財団法人 日本国際問題研究所 THE JAPAN INSTITUTE OF INTERNATIONAL AFFAIRS(JIIA)
【 要留意日程案 4月16日〜5月14日 】
4月
27日(日) 韓国与党・民主党党大会 29日(月)− 6 月 29 日(土) 北朝鮮「アリラン」祝典
後半 胡錦濤中国国家副主席シンガポール、マレイシア、アメリカ 訪問
5月
5日(日) 仏大統領選挙決選投票
10日(金) ハンナラ党(韓国最大野党)全党大会
117
C O N T E N T S
視点 Point of View
9. 11
後の米国の対外姿勢をめぐる議論 ……… 新田紀子……2
国際会議・シンポジウム
「アンゴラからジンバブエ:アフリカの紛争とガバナンス」
シンポジウム報告……… 堀内伸介……
4
第8回アジア太平洋地域経済会議(箱根フォーラム)
の開催……… 鳥居博一……
5 JIIA 講演・懇談会
シュタンゼル独外務省アジア・大洋州局長との懇談会……… 片岡貞治……
5
アンドレイ・ピンコフ=カナダ漢和情報センター高級研究
員との懇談会……… 飛鳥田麻生…
6
ファウラー=カナダ首相代表およびフライ英国外務副次
官との懇談会……… 片岡貞治……
6
南東欧ワークショップ「市場経済化における政府の役割」… 末澤恵美……7
第 103 回理事会、第 7 回評議員会 JIIA 活動日誌
目 次
No.
2002 ・ 4
ブッシュ 大統領 は、米 国本土 、それ も軍事 、経 済の中枢部 へのテ ロ攻撃 という 前例の ない、 未曾 有の惨事に 毅然と 対応し 、大統 領と米 国旗の 下に 結集した米国民の期待に報いた 。9.11から半 年以 上という予 想以上 の長い 間、大 統領の 仕事振 りと テロ への対 応の両 面で
7
割以上 という 異例の 高い 支持率を維 持して いる。 こうし た中で 、アフ ガニ スタンでの 軍事作 戦は継 続して いるが 、第二 段階 としてイラ クが浮 上して いる。 しかし 同盟国 や中 東諸国の支 持取り 付けは 容易で はない 。米国 内で どのような議論が行われているのだろうか。ブッシ ュ政権 の対外 姿勢に ついて は、9.11前 、 京都議定書 、CT BT(包 括 的 核 実 験 禁 止 条 約 )など 各種の多国 間枠組 みを嫌 いまた 撤退す る傾向 を示 し、狭い意味で の国益 中心の 単独行 動主義(ユ ニ ラ テラリ ズ ム )ではな いかと 懸念す る声が 国内外 で聞 かれた。しかし、9.11へ の対応 の過程 で、国 際的 な対テロ連 合形成 に向け 、ロシ アや中 国との 関係 改善、アフ ガニス タン内 の複雑 な情勢 や周辺 諸国 の情勢に配 慮した 対応、 APE CやW TOの 場で の 合意形 成の努 力など 、多国 間主義(マ ル チ ラ テ ラ リズム)とは言えな いが国 際協調 主義的 姿勢に 変化 したのではないかとみられた。
しかし、 その後 も、A BM条 約から の一方 的撤 退、大量破 壊兵器 拡散へ の懸念 を強く 表明し なが ら、依然と してC TBT に反対 する姿 勢など 、自 国中心的な 単独行 動主義 は変わ ってい ないと の見 方や批判が されて いる。 米欧関 係につ いても 、両 者間 の「利 益と軍 事力の 不均衡 の拡大 」の故 に摩
擦が伝 えられ ている 。そし て1月 末の一 般教書 演 説における「悪の枢軸」発言やその後の「核態勢の 見直し」の秘密指定分の内容のリーク報道があった。
前者 につい ては、 北朝鮮 、イラ ン、イ ラクそ れ ぞれにブッシュ政権として無視できない状況があっ たと思われるが、「悪」という表現は善悪二元論 的 なアプ ローチ であり 、非妥 協的な 姿勢が 浮かび 上 がる。 また
3
カ国を 同列に 論じそ れを一 つに括 る ことの問題は否定できない。後者 につい ては、 前述の
3
カ国 にシリ ア、リ ビ ア、中国、ロシアが米国の核配備計画の対象となっ ている との内 容は、 当該国 からの 反発を 別にす れ ば、欧 州から は通常 の計画 立案と の冷静 な見方 も 聞かれ るが、 地下施 設の破 壊など 通常兵 器では 困 難な場 合にお ける使 える核 兵器の 開発な どへの 言 及は米国内でも論議を呼んだ。それではイラク、「悪の枢軸」発言そして米国 の とるべ き対外 姿勢に ついて ブッシ ュ政権 以外の 声 はどのようなものなのか。
