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高速射影復元:徹底的な効率化を目指して

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情報処理学会研究報告, 2007-CVIM-157-15, 2007/1/11,12, pp. 109–116. 109

高速射影復元:徹底的な効率化を目指して

森 昭延 ハノ・アッカーマン 金谷 健一 岡山大学大学院自然科学研究科

未校正カメラで撮影した画像列上の特徴点の追跡から3次元形状を計算する自己校正法において,最も計算時間を要す る射影復元の反復を高速化する手法を示す.まず,射影復元の基本法と双対法のアルゴリズムをまとめる.そして,射 影復元の反復に含まれる固有値計算をべき乗法に置き換える.さらにべき乗法自体も加速し,部分空間の当てはめの反 復もSOR法によって加速する.これらの効果をシミュレーションや実ビデオ画像によって定量的に評価し,実行時間 が大幅に減少することを実証する.

Fast Projective Reconstruction: Toward Ultimate Efficiency

Akinobu Mori

,

Hanno Ackermann

,

and Kenichi Kanatani

Department of Computer Science, Okayama University, Okayama 700-8530 Japan

We accelerate the time-consuming iterations for projective reconstruction, a key component of self-calibration for computing 3-D shapes from feature point tracking over a video sequence. We first summarize the algorithms of the primal and dual methods for projective reconstruction. Then, we replace the eigenvalue computation in each step by the power method. We also accelerate the power method itself. Furthermore, we introduce the SOR method for accelerating the subspace fitting involved in the iterations. Using simulated and real video images, we evaluate the computation time in quantitative terms and demonstrate that these techniques significantly reduce the computation time.

1. まえがき

前報[7, 10]では未校正カメラで撮影した画像列上

の特徴点の追跡から3次元形状を計算する最新の「自 己校正法」の計算手順を示し,シミュレーションおよ び実ビデオ画像を用いてその性能評価を行った.こ れは,過去の研究成果の中から最も優れていると思 われる手法を選択して組合せ,さらに洗練と改良を 加えたものである.

この方法は,射影変換の不定性のある3次元形状 を計算する「射影復元」と,それを正しい形状に変 換する「ユークリッド化」の2段階から成る.前者 にはMahamudら[9]およびHeydenら[5]の方法を 用い,後者にはSeoら[13]の方法に精度や計算の安 定性を向上させる新しい工夫を加えている.

前報[10]のシミュレーションおよび実ビデオ画像 による性能評価によると,同様の目的で用いられる

「因子分解法」[6, 8, 12, 15]に比べて精度が高く,実 際的な応用に対して十分良好な復元ができることが 確認された.しかし,因子分解法が撮像をアフィンカ メラで近似して解析的な計算を行うのに対して,自 己校正法では透視投影による非線形性を反復によっ

700-8530岡山市津島中3–1–1, (086)251-8173 {mori,hanno,kanatani}@suri.it.okayama-u.ac.jp

て処理するので,射影復元の段階で多くの実行時間 を要する.

一方,Seoら[13]のユークリッド化法は,本来は 解析的に求まる計算にロバスト性を高めるために数 回の反復を付加するものであり,計算時間は非常に 少ない.実際,実測すると射影復元の反復が全実行 時間のほとんどを占める[10].

そこで本論文では射影復元の反復の高速化を試み る.時間がかかる最大の理由は,反復の各ステップで 固有値計算が必要があり,その行列の次元がフレー ム数あるいは特徴点数に比例するためである.

しかし,計算される固有ベクトルは直前の反復ス テップの値にほぼ等しいはずであり,毎回新たに計 算する必要はなく,前回の値を補正することにすれ ば,計算時間が大幅に削減されると期待される.そ のために,本論文では「べき乗法」を用いる.

そのべき乗法自体も反復法である.そこで,その 収束の挙動を解析して反復の加速を試みる.さらに 射影復元のための部分空間の当てはめの反復に対し てもSOR法を適用する.そして,これらの工夫に よって実行時間が大幅に削減することをシミュレー ションや実ビデオ画像によって実証する.

