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「ESG」は今流⾏りのミーハー概念なのか

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2019 年度 上智⼤学 経済学部経営学科 網倉ゼミナール 卒業論⽂

「ESG」は今流⾏りのミーハー概念なのか

A1641184 経済学部経済学科

⾼原すずか

2020 年 1 ⽉ 14 ⽇提出

(2)

⽬次………1

1. はじめに ………2

2. ESG とは ………3

3. ESG のインパクト ………5

4. ⽇本における ESG の現状………10

5. おわりに ………13

参考………13

(3)

1. はじめに

最近、ニュースなどで「ESG」というワードを⽿で聞いたり、⽬にしたことがあるのではないだ ろうか。注⽬キーワードを調査できる Google Trendsiにて、⽇本における「ESG」ワードの過去 5 年間の⼈気度動向は、2019 年 12 ⽉に最も⾼い 100 の値をマークし、⼈気スコアの最⾼記録を 今なお更新し続けていることが⾒てとれる(グラフ 1)。

【グラフ 1】

私は東京都⽴国際⾼校在籍時に世界の環境や貧困の現状について学び、このまま問題の解決を 先延ばしにしていては、いつか世界は⽴ちいかなるのではないかと強い意識を抱き、⾃⾝のライ フゴールとしてこれらの深刻な問題に取り組んでいきたいと考えていた。上智⼤学経済学部へ

⼊学し、世界銀行、国際開発コンサルティング、開発経済学、経済発展論での講義、交換留学先 Boston College での Sustainable Investment に関する授業、そしてタンザニアでのマイクロフ ァイナンスなどの経験を通じて、このような問題に対して単に一時的な処方箋を与えていくだ けでなく、長期的視野のもと人々が自立的かつ持続的に改善を重ねていく必要があると切に実 感した。そのためには、自らが解決のための行動を起こしていかねばならないという自己意識の 伴った、主体的な取り組みが重要である。 

 

引間特任教授による講義で、「ESG 投資」と呼ばれるものに出会った。国連は持続可能な開発⽬

標(Sustainable Development Goals)などのマクロ的な国際⽬標を掲げているが、実際に⾏動を 起こして社会を変⾰させているのは、よりミクロな単位である経済主体、ビジネスであるのでは ないかと強く感じた。しかし私は日本において、企業が世界の問題解決を CSR の責任の一環で あると捉えていることが、より具体的で円滑なサスティナビリティのための行動力を抑制して

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

20151 20153 20155 20157 20159 201511 20161 20163 20165 20167 20169 201611 20171 20173 20175 20177 20179 201711 20181 20183 20185 20187 20189 201811 20191 20193 20195 20197 20199 201911

⽇本における過去5年間の「ESG」ワードの⼈気度動向

(Google Trendsより作成)

(4)

いると考える。ビジネス自体を通じて問題に対して主体的に取り組んでいくことで、その会社の 将来の収益を獲得していく CSV 体系、社会問題の解決とビジネス利益との win-win な関係性は 生まれる。これは非常に有意なものであり、サスティナブルな世界のための探究をしていきたい と考えた。上智⼤学で⾮公認ながらも、「上智 ESG 投資研究会」を仲間たちと設⽴し、これまで サスティナブルなビジネスについて研究を進めてきた。社会全体のショートターミニズムが持 続可能な経済成⻑を阻害していることを問題視し、企業利益と社会的利益の両⽴を理解し、企業 のCSR・CSVの取り組みが⼈々の⾏動にどのような影響を与えるのかを分析していくことを⽬

的として創設した。

私は⾦融機関の株式リサーチ部⾨にてインターンシップをした際、「ESG 投資」がこれほど注⽬

されている状況の中、サスティナブルな ESG 投資は注⽬を浴びているものの、多くの投資家が ショートターニズムの⽬線を持ち、⽬先の利益獲得が未だに投資家の主軸であると肌に感じた。

私たちの暮らす⽇本において、「ESG 投資」の浸透はまだ深くないのではないか。この卒業論⽂

を通じて私は、ESG の真のインパクトを実証し、⽇本における ESG浸透について探究していき たいと思う。

2. ESG とは

そもそも、「ESG」とは⼀体何なのか。もともと「ESG」は「ESG 投資」という⾔葉で使われる ことが多かった。経済産業省iiによると「ESG 投資」とは、従来の財務情報だけでなく、環境

