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Soshiki eigyō ni okeru eigyō tantōsha no gyōseki ga teimeisuru yōin ni tsuite no kōsatsu : kanren busho kara no hyōka to jiko hyōka no kanten kara

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Academic year: 2021

Membagikan "Soshiki eigyō ni okeru eigyō tantōsha no gyōseki ga teimeisuru yōin ni tsuite no kōsatsu : kanren busho kara no hyōka to jiko hyōka no kanten kara"

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(1)Title Sub Title Author Publisher Publication year Jtitle Abstract Notes Genre URL. Powered by TCPDF (www.tcpdf.org). 組織営業における営業担当者の業績が低迷する要因についての考察 : 関連部署からの評価と自己評価の観点から 髙橋, 寛宜(Takahashi, Hiroki) 清水, 勝彦( Shimizu, Katsuhiko) 慶應義塾大学大学院経営管理研究科 2018. Thesis or Dissertation http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=KO40003001-00002018 -3451.

(2) 慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程 学位論文(. 2018 年度). 論文題名. 組織営業における営業担当者の業績が低迷する要因についての考察 ―関連部署からの評価と自己評価の観点から―. 主. 査. 清水 勝彦教授. 副. 査. 坂下 玄哲准教授. 副. 査. 林 洋一郎准教授. 副. 査. 氏. 名. 髙橋 寛宜.

(3) 所属ゼミ. 清水勝彦 研究会. 氏名. 高橋 寛宜. (論文題名). 組織営業における営業担当者の業績が低迷する要因についての考察 ―関連部署からの評価と自己評価の観点から―. (内容の要旨) 筆者は大学卒業後に日系の専門商社と外資系の重電機器メーカーで勤続経験がある。専門商社で は営業成績を平均以上に達成できたが、重電メーカーではノルマを大きく下回った。両社の営業手 法では、商材の違いから顧客層まで多くの差があるが、中でも属人営業と組織営業という点が最も 特徴的な差異ではないかと考えた。 組織営業が、属人営業と営業プロセスの過程で異なる点が、 「社内との協業・連携」である。扱う 商材が複雑であることと、顧客が専門的知識を有する等の理由で、営業担当者が単独で提案内容を 作成し、顧客に訴求することが難しくなっているのが現代の営業の特徴である。組織営業では、営 業が単独で提案を作成するのではなく、社内の関連部署と協業して提案を作成し、顧客に訴求する 仕組みを取る。 筆者が、重電機器メーカーでノルマを達成できなかった理由は、 「社内との協業・連携」が上手く 行えなかったことが原因と考えた。従来、営業担当者が業績を上げるための資質は、顧客への訪問 回数やトークスキルなど、対外的な能力であるとなんとなく考えてきた。しかし、目線を社内に移 し、社内協業・連携が不十分な営業担当者は、社内関連部署からの評価が下がり、引いては業績が 低迷するのではという考えを持った。 そこで、本論文では、組織営業の営業担当者に範囲を絞り、社内関連部署に所属し、営業担当者 と協業したことのある方々にインタビュー・アンケートを行い、関連部署から評価を下げる行動を 特定し、評価が下がるとなぜ業績も下がってしまうかについての因果関係について考察した。 結論として、関連部署から評価が下がる行動を大別すると、「知識欠乏の認識欠如」、「配慮の欠 如」が見られる。また、一度失注してしまうと、関連部署との対等関係が崩壊し、営業担当者の中 で「意思疎通意欲の欠如」が発生し、受注獲得のプロセスが一段と遠のいていく過程を見ることが できた。 アンケートでは、営業担当者が日常行っている、関連部署とのコミュニケーションについて調査 した。結果、 「指示が具体的であるか否か」 、 「謝意を述べているか否か」といった、ごく当たり前に 行われているはずの行動の出来如何で、関連部署の評価が分かれることも考察できた。 最後には提言として、営業担当者と関連部署の協業・連携を円滑に行っている組織事例を取り上 げ、営業担当者自身への改善、組織での改善を通して、営業担当者の業績を向上し、引いては企業 における業績向上を図るうえで参照となる内容になったのではないかと考える。.

(4) 目次 1.問題意識・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P1 2.本論文の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P3 3.先行研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P4 4.リサーチクエスチョンの設定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P8 5.検証方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P12 6.インタビュー調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P13 7.アンケート調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P25 8.提言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P35 9.本論文の課題と限界・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P40 10. 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P42 11. 謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P43 調査票・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P44.