(2)

2. 射影復元の方法

射影復元の基本は前報[7, 10]に示した次式である [4].

zκαxκακXα, xκα=

 xκα/f0

yκα/f0

1

 (1)

ここに(xκα, yκα)は第κフレームの第α特徴点の座 標であり,f0はある固定した定数である1zκα

「射影的奥行き」と呼ばれる定数,Πκは第κフレー ムの3×4投影行列,Xαは第α特徴点の3次元位 置を同次座標で表す4次元ベクトルである.これら zκα, Πκ,Xαはすべては未知である.

これらを求める計算法としてMahamudら[9]の方 法(「基本法」と呼ぶ)とHeydenら[5]の方法(「双 対」と呼ぶ)が提案されている.両者は幾何学的に は互いに双対な関係があり[10],どちらがよいとは 一概には言えない[10].まず両者のアルゴリズムを まとめ,後の比較のために「原形」と呼ぶ(導出は

前報[7, 10]参照).以下,ベクトルa, bの内積を

(a,b)と書く.

2.1 基本法(原形)

入力: xκα, κ= 1, ...,M,α= 1, ...,N 収束判定の再投影誤差Emin(画素) 出力: Πκ,κ= 1, ...,M,Xα,α= 1, ...,N 計算:

1. 射影的奥行きをzκα = 1と初期化する.

2. z1αx1α,z2αx2α, ...,zM αxM αを縦に並べた3M 次元ベクトルpαを計算し,単位ベクトルに正 規化する.

3. 次の33M行列Mを計算する M =

XN

α=1

pαp>α (2) 4. 行列Mの大きい4個の固有値に対する単位固

有ベクトルu1,u2,u3,u4を計算する.

5. 3×4行列Πκを次のように計算する.

Πκ

u1κ u2κ u3κ u4κ

´ (3) ただしuuiの第3(κ−1) + 1, 3(κ−1) + 2, 3(κ−1) + 3成分を第1, 2, 3成分とする3次元 ベクトルである.

6. 次の計算をα= 1, ...,Nに渡って計算する.

1これは数値計算を安定化させるためである[2].実験ではf0

= 600画素とした

(a) 次のように計算したM ×M 行列Aα = (Aακλ)の最大固有値に対する単位固有ベク トルξαを計算する.

Aακλ= P4

k=1(xκα,u)(xλα,u) kxκαk · kxλαk (4) 固有ベクトルの符号は次のように定める.

XM

κ=1

ξκα0 (5) (b) 得られたξαから射影的奥行きzκαを次の

ように計算する.

zκα= ξκα

kxκαk (6) (c) 得られたzκαを用いてベクトルpαを再計

算する.

(d) 3次元位置Xα = (Xαk)を次のように計算 する.

Xαk = (pα,uk), k= 14 (7) 7. 次のように再投影誤差Eを計算する.

E=f0

vu ut 1

M N XM

κ=1

XN

α=1

kxκα−ZκXα]k2 (8) 8. E < Eminであれば終了する.そうでなければ

ステップ3に戻る.

2.2 双対法(原形)

入力: xκα,κ= 1, ...,M,α= 1, ...,N 収束判定の再投影誤差Emin(画素) 出力: Πκ,κ= 1, ...,M, Xα, α= 1, ...,N 計算:

1. 射影的奥行きをzκα= 1と初期化する.

2. 次のN次元ベクトルqiκを計算する.

q1κ= (zκ1xκ1/f0, zκ2xκ2/f0, ..., zκNxκN/f0)>

q2κ= (zκ1yκ1/f0, zκ2yκ2/f0, ..., zκNyκN/f0)>

q3κ= (zκ1, zκ2, ..., zκN)> (9) そして各κごとにqiκ,i= 1, 2, 3に共通の定数 を掛けて,次式が成り立つように正規化する.

X3

i=1

kqiκk2= 1 (10) 3. 次のN×N行列N を計算する.

N = XM

κ=1

X3

i=1

qiκqi>κ (11)

(3)

4. 行列N の大きい4個の固有値に対する単位固 有ベクトルv1,v2,v3,v4を計算する.

5. 3次元位置Xα = (Xαk)を次のように計算する.

Xαk= (vkの第α成分), k= 14 (12) 6. 次の計算をκ= 1, ...,Mに渡って計算する.

(a) 次のように計算したN ×N 行列 Bκ = (Bαβκ )の最大固有値に対する単位固有ベク トルξκを計算する.

