2018年10月05日 演習問題
I2次の実対称行列A= a c c b
!
∈M2(R)に対して以下の条件(i),(ii),(iii)が必要十分であることを証 明しましょう.
(i)Aが定める2次形式が非負定値である.すなわち
(A~v, ~v)≥0 (~v∈R2)
(ii)Aの固有値α, β∈Rがα, β≥0を満たす.
(iii)a, b≥0, ab−c2≥0
解答 Aを回転行列R= (~r1~r2)で
R−1AR= α 0
0 β
と対角化します.このとき
A~r1=α~r1, A~r2=β~r2
が成立します.さらに回転座標変換 ξ η
!
=R−1 x y
!
によって
(A x
y
, x
y
) =αξ2+βη2
となります.
(i)⇒(ii)
0≤(A~r1, ~r1) = (α~r1, ~r1) =α||~r1||2=α
からα≥0が従います.同様にβ ≥0も導けます.
(ii)⇒(i)α, β≤0から
(A x
y
, x
y
) =αξ2+βη2≥0
が従います.
(ii)⇒(iii)
一般にp, q∈Rに対して
p, q≥0 ⇔ p+q≥0, pq≥0
が成立します.
ΦA(λ) = 0の解と係数の関係を用いて
a+b=α+β≥0, ab−c2=αβ≥0従ってab≥αβ+c2≥0 からa, b≥0が成立します.以上で(ii)⇒(iii)を証明しました.
5
(iii)⇒(ii)対称行列A∈M2(R)の固有値α, β∈Rですから
α, β≥0 ⇔α+β≥0, αβ≥0
が成立します.(iii)の仮定の下で
α+β =a+b≥0, α+β=ab−c2≥0
が成立しますからα, β≥0となります.
IIm×n行列Aがあるとします。Pがm次の正方行列、Qがn次の正則行列であるとき
dim Im(A) = dim Im(P A) (1)
dim ker(A) = dim ker(AQ) (2)
が成立することを示しましょう。
解答 (1)について
Im(A)の基底を α1, . . . , α` としましょう.このときαj = A~xj を満たす ~xj ∈ Kn が存在しますから P ~αj =P A~xj∈Im(P A)となることが分かります.以下では
P ~α1, . . . , P ~α` はIm(P A)の基底となる ことを示します.c1P ~α1+· · ·+c`P ~α`=~0が成立すると
c1P ~α1+· · ·+c`P ~α`=P(c1~α1+· · ·+c`~α`) =~0
からc1α~1+· · ·+c`~α`=~0が導けますからc1=· · ·=c`= 0が従います.よって P ~α1, . . . , P ~α` は線型独立である
ことが分かりました.さらに任意の~v∈Im(P A)をとるとある~x∈Knに対して~v=P A~xが成立します.こ のときA~x∈Im(A)が成立しますから
A~x=c1~α1+· · ·+c`α~`
と表現されます.この両辺にP を掛けると
~
v=P A~x=P(c1~α1+· · ·+c`~α`) =c1P ~α1+· · ·+c`P ~α`
と~vがP ~α1, . . . , P ~α` の線型和で表現できます.以上で
P ~α1, . . . , P ~α` はIm(P A)を生成する ことが分かりました.
(2)についてker(A)の基底をα1, . . . , βtとしましょう.このときAQ·Q−1βi=A~βi=~0が成立しますから,
A−1β~j∈ker(P A)となることが分かります.以下では
Q−1β~1, . . . , P ~βtはker(P A)の基底となる
6
ことを示します.c1Q−1β~1+· · ·+c`Q−1β~`=~0が成立すると c1Q−1β~1+· · ·+c`Q−1β~t=Q−1
c1β~1+· · ·+ctβ~t
=~0
からc1β~1+· · ·+ctβ~t=~0導けますからc1=· · ·=ct= 0が従います.よって Q−1β~1, . . . , P ~βtは線型独立である
ことが分かります.次にw~ ∈ker(AQ)を任意にとります.このときQ ~w∈ker(A)ですから Q ~w=c1β~1+· · ·+ctβ~t
と表されます.この両辺にQ−1を掛けると
~
w=Q−1(c1~β1+· · ·+ctβ~t) =c1Q−1β~1+· · ·+ctQ−1β~t
となりますから
Q−1β~1, . . . , P ~βtはker(QA)を生成する ことが示されました.
IIIV ⊂Rnは部分空間とします。
V⊥={w~ ∈Rn; (~v, ~w) = 0 (~v∈V)}
はRnの部分空間です(V の直交補空間と呼びます). (1)V1, V2はRnの部分空間とします。
V1⊂V2
が成立するならばV1⊥ ⊃V2⊥が成立することを示しましょう。
(2)V1, V2はRnの部分空間とします。
(V1+V2)⊥ ⊂Vj⊥ (j = 1,2)
を示しましょう。
(3)V1, V2はRnの部分空間とします。
(V1+V2)⊥=V1⊥∩V2⊥
であることを示しましょう。
解答(1)w~ ∈V2⊥とします.~v1∈V1であると~v1∈V2となりますから (w, ~~ v1) = 0
が従います.よってw~ ∈V2⊥であることが分かります.
(2)V1, V2⊂V1+V2が成立しますから(3)を用いると
(V1+V2)⊥⊂V1⊥, (V1+V2)⊥⊂V2⊥
が分かります.
7
(3)(2)から
(V1+V2)⊥ ⊂V1⊥∩V2⊥
が分かります.逆にw~ ∈V1⊥∩V2⊥とします.~v=~v1+~v2が~v1∈V1, ~v2∈V2に対して成立しているとする とw~ ∈V1⊥かつw~ ∈V2⊥が成立しますから
(~w, ~v) = (w, ~~ v1) + (w, ~~ v2) = 0
となります.これはV1⊥∩V2⊥⊂(V1+V2)⊥ を意味します.以上で(V1+V2)⊥=V1⊥∩V2⊥を示しました.
注意さらに(3)の両辺の直交補空間を考えると
(V1∩V2)⊥=V1⊥+V2⊥
が導けます.
IVAをm×n行列としてAが定める線型写像を
fA: Kn→Km ~v7→A~v
と表します.
(1)V はKnの部分空間とします。このとき
AV :=fA(V) ={A~v∈Km;~v∈V}
がKmの部分空間であることを示しましょう。
(2)W はKmの部分空間とします。このとき
fA−1(W) ={~v∈Kn;A~v∈W}
がKnの部分空間であることを示しましょう。
解答(1)w~1, ~w2∈AV とします.このとき
A~v1=w~1, A~v2=w~2
を満たす~v1, ~v2∈V が存在します.このとき
λ1w~1+λ2w~2=λ1A~v1+λ2A~v2=A(λ1~v1+λ2~v2)
からλ1w~1+λ2w~2∈AV が分かります.よってAV は部分空間です.
(2)~v1, ~v2∈fA−1(W)とします.このときA~v1, A~a2∈W となります.W は部分空間ですから A(λ1~v1+λ2~v2) =λ1A~~v1+λ2A~~v2∈W
からλ1~v1+λ2~v2∈f−1A(W)であることが分かります.これはfA−1(W)が部分空間であることを意味します.
8