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組織調査論
2.1 調査の企画と既存データの収集
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1. 調査企画書の作成
• 調査の企画書の持つ意味
– 調査企画書:調査計画のアウトラインを記した書類 – 重要なコミュニケーション・ツール
• 調査というのは、多くの人々に関わり、多くの資源を用いながら行うもので あるので、こうした調査企画書は調査協力や資源提供、指導・助言をして くれる人々に対して自分の調査について説明してくれる
「なぜこの調査を行わなければならないのか」という理由示す – 調査企画書を持って相談する
①自分に対して、②指導教員や上司に対して、③調査対象者に対するコミュ ニケーションで役立つ。
(1)調査企画書に書く内容
1)タイトル 2)調査の目的 3)調査の背景 4)主な調査事項 5)調査対象 6)調査の方法
7)調査のスケジュール計画 8)期待される結果 9)調査の準備状況 10)主な関連文献
★A4版の紙で1〜2枚程度でよい
(2)企画書の作成プロセス
テーマの選択 ↓
既存の研究文献の収集と整理 ↓
既存の関連する2次的データ
(統計、調査データ)の収集と整理 ↓
ブレーンストーミング ↓
調査企画書の作成
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テーマの選択
①自分の興味と合う。
②先生や上司、クライアントの興味や意見と合う。
③広すぎないし、狭すぎない。
④十分なレポートとしての可能性がある。
⑤文献や調査データが十分ある。
⑥新しい調査的発見がある。
⑦テーマを自分自身で理解できる。
⑧自分に与えられた時間で解決ができる。
(阪田ほか , 1998 , 15 頁)。
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2.その後の流れ
2.既存の研究文献の収集と整理
• ライブラリワークを含めて次に
3.既存の2次的データ(統計、調査データ)の収集整理
• 収集データの整理と傾向の把握
4.ブレーンストーミング
• 先行の研究や調査の資料をもとに明らかなことを整理
• キーワードやキー概念を組み直していく
• 調査の目的、テーマ、具体的事項の整理
5.調査企画書の作成
• アドバイスを受けながら作成する
先行研究文献の調べ方(1)
(1)基本的な文献から探す
– 教科書や概説書や詳細な事典からから探すやり方である。教科書や概説 書、
(2)図書館の本棚から探す
– もっとも基本的なやり方である。経営学のコーナーに行って調査テーマ
(「社内ベンチャー」)について書いてありそうな本を、タイトルから判断して 片っ端から調べていくやり方である。
(3)大学や専門機関のコンピュータ検索システム
– 図書館情報システムを使って、キーワードを用いて関連する本や雑誌を 調べられるので便利である。
(4)様々な文献情報データベース
– 近年はインターネット資源により、様々な文献データベース(以下DB)が 簡単に引けるようになった。
先行研究文献の調べ方(2)各種データベース
1. 和書・洋書(本・報告書)
1.NACSIS Webcat 日本の大学図書館検索エンジン http://webcat.nacsis.ac.jp/
• 日本の大学図書館に収められている和書、洋書がほとんど検索できる。
2.京都大学OPAC http://kensaku.libnet.kulib.kyoto-u.ac.jp/
3.アマゾン・ドット・コム http://www.amazon.co.jp/
– 現在発行中の和洋書を検索・発注できるインターネット書店 2. 雑誌記事
(いずれも京都大学附属図書館httpより内部利用)
A.日本語雑誌
1.『雑誌記事索引』 日本語雑誌の論文・記事検索DB
http://opac.ndl.go.jp/2.NACSIS-IR http://ddb.libnet.kulib.kyoto-u.ac.jp/lusr/nacsisir.html B.英語雑誌
1.Web of Science 社会科学文献検索SSCIが使える
2.EBSCO host 経営学関連文献全文検索可能。ダウンロード可能。
3.JSTOR アメリカ主要学会誌の全文検索、ダウンロード可能。
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先行研究文献の調べ方(3) 書籍・報告書など
学部図書館にある?
他大学で閲覧可能か ILLサービスで取り寄せ?
学内にある?
借りる
他部局図書館に行く
経済学部図書館で 紹介状を申し込む
附属図書館1F⑦カウンター で有料申込
他大学へ行く
●どうやって手に入れるのか YES NO
YES
NO YES
NO
YES
NO
世のあわれを感じる
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先行研究文献の調べ方(4) 雑誌記事
ダウンロード可能?
他大学で閲覧可能か ILLサービスで取り寄せ?
学内にある?