イラ クにつ いては 、政権 発足以 前から 体制変 革
(regime change)の必要を主張する人々がおり、ウォ
ルフォ ヴィッ ツ国防 副長官 など一 部は政 権入り し ている 。また クリス トル元 クウェ イル副 大統領 首 席補佐 官など は、米 国の対 外的な 指導力 の積極 的 な発揮 を求め ており 、イラ クに対 しても 同じく 強 硬な姿勢を主張している。共和 党や保 守派だ けでは ない。 イラク に関す る 最強硬派の1人であるパール元国防次官補とファー ス元安 全保障 問題担 当ゴア 副大統 領補佐 官のイ ラ
新田紀子
アメリカ研究センター主任研究員NITTA, Noriko, Senior Research Fellow, Center for American Studies
【プロフィール】
慶応義塾大学法学部政治学科卒、スタンフォード大学政治学修士号取得。外務省入省後、
海外広報課、在カンザス・シティ総領事館、北米第一課課長補佐を経て、1999 年 12 月 より JIIA アメリカ研究センター主任研究員兼太平洋経済協力会議(PECC)日本委員会事務 局次長
【主な論文】
「変化の信託を担うクリントン氏」『外交フォーラム』(1992 年 12 月号)、「米国の独立 検察官制度―その成立と展開―」『議会政治研究』 (1995 年9月)、「「実験国家・アメリ カ」の不安」『This is 読売』(1996 年 10 月号)、「ブッシュ大統領の政治姿勢―「思いや りのある保守主義」を中心に―」『平成 12 年度外務省委託研究報告書 米国内政:共和 党−現状と動向−』( 2001 年 3 月)
クに関する 論戦は 興味深 い。タ イミン グやそ のイ ンプリケー ション への配 慮や国 際的な 支持や 協調 の必要性に ついて 違いが あり、 それは また重 要な 点であるが 、フセ イン体 制の変 更が必 要との 考え 方に相違はない。ゴア前副大統領も最近の演 説で、
テロ の脅威 の根源 となる 原因(root cause)に 目を 向ける必要性や、軍事行動の「失敗は許され 」ず、
また 米国の 「死活 的利益 に…… どのよ うな余 波を 伴うかにつ いて十 分な配 慮」が 必要と 強調し なが らも、「外交的余波への考慮を後回しにしても「悪」
を「悪」と 呼ぶこ とその ものが 価値を 持つこ とも ある」と述べている(ともに『論座』2002 年 4 月号)。 民主党の中には意見の違いがあ るが 、2000年 の大 統領選挙で 同党の 副大統 領候補 であっ たリー バー マン上院議 員はイ ラクに おける 体制変 革を強 く主 張している。
ニューヨー ク・ タ イムズ 紙のト マス ・ フリ ード マン は、ブ ッシュ 政権の 外交に 対する 問題 や「悪 の枢軸」発言への批判を受け入れるとしなが らも、
テロ に対し て「失 われた 米国の 抑止力 」を回 復す る意思の表 れの一 つとし て肯定 してい る。こ うし た発言の背 景には 、米国 の世界 におけ る圧倒 的に 優位な立場があろうが、まさに
9.11
がもたら した 影 響であ ろう。 ジョ セ フ ・ ナ イ 元 国 防 次 官 補 は 、 米国は一般 的には 多国間 主義を 選択す べきで ある と主張して いるが 、単独 行動が 適切な 場合に はそ れを辞すべきではないと明確に述べている。3
月 上旬の1
つの 世論調 査に よ れ ば 、 イ ラ ク の 体制変革の ための 軍事行 動を支 持し、 米国内 での テロリスト の大規 模な攻 撃の可 能性に 懸念を 持つ 者はそれぞ れ約7 割であ る。2 月には 、イラ クに 言及してい るわけ ではな いが、 幅広い 政治的 スペ クトラムの 知識人 が対テ ロ戦争 を支持 する公 開書 簡を発出した。外交問題評議会のウォルター・ラッ セル・ ミー ドは3
月の講 演で、 半年前 は体制 変革 という考え 方に納 得して いなか ったが 、と考 え方 の変化を示 唆し、 事実を よく見 て欲し いと語 って いた。イラクの大量破壊兵器(核 、 生 物 、 化 学 )の脅 威を 指摘し、軍 事力行 使を視 野にお いてい る米国 であ る。しかし イラク は破綻 国家ア フガニ スタン とは 異なる。ま た対テ ロ戦の 第一段 階で米 国と共 同歩 調をとった 各国の 中には それぞ れの事 情があ る。