(5) 1. 問題意識 1 1.筆者のバックグラウンド 筆者は大学卒業後、日系の専門商社で 4 年間住宅用木材資材の営業に従事した後、外資 系重電機器メーカー(以下 A 社)に転職し、医療用重電機器営業を経験した。 しかし、メーカー在職中の売上成績は思うように達成できなかった。1 年目は辛くも売上 ノルマの達成を果たしたものの、2 年目の成績は、ノルマに対し、25%の売上成績しか達成 できず、150 人いる営業担当者の中で最下位層の成績であった。当時は多忙の中で、自分の 営業スタイルを振り返れず、暗中模索の日々を送っていた。 同社を退職し、当研究科に入学後、改めて過去の自分を客観的に振り返られるようになり、 当時何故成績を上げられなかったのか、何が失敗の原因だったのかを追究してみたいと考 えた。 筆者は当研究科を修了後、事業会社に転職し、経営企画に携わりたい願望がある。またゆ くゆくは企業の経営の中枢を担いたい願望もある。その中で、事業会社にとって売上・利益 を獲得する営業の存在は切っても切れないものであり、上記の願望を叶えるには、過去の自 らの営業での失敗を見つめなおし、反省を行うことで、将来事業会社を管理運営する際の知 見としたいと考えた。また、今回の修士論文執筆を通して、営業の仕事のみならず、全ての 仕事に対して当てはまる自らの落ち度を反省し、改善する絶好の機会だと思っている。 1 2.属人営業と組織営業 筆者の経験した 2 社の営業スタイルについて記述しておく。 専門商社では、商材の仕入れから、顧客の開拓、ニーズのヒアリング、値付け、販売、ア フターフォローに至るまでのプロセスを全て営業担当者個人で行ってきた。営業担当者が 一連のプロセスで関わる社内の人物は、営業アシスタントの事務と、自らの上司のみである。 上司に対しては、フローの経過報告や、時には販売価格の相談などを行うことはあるが、全 ての決定権は筆者に委ねられており、意思決定に関しては困ることはなかった。 一方、メーカーでの営業担当者の役割は、顧客の開拓、ニーズのヒアリングは専門商社と 変わらないが、それに加え顧客に対して提案を行う際に、社内の関連部署と相談、協力のも と提案を構築していく作業が入る。これは、商材が技術的な複雑さを持っていた特性がある ためで、提案の構成には営業担当者が持ちえない専門的な内容も多分に含まれることとな り、その様な知識・経験を持つ関連部署と相談しながら提案を作っていく必要がある。 俗に、上記専門商社の営業の仕方を、営業担当者個人の裁量、能力によって業績が委ねら れる故、本論文ではこのような営業スタイルを属人営業と呼ぶことにする。一方、上記のよ うなメーカーでの営業の活動は一般的には組織営業と呼ばれることが多い。そして、 「組織」 の名が冠せられているように、組織営業は営業部署のみならず、営業以外の関連部署との協 業が必須となる。つまり、属人営業では、対顧客の立場から、情報収集・提供のスキルや顧 客との関係維持のスキルが重要視されるのに対し、組織営業ではそれに加え、社内に対して、 1.

(6) 顧客の情報の発信や提案作成のための折衝・調整スキルが求められてくるのである。 1 3.BtoB 営業の変遷 高嶋(2002)によると、BtoB 営業の中では「御用聞き営業」が⾧く主流だったとされる。 御用聞き営業の主目的は、顧客の要望をヒアリングし、受注することである。そして、一過 性ではなく、一つの顧客に対し繰り返し営業を行うことで、顧客との関係性を強めていくも のである。しかし、御用聞き営業の欠点としては、顧客の要望を毎回ヒアリングに行く為の コストが掛かり、且つその要望が、真に顧客の課題解決とは結び付かないことがある点であ る。また、顧客からは営業活動の付加価値が認められにくい欠点もある。その欠点を補うた めに考え出されたのが「組織営業」である。組織営業では、顧客の要望をヒアリングするの ではなく、顧客の現状をヒアリングし、それを元に顧客の真の課題や潜在ニーズを発掘し、 それに見合った提案を作成する。それにより、コストに見合った対価を作り得ることができ、 顧客からも営業活動の付加価値を認められやすいのである。現代はそれに加え、販売する製 品が技術的に複雑多岐になっているため、営業担当者が個人で製品知識を全て把握するこ とは難しくなっている。そのため社内の関連部署が、各部署の専門知識を共有する必要もあ る。よって各部署との折衝・連携のスキルが重要になってくる。 1 4.問題意識 ここまでを踏まえ、改めて筆者の過去の営業経験を振り返ってみると、「対社内への営業 活動」が疎かになっていたと考える。専門商社での営業経験において、対社内における営業 活動を行っておらず、その重要性が分からなかったことがそもそも原因の一つであるが、顧 客のニーズを特定できず、関連部署に何度も同様の報告を行うこととなり、関連部署の作業 効率を下げてしまい評価を落としてしまったこともある。その積み重ねが、関連部署との折 衝・連携の頻度、質をさらに落とすこととなり、結果満足な提案が作られず失注したと考え る。上記は、筆者の過去の経験則に基づいた内容であるが、実際に組織営業を経験した営業 担当者の中で、同様の失敗を経験した人は多いのではないだろうか。もし、関連部署との協 業が原因で業績が上がらないのだとすれば、本論文でその原因をさらに細かく分析し、対策 を講じることを考察内容としたい。筆者自身のみならず、過去に営業で苦しんだ経験を持つ 人が、同じ失敗を繰り返さない為の考察として、本論文が意味のある内容になり得るのでは ないかと考える。. 2.

(7) 2. 本論文の目的 営業の分野にも、昨今「標準化」や「システム化」といった言葉が叫ばれて久しい。筆者 が所属していた A 社でも、営業スキルの標準化は喫緊の課題として挙げられており、成績 上位者の成功体験談の共有や、ロールプレイ型の営業研修など、さまざまな方法で営業スキ ルを標準化し、営業担当者の中で優劣を無くす努力が行われていた。しかし、A 社における 当時の営業担当者の成績を担当者別に見てみると、パレートの法則が当てはまっていた。 2016 年当時、A 社の年間売上目標 500 億円のうち、その 7 割近くにあたる 350 億円は、営 業担当者の 2 割に当たる 30 人程の営業担当者が受注を獲得し、残りの 8 割がノルマと同 等、若しくはノルマ以下の受注数の獲得に留まっていた。このような特徴は、A 社だけでは なく、他の重電機器メーカーや機械・部品メーカー、IT メーカーの営業部門でも同様の事 が指摘されているようである。 営業担当者の販売スキルは、確かに成績上位者の成功体験や営業手法が紹介されること はあっても、その手法を営業下位の担当者が実践し、必ずしも成功するとは限らない。営業 担当者が成績を上げるプロセスは、やはり属人的である面が多く、共有化されることは難し い。 しかし、この属人的なプロセスの中に、営業成績を左右する共通する指標があると考える。 繰り返しになるが、その指標を捉え、営業担当者に共有する仕組みを考察することで、上記 の様な営業担当者の能力の向上・標準化を目指し、引いては企業の業績向上に寄与したいと 考える。これが当研究における目的である。. 3.