Bκαβ=(vα,vβ)(xκα,xκβ)

kxκαk · kxκβk (13) ただしvαは基底ベクトルv1, v2, v3, v4

のそれぞれの第α成分を取り出して縦に並 べた4次元ベクトルである.固有ベクトル の符号は次のように定める.

XN

α=1

ξκα0 (14) (b) 得られたξκから射影的奥行きzκαを次の

ように計算する.

zκα= ξκα

kxκαk (15) (c) 得られたzκαを用いてベクトルqiκ,i= 1,

2, 3を再計算する.

(d) 3×4行列Πκ = (Πκ(ij))を次のように計 算する.

Πκ(ij)= (qiκ,vk) (16) 7. 式(8)の再投影誤差Eを計算する.

8. E < Eminであれば終了する.そうでなければ ステップ3に戻る.

3. べき乗法による高速化

n×n半正値対称行列Aの固有値をλ1≥ · · · ≥λn

(0),対応する単位固有ベクトルをu1, ...,unとす ると,Akの固有値はλk1 ≥ · · · ≥λknであり,対応す る単位固有ベクトルは変化しない.このため,任意 の線形独立なベクトルv1, ...,vmAkを掛けると,

大きい固有値に対する固有ベクトルの方向の成分が 増幅され,kを大きくするとAkv1, ...,Akvmの張 るm次元部分空間はu1, ...,umの張るm次元部分 空間に近づく.特にm= 1の場合,任意のベクトル vに対してAkvの方向はu1に収束する[1].これが べき乗法の原理であり,因子分解法の効率化にも利 用されている[3, 11, 16].

これを利用して前節の固有値問題を,次のように べき乗法に置き換える.以下,N[·]は単位ベクトル への正規化を表す.

3.1 基本法(べき乗法)

入力: xκα,κ= 1, ...,M,α= 1, ...,N 収束判定の再投影誤差Emin(画素) べき乗法の収束判定定数d,e

出力: Πκ,κ= 1, ...,M, Xα, α= 1, ...,N 計算:

1. 射影的奥行きをzκα= 1と初期化する.

2. 次のM 次元単位ベクトルξ0αを計算する.

ξ0α=N[





kx1αkz1α

kx2αkz2α

... kxM αkzM α





] (17)

3. z1αx1α,z2αx2α, ...,zM αxM αを縦に並べた3M 次元ベクトルpαを計算する.

4. pαを単位ベクトルに正規化する.

5. 次の3M ×N行列P を定義する.

P =

³

p1 p2 · · · pN

´

(18) 6. 行列P を次のように特異値分解する.

P =Udiag(σ1, σ2,· · ·)V> (19) 7. 行列Uの最初の4列をu1,u2,u3,u4とする.

8. 3×4行列Πκを式(3)のように計算する.

9. 次の計算をα= 1, ...,N に渡って計算する.

(a) 式 (4)のようにM ×M 行列Aαを計算 する.

(b) 次のようにξαを計算する.

ξα=N[Aαξ0α] (20) (c) α−ξ0αk <10−dであれば次に進む.そ うでなければξ0α←ξαとしてステップ(b) に戻る.

(d) 得られたξαから射影的奥行きzκαを式(6) のように計算する.

(e) 得られたzκαを用いてベクトルpαを再計 算する.

(f) 3次元位置Xαを式(7)のように計算する.

10. 式(8)の再投影誤差Eを計算する.

11. E < Eminであれば終了する.そうでなければ 式(18)の行列P を再計算する.

12. 次のN次元ベクトルv˜iと3M次元ベクトルu˜k

を計算する(k= 14).

˜

vk =P>uk, u˜k=Pv˜k (21)

(4)

図1: 256個の特徴点の256フレームのシミュレーション画像系列から抜き出した6フレーム.

13. ˜u1, ˜u2, ˜u3, ˜u4にシュミットの直交化を施して 得られる正規直交系をuˆ1, ˆu2, ˆu3, ˆu4とする.

14. max4k=1 q

1P4

l=1uk,ul)2 < 10−e なら uk

u˜k, k = 1 4としてステップ8 に戻る.

そうでなければuk ←u˜k,k = 14としてス テップ12に戻る.