(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の要素、つまり⾮財務情報を考慮 した投資のことを指し、ESG の視点を組み⼊れる責任投資原則(PRI)iiiに署名し、遵守状況を 開⽰・報告する機関投資家は年々増加し、投資額も増加している(グラフ 2)。これにより、投資 分析と意思決定に関するプロセス、株式所有、情報開⽰に ESG の基準が含まれ、⻑期的な⽬標 を犠牲に短期リターンに導かれがちな⾦融市場と企業の連携がされるようになった。世界最⼤

級の年⾦機関である⽇本の年⾦積⽴⾦管理運⽤独⽴⾏政法⼈(GPIF)は、2017年より ESG関 連インデックスへの投資を開始し、企業統治や⼥性活躍の推進、炭素効率の優れた企業へ重点投 資する株価指数を選び、資産残⾼を増やしてきた。2018 年度末の ESG 資産残⾼は、前年の 2.3 倍の 3兆5千億円に達しiv、この GPIFによる ESG 投資開始をきっかけに⽇本における ESG 投 資は増加しv(グラフ 3)、ESG関連投信などの商品が揃うようになった。

(5)

【グラフ 2】

【グラフ 3】

ESG は企業の⾮財務⾯を⾒るものとされてきたが、サスティナビリティを考慮するということ は⻑期的なリターンが企業へ返ってくるため、財務情報との密接な関わりがあると私は考える。

例えば、資源を使ってモノを製造するビジネスにおいて、地球環境が悪化し資源も枯渇していく 状況の中、10 年後に資源価格が⾼騰していたり、資源が⼿に⼊らなくなることは原材価格の⾼

騰と利益の減少、または製造不可能という結果を引き起こす。そのため、今のうちに代替的なよ りサスティナブルな資源を使うよう配慮したり、よりエコなモノの製造へとビジネスを変⾰さ せるような戦略を組むことは、競合企業との差別化やブルーオーシャンな状況を作り出し、将来 的なリターンを⽣み出すことにつながるのではないか。つまりビジネスにとって ESG のための

0 250 500 750 1000 1250 1500 1750 2000 2250 2500 2750

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2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019

PRI

署名の推移

署名機関全体の資産運⽤⾼ 署名アセットオーナーの資産運⽤⾼ 署名アセットオーナー数(右軸) 署名機関数(右軸)

資産運用高(兆USドル) 署名機関数

PRIより作成)

0%

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2015 2016 2017 2018

(兆円) ⽇本におけるサスティナビリティ投資残⾼の推移

サスティナブル投資残⾼ 総運⽤資産残⾼に占めるサステナブル投資の割合(右軸)

(JSIFより作成)

(6)

⾏動は、責任というネガティブインセンティブのCSRではなく、積極的に取り組んでいくべき ポジティブインセンティブであるCSV(Creating Shared Value)viなのである。近年、企業のコ ーポレートサイトに⾒られるように「ESG戦略」など、「ESG」を軸とした企業戦略のもと、企 業のサスティナブルで⻑期的なリターンを求める動きも⾒られるようになった。つまり ESG と は、「ESG 投資」として投資における概念のみならず、投資家、ビジネス、社会の全⽅向にサス ティナブルなwin-win-win のベネフィットを⽣み出す概念であると⾔えるのではないか。

3. ESG のインパクト

ESG は、真に正のベネフィットを⽣むのだろうか。ESG効果を期待している企業、そして投資 家の各視点から考察を細分化し、それぞれに与えるインパクトについて⾒ていきたいと思う。

(1)企業

上記「2.ESG とは」で述べたように、「ESG」は⾮財務的な軸だけではなく、将来の利益の獲得 のためのビジネス⾏動、利益戦略として扱われるようになってきた。果たして ESGビジネスは 企業に利益をもたらすのか。これを検証していきたい。

a. 環境(E)

環境に配慮した事業、ビジネスは⼀体企業にリターンをもたらすのだろうか。具体的な応⽤例と して⼤和ハウス⼯業を挙げたいと思う。

⼤和ハウス⼯業viiは、コア事業である建築請負における環境配慮とは別軸で、多⾓化事業として 取り組む新たな事業そのものが脱炭素社会・循環型社会・⾃然共⽣社会の実現に貢献するものを