米国は「一人で行く(go‑it‑alone)」のであろうか。
まずブッシュ政権の2つの動きを指摘したい。
ブ ッ シ ュ 大 統 領 は 、 大 統 領 選 挙 戦 中 、 国 づ く り
(nation‑building)へ の米国 の関与 に否定 的であ っ
た。アフガニスタンにおいても当初同様であった。しかし 最近、 アフガ ニスタ ンへの コミッ トメン ト に言及 し、ま た一般 教書演 説の後 半では 、平和 部 隊の拡 大とい う形で の米国 の対外 的な関 与につ い て述べ た。ま た、こ れまで 一般に 消極的 であっ た 対外援助についても、貧困が直接ではないにせ よ、
テロ の温床 を作る 原 因 に な る と の 認 識 を 披 露 し 、 まだ不 十分と の声は あるが 、対外 援助の 3年間 で
50
億ドル増と援助と改革を 結びつ けたア プロー チ を発表 した。 前者に ついて は、ど こまで のコミ ッ トメン トなの か見定 める必 要があ り、後 者につ い ては、 議会の 支持を 得るた めに、 大統領 が高い 支 持率と いう政 治的資 産を使 ってど れだけ 実現に 努 めるか 見守る 必要が あるが 、姿勢 の変化 を示す も のなのかどうかを注視する必要がある。チェ イニー 副大統 領がイ ラクを 念頭に 支持と 理 解を得 るべく 中東諸 国を歴 訪した 。米国 の対外 政 策をめ ぐる最 近の識 者の議 論では 、米国 が同盟 国 や他国 の支持 を得る ことの 必要性 があら ためて 確 認さ れてい る。J・ アイ ケン ベ リ ー 教 授 は 、9 .11 を、米 国がパ ワーを 抑制し ながら 各国か らの協 力 を得、 また安 全保障 や市場 へのア クセス を提供 し ながら 、外交 や後方 支援を 得ると いうこ れまで の 協力関 係を更 新する 機会に しなけ ればな らない と 述べ 、保守 派の
F・ フ クヤマ も、イ ラ ク 戦 に つ い
て「依 然とし て単独 行動は 不可能 であり 、同盟 と 支持を培う努力が必要」(読売新聞3
月18
日)と 述 べている。9.11
の衝撃 は、米 国に対 する脅 威を座 視 せ ず 、 単独での行動を躊躇しないとの姿勢を強めさせた。他方、 この「新しい 戦争」 に勝利 するた めには 他 国の協 力が必 要なこ とも明 白であ る。文 明間の 対 立とい う構図 に陥る ことを 回避し 、イス ラム教 と テロリ ストを 注意深 く差別 化して きたブ ッシュ 大 統領である。9.11後、自身 の直感 への信 頼を増 し たと言 われる が、イ ラクや 深刻化 する中 東情勢 と いう現実に直面しその対応が注目 される 。
9.11
後 のブッシュ外交の成否が問われるであろう。(3
月27
日記) JIIA Newsletter3
月12
日にプレトリア 大学に おいて 、当研 究所 と南アフリ カ国際 問題研 究所、 プレト リア大 学国 際政治研究 センタ ー共催 のシン ポジウ ムが行 われ た。わが日 本国際 問題研 究所に とって アフリ カの 研究所との共催シンポジウムは最初のものである。アンゴラは 最近内 戦和解 の障害 であっ た反政 府軍
(UNITA)の指 導者サ ビンビ の戦死 があり 、こ れが今まで 幾度と なく合 意され ては破 棄され た内 戦の終焉に 通じる 可能性 も大き くなっ た。ジ ンバ ブエでは
3
月9
日、10日、11日に大統 領選挙 が世 界の注目の 下に行 われ、 その結 果如何 では、 内政 の不安定化 、悪く すれば 内戦へ の突入 も予想 され るときであ り、シ ンポの 課題は 非常に 時宜を 得た ものであった。シンポジ ウムは 在南ア フリカ 榎大使 による 日本 と南アフリ カの研 究所が シンポ ジウム を共催 する ことは日南 ア関係 の幅を 広げる もので あると の挨 拶で始まり 、モロ 南ア国 際問題 研究所 理事、 堀内 日本国際問 題研究 所客員 研究員 の共同 議長の 下に 4課題について討議が行われた。