(8) 3. 先行研究 3 1.営業の役割に関する先行研究 山内(2011)によると、日本のマーケティング研究において営業ないし営業管理に関する 研究が本格的にすすめられるようになった 1990 年以前は、営業は人的販売論や販売管理論 として研究されていた。 しかし、90 年代に入ると、日経産業消費研究所が 1992 年と 1997 年に実施した大規模調 査によって、それ以降の営業研究において下記 3 点の考察が広まっていったと指摘する。 (1)営業は顧客や市場と企業における接点において、マーケティングによって構築された 全体的な売れる仕組みを実現する過程として、 「市場価値実現 の領域を担っているこ とを明らかにした。 (2)営業組織の持つ組織特性、取り扱う製品タイプ、競争上の地位、対象市場 の発展段階、時代背景等によって、営業を体系化した。 (3)これまでの属人的な営業から、ノウハウの共有化で、優れた営業ノウハウ を組織内で共有することで営業担当者の平均値を上げようとする動きがあること、 また、営業のチームプレー化で個人の能力よりもチームワークが販売成果の鍵を握 る可能性があり、それを可能にしているのは情報通信技術によって進展した営業の 情報化である。 田村(1999)は、上記(2)の観点をさらに深化させ、営業活動のあり方が、従来の大量集 中型から関係複雑型へと変化する必要があると主張している(図 1) 。特に、大規模小売業 の台頭、製販統合の進展などで、顧客の取引交渉力が増大している中で、取引対象は特定の 製品から当該製品を供給するマーケティング・パック(企業のマーケティング方針に基づき 開発された複数製品の取り揃えと、それを統合するマーケティング・ソフトの組み合わせ) へと変化し、交換型取引から関係型取引へと取引形態も変化しており、顧客欲求の多様化や 製品のソフト化、短命化などによって市場の不確実性は増大していると指摘する。. 【図 1 営業をタスク複雑性と営業サイクルで分類したマトリクス】 ※田村(1999)より筆者作成 4.

(9) 小林・南(2004)は、営業の役割について、それは単なる販売活動を超えて、販路、商品、 営業支援等のマーケティング活動との境界領域をもそのドメインにしている。つまり、営業 が単に営業担当者の活動を中心とする販売活動だけでなく、営業支援、販路選択、製品開発 等のマーケティング活動と密接に関連しながら、それらマーケティング活動と人的販売と の接点も包括することによって、営業が顧客情報の収集や自社製品の販売活動とともに、あ るいはそれ以上に自社の他部門と他のチャネル構成員や最終顧客との関係調整的な役割を 担っているとしている。営業担当者は企業と市場の境界に位置し、両者を結びつける境界連 結者と見なすことができる。そして、境界連結者としての営業担当者の活動は、 「対外的活 動」と「対内的活動」に分けることができる。対外的活動とは、顧客に対する販売活動だけ でなく、顧客への情報提供、受注、配送、集金活動、得意客との関係を保つ訪問活動など、 販売を実現するための様々な活動が含まれている。一方で対内的活動とは、企業内部におけ る活動を意味し、市場情報を社内の諸部門に伝達するとともに、研究開発、生産、物流、調 達といった諸部門と折衝、調整し、時には商品開発に参加することもある。つまり、販売だ けを目的とせず、境界連結者として他のチャネル構成員や最終顧客との関係を取り持つ営 業は、企業と顧客との間のリレーションシップの要だと理解することができる(図2) 。. 【図2 営業部門の活動内容】 ※小林・南(2004)より筆者作成 以上より、営業に求められる資質として、他部門との連携が必須になるであろうと理解で きる。しかし高嶋(2002)によると、その連携方法は営業担当者の裁量に任される(フォーマル な方法は設定されていない)としている。 その理由としては、営業部門は顧客志向を最大化する提案を行い、その実現に向けて他部 門の協力・提携を仰ぐ一方、他部門は営業に比べて顧客志向が高いわけではなく、自身の仕 事の効率性を最大化しようとする意識の違いがあることを挙げている。そのため、営業は部 門間連携で最大の効果を獲得すべく、自らの人間力や過去の実績、社内政治力を利用して、 他部門とインフォーマルな関係を結び、その結果他部門とインフォーマルな関係が強い人 ほど、顧客の志向に合わせた提案を行い、結果好業績を上げるとする。 5.