「環境貢献型事業」とし、環境エネルギー事業、住宅ストック事業、リース事業、環境緑化事業、

環境エンジニアリング事業を⾏い、当該売上⾼の拡⼤していく戦略のもと事業を進めている。

(グラフ 4)viiiを⾒て分かるように、⼤和ハウス⼯業の環境貢献型事業の売上⾼は各事業が年々 増加傾向にあり、主である建築事業を含めた全体の売上⾼に占める環境貢献型事業の売上⾼⽐

率は上昇している。これまでの建築事業で獲得してきたバリューやノウハウを活かして、環境に 配慮した新たな事業機会の獲得を図っている。従来の稼ぐ脚⼒であった建築事業は、今後の⼈⼝

減少というマクロ要因から避けることは⾮常に難しい。そんな中、新たな事業機会として環境ブ ランドの構築をし、新たな時代に向けて戦略の舵を取り、売上⾼⽐率を拡⼤させていくことは、

将来の利益獲得のための⾏動であると⾔える。

(7)

【グラフ 4】

近年、Science Based Targets(SBT)と呼ばれる、パリ協定の掲げる温室効果ガス排出量削減の ための「企業版2℃⽬標」に取り組む企業が増えている(グラフ 5)ix。科学的根拠に基づき企業 の温室効果ガス排出量を、ガソリン使⽤などの直接排出(スコープ 1)、エネルギー起源の間接 排出(スコープ2)、バリューチェーン全体での間接排出(スコープ3)に分割させ、減少させて いくための取り組みを実施している。有価証券報告書の中で役員の報酬についての記載がある が、そこで業績連動型報酬制度の評価基準に、⼆酸化炭素排出量削減⽬標の達成度合いを加える ことで、役員に SBT達成を意識させ、企業の利益と役員の報酬につなげる仕組みも始まってい るx

【グラフ 5】

6.5%

6.6%

6.7%

6.8%

6.9%

7.0%

7.1%

7.2%

0 200 400 600 800 1000 1200 1400

2015 2016 2017 2018

(億円) ⼤和ハウス⼯業の環境貢献型事業売上⾼の推移

対全事業の売上⾼⽐率(右軸) 環境エネルギー事業 住宅ストック事業

リース事業 環境緑化事業 環境エンジニアリング事業

(⼤和ハウスグループ統合報告書より作成)

1 2

14

33

58

0 10 20 30 40 50 60

2015 2016 2017 2018 2019

SBTiから承認を取得済みの⽇本企業数

(WWFジャパンより作成)

(8)

b. 社会(S)

企業は顧客に対し、商品を購⼊することで社会課題を解決できるという点を強調することで、販 売促進やイメージの向上を狙う、売上拡⼤を狙うCause Related Marketing(CRM)を⾏ってい る。例えば、ボルヴィックを販売するダノンは、⽔の売上 1Lにつき、アフリカの井⼾開発によ って 10Lの⽔供給の寄付を実施したところ、シェアを前年の 2倍にして⾸位についた。また王

⼦ネピアは、東ティモールで家庭・学校トイレや給⽔設備の整備を⾏い、プロジェクト実施後に はシェアを 3位からトップへ成⻑したなどの経歴を持つ。

このように社会に対する企業の取り組みは、ブランドイメージの構築を促し、売上⾼の増加やシ ェア拡⼤に寄与することで、⻑期的な企業のリターン形成の体系を⽣み出している。

c. ガバナンス(G)

ESG におけるガバナンスにおいて、会社との間に利害関係を持たずに経営の監督を⾏う独⽴取 締役の有無はよく論議の中⼼となるトピックである。⽇本の上場企業の独⽴取締役の有無とそ れぞれのROE・ROA を⽐べた際に(表1)xi、2018 年度には独⽴取締役を選任していない企業 のROE は 1.1%である⼀⽅で、独⽴取締役を選任している企業のROE は 5.9%であるというデ ータがある。また、ROA に関しても、独⽴取締役なしが 1.4%であるのに対し、独⽴取締役あり の企業は 3.2%である。さらに独⽴取締役の⼈数についても踏み込んでいくと、独⽴取締役が多 いほどROE やROA の⽔準が⾼いことも⾒て取れる(表2)。つまり、ガバナンスの強化は企業 価値の向上につながっていると⾔える。