3.2 双対法(べき乗法)

入力: xκα, κ= 1, ...,M,α= 1, ...,N 収束判定の再投影誤差Emin(画素) べき乗法の収束判定定数d,e

出力: Πκ,κ= 1, ...,M,Xα,α= 1, ...,N 計算:

1. 射影的奥行きをzκα = 1と初期化する.

2. 次のN次元単位ベクトルξ0κを計算する.

ξ0κ=N[





kxκ1kzκ1

kxκ2kzκ2

... kxκMkzκN





] (22)

3. 式(9)のN次元ベクトルqiκを計算する.

4. 各κごとにqiκ,i= 1, 2, 3を式(10)のように正 規化する.

5. 次の3M行列Qを計算する.

Q=

³

q11 q21 q31 q12 · · · q3M

´ (23) 6. 行列Qを次のように特異値分解する2

Q=Vdiag(σ1, σ2, ...)U> (24) 7. 行列V の最初の4列をv1,v2,v3,v4とする.

8. 3次元位置Xα を式(12)のように計算する.

9. 次の計算をκ= 1, ...,Mに渡って計算する.

(a) 式(13)のようにN ×N 行列Bκ を計算 する.

(b) 次のようにξκを計算する.

ξκ=N[Bκξ0κ] (25)

2特異値σ1,σ2, ...も行列U,V も式(19)中に現れるものと 同じになる.

(c) κ−ξ0κk < 10−dであれば次に進む.そ うでなければξ0κ←ξκとしてステップ(b) に戻る.

(d) 得られたξκから射影的奥行きzκαを式(15) のように計算する.

(e) 得られたzκαを用いてベクトルqiκを再計 算する.

(f) 3×4行列Πκ= (Πκ(ij))を式(16)のよう に計算する.

10. 式(8)の再投影誤差Eを計算する.

11. E < Eminであれば終了する.そうでなければ 式(23)の行列Qを再計算する.

12. 次の3M次元ベクトルu˜kN次元ベクトルv˜k

を計算する(k= 14).

u˜k=Q>vk, ˜vk=Q˜uk (26) 13. ˜v1, ˜v2, ˜v3, ˜v4にシュミットの直交化を施して得

られる正規直交系をˆv1, ˆv2, ˆv3, ˆv4とする.

14. max4k=1 q

1P4

l=1vk,vl)2<10−eならvk

˜vk, k = 14としてステップ8に戻る.そう でなければvk ←v˜k, k= 1 4としてステッ プ12に戻る.

4. 実験 1

4.1 べき乗法の効果

図1にシミュレーション画像を示す.これは3次 元空間の直方体領域内に256個の特徴点をランダム にとり,視点を移動させながら600×600画素の画 像面に焦点距離f = 600(画素)の透視投影によっ て投影した256フレームの画像列から6フレームを 抜き出したものである3

これに対して基本法と双対法による射影復元を行 い,再投影誤差が0.1画素になるまで反復した.そ して,2節の原形と3節のべき乗法を用いた場合の 実行時間(秒)と反復回数を調べると,表1のよう になった.ただし,べき乗法の収束判定定数はe =

3図中の枠は見やすくするために示したものであり,3次元復 元には用いない.

(5)

表1: 1の画像列に対する再投影誤差が0.1画素になる までの実行時間()と反復回数.

基本法 双対法 時間 回数 時間 回数

原形 85,277 579 835 10

べき乗法 4,036 602 257 28

0 0.5 1

200 400 600 0

0.5 1

10 20 30

(a) (b)

図2: 反復回数と再投影誤差.実線が原形,破線がべき乗 法.(a)基本法,(b)双対法.

1,d= 5とした.CPUにはPentium 4 3.4GHz,主

メモリ2GB,OSにはLinuxを用いた.

これからわかるように,べき乗法によって実行時 間が基本法では5%,双対法では31%に削減されてい る.ただし,各反復で固有値計算を完全に収束させ ないために,全体の反復回数はやや増えている.し かし,各反復の計算量が減るので,全体の実行時間 は大幅に削減される.

これを確認するために,図2は横軸に反復回数,縦 軸に再投影誤差をプロットした.図2(a)が基本法,

2(b)が双対法であり,実線が原形,破線がべき乗法 である.共に再投影誤差は単調に減少するが,べき 乗法を用いると収束が長引く.これは双対法で著し い.それにもかかわらず実行時間は著しく減少する.