(10) 言い換えれば結果が出ない営業担当者が生じる理由は、顧客の声を社内に伝えられない、 すなわち、他部門とのインフォーマルなネットワークを作る能力に欠けているからと考え られる。 3 2.営業担当者に求められる資質に関する先行研究 田村(1999)は、図1の各々の営業タイプにおいて、各担当者が求められる資質について、 アンケート調査に基づく回帰分析を実行することで可視化している。 具体的には、営業活動パターンの基本次元を「戦場構成」 「顧客対応」 「新規開拓」 「意思疎 通」 「関係構築」に分け1、分析の結果、意思疎通を除く4つの基本活動変数は、すべて目標 達成率に対して有意で正の回帰係数を持っていることを明らかにした。そして、戦場構成、 顧客対応、新規開拓、関係構築に関わる営業活動パターンを習得した営業担当者はより高い 目標達成率をあげる傾向にあり、調査結果を経験年数別に標本を細分化して分析すると、2 つのことが判明した。第1は、戦場構成、顧客対応、新規開拓は、営業経験年数に関わり無 く、目標達成率の向上に寄与する可能性がある。第2は、意思疎通は少なくとも営業経験3 年以上になって目標達成率に貢献するが、それ未満では有意な関係を持っていないという ことである。つまり、関係構築は、営業経験3年未満において目標達成率と有意な関連を持 っているが、3年以上になると有意な関連を持たないのである。これらのことから、経験効 果の働きは、営業の基本活動の内容によって大きく異なり、このことを営業知識の習得とい う観点からみると、経験によって誰でも習得できる知識とそうでない知識があるというこ と明らかになった。特に、後者の知識は経験だけでなく、その営業担当者に特異な属人的な 能力に依存しているが、その理由として第一に、顧客が何を考えているのかについての情報 が不確実である、第二に、商談の過程で顧客の真意を嗅ぎ分ける必要がある、第三に、その 情報に基づいて適切なプレゼンを臨機応変に展開する必要がある、といった営業状況の特 異性にある。 3 3.営業担当者の部門間調整力と業績に関する先行研究 松本(2013)は、法人営業を行う営業担当者が、顧客との関係構築及び維持を戦略目標とし. 1. 各々の指標の定義については下記の通りである。. ・戦場構成:商品と対象顧客との情報に基づく、営業活動の場の効率的な設定活動 ・顧客対応:顧客の個別特性に対応した、適応的な営業活動 ・新規開拓:新規開拓を目指した攻勢的営業活動 ・意思疎通:顧客との円滑なコミュニケーション活動 ・人間関係:顧客との人間関係の構築活動 ・顧客信頼:顧客から「信頼」を勝ち得る活動 6.

(11) た場合、実行される営業活動はどのようなものが有効なのか、言語に因るコミュニケーショ ンであるバーバル・コミュニケーションと、非言語(顔の表情、まなざし、体の動き等)のノ ンバーバル・コミュニケーションで比較できる分析モデルを設定し実証研究を行っている。 当研究では、実際に法人営業を行う営業担当者 310 名にアンケート調査を実施し、結果と して、 「私は社内の他部門との連絡・調整はスムースに行えている」 、 「私は技術的に難しい 商談の際に、専門知識を持つ社員との同行を行っている」といった部門間連携コミュニケー ションは、顧客開拓力に影響を与えるとの検証結果が出されている。これは、法人営業特有 の、製品知識量の範囲の広さ、深さや、顧客の購買行動が組織的であり、営業側も提案に際 し組織的な活動が求められるためではないかとの示唆がある。 3 4.先行研究を踏まえて 上記の先行研究は、経験を積んだ営業担当者が必ずしも営業を成功しているわけではな いこと、関係型複雑営業において、顧客の情報や真意を嗅ぎ分けること、他部門間の連携が 重要という点を指摘している点で興味深い内容である。実際に機械の設置提案のような関 係型複雑営業においては、顧客の情報やそれに基づく真意や意図に関して、営業だけではな く他部門と協議・相談の上決定し、営業活動を行っていくものである。このことからも、単 に製品知識や顧客スキルを身に着けるだけではなく、部門間の調整力を備えた担当者が、業 績を伸ばしているのではないかと考えられる。 また、松本(2013)の研究では、部門間連携コミュニケーションは顧客開拓力に影響を及ぼ す旨の結果あり、筆者の問題意識を反映した内容ではあるが、一方で、 (1)営業担当者のみの視点であり、他部門の見解が含まれていない。 (2)顧客開拓力の因子分析が、営業担当者へのアンケートによるもので、客観的な数値(売 上数値、販売台数)で示されていない。 (3)部門間連携コミュニケーションを測定するにあたり、質問数が 3 問と少ない といった問題点も挙げられる。 本研究では、上記のように先行研究では深く取り上げられていない、関連部署と協業する 際の連携の仕方(コミュニケーション)の行動を細かく分析し、どのような行動が関連部署 の評価に影響するか、評価の高低が営業担当者の業績にどのような影響を及ぼすかを考え たい。. 7.

(12) 4. リサーチクエスチョン 4 1. 「営業」の定義 本研究での営業の定義は、田村(1999)で分類化された「関係型複雑営業」に限定するものと した(図1)。本分類では、営業活動を二つの基軸に分けている。一つは「タスク複雑性」 である。タスク複雑性は以下の状況の時に、より複雑性を増す。 (1) 購買重要性が高い。 (2) 売上のほとんどを大口顧客が占めている。 (3) 購買決定には、商談相手個人だけではなく、顧客側の複数の人間がアプローチする。 もう一方の軸は、 「営業サイクル」である。営業サイクルとは、顧客へのアプローチからク ロージングに要する時間である。営業サイクルは次のような条件が現れる時、⾧くなる傾向 がある。 (1) 営業努力がどのような業績を生み出すかわかるまでかなりの時間がかかる。 (2) 営業業績への営業担当者個人の貢献を測ることが難しい。 (3) 見込客にわが社を信頼させるにはかなりの時間がかかる。 上記の二軸において、各々単純か複雑か、短いか⾧いかという二つの状態を考え、それら を掛け合わせることで四種の類型を作っている。 図示すると下記のようになる。. 【 (再掲)図 1 営業をタスク複雑性と営業サイクルで分類したマトリクス】 ※田村(1999)より筆者作成 本論文における「関係型複雑営業」の業界は、例えば重電機械業界、IT 業界が挙げられ る。これらの製品は、個人が顧客の対象となることはなく、法人顧客を相手に行う営業であ る。また、小売製品を扱っていても、法人顧客を相手に、その顧客の販促提案を行う営業担 当者なども含めることとする。. 8.