第一は 紛争調 停 か ら 学 ん だ も の 、 第 二 は 制 裁 、 条件、紛争防 止、第 三は紛 争防止 : 国 際機関 の役 割、第四は アンゴ ラ、ス ーダン 、ジン バブエ 、モ ザンビーク、 リベリ ア、シ エラ ・ レオ ーネの ケー ス・スタデ ィであ った。 パネリ ストは 日本か らは 日本大学の青木一能教授、中部大学の峯陽一 教授、
日本国際問 題研究 所の片 岡貞治 研究員 、南ア から はミルズ南ア 国問研 所長、 ホン ・ エッ ク国際 政治 研 究セン ター教 授 を 含 め 、 南 ア 外 務 省 、 N G O 、
本とし て新た なアプ ローチ が検討 される べきで は ないか との見 解が強 調され た。外 からの 調停案 の 押し付 けでは なく当 事者の オーナ ーシッ プが尊 重 され、 時間を かけた 信頼の 醸成、 エリー ト政治 家 のみの 参加で はなく 、草の 根の国 民を巻 きこん だ 調停、 軍の使 用に替 わる手 段、紛 争の原 因の正 確 かつ詳細な調査等の必要性が議論された。ケース・
スタ ディで は、軍 閥 の 参 加 、 和 解 成 立 後 の 社 会 、 経済の 再建過 程にお ける不 平等の 是正、 ジンバ ブ エにお いては 国家統 一政権 と新憲 法によ って大 統 領の権 限の大 幅な削 減が、 長期的 な政治 の安定 の 必要条 件、ア ンゴラ の紛争 による SAD Cの内 部 の深刻な亀裂の発生等が指摘された。
政治 的なガ バナン スにつ いては 、突っ 込んだ 議 論に入 る時間 がなか った。 しかし 、多く のアフ リ カ諸国 の政府 が一部 のエリ ートに よって 支配さ れ ており 、複数 政党制 に基づ く選挙 が行わ れてい る が、必 ずしも 民主的 な政府 が実現 してい ない現 実 を前提 とする 議論が 当然と 受けと られて いた。 貧 弱な政 治ガバ ナンス がアフ リカ諸 国の諸 問題の 根 底にあ ること につい て、聴 衆から も異論 がなか っ たことは印象的であった。
昨年 、アフ リカ諸 国が開 発のイ ニシア ティブ を とり、 アフリ カ全体 の開発 戦略N EPA Dをま と め、G 7もこ れを支 援する ことに 決定し た。ア フ リカの パネリ ストは 全員が NEP ADに ついて 言 及した 。NE PAD は理想 的、理 論的過 ぎて開 発 成績の 良い国 にのみ 適応す るもの である 。NE P ADは 援助資 金が課 題では なく、 政府と 民間の 密 接な 協力が 中心で あ る 。 N E P A D は 良 い 統 治 、 平和 、安全 を開発 の 前 提 条 件 と し て い る も の で 、 アフリカ諸国の民主化が前進しなければならな い、
等々で ある。 もっと も強調 された 見解は 、NE P ADは アフリ カに新 しい機 会を供 するも のであ る が、こ れが最 後の機 会であ り、失 敗すれ ば、ア フ リカへの世界の信頼は著しく損なわれるであろ う、
という点であった。その通りであろう。
「アンゴラからジンバブエ:アフリカの 紛争とガバナンス」シンポジウム報告
"A n g o la to Zimb ab w e: Co n flicts an d G o v ern an ce in A frica" Sy mp os iu m Rep ort
堀内 伸介 グローバルイシューズ客員研究員 H O RIU CH I Sh in s u ke A d ju n ct Res earch Fello w
ア ジア太 平洋協 力に関 するJ IIA 主催 第
8
回「箱根フォー ラム」 が外務 省の協 力を得 て、3月
9
日および10
日の両 日に開 催され た。海 外から は、タリン・タイ元大蔵大臣、エスタニスラオ・元フィ リピン財務長 官、李 ・ 台 湾銀行 総裁、 オーバ ーホ ルト・ハー バード 大学上 級研究 員らア ジア太 平洋 地域 の政府 関係者 、学識 経験者 など
9
名の参 加を 得、日本側 からは 、松永 信雄J IIA 副会長 、大 島正太郎外 務審議 官、榊 原英資 慶応義 塾大学 教授 らが出席した。当会議 では「 マ ー ケ ッ ト と 外 交 」 を 議 題 と し 、
①東アジア の金融 危機な ど、金 融市場 の変化 が外 交政策に与 えた影 響、② ヘッジ ファン ドや多 国籍 企業の行動に 対する 外交上 の措置 ・ 国 際協力 のあ り方と国家としての政策手段などが論議された。