4.2 基本法と双対法の比較

表1からわかるように図1の例では双対法が基本 法より効率的である.しかし,これは特徴点数Nと フレーム数Mに依存するので,比較にはより詳細な 評価が必要である.

基本法は各特徴点に対して固有値計算を行い,双 対法では各フレームに対して固有値計算を行うので,

実行時間は基本法はほぼ特徴点数Nに比例し,双対 法はほぼフレーム数M に比例する.

しかし,固有値計算の計算量を正確に見積もるの は困難である.おおざっぱにn×n行列の固有値計 算にほぼn3に比例する演算回数が必要であるとする と,原形では各反復に基本法でO(N M3)回の演算,

双対法でO(M N3)回の演算が必要である.べき乗法 はベクトルと行列との積の計算から成るので,これら

1 2 3

0 100 200 300 400 500

107

M 1 2

0 100 200 300 400 500

106

(a) (b) N

図3: 原形(実線)とべき乗(破線)の実行時間(秒)の増 加の様子.(a)基本法(N = 256).横軸はフレーム数M (b)双対法(M = 256).横軸は特徴点数N

はほぼO(N M2),O(M N2)回になると予想される.

そこで図1の例で特徴点数Nとフレーム数M を 変化させて実行時間のM, N への依存性を調べた.

図3(a)は基本法のフレーム数M に対する実行時間,

図3(b)は双対法の特徴点数N に対する実行時間を プロットしたものである.実線が原形,破線がべき 乗法によるものである.

M, Nのいろいろな値に対する実行時間に指数関 数を当てはめると,べき乗法を用いたときの基本法 および双対法の実行時間Tp,Tdはそれぞれほぼ次の ようになった(単位はms).

Tp1.407N0.94M1.7, Td0.163M0.95N1.7 (27) これは予想がほぼ正しいこと,および特徴点数が多 ければ基本法が,フレーム数が多ければ双対法が効 率的であることを意味している.しかし,N ≈Mな ら双対法が極めて有利である.

5. さらなる高速化

5.1 べき乗法の加速

任意の初期値ξ0から出発して,べき乗法によって 半正値対称行列T の最大固有値λ1に対する単位固 有ベクトルw1を求めるとき,ξk=N[Tkξ0]と置く と,初期値ξ0w1に十分近い,あるいはkが十分 大きいとき,

ξk≈w1+kw2, γ=λ2

λ1 (28) となっている[1].ただし,λ2T の2番目に大き い固有値,w2はそれに対する単位固有ベクトルであ る(C はある定数).上式と上式のkk+ 1に置 き換えたものとからw2を消去すると,関係

w1≈ξk+1−γξk

1−γ (29)

(6)

を得る.γが既知ならこれによってξk,ξk+1からw1

を予測すれば収束が加速される.定数γは式(28)よ り次のように推定できる.

γ≈ k+1−ξkk

k−ξk−1k (30) したがって,ξk−1, ξk,ξk+1から式(30)によってγ を求め,ξk+1N[(ξk+1−γξk)/(1−γ)]に置き換え れば偶数回目の解が加速される(ξ0,ξ1からξ2を加 速し,ξ2,ξ3からξ4を加速し,...).これを射影的奥 行きを表すベクトルξα,ξκのべき乗法に適用する.

5.2 SOR法による部分空間当てはめの加速 SOR (successive overrelaxation)法とは反復の収 束を加速する方法であり,数列ξ1,ξ2, ...に対して,

ξk ←ξk−1+ω(ξk−ξk−1) (31) とするものである.ω (1)は「加速定数」と呼ばれ る.これが多くの反復問題で有効であることは経験 的に知られている.しかし,性質のよく知られた線 形反復問題以外は加速定数を適切に定めることが困 難であり,経験的に定めるのが普通である.

これを射影的奥行きを表すベクトルξ(= ξα,ξκ) に適用する.すなわち,反復の各ステップで計算した ξを前ステップでの値ξ0を用いてN[ξ0+ω(ξ−ξ0)]

に置き換える.

6. 実験 2

表2は図1の画像列に対してべき乗法の加速を行 なった場合,およびべき乗法はそのままで部分空間 当てはめをSOR法で加速した場合,および両方を 行なった場合の実行時間(秒)および反復回数を示 す.ただし,加速したべき乗法に対しては収束判定 定数をe= 1,d= 1とした.また部分空間当てはめ をSOR法の加速定数はω = 1.9とした.なお,「効 率化指数」とは基本形の時間がかかるほうと最も高 速化されたものの実行時間の比である.

