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1,5-アンヒドログルシトール - J-Stage

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426 化学と生物 Vol. 52, No. 7, 2014

1,5- アンヒドログルシトール

新しい機能性糖質の期待される広い用途

甘味は人種・性・文化の違いを超えて人類が先天的に 求める至福の味である.その代表的な甘味料である砂糖

(スクロース)の摂りすぎは生活習慣病(高血圧,糖尿 病,肥満)の発症と深くかかわっている.そこで,消費 者の安全・健康志向を受けて,安価で,嗜好性のよい,

しかも無・低カロリーなど機能性甘味料が期待されてい る.本稿で紹介する1,5-アンヒドログルシトール(AG)

の研究はスタートラインについたばかりであるが,AG 自身は機能性甘味料として注目され,さらに酵素反応に よって別の機能性糖1,5-アンヒドロフルクトース(AF)

に変わる,デュアルファンクション的性質をもってお り,その用途にも広がりをもつ.

AGはグルコースのC1位のOHがHに置き換わった環 状ポリオールで,別名1-deoxyglucoseあるいは1,5-an- hydrosorbitolと 呼 ば れ る.1880年 代 ヒ メ ハ ギ 科 植 物

(Polygala)の葉から初めて発見されたことに由来し,

polygalitolとも呼ばれる.AGは血液を含め自然界に微 量(0.5 〜50 μg/g)だが広く存在する.近年,その生理 的役割や意義に興味がもたれるようになったのは,主と して次の2つの研究の流れによるものであろう.一つ は,糖尿病関連の研究(糖尿病患者で血中AGレベルが 低下する)およびAGの測定法に関する開発研究であ

(1, 2).もう一つは,デンプン・グリコーゲンのα-グル カンリアーゼ系分解経路の代謝産物であるAFとAGの 機能性に関する研究(1, 3)である.

数年前筆者は,AGの研究史の空白域として食品科学 的な研究がされていないことに気づき,市販の測定キッ トを使ってAG含量の高い食品を探し求めてきた.その 結果,漢方薬「加味帰脾湯」や「人参養栄湯」に配合さ れる生薬オンジ(遠志)(  Willd.  の 根)に多く含まれること(4)を知り,大量精製に着手し た.その方法はAGが陰・陽イオン交換カラムに吸着し ない性質(2)を利用した簡便なもので,高収率(4 〜 5 g/100 g),高純度(95%)のAGを得る方法を確立し た(5).以下,食品科学的な側面からAGの特性を述べ る.

AGはその構造からわかるように非還元性糖なので,

褐変反応に関与しない.酸・熱にも安定である.またほ かの単糖と比べ水分活性は有意に低く,試作したAG入 りの蒸しパンにおいても水分活性は低い傾向にあった

(食品保存剤として有効かもしれない).官能検査におい て,スクロースの甘味度(100)に対するAGの甘味度 は約60であった(6).AGはすっきりした甘味で引きが速 いが,後味として少し苦味が残る.また,紅茶にAGを

AF

PROD

AG

AFR (NADPH)

AFDH

APM

AUDH GL

APP

APMT

図11,5-アンヒドログルシトール

の多目的利用法の概略図(一部省 略)

緑色の矢印は生体における経路,白 い 矢 印 は オ ン ジ か ら のAGの 利 用.

AG,1,5-anhydroglucitol ; AF,  1,5-  anhydrofructose ; APM, ascopyrone  M ; APP,  ascopyrone  P ; GL, α-1,4- glucan lyase ; AFR, 1,5-anhydrofruc- tose  reductase ; PROD,  pyranose  oxidase ; AFDH, 1,5-anhydrofructose  dehydratase ; AUDH, aldo-2-ulose de- hydratase ; APMT,  ascopyrone  M  tautomerase. AFは水溶液中では,2- ケト型のほか,2-エノール型,2,3-エ ンジオール型,水和型の構造をとり うるが,希薄水溶液中ではほとんど 水和型である.