①の点で は、東 アジア 金融危 機の起 因の分 析と ともに、再 発防止 措置の あり方 が論じ られ、 金融 危機がIM Fに対 する不 信感を 惹起さ せた点 、I MF 、世銀 の行動 指針と いうべ き「ワ シント ン合 意」の矛盾 点がア ジアか らの参 加者か ら提起 され た。また金 融危機 を契機 とした 構造改 革では 、日 本の金融機 関にお ける構 造改革 の遅れ が各国 から 指 摘され 、改革 に は 、 政 治 的 な 決 断 力 と と も に 、 国民の理解 が不可 欠であ る点な どが韓 国など から 指摘された。
②の点で は、既 存のス ワップ 協定の 拡大化 と通 貨バスケッ ト方式 の検討 、市場 監視シ ステム の構 築、アジア 通貨基 金創設 の必要 性の検 証など 、地 域の金融市 場の安 定と強 化につ いての 議論が 展開 され、東ア ジアの 統一通 貨の検 討を始 めるべ きと の意見も出 された 。当会 議は、 非公式 かつ個 人の 資格による 自由な 意見交 換の場 であり 、コン セン サスを求め るもの ではな かった が、競 争的、 効率 的な開かれた 市場作 りのた め、各 国 ・ 地域が 相互 の理解、信 頼醸成 のもと でのル ール化 、枠組 みを 作っていく点では、概ね意見が一致した。
2月5日、「日独フォーラム」の枠組みで訪日 中 のシュタ ンゼル 独外務 省アジ ア ・ 大洋州 局長を お 招きして 、「9・11テロ攻撃 後のド イツの 対アジ ア 政策 ?」と 題した 懇 談 会 が 開 催 さ れ た 。 司 会 は 、 石川薫当研究所所長代行が務めた。
会議概要
一国の外交というものが、その国の歴史、国 益、
権益、 文化や 伝統に よって 策定さ れるも のであ る とすれ ば、外 国との 関係と いうも のも同 じ要素 に よって 策定さ れるべ きであ る。い かなる 諸国も 他 の諸国 とのパ ートナ ーシッ プを探 してい るので あ る。浅 いパー トナー シップ もあれ ば、き わめて 緊 密なパ ートナ ーシッ プもあ る。い かなる 国も自 ら 依拠す べきパ ートナ ーシッ プを求 めてい るので あ る。こ うした 観点か ら、ア ジアは ドイツ にとっ て 何を意味するのであろうか。アジアは政治的に も、
文化的 にも、 特に経 済的に ドイツ にとっ て重要 で あり、 より緊 密なパ ートナ ーシッ プを構 築しな け ればならないということである。
9・11
テロ 攻撃は 世界を 揺るが した 。 そ れ に 続 く米国 主導の アフガ ン攻撃 にはド イツを 始めと し た欧州諸国は大きな役割を演じることはできなかっ た。 しかし 、9・11テロ攻 撃が惹 起し た 新 た な 問 題に対 してド イツと 欧州は 適切に 対処し ていか な ければ ならな い。今 後のア フガン 復興の ための サ ポート 、アフ ガンに おける 治安維 持、さ まざま な 側面か らのテ ロ対策 等多く の問題 が山積 みされ て いる。欧州とアジアは政治的にそのパートナーシッ プを強 化して 、協力 し合っ て、こ うした 問題に 対 してよ り有効 に取り 組んで いくこ とが今 こそ求 め られているのである。JIIA Newsletter
第8回アジア太平洋地域経済会議
(箱根フォーラム)
の開催
Th e 8 th Co nferen ce on A s ia-P aci fi c Co o p erat io n i n a G lo b al Co n text
鳥居 博一 PECC 日本委員会事務局次長 TO RII H iro k azu D ep u ty Execu tiv e D irecto r JA NCP E C
シュタンゼル独外務省アジア・大洋州 局長との懇談会
Meetin g w ith Sch tan zel,Ch ief, A sia-O cean ia Breau , G erman Min is try o f Fo reig n A ffairs
片岡 貞治 グローバルイッシューズ研究員 K A TA O K A Sad ah aru Research Fellow , Glob al Issu es