(13) 4 2.営業担当者の類型化 リサーチクエスチョンを設定するにあたり、まずは営業担当者を類型化したい。 問題意識の項目でも触れたとおり、関連部署からの評価の高低で、当該の営業担当者の業績 が変わるのではないかという疑問に基づき、分類の軸の一つには「関連部署からの評価」を 設定したい。加えて、もう一つ軸として、 「営業担当者の自身の評価」も加えたい。営業担 当者自身の評価とは、営業担当者がこれまで行ってきた営業活動に対して、自身で評価をつ けたもので、評価の尺度としては、過去の実績そのものや、過去の実績をベースとして、自 身の営業プロセスを他の営業担当者と比較したものが挙げられる。 上記の分類を表にしたものが図 3 である。. 【図 3 営業担当者の、自身と関連部署の評価軸によるマトリクス】 各々のタイプについて、説明を施すと下記のとおりである。 Type①:営業担当者自身の営業プロセス評価が高く、関連部署からの評価が高い営業担当 者。 Type②:営業担当者自身の営業プロセス評価は低いが、関連部署からの評価が高い営業担 当者。 Type③:営業担当者自身の営業プロセス評価が低く、関連部署からの評価も低い営業担当 者。 Type④:営業担当者自身の営業プロセス評価は高いが、関連部署からの評価が低い営業担 当者。. 9.

(14) 4 3.リサーチクエスチョンの設定 各々のタイプの営業担当者と、業績の関係について、以下のリサーチクエスチョンを 設定した。 リサーチクエスチョン1: Type①の営業担当者は、営業プロセスは正しく確立されており、関連部署からの評価も高 く、効率の良い仕事ができるため、業績が高い。 リサーチクエスチョン2: Type②の営業担当者は、Type①の営業担当者への成⾧過程にある人材。営業プロセスは改 良されてきている状態にあり、改良されている事実が関連部署からの評価の高さにもつな がっており、営業フォローが得られ、業績は平均以上である。 リサーチクエスチョン3: Type③の営業担当者は、営業プロセスが確立されていない状態にある。自身がその状況を 正しく認知しており、関連部署も、本人の課題を理解している。営業の際の不十分な個所を 関連部署からのフォローで補えるが、業績は Type①、②に比べ低迷する。 リサーチクエスチョン4: Type④の営業担当者は、営業プロセスが正しいと過信しているが、関連部署からすると、 間違ったプロセスと判断されやすい。そのため関連部署からの評価が低く、社内で協業して 提案を組むことが容易ではない。そのため顧客訴求も上手くいかず、業績が低い。 上記のリサーチクエスチョンに沿って、営業担当者の Type 別の業績を考えてみると、図 4 のような傾向があるのではないかと考える。. 10.

(15) 【図 4 営業担当者のタイプ別による業績の予想】 また、本論文では、Type④の営業担当者に焦点を絞って考察を行う。問題意識の項目で 触れたとおり、 「対社内での営業活動」が上手くいっていないのは Type③、Type④であり、 一方で、自身の営業プロセスに対して一定の評価を行っているのであれば、Type③に比べ て関連部署の評価は低いままとなり、業績も改善が見られないと考えるからである。そのよ うな営業担当者を分析し、対策の一手を考えることが本論文の目的にも繋がるはずである。 手順としては以下の流れで考える。 (1) Type④の営業担当者が実際に各企業で存在しているのかをリサーチする。 (2) 営業担当者の中で、関連部署から評価が低くなるのはどういう行動によるものかを 検証する。 (3) 関連部署から評価が低いとなぜ業績が低くなるのかを検証する。 (4) 関連部署から評価が低い Type③と Type④の営業担当者の中でも、Type④の営業担 当者のほうが業績を改善しにくいのは何故かを検証する。 (5) 関連部署からの評価を上げる方法はないか、もしくは関連部署との協業を効率よく 行う方法はないか考察する。 この手順で考察していくことで、Type④の営業担当者の行動の特徴を捉え、それらが関 連部署からの評価を下げる要因となるか否か、さらには営業担当者の業績の低下と結びつ くか否かを、一連の流れで把握できると考えたからである。 11.

(16) 5.検証方法 上記のリサーチクエスチョンに対して、本論文では、インタビューとアンケートにより 検証を行う。インタビュー、アンケートともに、過去、もしくは現在において、営業担当者 と協業したことのある関連部署の担当者を調査対象とする。ここで、言葉の定義を設定して おく。 (1) 関連部署からの評価が高い 関連部署から見て、 「過去に一緒に仕事をした中で、業務が滞りなく進められた」 「ま た一緒に仕事がしたい」と思える営業担当者を指す。 (2) 関連部署からの評価が低い 関連部署から見て、 「過去に一緒に仕事をした中で、業務を滞りなく進められなかっ た」「また一緒に仕事がしたくはない」と思える営業担当者を指す。 (3) 営業担当自身の評価が高い 営業担当者が過去に業績を上げており、自身の営業プロセスに自信を持ち、評価し ている。 (4) 営業担当者自身の評価が低い 営業担当者が過去に業績を上げておらず、自身の営業プロセスに自信を持っていな い。そのため自己評価が低い。もしくは、過去に業績を上げていたが、現状は業績 が振るわず、自身の営業プロセスに自信をもっていない。そのため自己評価が低い。 (5) 業績が高い 2年以上のノルマ達成、もしくは入社同期と比して早い昇進を実現していることを 指す。 (6) 業績が低い ノルマを 2 年以上連続で達成したことがない、もしくは入社同期と比して昇進が遅 いことを指す。. 12.