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化学と生物 Vol. 52, No. 7, 2014

2.5%添加すると,同濃度のスクロース添加と比べると 効果は弱いが,苦味・渋味が抑制される.味覚センサー による試験ではAGの甘味度は75であり,紅茶の苦味抑 制効果については紅茶の種類やいれ方(湯の温度・時 間)によって異なるようだ(6)

摂取後のAGの動物体内動態についてこれまでの知見 をまとめると,AGは速やかに消化管で吸収され,糞中 には検出されない.また,呼気中にはほとんど現れず,

数時間以内に大半は尿中に排泄されることから,代謝さ れない(されにくい)糖質であることがわかる(1).AG の機能性として,ラットにおける糖負荷試験において AGは用量依存的に血糖値上昇を抑制すること(6),イン スリノーマ株細胞においてインスリン分泌を促進するこ と(7),さらに糖尿病モデルマウスにおいて血糖値改善効 果が報告されている(8)

AGの開発はほかの関連分野とどのようなかかわりを もつのだろうか? AFはデンプン・グリコーゲンの α-1,4-グルカンリアーゼによる脱離分解で生じ,AGの前 駆体であることはすでに述べたが,ピラノースオキシ ダーゼ(PROD)による逆反応でAGからAFへ転換す ることができる(AG+H2O→AF+H2O2)(図1参照) 筆者らは反応系から過酸化水素を除くためカタラーゼを 共存させ,転換率90%の結果を得ている(6).還元力が 強いAFは,抗褐変,抗菌活性,色素安定剤,甘味料な ど食品科学・保存学の分野で重要な特性をもってい る(9).デンプンから調製したAFは「アンヒドロース」

という商品名で市販されている.また,AFは抗炎症,

GLP-1の分泌(10),抗肥満作用(11)などの生理機能をも併 せ持つ.AFはカビ類ではascopyrone P(APP)へ二次 代謝されるが(9),吉永らはAF溶液を加熱することによ りAFよりも500倍強いラジカル消去活性を示すAPPが 生じることを認めている(12).加熱処理したAFは,酸 化ストレス(Fe-過酸化水素)を与えた培養肺胞細胞に 対し保護効果を示すこともわかった(高野,私信).こ のようにAGからAFやAPPのような機能性物質を戦略 的に作ることができ,それらの効果を発揮する食品の開 発が期待される.

AGはこれまで化学合成法,デンプンを原料とするリ アーゼ系活性の強い微生物を利用した方法で調製されて きた.一方,本稿で紹介したオンジからの直接抽出法 は,大掛かりな設備は不要なので材料あれば事足りる.

そのため,オンジや近縁植物セネガ(  

L.)などのAG高含量植物の確保が望まれる.技術面で は,AGからAFを製造するためのPRODの固定化によ る効率の良い分離・精製法の開発,さらにAGおよび AFの長期摂取による生体への影響が検討課題であろ う.

  1) 亀谷俊一,赤沼宏史:生化学,69, 1361(1997).   2) M. Yabuuchi  : , 35, 2039(1989).

  3) S. Yu : , 60, 798(2008).

  4) T.  Kawasaki  : , 50,  97

(2000).

  5) 小西洋太郎:特願2012‒108539

  6) 小西洋太郎:JST研究成果最適展開支援プログラム探索 タイプ完了報告書,2013.

  7) T.  Yamanouchi  : , 1623,  82

(2003).

  8) A. Kato  : , 61, 611(2013).

  9) R. Fiskesund  : , 76, 1635(2010).

10) B. Ahrén  :   , 397, 219(2000).

11) A.  Kojima-Yuasa  : , 7

1501(2012).

12) 吉永一浩ほか: , 52, 287(2005).

(小西洋太郎,大阪市立大学大学院生活科学研究科)

プロフィル

小西洋太郎(Yotaro KONISHI)    

<略歴>1978年徳島大学大学院栄養学研 究科博士課程単位取得退学/1979年保健 学博士/1981年大阪市立大学生活科学部 食品栄養科学科助手/1985 〜 1986年日本 学術振興会特定国派遣研究員(ベルギー・

ルーヴァン大学)/1996年大阪市立大学在 外研究員(サンパウロ大学)/1991年同助 教授/ 2004年より同大学大学院生活科学 研究科教授/ 2008 〜 2009年同研究科長・

学部長<研究テーマと抱負> (1) 食品科 学の立場からのアンヒドロ糖の機能性の開 発 (2) アマランサスやキヌアなどの低利 用食料資源の開発研究を通じて食料安全保 障を考えていきたい<趣味>山歩き,読 書,クラシック音楽

Referensi

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