ダウンロード・印刷
ある部局図書館に行く
経済学部図書館で 紹介状を申し込む
附属図書館1F⑦カウンター で有料申込
他大学へ行く
●どうやって手に入れるのか YES NO
YES
NO YES
NO
YES
NO
世のあわれを感じる
図書館情報システムについて(1)
• 経済学部図書館ホームページにアドレスがある http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/˜library/
Beautifully Designed by 閲覧掛・奥野氏
図書館情報システムについて(2)
京都大学OPAC
NACSISWebcat
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図書館情報システムについて(3)
様々な経営関係データベース
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経営関係の代表誌(1)日本の場合
経営関係の代表誌(2)欧米の場合 2.既存データの収集
•調査企画を立案するため、またレビュー調査をするた めに既存データを収集
流れ
①集める既存データのテーマの明確化
↓
②集める既存データの種類の特定
↓
③既存データの所在源を特定
↓
④データへのアクセスと収集
↓
⑤既存データの整理と分析
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既存データの種類
年次別に経営・産業を分析した統計調査、報告書、政府出版 物、本、雑誌。例:『平成十三年度中小企業白書』。
年次別
地域別の経営・産業に関する報告書。
例:ジェトロ『ビジネスガイド タイ』
地域別 各種報告書、
レポート
政府、企業、団体により行われる時事問題に関する統計 例:経済産業省「日米電子商取引の市場規模調査」
不定期的調査
政府による産業、経営、雇用動向の定期的に行われる統計。
例:経済産業省「企業動向調査」。
定期的調査
政府による産業、雇用、消費動向に関する統計。
例:総務庁「事業所統計調査」。
全国統計 統計調査
企業の活動についてのテレビ、ラジオ、ビデオ資料。または 録音・録画されたインタビュー。
例:「NHKスペシャル 電子立国日本の自叙伝」
映像・音声記 録・資料
企業などの自身の記録、手紙、活動日誌、社史、議事録。企 業活動についての雑誌・新聞記事、本。
例:「広報部業務日誌」
文字記録資料 記録・資料
具体例 種類
データ形態
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収集の例
• 食品メーカーでの年俸制実施とモティベーション 1. テーマと同じ先行調査
2. テーマの背景データ
– 年俸制実施状況、賃金水準推移、従業員の評価 3. 調査対象の企業の経営データ
– 経営・財務・賃金
4. 食品産業の平均的経営データ – 経営・財務・賃金
既存データの種類
(1)企業に関する記録・資料
(a)企業概要
– 『会社年鑑』(日本経済新聞社)、『会社四季報』(東洋経済新報社)
(b)企業の詳しい情報
– 上場会社・店頭企業には『有価証券報告書』
(c)企業の歴史
– 『会社史総合目録』(日本経営史研究所)
(d)企業についての本を探す
– 『日本書籍総合目録』(日本書籍出版協会)
(e)企業に関する新聞・雑誌記事を探す
– 『日本経済新聞社』、『日経ビジネス』、『週刊東洋経済』などのバックナンバー – 『日経テレコン21』(新聞雑誌記事データベース:調査資料室代行検索)
– 『雑誌記事索引』
(f)調査研究の本、報告書、雑誌論文
全国大学図書館蔵書検索システムNACSIS Webcatが便利
(2)企業・産業に関する統計調査情報
(a)官公庁情報
• 「白書」や公刊統計等
(b)民間機関情報
• 帝国データバンクの全国企業倒産集計など
(c)非定期に行われる調査やアンケート
• 新聞や雑誌の記事を通じて調査を調べる。そして、図
書館で所蔵を確認する。
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(3)企業情報関係のインターネット資源
• 『日経ムック 日経インターネットイエローページ2001』
(日本経済新聞社:経済学部図書館所蔵)
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主な企業情報データベースの例
(A)日本語による企業情報
1)帝国データバンク企業情報、東京商工リサーチ企業情報 日経テレコン内
2)有価証券報告書DB 証券報告書(eol Tower Service) 経済学部図書室ホームページより利用可能 3)ダイヤモンド会社組織図情報 (附属図書館にて利用可能)
4)新聞・雑誌記事データベース 日経テレコン(調査資料室代行検索)など
(B)英語による企業情報
1)EBSCO host内での企業情報データ(Company Profile)の提供 2)アメリカのDun & Bradstreet社の企業情報データベース 世界的な企業情報データベース。
3)欧州の企業情報データベースKOMPASS Western Europe 4)外国の新聞データベース
5)海外経営系雑誌記事データベースABI/Inform 経営にかかわる英語雑誌記事データベース。
英米のビジネススクールでは必ずあり、文献調査はこれで行う。
既存データの分析
• 既存データの長短所
○長所
①調査にかかる時間、資源、エネ ルギーを減らせる。
②結果の予想に役立つ
③時系列的な変化をおえる
④背景の理解に役立つ
⑤既存データの再検討からの再 発見もある
×短所
①目的や関心の違い
②利用が、難しかったり、高価な 場合
③収集や整理、分類が不適
④表示や記述の形式が再利用 に不向きなものもある
●既存データには癖がある
作成主体の目的、利害、関心、視点、能力などに制 約
既存データの検討ポイント
• 既存データの特性の四つの検討ポイント(Saunders et al., 2000, 202-206)
①測定尺度に妥当性があるかである。
②既存の調査や統計では、測定すべき重要な変数が欠けてい ることが多い。
③既存データの測定の正確さや信頼性
④調査者の見方の偏りや意図的操作による測定バイアス
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代表的な既存データ
1. 財務データ=>経営分析
2. 市場でのポジショニング=>市場構造分析 3. 歴史的データ=>社史のデータ
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付録:その他の経済学部所蔵のマルチメディア資料
経済学部調査資料室マルチメディア資料参照
•
http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/˜chousa/multi -medialist.html 1. CD−ROM
– 組織図・事業所便覧:ダイヤモンド社<2001年><2003 年>
– IT企業年鑑:日本経済新聞社<2002年版>
– 日経ベンチャービジネス年鑑:日本経済新聞社<2003年版>
– ダイヤモンド会社要覧[全上場・全店頭登録・非上場会社版]:ダイヤモンド社<2002 年版>
– ダイヤモンド会社職員録[全上場会社版]:ダイヤモンド社<2003年版>
– 会社財務カルテCD-ROM:東洋経済新報社<2003 年版>
– 外資系企業CD-ROM:東洋経済新報社<2002 年版>
– 中国進出企業一覧:21世紀中国総研編<2003 年>
– 日経外食・フードビジネス企業年鑑:日本経済新聞社<2004>
2. VIDEO
– プロジェクトX全巻– 実践 顧客満足(全2巻)、日本経済新聞社 – 日本の企業家群像(全7巻)