3月6 日、軍 事ジャ ーナリ ストの ア ン ド レ イ ・ ピンコフ氏を招いて、「中国軍事をめぐる最近 の動 向」と題し た懇談 会を行 った。 ピンコ フ氏は 、カ ナダ・トロ ントに 漢和情 報セン ターを 設立し 、各 国メディアに 安保・軍事・外交に ついて のニュ ース を 配 信 す る 傍 ら 、 世 界 的 な 軍 事 専 門 雑 誌 で あ る
Jane's International Defense Weekly
に中国・ロシ ア 情勢を 中心に たびた び寄稿 し て い る( 寄 稿 名 は Yihong Chang )。中 国・雲南 省出身 である が、日 本 留学を経て 、現在 はカナ ダ国籍 を取得 してい る。アンドレイ・ピンコフというペンネームは、尊 敬す るロシアの軍人に由来するそうだ。
ピンコフ 氏の問 題の切 り口は 斬新で 、懇談 会は 大いに盛り 上がっ た。た とえば 、彼は ブッシ ュ政 権の対中政策について、摩擦・トラブルの原因 とな る事項をす べて曝 け出し てから 新たな 関係を 築く という戦略 に基づ くもの と解釈 した。 そして 、昨 年の政権発 足以来 、この 一年間 で両国 間の不 安定 材料は出揃 ったた め、米 国は今 後中国 を刺激 する ような言動 を慎む であろ うと予 測した 。また ピン コフ氏は、昨年
12
月にアフガニスタンへの取 材を 敢行したが、現状を軍閥が割拠していた20
世 紀初 めの中国に 例えた 。彼は 、国内 の武装 解除を 実現 できなけれ ば、援 助され た資金 は内戦 に使用 され る可能性が あるた め、現 時点で の国際 支援は 時期 尚早であると指摘した。この他、 話題は 人民解 放軍の 展望か ら北朝 鮮情 勢ま で多岐 にわた ったが 、ピン コフ氏 が「中 国の 非均一性に 鑑みて 長期的 な視野 に立っ た対中 政策 を構築する 必要が ある」 と主張 したこ とも印 象に 残った。「中国」は、民族的・言語的に異なるグルー プの集合体である。各地方の貧富の格差も大きい。
ピンコフ氏によれば、これらの要因は中国の混 乱・
分裂を誘発する可能性があり、ロシアや米国 では、
そのような 事態に 対処す るため に、一 部の外 交官 がすでに雲 南語や その他 の方言 を勉強 し始め てい るという。
3月 4日、 訪日中 のファ ウラー =カナ ダ首相 代 表およびフライ英国外務副次官をお招きして、「カ ナダ の対ア フリカ 政策/ 英国の 対アフ リ カ 政 策 : 今次G 8サミ ットに 向けて 」と題 した懇 談会が 開 催され た。駐 イタリ ア大使 を務め るファ ウラー 代 表は、 カナナ スキス で行わ れる今 次サミ ットに お けるホ スト国 カナダ のシェ ルパで ある。 なお、 司 会は、堀内伸介当研究所客員研究員が務めた。
1. ファウラー代表
NE PAD はアフ リカの オーナ ーシッ プの必 要 性と重 要性を 謳った もので あるが 、G8 とのパ ー トナー シップ の確立 を宣言 したこ とはよ り重要 な ことだ と考え る。近 年、G 8はア フリカ を「再 発 見」した とさえ 言える 。沖縄 ・ サ ミット 、ジェ ノ バ・サミット でもア フリカ の問題 は重点 的に討 議 されてき た。今 次カナ ナスキ ス ・ サミッ トにお い ては 、世界 経済問 題、9・11テロ 攻撃 と テ ロ 対 策 と並ぶ 最重要 事項と してア フリカ 問題が 議論さ れ ること になっ ている 。G8 の枠組 みで「G8ア フ リカ行 動計画 」が採 択され るよう 、G8 の代表 と アフリ カ側の 代表と の意見 交換な ども現 在頻繁 に 行われて いる。 今後、 アディ ス ・ アベバ 、ダカ ー ル、オ タワと 三度の 意見交 換会合 が予定 されて い る。「G8アフリカ行動計画」の具体的な内容と し ては、現在「平和と安全保障 」「ガバナ ンス(政 治 ガ バ ナ ン ス 、 司 法 ガ バ ナ ン ス 、 財 政 ガ バ ナ ン ス )」
「医療と教育」「貿易と投資」「農業と水」という 5つの優 先重点 事項に 応じて ブロー ド ・ チーム が 作られ 、種々 のチー ムの中 でさま ざまな 議論が 活 発 に 行 わ れ て い る 。 そ れ を 取 り ま と め た も の が
「行動計画」として採択されることになっている。
