maule: 

110, 9166 (2013).

  5)  Y. Cao, Y. Liang, K. Tanaka, C. T. Nguyen, R. P. Jedrze- jczak, A. Joachimiak & G. Stacey:  , 10, 7554 (2014).

  6)  M. Hayafunea, R. Berisiob, R. Marchettic, A. Silipoc, M. 

Kayamaa, Y. Desakia, S. Arimaa, F. Squegliab, A. Ruggi-

erob,  K.  Tokuyasud  :  , 

111, E404 (2014).

  7)  K. Tokuyasu, Y. Mori, Y. Kitagawa & K. Hayashi: United  States Patent 6,437,107 (1999).

  8)  K. Yamaguchi, K. Yamada, K. Ishikawa, S. Yoshimura, N. 

Hayashi, K. Uchihashi, N. Ishihama, M. Kishi-Kaboshi, A. 

Takahashi,  S.  Tsuge  :  , 13,  347  (2013).

  9)  T. Shinya, K. Yamaguchi, Y. Desaki, K. Yamada, T. Nari- sawa, Y. Kobayashi, K. Maeda, M. Suzuki, T. Tanimoto,  J. Takeda  :  , 79, 56 (2014).

10)  R. Willmann, H. M. Lajunen, G. Erbs, M. A. Newman, D. 

Kolb, K. Tsuda, F. Katagiri, J. Fliegmann, J. J. Bono, J. V. 

Cullimore  :  , 108, 19824 

(2011).

11)  Y. Kouzai, S. Mochizuki, K. Nakajima, Y. Desaki, M. Ha- yafune, H. Miyazaki, N. Yokotani, K. Ozawa, E. Minami, 

H.  Kaku  :  , 27,  975 

(2014).

12)  K.  Miyata,  T.  Kozaki,  Y.  Kouzai,  K.  Ozawa,  K.  Ishii,  E. 

Asamizu, Y. Okabe, Y. Umehara, A. Miyamoto, Y. Kobae  図1イネキチン防御応答系の活性化機構の概略図

(a)2分子のOsCEBiPがキチン八量体(GlcNAc)8の両側からサン ドイッチ型に結合することにより,受容体キナーゼOsCERK1と の複合体が形成され,防御応答シグナル伝達系を起動する.(b)

グルコサミン残基と -アセチルグルコサミン残基が交互にβ1,4結 合したユニークな八量体( -NA)4は,OsCEBiPと結合するが二 量体を形成できず,キチン防御応答系を起動することができない.

Hayafuneらの論文(6) より転用,一部改変.

今日の話題

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728 化学と生物 Vol. 53, No. 11, 2015

:  , 55, 1864 (2014).

(賀来華江,渋谷直人,明治大学農学部生命科学科)

プロフィル

賀来 華江(Hanae KAKU)

<略歴>大阪市立大学生活科学研究科博士 後期課程修了(学術博士),ミシガン大学 医学部博士研究員,科学技術庁特別研究 員,農業生物資源研究所主任研究官を経 て,2005年明治大学農学部生命科学科准 教授,2011年同教授,現在に至る<研究 テーマと抱負>MAMPsを介する植物免疫 系のメカニズムを解明し,この基礎研究に 基づいて世界規模に起こる食糧問題の解決 に貢献したい<趣味>美しい風景・空間・

絵・建築物を鑑賞すること,および物語が 感じられる美しい石を集めること

渋谷 直人(Naoto SHIBUYA)

<略歴>1970年東京教育大学大学院農学 研究科修士課程修了,学術博士,農水省食 品総合研究所,同農業生物資源研究所を経 て2002年より明治大学農学部生命科学科 教授<研究テーマと抱負>植物のパターン 認識受容体を介した防御応答機構の解析.

四半世紀以上前に始めた仕事が共同研究者 たちの努力で大きく開花している.今後,

共生を含めた植物・微生物相互作用の研究 がどのように展開していくか興味が尽きな い<趣味>(昔)山登り,スキー(今)名 所・旧跡・温泉めぐり

Copyright © 2015 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.53.726

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