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1月 1日現在でおよそ 1800万人

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グローバル・イシューとしての「難民問題」

手元に今から

4

半世紀前、1992年

4月号の本誌がある。

『国際問題』第

385号の特集

は「今日の難民問題」。巻頭の本間浩氏による「現代国際社会における難民問題の諸 相と展望」は「世界各地にいる難民の総数は、1990年

1月 1日現在でおよそ 1800万人

に達していた」で始まる(1)。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の調べでは、当時 の難民総数はおよそ

1500

万人、これに国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)

の保護下にあるパレスチナ難民240万人、国連国境救援機関(UNBRO)の保護下にあ るカンボジア難民30万人を加えて1800万人となる。

時は東西冷戦構造の終焉直後。本間論文が「大量難民の流出が『難民の世紀』とし ばしばいわれる

20世紀にとどまらず、21世紀にはむしろいっそう大きな規模で頻発

するのではないか」(2)と懸念したとおり、21世紀は、少なくとも幕開けの

20年弱で

前世紀をはるかに凌ぐ勢いで難民数を更新している。

2016

年の「世界難民の日」に公表された

UNHCRの統計では、2015

年末時点で家を 追われた人の数は初めて6000万を超え、6530万人となった(難民

2130万人、国内避難

4080万人、先進諸国で庇護申請を行なった者 320万人)

(3)。世界の総人口

73億 4900万

人に対して

113人に 1

人が移動を強いられたことになる(1990年は

293人に 1

人)。

UNHCRは、人の強制的な移動は 1990

年代半ばから増加してきたものの過去

5年間、

特に増加傾向にある理由として「人道問題の長期化(ソマリア、アフガニスタン)」、「新 たな危機の頻発(シリア、南スーダン、イエメン、ブルンジ、ウクライナ、中央アフリカ 共和国など)」、「冷戦後の難民・国内避難民に対する解決策の減少」の

3点を挙げた

(4)

最大の難民出身国はシリア(490万人)、アフガニスタン(270万人)、ソマリア(110 万人)、国内避難民発生国はコロンビア(690万人)、シリア(660万人)、イラク(440万 人)である。2016年

7

月に再燃した南スーダンの内戦により、2017年初頭には

190

万 人が国内避難民として家を追われ、160万人が難民としてウガンダをはじめとする隣 国に流出(5)していることから、2017年

6月発表の統計では南スーダンが大きな焦点に

なることが予想される。

国際問題 No. 662(2017年6月)

1

◎ 巻 頭 エ ッ セ イ ◎

Osa Yukie

(2)

2015年には、地中海を経て欧州に渡る難民、移民が 100万人を超え、先進諸国での

新たな庇護申請数は

200

万人を超えた(6)。こうした先進諸国の負担や欧州の危機が大 きく報道されているが、今なお、難民の大多数は、出身地の周辺国である低所得また は中所得国にいる。難民の約

86%

(1390万人)が発展途上国におり、難民全体の4分

1が後発開発途上国リストの上位国に集中している。最大の難民受け入れ国はトル

コ(250万人)だが、総人口比で最も割合が高いのはレバノン(1000人中

183

人)、対国 内総生産(GDP)比で、最も経済的に厳しい状況で受け入れているのはコンゴ民主共 和国であり、難民の

51%

18歳未満の子どもである。

こうした息詰まるような統計を前に、私たちは何をどのように論じるべきだろう か。

主権国家体制への挑戦と難民問題のいびつさ

21

世紀の難民問題は、国土(領土)・国民・政府の

3要件を基礎とする主権国家体制

への挑戦、あるいは主権国家体制の危機として語られることが多い。列強によって人 工的に引かれた国境線の正統性に異議申し立てをする論拠を含むのも難民問題であ り、厳格な国境管理に基礎を置く、ウェストファリア体制を真っ向から揺さぶってい る。しかしそもそも、今、命の危険に晒され逃げ惑う人にとって、あるいは「国境」

という概念の乏しい人々にとって難民問題とは何を意味するのだろう。

歴史上存在してきたさまざまな帝国、その時代の「国際社会」とも呼べるようなま とまりや体制に共通する特徴は、共通の文化や文明に基礎を置いた点にある。この意 味で今日の国際社会も、その起源は、特定の時期の特定の社会、すなわち

17世紀の

ヨーロッパにある。こうした限定的な条件のもとで出発した仕組みが今日の地球全体 を覆っている以上、その枠に入りきらない、あるいはその枠では解決しきれない問題 の噴出は当然ではなかろうか。

そもそも、人は移動する動物である。国境内での移動は(一部の地域や国家を除い て)基本的人権として保障されているが、国内で移動する理由をみれば、難民問題の いびつさが浮き彫りになるだろう。いずれの国においても、周辺・辺境部から都市部 への移動は自然な流れである。迫害や差別、自然災害や極度な貧困のみならず、豊か な教育、よりよい就業機会、利便な都市生活を求めて人は移動する。その人口移動と ともに近代国家は生産性を高め、発展を遂げてきた。経済や教育という一国内であれ ば、ごくごく自然な、正当と認められる移動理由が国境を越えた途端に、不法・違法 のカテゴリーに入る。