【表1】

(⼤和総研より作成)

【表2】

(⼤和総研より作成)

2016年度 2017年度 2018年度 ROE(独⽴取締役あり) 7.5% 7.1% 5.9%

ROE(独⽴取締役なし) 2.0% 1.1% 1.1%

ROA(独⽴取締役あり) 3.6% 3.7% 3.2%

ROA(独⽴取締役なし) 1.0% 2.2% 1.4%

2016年度 2017年度 2018年度 ROE(複数の独⽴取締役) 7.8% 8.0% 6.8%

ROE(1名の独⽴取締役) 6.6% 5.3% 3.9%

ROA(複数の独⽴取締役) 3.8% 4.1% 3.5%

ROA(1名の独⽴取締役) 3.2% 2.9% 2.6%

(9)

先ほど a. 環境においても述べたように、役員報酬に ESG 要因を連動させる報酬制度が開始さ れている。ESG に取り組むことにより、世界へポジティブインパクトを⽣み出した分、実際報 酬を受け取ることのできるガバナンス基盤は、今後よりベーシックな軸となっていくであろうxii

これまでの(1)では、企業の利益という視点から ESG に取り組むべきメリットが考察できた。企 業が着眼すべき点は利益のみではない。事業を始めたり、進めていく過程において必要不可⽋な 資⾦を得るためにも ESG は重要な観点である。ESG 投資が拡⼤している中、各種ESG基準を 満たしていないと投資先としてお⾦が集まりにくくなるからである。これは、企業の今後の業績 と密に繋がるものなのではないか。

(2)投資家

次に考察したい視点として、投資家にとって ESG 投資とは本当にリターンが⾒込めるものであ るのか。

⼀般的な⽇経平均の ETFと、ESG関連指数連動型ETFのリターンの⽐較を⾏った(グラフ 6)

xiii。グラフ中で濃い⻘⾊の「One ETF ESG」は、FTSE Japan Indexの構成銘柄のうち、FTSE イ ンターナショナルリミテッドの基準による ESG評価に基づいて、国内外の ESG 要因への対応

⼒が優れた企業により構成されたものである。グラフの薄い⻘⾊は、同じ管理会社であるアセッ トマネジメントOne による⽇経 225 ETFである。そして、濃い緑⾊である「ダイワ上場投信―

MSCI ジャパン ESGセレクト・リーダーズ指標」は、⽇本国内に上場している株式で構成され るMSCI ジャパン ESGセレクト・リーダーズ指数への連動を⽬指す ETFで、MSCIによって選 定された ESG 評価が相対的に優れた企業に投資するものである。それに対応した薄い緑⾊は、

⼤和証券による⽇経 225 ETFである。

【グラフ 6】

1.7%

8.8%

12.2%

20.5%

1.2%

8.4%

13.3%

19.6%

1.7%

8.9%

12.2%

20.5%

1.7%

8.5%

14.0%

21.5%

0%

5%

10%

15%

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25%

1ヶ⽉ 3ヶ⽉ 6ヶ⽉ 1年

各ETFのトータルリターン

One ETF ⽇経225 One ETF ESG ダイワ上場投信−⽇経225 ダイワ上場投信−MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数

(10)

このグラフを⾒て第⼀に感じた点として、⽇経 ETFと ESG関連 ETFのトータルリターンにあ まり⼤きな差が⾒られないということだ。ESG関連の ETFは、1ヶ⽉や 3ヶ⽉などの短期にお いて、⼀般的な⽇経 ETFに対して多少リターンが少なく⾒えるが、6ヶ⽉や 1 年というように 期間を伸ばしていくと、ダイワの ESG関連 ETFは、⽇経 ETFのリターンを 1%から 1.8%上回 る結果が⾒られる。