2.所 感
アフ リカ問 題への 関心が 国際社 会の一 般大衆 の 間では 低下し ている 現状で 、G8 の場で 、NE P ADを 機軸に アフリ カ問題 を再討 議する ことは き わめて有意義なことである。
飛鳥田麻生 アジア太平洋センター研究員補 A SU K A TA Mao Research Fello w, A sia-P acific Stu dies
Secretary o f State Fo reig n an d Co mmo n w ealth O ffice
片岡 貞治 グローバルイッシューズ研究員 K A TA O K A Sad ah aru Research Fellow , G lo bal Issu es
去 る3月
14
日 から15
日にか けて、 三田政 府共 用会議所に おいて 、南東 欧諸国 の経済 改革に 関す るワークシ ョップ が当研 究所と 外務省 の共催 で行 われた。本 ワーク ショッ プの趣 旨は、 現在国 家再 建と体制転 換に取 り組ん でいる 南東欧 の国々 に対 し、戦後日 本が辿 った経 済発展 の経験 を紹介 する ことによっ て、改 革への 何らか のヒン トを提 供す ることであ る。と くに、 紛争終 結から まだ日 が浅 い旧ユーゴ スラヴ ィア諸 国にと って、 スムー ズな 市場経済へ の移行 と経済 発展は 、よう やくつ かん だ社会の安 定を確 固たる ものと して定 着させ る上 で不可欠で ある。 このよ うな観 点から 、日本 側か らは、当研 究所と 外務省 の関係 者の他 、民間 の企 業やシンク タンク 、学界 の専門 家が、 南東欧 から は、アルバ ニア、 クロア チア、 ブルガ リア、 ボス ニア、マケ ドニア 、ユー ゴスラ ヴィア 、ルー マニ アの政府関 係者や 研究者 が参加 し、幅 広い意 見交 換が行われた。標題の通 り、会 合の主 たるテ ーマは 、統制 経済 から市場経 済化へ の移行 過程に おいて 、政府 がど のような役 割を果 たすべ きかと いう点 であっ た。
移行期にお いては 、政策 の混乱 や人材 不足、 煩雑 な法律規則 の施行 などさ まざま な問題 が存在 する が、とくに 旧ユー ゴスラ ヴィア は、戦 争によ るイ ン フ ラ 破 壊 に 加 え て 、 社 会 主 義 時 代 に 導 入 し た
「歪んだ 」市場 経 済 の 発 想 や 制 度 が 、 い ま 足 枷 と なって改革 を阻ん でいる という ことが 会議で 指摘 された。
このよ うな状 況 の 中 で 政 府 は ど う あ る べ き か 、 一日半の議 論を通 じ参加 者は、 以下の ことを 重要 な点として確認した。
ま ず 、 政 府 そ の も の に 制 度 的 能 力 を つ け る こ と、政策に 一貫性 と連続 性をも たせる こと、 政府 と民間の信頼 関係 ・ 対話 を保ち つつ市 場経済 にお いてはあく まで民 間が活 力とな り、政 府は全 体の
大まか な方向 性を示 すにと どまる こと、 政府は 政 策の優先 順位や 目的を 定め、 作業計 画 ・ 到達点 を 測定す る基準 を作成 するこ と、南 東欧諸 国自ら が 自国の 特徴を 鑑みて 他国の 参考と しうる 部分を 取 捨選択 し、う まく適 用する 発想と 応用力 を培う こ と、基礎 ・ 応 用研究 に力を 入れる こと、 政府は 保 護政策 から競 争政策 へと段 階に応 じ柔軟 に政策 を 変 え 、 必 要 に 応 じ 慎 重 か つ 適 切 な タ イ ミ ン グ を もって 介入す ること 、強い 産業か ら計画 を立て て 自由化すること、などである。
ワ シ ン ト ン ・ コ ン セ ン サ ス に つ い て の 議 論 で は、南 東欧諸 国から 、経済 再建や 民営化 、外資 誘 致 の た め に は イ ン フ ラ 整 備 が 不 可 欠 で あ る と し て、I MFの 求める 緊縮財 政政策 との兼 ね合い の 難しさ が表明 された 。これ に対し 日本側 参加者 か ら、自 ら状況 を判断 し現状 打開の 方法を 生み出 す 努力の 重要性 が指摘 される ととも に、日 本がI M Fや世 銀と南 東欧諸 国の間 にたっ て外交 支援を 行 うことが提案された。
