2019 年度 線形代数学・同演義 II
(担当:松本佳彦)第 1 回中間試験
2019年11月7日(木)3限 試験時間75分
配布物:問題,解答用紙1枚,計算用紙1枚
以下の問題に答えよ.解答の順番は問わない.
𝐾 はR(実数全体の集合)またはC(複素数全体の集合)を表す.また𝐾[𝑥]𝑛 は,𝐾 の元を 係数とする𝑛次以下のすべての𝑥の多項式からなる𝐾 上の線形空間を表す.
1. 次に掲げるのは,この授業で採用した線形空間の定義である.
集合𝑉 が以下の条件(a),(b)をみたしているとき,𝑉 は𝐾 上の線 形空間であるという.
(a) 𝑉 には次の2つの演算が定義されている.
(i) 𝒖,𝒗 ∈𝑉 に対し𝒖+𝒗 ∈𝑉 を与えるもの(加法).
(ii) 𝒖 ∈𝑉,𝜆∈𝐾 に対し𝜆𝒖 ∈𝑉を与えるもの(スカラー倍). (b) 加法,スカラー倍は以下の性質をもつ.
(i) 𝒖+𝒗 =𝒗+𝒖.
(ii) (𝒖+𝒗) +𝒘 =𝒖+ (𝒗+𝒘).
(iii) 「任意の𝒖 ∈𝑉 に対し𝒖+0= 𝒖」をみたす0 ∈𝑉 が存在 する.(この性質をもつ0を零ベクトルという.)
(iv) 任意の𝒖 ∈𝑉 に対し,𝒖+𝒗 =0をみたす𝒗 ∈𝑉 が存在す
る.(この性質をもつ𝒗を−𝒖で表す.)
(v) 𝜆(𝜇𝒖) = (𝜆𝜇)𝒖. (vi) 1𝒖 =𝒖.
(vii)
(1) 空欄にはいわゆる「分配法則」を表す記述が入る.ここに入れるべき内容を書け.
(2) 𝐾 上の線形空間𝑉 において,任意の𝒖∈𝑉 に対し0𝒖 =0であることを示せ.証 明の中で,どこで上掲の性質のどれを使っているのか,明確に説明すること.
2. 次の主張が正しければ証明し,誤っていればその理由を説明せよ.
(1) 「𝑉 =𝐾[𝑥]3において,ちょうど2次の多項式をすべて集めて得られる部分集合 𝑊 は𝑉 の線形部分空間である.」
(2) 「𝑉 を,各項が 𝐾 の元であるような数列全部からなる 𝐾 上の線形空間とする.
写像 Φ:𝑉 → 𝑉 を,数列 {𝑎𝑛} ∈ 𝑉 に対し数列 {𝑏𝑛} を 𝑏𝑛 = 𝑎2𝑛 により定め,
Φ({𝑎𝑛})={𝑏𝑛} とおくことによって定義する.このΦは線形写像である.」
(3) 「𝑉 を𝐾 上の線形空間とし,𝑘 を2以上の整数とする.𝒖1, 𝒖2, . . ., 𝒖𝑘 ∈𝑉 が線 形従属ならば,これらのうち少なくとも一つのベクトル𝒖𝑗 を,他の𝑘 −1個のベ クトル𝒖𝑖(𝑖 ≠ 𝑗)の線形結合として表すことができる.」
3. 実線形空間𝑉 =R[𝑥]3,𝑊 =R[𝑥]1を考える.写像Φ:𝑉 →𝑊 を Φ(𝑓(𝑥)) =
∫ 1
0
(𝑥−𝑡)𝑓(𝑡)𝑑𝑡
によって定義する.
(1) Φが線形写像であることを示せ.
(2) 𝑉 の基底 Σ = [1, 𝑥, 𝑥2, 𝑥3],𝑊 の基底Ξ = [1, 𝑥] をとる.基底 Σ,Ξに関する線 形写像Φの表現行列を求めよ.
(3) Φの核KerΦの基底の一例を挙げよ.
(4) Φの像ImageΦが𝑊 に一致することを証明せよ.
4. 𝑉,𝑊1,𝑊2を,いずれも𝐾 上の有限次元線形空間(有限個のベクトルからなる基底 をもつような線形空間)とする.また
Φ1: 𝑉 →𝑊1, Φ2:𝑉 →𝑊2
を線形写像とする.
(1) Ψ◦Φ1= Φ2をみたすような線形写像Ψ:𝑊1 →𝑊2が存在するならば,KerΦ1 ⊂ KerΦ2であることを示せ.
(2) 逆に,もしKerΦ1 ⊂ KerΦ2が成立していれば,Ψ◦Φ1= Φ2をみたすような線 形写像Ψ: 𝑊1→𝑊2が存在することを示せ.
𝑊1
𝑉
𝑊2 Ψ?
Φ1
Φ2
答案の返却について 答案は次回(11月21日)の授業で返却する予定です.