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研究室紹介(計算材料科学研究室)
茨城大学大学院理工学研究科工学野 物質科学工学科
教授 篠嶋 妥(ささじま やすし)
講師 永野 隆敏
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1.はじめに
2.計算機実験の手法 2-1 分子動力学法 2-2 モンテカルロ法
2-3 偏微分方程式の 数値解法
・フェーズフィールド法
・有限要素法(FEM) 2-4 第一原理計算
3.計算機実験の応用例 3-1 分子動力学法
・材料照射実験
3-2 フェーズフィールド法
・結晶成長過程
3-3 有限要素法(
FEM)
3-4 第一原理計算3
1.はじめに
材料開発のアプローチに新しいツールが加わる
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・材料は原子でできている(原子の集合体)
・材料中の原子の並び方が、材料の性質を決めている
・普通でない原子構造を持つ人造物質が、
これまでにない機能を持つ材料となる
(例)超微粒子、アモルファス、フラーレン、カーボンナノチューブ
直径2nmの金の超微粒子
・・・構造が連続的に変化
SUMIO IIJIMA AND TOSHINARI ICHIHASHI, PHYS. REV. LETT. 56, 616 (1986)
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分子動力学法は、材料の中の原子の動きを
ニュートンの運動方程式を数値計算で解いて求める
( ) ( ) ( ) ( ) ( )
( ) ( ) ( ) ( )
+
+ +
=
+
+
+
=
+
t F t
t m F
t t V t
t V
t m F
t t tV t
r t
t r
i i
i i
i
i i
i i
i
2
2
2
ma F =
2-1
6 6
モンテカルロ法は、材料の中の原子配置を乱数により求める
粒子iを乱数を生成して 試しに動かす。
この変化が実際に起きて いいかどうかを
乱数を生成して決める。
統計的に正しい。
分子動力学法で求めるよりも楽。
起きていい確率:
一様乱数
r < p
ならばOK,
そうでなければ配置をもとに戻す2-2
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2.計算機実験の手法
2-3.偏微分方程式の数値解法
・自然は物理法則に従う
・物理法則は偏微分方程式で与えられる
(例)温度変化を記述する方程式
+
+
=
2 2 2
2 2
2
z T y
T x
T t
c T
この方程式を計算機に解ける形に変形して、
プログラムを作り、計算する。 → 差分法、有限要素法
→ 複雑な形をした物体の中の温度変化がわかる
・固体中の元素濃度(上と数学的に同じ式になる)
・液体の流れ
・固体中の力のかかり方
・固体中の電子の動き ・・・・
T(x ,y, z, t)
偏微分方程式を計算機で解くことで わかる
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2
−
3 フェーズフィールド法フェーズ=相(気相、液相、固相)
フィールド=場
フェーズフィールドは、空間中の場所・時間の関数として相の状態を示す 秩序変数である。
図は液相
-
固相の例、この場合液相は0、固相は1、固-
液界面はその中間 の値をとる。φ
x 1
0
固相
x
液相
Φ
=0:液相Φ
=1固相9
高温 低温
融点
熱力学的ポテンシャル ( ギブスエネルギー G=U+PV-TS)
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3-1 分子動力学法
・材料照射実験( Ni 3 Al )
0.00 ps 0.05 ps 0.25 ps 0.75 ps
2.50 ps 5.00 ps 10.00 ps
照射により構造が乱れる→硬度の変化
Ahmad Ehsan Mohd Tamidi, Yasushi Sasajima and Akihiro Iwase, Materials Transactions, Vol. 61, No.1, pp. 72- 77 (2020)
[doi:10.2320/matertrans.MT-M2019241]
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3
−
2 フェーズフィールド法ロータスアルミニウムにおけるポア成長の最適条件探索
ロータス金属・・・
空隙である多数の気孔(ポア)を有する ポーラス材料の中でも一方向に伸びた 気孔を有する金属材料。
高周波コイル
冷却 部
ダミーバー 水素ガス雰囲気
溶融Al
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固相 液相
固液界面
G T
V
T(K)
液相
固相 気相
劉 濱,池田 輝之,
篠嶋 妥,
軽金属 第68巻 (5), pp. 257 – 258 (2018)
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ポアサイズの変動に合わせて固液界面移動速度Vを変動
反応中にVを制御した結果
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8
0 40 80 120 160 200 240 280 320 360 400 440 480 520 560 600 640 680 720 760 800 840 880 920 960
固液界面移動速度(mm/min)
時間(s)
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3
0 40 80 120 160 200 240 280 320 360 400 440 480 520 560 600 640 680 720 760 800 840 880 920 960
固液界面移動速度(mm/min)
時間(s)
比例定数
=0.00009
制御のタイミング Δt check=3.5 s 制御のタイミング Δt check=4 s
固液界面停止プログラム
比例制御プログラム
Materials Science & Engineering B, Vol.262, 114742 (2020) https://doi.org/10.1016/j.mseb.2020.114742
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3-3 有限要素法(
FEM)
熱処理時における塑性変形を完全に抑制した
LSI 配線⽤バリア膜
TSV(スルーシリコンビア )
用バリア材シリコンを貫通する金属配線
1. Silicon
2. Titanium (3 μm) 3. Copper
2.08E-07 2.41E-07
2.61E-07 2.75E-07
2.87E-07 2.96E-07
3.05E-07 3.12E-07
3.19E-07 3.25E-07
0.00E+00 5.00E-08 1.00E-07 1.50E-07 2.00E-07 2.50E-07 3.00E-07 3.50E-07 4.00E-07
25 75 125 175 225 275 325
Protrusion of Copper (m)
Temperature (C)
3層構造バリア
(
アルミニウム/AK-100
高分子/
タングステンバリア、底部はアルミニウムのみ
)
のジオメトリ1. Silicon
2. Tungsten (0.5 μm)
3. AK-100 Polymer (0.5 μm) 4. Aluminum (0.5 μm)
5. Copper
3.91E-07
0.0E+00 5.0E-08 1.0E-07 1.5E-07 2.0E-07 2.5E-07 3.0E-07 3.5E-07 4.0E-07
25 75 125 175 225 275 325
Protrusion of Copper (m)
Temperature (°C)
Ti
Triple Lining
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Yazdan Zare, Yasushi Sasajima and Jin Onuki, J. Electon. Mater., Vol.49, pp. 3692–3700 (2020)
https://doi.org/10.1007/s11664-020-08076-z
Cu
スルーシリコンビア(TSV)
の熱処理に伴うCu
突出を抑制 するバリア膜の探索を行った。三層構造膜とし、内側は基 体であるシリコンよりも高いヤング率、外側は銅よりも高い 熱膨張率、中間層はシロキサンのように柔らかい樹脂層と すれば、Cu
突出をほぼ完全に抑制できることを発見した。篠嶋妥
, Yazdan Zare,
大貫仁, 特願2018-205406, “
配線構造”