期間を 1 年間に固定し、様々な ESG指標のベンチマーク収益率を⽐較していくとどうなるだろ うか(図3)xiv。これらは GPIFが採⽤している ESG指標の 5 つである。原指標である親指数か ら、さらに ESG評価に優れた企業を選抜して構成されたものが各当該 ESG 指数であり、それ らと TOPIXの⽐較も同時に⾏っている。(表3)から判断できるように、FTSE Blossom Japan Index 以外の ESG指標において、当該ESG指数はそれぞれの親指数、そして TOPIXと⽐較し、

超過収益率を⽣み出している。ここからも、ESG 関連インデックスは、広く採⽤されている⼀

般的な親指数のインデックス、そして TOPIX などのベンチマークと同等以上の収益が⾒られ る。

【表3】

(GPIFより作成)

ここで、「ESG 投資は株価指数などのベンチマーク以上を⽬指すアクティブファンドは超えるこ とはできないか」という疑問も考えられる。しかし、『ウォール街のランダム・ウォーカー』で マルキール⽒が述べているように、プロのファンドマネジャーが運⽤するアクティブファンド に投資するよりも、⼿数料などを考慮すると結局はただインデックス・ファンドを保持している

⽅がよい結果を⽣むという検証がされている現代において、指数に連動する投資成果を⽬指し て運⽤されている点、運⽤管理費⽤・信託報酬などのコストが相対的に低く抑えられている点な ど、インデックスファンドと似た特徴を持つ ETFにおいて ESG関連の ETFが⽇経 ETFと同 等のリターンを出している実績は評価して良い点であると考える。そして、ESG 投資は⻑期的 投資を⾏うことを前提としているため、将来の持続性を考えたポートフォリオに投資するとい うことは、⼀般的な ETFよりポジティブなリターン乖離を考えるのが⾃然であろう。

(1)企業視点・(2)投資家視点からの ESG インパクト考察として、私たちの暮らす世界にサ スティナブルな影響を与えることは、ビジネスや投資などのいわゆる「お⾦儲け」と両⽴できる ことがここから推論できる。

当該指数(a) 親指数(b) TOPIX(c) 対親指数(a-b) 対TOPIX(a-c)

国内株式

MSCIジャパンESGセレクト・ リーダーズ指数 5.17% 5.14% 4.90% 0.03% 0.27%

MSCI⽇本株⼥性活躍指数 5.55% 5.15% 4.90% 0.40% 0.65%

FTSE Blossom Japan Index 3.90% 5.05% 4.90% -1.15% -1.00%

S&P/JPX カーボン・ エフィシェント指数 5.10% 4.90% 4.90% 0.20% 0.20%

外国株式

S&P グローバル・カーボン・ エフィシェント ⼤中型株指数(除く⽇本) 9.16% 9.11% 4.90% 0.05% 4.26%

ベンチマーク収益率 超過収益率

(11)

4. ⽇本における ESG の現状

これまでの章で、環境・社会・ガバナンスのための取り組みは企業、そして投資家にとって双⽅

にベネフィットのあるものであり、それが社会へ良いインパクトを⽣むことにつながると考察 してきた。では最後に、よりマクロ眼の、世界という視点から⽇本を客観視した際には、⽇本に おける ESG活動はどのように⾒えるのだろうか。

Global Sustainable Investment Reviewxvによると、世界全体のサスティナブル投資の資産額にお ける⽇本のプロポーションは7%である(グラフ7)。⽇本の ESG 投資残⾼は拡⼤しており、前 年⽐360%と拡⼤してはいる(グラフ 8)が、グラフ7の結果を⾒ると少なく感じるのではない か。資産額最多の欧州は複数の国々から成る集合体であるため、⽶国やカナダのサスティナブル 投資の資産額と⽇本を⽐較してみる(表4)xvi。ここから⾒て分かる通り、各国 GDPとサステ ィナブル投資資産額の⽐率を⽐較すると、⽇本における⾃国の経済規模に対するサスティナブ ル投資は、相対的にまだまだ少額であるということが⾔える。

【グラフ7】

欧州, 46%

⽶国, 39%

⽇本, 7%

カナダ, 6% 豪州・NZ, 2%

サスティナブル投資資産額のプロポーション(2018年)

(Global Sustainable Investment Review 2018より作成)

(12)

【グラフ 8】

【表4】

(Global Sustainable Investment Review 2018・World Bankより作成)