表2: 1の画像列に対する再投影誤差が0.1画素になる までの実行時間(秒)と反復回数.

基本法 双対法 時間 回数 時間 回数

べき乗法 4,036 602 257 28

べき乗法の加速 4,083 599 48 11

SOR 2,146 315 139 7

両方 2,112 312 76 14

効率化指数= 1,777

0 0.5 1

200 400 600 0

0.5 1

10 20 30

(a) (b)

図 4: 基本法(a)と 双対法(b)に対する反復回数と再投 影誤差.実線がべき乗法,破線がべき乗法の加速,点線が 部分空間当てはめのSOR法,鎖線が両方を行なった場合.

ただし(a)では破線は実線と,鎖線は点線と重なるので,

実線と点線のみを示す.

5 10 15

0 100 200 300 400 500 10

M 5 10

0 100 200 300 400 500

105

(a) (b) N

図5: 実行時間(秒)の増加の様子.実線がべき乗法,破 線がべき乗法の加速,点線が部分空間当てはめのSOR法,

鎖線が両方を行なった場合.(a)基本法(N = 256).横軸 はフレーム数M(b)双対法(M = 256).横軸は特徴点 N.ただし(a)では破線は実線と,鎖線は点線と重なる ので,実線と点線のみを示す.

図4は反復回数による再投影誤差の減少を基本法 と双対法に対してプロットしたものである.図4(a) の基本法では実線がべき乗法およびべき乗法の加速 であり(両者に差はない),点線は部分空間当てはめ のSOR 法およびべき乗法の加速と併用した場合で ある(両者に差はない).図4(b)の双対法では実線 がべき乗法,破線がべき乗法の加速,点線が部分空 間当てはめのSOR法,鎖線が両方を行なった場合で ある.

図5(a)は基本法(N = 256)のフレーム数M に対 する実行時間の増加の様子を示し,図5(b)は双対法

(M = 256)の特徴点数Nに対する実行時間の増加の

様子を示す.ともに実線がべき乗法,破線がべき乗 法の加速のみ,点線が部分空間当てはめのSOR法,

鎖線が両方を行なった場合である.これは図4の反 復回数の差をそのまま反映している.

これらから,基本法ではべき乗法の加速はほとん ど効果が見られないが,双対法では著しく効率化さ れていることがわかる.これは基本法ではべき乗法 の収束がそもそも速く(γが小さく),双対法ではべ

(7)

(a)

(b)

図6: (a)シミュレーション画像系列(6フレームを抜き出したもの).フレーム数11,特徴点数231個.(b)実ビデ オ画像(6フレームを抜き出したもの).フレーム数200,特徴点数16個.

き乗法の収束が遅い(γ が大きい)という差による ものである.実際にγの大きさを調べて,このこと が確認された.

一方,SOR法は基本法,双対法ともに効果が見ら れる.しかし,双対法ではべき乗法の加速の効果に は及ばず,べき乗法の加速と併用するとべき乗法の 加速の効果が打ち消される.

全体として,図1の画像列に対してはべき乗法を 加速した双対法が最も効率的であり,実行時間が基本 法の原形に対して約0.06%(実行速度が約1,800倍)

になっている.

7. 実験 3

図6(a)は円筒面上に231個の特徴点をとり,視点 を移動させながら600×600画素の画像面に焦点距

f = 600(画素)の透視投影によって投影した11

フレームの画像列である(抜き出した6フレームのみ を示している).

図6(b)は200フレーム実ビデオ画像列(640×480 画素)から抜き出した6フレームを示している.画像 中には追跡した16個の特徴点をマークしている.こ れらは初期フレームに手動で指定し,以降のフレー ム上をKanade-Lucus-Tomasi の方法[14]によって 追跡したものである.ただし,追跡が途絶えたら手 動で再追跡を開始した.

表3は図6(a)の画像列にこれまでに述べた方法を 適用した場合の,再投影誤差が0.1画素になるまで の実行時間(秒)と反復回数である.