難民、移民といった区別そのものが、ルールを決めた側の論理であるという主張も 成り立とう。難民問題とは、ルールを決められた側からの、ルールを決め、その果実 を享受してきた世界、国境によって守られてきた国々への異議申し立てと言えるかも

巻頭エッセイ◎21世紀の「難民問題」

国際問題 No. 662(2017年6月)

2

(3)

しれない。

難民受け入れ・認定の政治性、難民押し出しの戦略性

国境管理の限界上、難民の流入を食い止める術をもたない国家は別として、一般 に、どれほどの規模で、どのような人間を、どのようなステイタスで受け入れるか は、受け入れ国の国としての在り方を問い、規範や価値観を体現する重要課題であ る。誰を難民として認定するかは、難民出身国との関係を含め、外交政策と高度にリ ンクする、すぐれて政治的な問題でもある。

他方で国民を守るどころか自ら危害を加え、その一部を国外に追い出す政府、ある いは他民族・他宗派に属する人々や自らの支配に服従しない人々を、凄惨な暴力によ り、支配地域外に流出させる非政府勢力(NSA: Non State Actor)にとっても、難民問 題は、すぐれて政治的かつ戦略的な問題である。どのような集団であれ「敵」と規定 した人々を追い出し、地域を「浄化」し、服従するほかに選択肢も行き場のない人々 のみを自らの支配下に置けば統治も容易になる。こうした手法をとる「イスラム国

(IS)」のような

NSAは、多くの難民を生み出せば生み出すほど、またその手法が残忍

であればあるほど、国際的なメディアを通じて報道され、認知度が高まるという現状 がある。和平交渉や平和構築の主体として認められる可能性も高まる。過激な方法で 既存のルールに挑戦すればするほど、認知度が上がる一方で、穏健な方法で既存のル ールにのっとった異議申し立てをしても、目的は一切達成できないことを、当事者た ちは経験的に知ってしまったのではなかろうか。

3

月下旬、南スーダンから70万人を超える難民が流入しているウガンダ、そしてケ ニアの国境地帯を訪れた。筆者が理事長を務める難民を助ける会(AAR Japan)の事 業地である。そこで話を聞いた難民一人一人のストーリーに圧倒されたが、彼らが異 口同音に口にした、ささやかな希望は、祖国に戻り平凡な暮らしを取り返すことだ。

警察官だった父を殺され、兄と

2人で逃げてきた少女の目は深い闇のようだった。

彼らに戻る祖国はあるのだろうか。

「難民の世紀」と呼ばれた

20

世紀に続く今世紀はどのような呼称が付くのだろう。

「新しい中世」か「国境のない世紀」か。ただしそれは、ジョン・レノンが『イマジ ン』で歌ったように、国がなくなり世界が一つになるからではなく、難民問題の帰結 として出現するのかもしれない。

1) 本間浩「現代国際社会における難民問題の諸相と展望」『国際問題』第385号(1992年4 月)、2ページ。

2) 同上、3ページ。

3 UNHCR, Global Trends 2015〈http://www.unhcr.org/global-trends-2015.html〉、UNHCR「プレ

巻頭エッセイ◎21世紀の「難民問題」

国際問題 No. 662(2017年6月)

3

(4)

スリリース、グローバル・トレンズ2015」2016年6月20日〈http://www.unhcr.or.jp/html/2016/06/

pr-160620.html〉。以下特にことわりがない限り、統計は「グローバル・トレンズ2015」によ

る。

4) 同上。

5 UNOCHA(国連人道問題調整事務所), “South Sudan: Humanitarian Snapshot, February 2017”

〈https://www.humanitarianresponse.info/system/files/documents/files/20170310_south_sudan_humanit arian_snapshot_feb.pdf〉.

6 2015年末時点で審査中の庇護申請数は320万人となり、庇護申請数の上位はドイツ(44 万1900人)、アメリカ(17万2700人)、スウェーデン(15万6000人)、ロシア(15万2500 人)である。

巻頭エッセイ◎21世紀の「難民問題」

国際問題 No. 662(2017年6月)

4

おさ・ゆきえ 立教大学大学院教授/

特定非営利活動法人 難民を助ける会(AAR Japan)理事長 http://www.aarjapan.gr.jp/

Referensi

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人文科学)理事、英国日本協会、国際貿易研究所の理事を務めている。また、日本、アジア、20世紀 史、イタリアに関する 14冊の本を執筆しており、2017 年には「『西洋』の終わり」を出版。最新作 「Japan's Far More Female Future」は、日本語版が2019年6月に日本経済新聞社から、英語版が

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