では、なぜ⽇本は相対的に ESG 投資が盛んに⾏われていないのか。ESG 投資⼿法は多数あるた め、それぞれの種類に分けてどのような投資⼿法が他国に⽐べて相対的に少ない、または多い状 況なのかを考察する。以下の7つが、各種ESG 投資⼿法である。

①ネガティブ・スクリーニング=武器製造やギャンブルなどネガティブに問題のある企業を投資 対象から除外

②ポジティブ・スクリーニング=同業種中で ESG 評価の⾼いセクター・企業・プロジェクトが 対象

③国際規範スクリーニング=国際的な ESG

基準を満たしていない企業を投資対象から除外

④ESG インテグレーション=財務⾯のみならず ESG

分析を意思決定プロセスへ組み込む

⑤サスティナビリティ

・テーマ投資=サスティナビリティに関する特定のテーマへの投資

⑥インパクト投資=社会問題や環境問題の解決・地域開発が⽬的の投資

⑦エンゲージメント・議決権⾏使=投資先企業との対話や議決権⾏使を通じた ESG への取り組

みの促進

0%

50%

100%

150%

200%

250%

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350%

400%

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000

欧州 ⽶国 ⽇本 カナダ 豪州・NZ 世界

(10億⽶ドル)

世界各地域のESG投資⾼推移

2016 2018 増加率(右軸)

(Global Sustainable Investment review 2018より作成)

(十億米ドル) 米国 日本 カナダ

名目 GDP 20544 4971 1713

サスティナブル投資残高 11995 2180 1699

対GDP比(%) 58.4% 43.9% 99.2%

(13)

それぞれの地域の ESG 投資⼿法の特徴を表したグラフ(グラフ 9)を⾒ると、他の地域に⽐べ た⽇本の ESG 投資⼿法の特徴として、①ネガティブ・スクリーニングが相対的に少ないこと、

そして⑦エンゲージメント・議決権⾏使が相対的に多いということが読み取れる。エンゲージメ ント・議決権⾏使は、「責任ある機関投資家」の諸原則である⽇本版スチュワードシップコード

xviiの影響が⼤きいのではないか。これにより、機関投資家は投資先の企業と建設的で⽬的を伴っ た対話を通じ、サスティナブルな成⻑を促している。その⼀⽅でネガティブ・スクリーニングは、

ネガティブ事業への投資を避ける⾏為であり、対話が発⽣せず、エンゲージメントによるより良 い ESG⽅針が促されないということを考えると、このグラフの結果は納得のできるものだ。

【グラフ 9】

私の考える ESG浸透について、何にお⾦が使われているか、本当に⾃⾝の投資は環境・社会・

ガバナンスに正のインパクトを与えることができるのかという「⾒える化」が⾮常に重要である と考える。(グラフ 9)において、サスティナビリティ・テーマ型投資額は少ない。⽔質汚濁や

森林伐採などといった特定の問題解決をテーマとしてポートフォリオが組まれている投信や、

特定問題のみに焦点を絞った指標は少なく、評価機関によって ESG 評価は⼤きく異なる上に、

結局どんなポジティブ・インパクトのために投資されているかということは直感的には分かり にくい。投資家と企業とが対話をし、直接的なエンゲージメントが主流である⽇本において、今 後ESG 投資をより浸透・拡⼤させていくためには、スチュワードシップに則った投資とインパ クト創出の「⾒える化」を促すためのサスティナビリティ ・テーマ投資がキープレイヤーとな るのではないか。

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

欧州

⽶国

⽇本 カナダ 豪州・NZ グローバル

各地域のESG投資⼿法

ネガティブ・スクリーニング ポジティブ・スクリーニング 国際規範スクリーニング

ESGインテグレーション サスティナビリティ ・テーマ投資 インパクト投資

エンゲージメント・議決権⾏使 (Global Sustainable Investment Review 2018より作成)

(14)

5. おわりに

私はこの⼤学⽣活で ESG という概念を学んだ。しかし⾃⾝が経験した⾦融機関でのインターン シップにおいて、所詮ESG は今流⾏っているミーハー概念であり、実際の投資家たちはショー トターミニズムであり、サスティナビリティに関してあまり興味を⽰していないのではないか という雰囲気は、やはり⾦融の現場にて肌で感じた率直な感想である。しかし、私はこの論⽂を 通じて、企業、そして投資家の双⽅にとって、環境や社会、そしてガバナンスへの貢献と、リタ ーンの追求は両⽴し得るということを再び確認することができた。