(17) 6.インタビュー調査 6 1.インタビュー目的 本インタビューの目的は2つある。一つは、リサーチクエスチョンの検証として、先述し た4つのタイプの営業担当者が存在有無、行動特性と関連部署からの評価、業績に関してヒ アリングを行うものである。もう一つは、関連部署から評価が高まる行動、関連部署の評価 が下がる行動が何かを検証し、また、なぜ関連部署から評価の低い営業は業績が低いのかと いう因果関係を考察するためデータ取得の目的である。 6 2.インタビュー対象者 対象者は、営業担当者と協業し、顧客提案を作成、訴求したことのある関連部署の担当者 とする。今回、筆者の大学時代、社会人時代の友人、同僚に連絡し、上記に当てはまる該当 者を紹介いただいた。計 20 名にインタビューを行うことができた。 番号. 業界. お名前. 役職. 1 技術コンサル業界. M様. セールスアシスタント. 2 インフラ業界. F様. 研究開発所 研究員. 3 自動車業界. T様. 研究開発所 研究員. 4 電気機械業界. N様. 資材部. 5 電気機械業界. E様. 技術開発部. 6 研削・研磨剤業界. I様. 技術営業. 7 自動車業界. G様. エンジン開発. 8 ガス化学業界. A様. 生産管理部. 9 技術コンサル業界. S様. 営業部⾧. 10 自動車業界. P様. システム事業部. 11 通信業界. M様. 販売プロジェクト推進室 室⾧. 12 通信業界. T様. クラウドビジネス販売推進部. 13 ITコンサル業界. I様. セールスアシスタント. 14 化粧品業界. I様. 法人営業サポート部. 15 化粧品業界. N様. 人事部. 16 IT業界. K様. サービスエンジニア. 17 通信業界. H様. セールスアシスタント. 18 IT業界. S様. 代表取締役社⾧. 19 IT業界. H様. セールスサポート. 保守担当兼務. 20 IT業界. Y様. セールスサポート. 保守担当兼務. 【表1. 技術職. 元技術部 統括マネージャー. 営業管理. 元SE. インタビュー回答者の業界と役職】. 13. 課⾧.

(18) 6 3.インタビュー内容 インタビューでの質問内容は、リサーチクエスチョンのバイアスが質問者にかからない よう配慮するため、下記内容の質問を順番通りに質問した。 (a) 「今までに営業担当者と共に、顧客への提案内容を詰め、実際に受注を得た・若しくは 得られなかった仕事について、あなた(関連部署)から見て評価が高い営業担当者とそ うではない営業担当者は、営業プロセスにおいて、どのような行動の違いがあったか」 (b)営業担当者の4タイプを提示。 (b-1)各々のタイプ別の営業担当者が、今まで仕事を協業した中で存在したか。 (b-2)各々のタイプの営業担当者のバックグラウンド。 (社会人経験年数、営業経験年数) (b-3)各々のタイプの営業担当者が、自身の営業プロセスに対し評価をどのくらいしていた か。(自信をもって仕事に臨んでいたか、仕事のプロセスが確立されていたか) (b-4)各々のタイプの営業担当者の業績。 (b-5)各々のタイプの営業担当者はその後どうなったか。 (昇進、降格、転職など) 6 4.インタビュー結果 6 4 1.対顧客への行動に対する共通見解 インタビューの内容について、20 人にインタビューした結果、5 人以上に共通して聞か れた見解について記述する。 質問(a) 「今までに営業担当者と共に、顧客への提案内容を詰め、実際に受注を得た・若し くは得られなかった仕事について、あなた(関連部署)から見て評価が高い営業担当者とそ うではない営業担当者は、営業プロセスにおいて、どのような行動の違いがあったか」に対 し、営業担当者が「対顧客へ取る行動、振る舞い」についての共通見解は以下であった。 【関連部署から評価の高い営業担当者】 <顧客の理解> ・顧客をどう攻略するか、ビジョンが明確。 ・業界内の注目トピックに敏感、勉強熱心。 <顧客への対応> ・顧客からのコンタクトに即座に対応する。 ・顧客の言うことを鵜吞みにしない。自分なりに顧客のニーズを考えて、提案している。 ・顧客に間違った認識があれば、諫める・是正することができる。 ・顧客に提案を押し付けない。顧客のニーズに沿う提案作りを心掛けている。 ・分からない部分は、素直に分からないと言える。. 14.

(19) 【関連部署から評価の低い営業担当者】 <顧客の理解> ・顧客の攻略方法を考えていない ・顧客の言われた通りのことしかやらない ・知識習得に熱心ではない。 <顧客への対応> ・即座に行動するが、その行動はみせかけである。 (←「技術に問い合わせます」など) ・顧客の要望に対する返答が遅い。 ・相手の懐に入れない。本音を聞き出せない。 ・顧客のニーズを聞かず、自分(自社)のツールのみを押し込む。 ・顧客の要望を分別なく聞いてしまう。 ・そもそも顧客の話が理解できていない。 関連部署から評価の高い営業担当者の行動と、関連部署から評価の低い営業担当者の行 動は、表裏一体(同じ行動に対し、出来ていると出来ていないとの差があるもの)のものが 多いと考える。以下の表では、関連部署から評価の高い営業担当者と評価の低い営業担当者 の行動に表裏があるものを纏めてみた。. 【表 2 対顧客に対する営業担当者の行動において関連部署から評価が高い行動・低い行動】 6 4 2.対社内(関連部署)への行動に対する共通見解 質問(a) 「今までに営業担当者と共に、顧客への提案内容を詰め、実際に受注を得た・若 しくは得られなかった仕事について、あなた(関連部署)から見て評価が高い営業担当者と そうではない営業担当者は、営業プロセスにおいて、どのような行動の違いがあったか」に 対し、営業担当者が「対社内(関連部署)へ取る行動、振る舞い」についての共通見解は以 下であった。 15.