筆者 はこれ まで、 旧社会 主義諸 国では 依然と し て「日 本の奇 蹟」や 「日本 神話」 のイメ ージが 根 強く、 とくに 達成さ れた結 果だけ に目が 向けら れ がちで あると いう疑 問を抱 いてき たが、 本会合 で は、オ イルシ ョック 時の政 府の対 応にお ける失 敗 やバブ ルの発 生から 崩壊ま での経 緯、国 営企業 の 民営化 による デメリ ットな ど「日 本神話 」の裏 に 隠され た実態 にも触 れられ 、南東 欧諸国 が避け る べき 日本の 負の経 験 に つ い て も 示 さ れ た こ と で 、 本ワー クショ ップの 趣旨が 単なる 美辞麗 句に終 わ らず、 会合で の提言 が、よ り説得 力をも つもの に なったと考える。
JIIA Newsletter
南東欧ワークショップ「市場経済化に おける政府の役割」
Th e Ro le o f G ov ern men t in th e mo ve to Mark et Econ o mies in Sou th Eastern Eu ro p e
末澤 恵美 ロシアセンター・グローバルイッ シューズ研究員
SU EZA WA Meg u mi Research Fello w, G lo bal Issues an d Cen ter fo r Ru ssian Stud ies
平成
1
4年3月29日(午後2時より)於研究所 2.主な議事内容(1)第103回理事会
「平成14年度事業計画書及び収支予算書」につき、事業方針及び執行方針と共に、特に厳しい国の予算 事情により補助金の減額に伴い、自己資金の増額充実を計る要がある旨説明があった。全員一致で議決承認 された。
(2)第7回評議員会
「平成14年度事業計画書及び収支予算書」につき、理事会同様全員一致で議決承認された。
日本国際問題研究所ニュースレター No.117
発行人 小和田 恆
発行所 財団法人 日本国際問題研究所 発 行 2002年4月10日(毎月発行)
〒 100-6011 東京都千代田区霞が関3‑2‑5 霞が関ビル11階 電 話:03(3503)7261(代表)
ファクシミリ:03(3503)7261 E‑amil: [email protected]
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JIIA 活動日誌
1
(金)●●●●
顔建發・民主進歩党中央党部中国事務
部主任との懇談会
18
(月)●●●●
「開発と社会的安定ーアジアのイスラ ムを念頭において」研究会(白石隆・
京都大学教授・主査)
2
(土)●●●●『ロシア研究』編集委員会
●●●●
「ブッシュ政権の国防戦略」研究会
(近藤重克・防衛研究所第一研究部長・
主査)
6
(水)●●●●
アンドレ・ピンコフ カナダ漢和情報
センター高級研究員との懇談会
20
(水)●●●●
月例外交懇談会 講師:佐々江賢一郎 外務省経済局長『最近のWTO、FTA をめぐるわが国の外交について』
7
(木)●●●●
「米国新政権の経済金融政策とアジア」
研究会
(中北徹・東洋大学教授・主査)
●●●●
オニシキエヴィッチ・元ポーランド国 防相との懇談会「NATOの東方拡大と 欧州安全保障」
10
(日) 〜12
(火)●●●●
CSCAP 北太平洋作業部会(バンクー バー)
●●●●
「IT 革命と安全保障」研究会
(星野俊也・大阪大学助教授・主査)
12
(火)●●●●
「グローバル・スタンダードの研究」
研究会(渡部福太郎・学習院大学名誉
教授・主査)
24
(日) 〜26
(火)●●●●
CSCAP 特別企画委員会/テロ・スタディ
・グループ
14
(木) 〜15
(金)●●●●
「市場経済化における政府の役割」に
関するワークショップ
27
(水) 〜28
(木)●●●●
国際シンポジウム「アフリカにおける 国家とガバナンス」(国連大学)
15
(金)●●●●
ジョン・マレ(南アフリカ、プレトリ
ア大学教授)との意見交換会
29
(金)●●●●
「第103回理事会及び第7回評議員 会」
●●●●
「ASEAN の経済発展に対する ODA の 意義とインパクト」研究会(小浜裕久・
静岡県立大学教授・主査)
●●●●
エクアドル共和国ノボア大統領および PECC関係者の懇談会
18
(月)●●●●
ルンデスタ・ノーベル研究所所長との 懇談会:「ノーベル平和賞について」