まだ ESG浸透が他国に⽐べ浅い⽇本において、この両⽴可能性の有意性とサスティナビリティ を様々な⽅⾯へしっかりと広めていくことは⾃⾝のライフゴールであり、将来も仕事を通じて 取り組んでいきたいと⼀層に強く感じた機会となった。

最後に、網倉先⽣をはじめ、OB・OG の⽅々、そしてゼミ⽣の全員に感謝の気持ちを述べたい。

何事にも「なぜ」という意識を持って疑問に感じる⼼を、私はこのゼミを通じて得ることができ たと思う。⽴派なOG としていつかまた網倉ゼミナールへ再訪し、「何が⾯⽩いの?」と学⽣に 対し問えることができるよう、

精⼀杯の努⼒を重ねていく所存である。本当に有り難うございま

した。

〈参考⽂献〉

Burton G. Malkiel 『A Random Walk Down Wall Street: The Time-Tested Strategy for Successful Investing』W W Norton & Co Inc; Revised, 2019

河⼝真理⼦

『ソーシャルファイナンスの教科書―「社会」のために「あなたのお⾦」が働くと

いうこと』⽣産性出版, 2015

村上芽・渡辺珠⼦

『SDGs ⼊⾨』 ⽇本経済新聞出版社, 2019

i Google Trends 『ESG』

https://trends.google.co.jp/trends/explore?date=today%205-y&geo=JP&q=ESG

ii 経済産業省 『ESG 投資』

https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/esg_investment.html

iii Principles for Responsible Investment 『About PRI』

https://www.unpri.org/pri/about-the-pri

(15)

iv ⽇本経済新聞 『公的年⾦、ESG に 3.5兆円投資 18 年度末(2019 年7⽉ 5 ⽇)』 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47015470V00C19A7EA4000/

v ⽇本サスティナブル投資フォーラム 『サステナブル投資残⾼調査』

https://japansif.com/survey

vi トーマツ企業リスク研究所 『共通価値の創造 CSV』

https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/jp/Documents/get-connected/pub/risk/jp- risk-43-csv.pdf

vii みずほフィナンシャルグループ 『E S G と企業経営について』

https://www.mizuho-fg.co.jp/company/activity/onethinktank/pdf/vol016.pdf

viii ⼤和ハウスグループ 『サスティナビリティレポート 2019』

https://www.daiwahouse.com/sustainable/csr/esg/csr_report/index.html

ix WWF ジャパン 『Science Based Targets イニシアティブ(SBTi)とは』

https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/409.html

x 産経新聞 『ESG推進、役員報酬反映で実効性⾼める(2019 年 6 ⽉ 13 ⽇)』 https://www.sankei.com/economy/news/190613/ecn1906130018-n1.html

xi ⼤和総研 『独⽴取締役の選任状況と ROE、ROA との関係』

https://www.dir.co.jp/report/research/capital-mkt/esg/20191126_021151.pdf

xii ⽇刊⼯業新聞 『役員報酬に「ESG」反映の動き広がる(2019 年 12 ⽉ 16 ⽇)』 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191216-00010001-newswitch-bus_all

xiii モーニングスター 各種インデックスデータ https://www.morningstar.co.jp/index.html

xiv 年⾦積⽴⾦管理運⽤独⽴⾏政法⼈ 『ESG活動報告』

https://www.gpif.go.jp/investment/190819_Esg_Katudohoukoku.pdf

xv Global Sustainable Investment Alliance 『Global Sustainable Investment Review 2018』

http://www.gsi-alliance.org/wp-content/uploads/2019/03/GSIR_Review2018.3.28.pdf

xvi World Bank 『Gross domestic product 2018』

https://databank.worldbank.org/data/download/GDP.pdf

xvii スチュワード・シップ・コードに関する有識者検討会 『「責任ある機関投資家」の諸原則

≪⽇本版スチュワード・シップコード≫』

https://www.fsa.go.jp/news/25/singi/20140227-2/04.pdf

Referensi

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