(20) 【関連部署から評価の高い営業担当者】 <社内の関連部署とのコミュニケーション> ・顧客の発言で分からない部分に対して、素直に「ここが分からなかった」と言える。 ・顧客に言いにくいことを言ってくれている(納期・価格の変更など) 。 ・技術・業界の知識より、profit を上げる提案を社内で行っている。 ・鈍感力と根性(各部署の辛辣な意見にも対応できる、見返してやろうという志がある)。 ・相手を慮った振る舞いが出来ている。 (仕事の納期にゆとりがある。何を行ってほしいか 指示が明確) ・営業の役割をしっかり理解している。営業は会社の profit を上げる責任者、サポート部隊 はそのためのツール。営業が主導して提案を作ろうとしている。 【関連部署から評価の低い営業担当者】 <社内の関連部署とのコミュニケーション> ・技術や専門知識の会話に分かった振りをしてしまう。 ・関連部署の業務内容を理解していない。 ・客と関連部署を対面させることで、仕事が完結してしまう(その後のフォローが希薄) ・仕事の納期にゆとりがない。 ・作業依頼の際、何を行ってほしいかという指示が明確ではない。 ) 上記の内容に関し、関連部署から評価が低い営業担当者の行動を、 「知識欠乏の認識欠如」 「配慮の欠如」 「意思疎通意欲の欠如」の3つに分類してみる。 (1)知識欠乏の認識欠如 ・製品知識、技術に対して分かった振りをする。 ( 「小手先」の話ばかりする、「しったか」である) ・出来ないことを出来ると言ってしまう。 ・仕事上のマニュアルを要求する。 (2)配慮の欠如 ・営業自身の数字(ノルマ)しか見ていない→関連部署の効率性やノルマは度外視している。 ・指示が明確ではない。 ・指示される作業がなぜ必要なのか、説明がない。 ・作業依頼の納期が短い。 ・関連部署の忙しさを考えずに質問・依頼したりすることが多い。 ( 「無料相談所と勘違いし ているのでは」 ) ・要点を整理せずにそのまま伝えてしまう。 (3)意思疎通意欲の欠如 ・関連部署に萎縮してしまっている。 16.

(21) ・関連部署と必要最小限のことしか話さない。 ・情報発信、共有の回数が少ない。 ・情報発信、共有がタイムリーではない。 上記の行動が、関連部署の評価を下げる要因と考えられる。 6 4 3.タイプ別の営業担当者に関して 質問(b)に関し、営業担当者の4タイプを提示し、以下の問いを行った。 (b-1)各々のタイプ別の営業担当者が、今まで仕事を協業した中で存在したか。 (b-2)各々のタイプの営業担当者のバックグラウンド。 (社会人経験年数、営業経験年数) (b-3)各々のタイプの営業担当者が、自身の営業プロセスに対し評価をどのくらいしていた か。(自信をもって仕事に臨んでいたか、仕事のプロセスが確立されていたか) (b-4)各々のタイプの営業担当者の業績。 (b-5)各々のタイプの営業担当者はその後どうなったか。 (昇進、降格、転職など) 各々のタイプについて、インタビュー内容で5人以上に共通して聞かれた内容をもとに整 理してみる。 (1) Type①の営業担当者 a. Type①の存在 20 人中 20 人が、 「Type①は過去に存在した」と回答。 b. Type①のバックグラウンド 様々なバックグラウンドを持つが、多く見られるのは、 (1) 新卒入社以降、常に営業の前線を張っている人材 (2) 営業のみならず様々な部署で経験を積んでいる人材 (3) 中途入社で、前職での経験を活かし営業を行っている人材。 c. Type①の自身への評価 自己への評価は恐らく高いと全員が回答。 これまでの業績が高く、周囲のフォローも万全であり、大きく欠点があるとは思っていない 様子。 d. Type①の業績 業績は高い。. 17.

(22) e. Type①はその後どうなったか 昇進、若しくはハイクラスへの転職がほとんど。 (2) Type②の営業担当者 a. Type②の存在 20 人中 16 人が、 「Type②は過去に存在した」と回答。 b. Type②のバックグラウンド Type①と同様のケースが多い。 c. Type②の自身への評価 自己への評価は Type①と比べ低いという回答が多かった。 業績からすると確実にスキルアップしているものの、まだ完全に自信がついていない状態 ではないか。 d. Type②の業績 業績は高い。ただし、Type①に比べると、顕著に高いとも言えない。まだ伸びしろがある 様子。 e. Type②はその後どうなったか 営業部内のエースになっていく、海外転勤など、ポジションとしてレベルアップしていくケ ースが多い。それに付随して、Type①の営業担当者となっていくケースが多いのではない か。 (3) Type③の営業担当者 a. Type③の存在 20 人中 16 人が、 「Type③は過去に存在した」と回答。 b. Type③のバックグラウンド 20 代~30 代前半の若手 勤務歴 5 年以内の業界未経験者 が多い。 c. Type③の自身への評価 自己への評価は低いとの回答。 ・知識欠乏の認識欠如 ・配慮の欠如のため、関連部署との協業に失敗があったケースが散見される。 18.