図6(a)のような特徴点数が多く(N = 231),フ レーム数が少ない場合(M = 11)では原形を用いる と,双対法のほうが反復回数が少ないにもかかわら ず,1回の反復の計算量が多いので,反復回数の多い 基本法のほうが効率的になっている.しかし,べき 乗法を用いると1回の反復の計算量が減り,双対法 のほうが効率的になっている.

表 3: 6(a)の画像列に対する再投影誤差が0.1画素に なるまでの実行時間(秒)と反復回数.

基本法 双対法 時間 回数 時間 回数 原形 3.84 89 7.15 3 べき乗法 2.24 90 1.25 3 べき乗法の加速 2.37 90 0.51 3

SOR 1.12 47 10.76 21

両方 1.27 47 5.73 31 効率化指数= 14

表4: 6(b)の画像列に対する再投影誤差が2.01画素に なるまでの実行時間(秒)と反復回数.

基本法 双対法 時間 回数 時間 回数

原形 2,153.3 300 0.26 5

べき乗法 82.8 315 0.87 8 べき乗法の加速 81.3 314 0.26 5

SOR 43.4 165 1.85 15

両方 42.6 165 1.48 31 効率化指数= 8,282

また実験2で観察したように,基本法ではべき乗 法の収束が速いので,これを加速しても効果がない.

しかし,SOR法を用いるさらに効率化される.それ に対してべき乗法の収束が遅い双対法では,べき乗 法の加速が効果的である.その結果,実行時間が双 対法の原形に対して約0.7%(実行速度が約14倍)に なっている.

しかし,SOR法を用いるとかえって大幅に悪化し,

べき乗法の加速と併用しても,べき乗法の加速のみ に場合に及ばない.

表4は図6(b)の実ビデオ画像列にこれまでに述べ た方法を適用した場合の,再投影誤差が2.01画素4

4Kanade-Lucus-Tomasiの方法[14]による特徴点追跡の精度 には限界があり,2画素程度のふらつきがある.このため反復回数 をこれ以上に増やしても再投影誤差はこの値以下にはならなかっ

(8)

になるまでの実行時間(秒)と反復回数である.

図6(b)のような特徴点数が少なく(N = 16),フ レーム数が多い場合(M = 200)では基本法の原形は 多大な実行時間を要する.べき乗法を用いるとこれ は大幅に効率化され,実行時間が約4%(実行速度が 約26倍)になる.また他の例と同様に,べき乗法は 加速しても効果がないがSOR法によってさらに効率 化される.

しかし,それでも双対法の原形のほうが圧倒的に 効率的である.これは収束が極めて速いので,べき 乗法を用いるとかえって非効率になる.ただし,べき 乗法を加速すると原形と同等になり,実行時間が基 本法の原形に対して約0.01%(実行速度が約8,000 倍)になっている.

一方,SOR法を用いると悪化し,べき乗法の加速 と併用してもあまり改善されない.

8. まとめ

本論文では,未校正カメラで撮影した画像列上の 特徴点の追跡から3次元形状を計算する自己校正法 において最も計算時間を要する射影復元の反復を高 速化する手法を示した.そして,ミュレーションや 実ビデオ画像によって次のことを確認した.

1. 固有値計算をべき乗法に置き換えると反復回数 は増加するが,実行時間が大幅に削減される.特 に基本法に対して効果が著しい.

2. 基本法はべき乗法の収束が速い(第2固有値が 小さい)ので加速しても効果がない.それに対 して,双対法ではべき乗法の収束が遅い(第2 固有値が大きい)ので加速するとさらに効率化 される.

3. 部分空間の当てはめの反復にSOR法を適用す ると収束が早まるが,双対法では効果が少ない.

4. 基本法は特徴点数が著しく多く,フレーム数が 少ないとき有利であり,双対法は特徴点数が少 なく,フレーム数が著しく多いとき有利である.

5. 実際的な状況では双対法のほうが著しく効率的 であり,加速したべき乗法と組み合わせるのが 最善である.

ただし,実行時間は部分反復の収束判定定数や加速 定数の選択にも依存する.これらの真に最適な値を 定めることは未解決の問題である.

謝辞: 有益なコメントを頂いたNTTの宮川勲氏に感謝し ます.本研究の一部は文部科学省科学研究費基盤研究C (No. 17500112)の助成によった.

[10].

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