(23) 一方で、Type③の営業担当者は、その失敗を強く認識しており、それ故自己評価が低いと 考察できる。 d. Type③の業績 業績は悪い。ただし、ただし、営業担当者、関連部署が、コミュニケーションの欠点を双方 認識しており、営業担当者側の改善の努力と、関連部署のフォローが入り、コミュニケーシ ョンの欠点がフォローされるケースが多い。 e. Type③はその後どうなったか 営業部の中でも上位層に入る成⾧を見せる人材もいれば、一方で成⾧が見られず、部署異動、 退職する人もいる。 (4)Type④の営業担当者 a. Type④の存在 20 人中 20 人が、 「Type④は過去に存在した」と回答。 b. Type④のバックグラウンド 中途で入社した、業界経験のある営業担当者 中途で入社した、業界経験のない営業担当者 が多い。 c. Type④の自身への評価 自己への評価は恐らく高いと全員が回答。 理由としては (a)過去の成功体験 (b)営業ファーストの文化(「営業だから偉い」の考え方) が根底にあり、他者評価を客観視できないことが考えられる。 d. Type④の業績 業績は悪い。(それを自己の責任だと思っていないケースもある) e. Type④はその後どうなったか 退職、部署変更、そのまま居残っているケースなど多様。. 19.

(24) 6 5.インタビュー結果を踏まえての考察 6 5 1.営業担当者が陥る負の連鎖 インタビューを通して、関連部署から評価の低い営業担当者が、業績が悪くなる理由につ いて因果関係があると考える。 まずは、関係複雑型営業が、顧客へのアプローチから受注までの流れを確認する。 (1)顧客から購買意思、ニーズをヒアリングする。 (2)顧客からのヒアリング内容を関連部署と共有する。提案内容を作成する上で協力を関 連部署に打診する。 (3)営業に各部署の専門ノウハウを提供、提案訴求の内容を詰める。 (4)提案内容を顧客に訴求する。内容が良ければ受注に向けて顧客と詳細を整理する。 図示すると図 5 のとおりである。. 【図 5 営業担当者の業務プロセス】 上記のプロセスにおいて、関連部署とのコミュニケーションが発生するのが(2)であり、 ここで先に記した「知識欠乏の認識欠如」 「配慮の欠如」 「意思疎通意欲の欠如」が原因で、 コミュニケーションに齟齬が発生すると、関連部署の仕事効率が阻害され、関連部署からの 評価が下がることになる。また、顧客側に再度購買へのニーズ等のヒアリングに行く作業発 生する。顧客としては、同じ内容を再度営業担当者に話すことになり、自らの時間を無駄に 費やすこととなり、営業担当者への信頼が失われていく。以上を図示化したのが図6となる。. 20.

(25) 【図 6 関連部署とコミュニケーションの齟齬が発生した場合の 営業担当者の業務プロセス】 関連部署、顧客の双方から信頼を失った営業担当者は、満足な提案を作ることも出来ず、 また顧客からも提案の内容如何にかかわらず、営業担当者、引いては会社への信頼低下によ り失注してしまうことがある。 一たび上記の流れで失注してしまった営業担当者は、別の顧客に対して営業活動を行う としても、一度関連部署から評価を落としてしまうと、関連部署との対等な関係性が崩れ、 そのため「意思疎通意欲の欠如」が働く、若しくは過去の反省を活かせず同じ過ちを繰り返 すことで、関連部署から評価を再び下げ、満足した提案内容を作り込めず、失注してしまう ことになりがちである。 上記の流れを図示したものが図 7 である。これを、 「関連部署から評価の低い営業担当者 が陥りやすい負の連鎖」と呼称する。. 【図7 関連部署から評価の低い営業担当者が陥りやすい負の連鎖】 21.

(26) また、インタビュー中に以下の質問を追加で行った。 質問:「同じ緊急度で同じ業務量の仕事を、評価の高い営業担当者・評価の低い営業担当者 から同時に投げられた場合、どちらの仕事を優先しますか?」 上記の質問に対しては、20 人中 16 人が、 「 (関連部署から)評価の高い営業担当者の業務 を優先する」との回答があった。それは言い換えると、 「 (関連部署から)評価の低い営業担 当者の仕事を後手に回す」. と回答したと見なすことができる。. 関連部署との対等関係が崩れてしまった営業担当者は、 「意思疎通意欲の欠如」の如何に 関わらず、関連部署から自分の依頼した仕事を後手に回されてしまうことになりやすいと 言える。これは、顧客に提案する内容の詳細、スピードにも大きく負の影響を及ぼし、顧客 の信頼低下も加速することになる。結果として失注することになるのだが、負の影響を強め てしまう重要項目として位置づけることができると考える。上記の内容を、先の「関連部署 から評価の低い営業担当者が陥りやすい負の連鎖」に落とし込むと、図 8 となる。. 【図8 関連部署から仕事を後手に回される営業担当者の負の連鎖】. 22.

(27) 6 5 2.Type③と Type④の営業担当者の業績に関して 関連部署から評価が低い営業担当者が業績を下げる要因についてみてみたが、ここでは、 関連部署から評価が低い中で、営業担当者自身の評価が高い Type④の営業担当者が、営業 担当者自身の評価が低い Type③の営業担当者を比してみることとする。 6 4 3.で記載した通り、Type③と Type④はともに関連部署からの評価が低く、そ の理由は、6 4 2.で挙げた関連部署から評価の下がる行動を行っているためである。 この時点では Type③と Type④の差異はないと思える。しかし、Type③はインタビューで のヒアリングから、自己のコミュニケーションに欠点があることは認識している。一方で関 連部署も、営業担当者が自身の欠点について認識しているケースは多く、フォローに入る傾 向がある。関連部署との対等関係が崩れたとしても、それは崩れたというよりも上下関係 (指導する側とされる側)が明確になり、協業する際に不備がないよう協力体制が敷かれる 意味合いが強くなる。 Type④の場合は、自己評価が高く、関連部署とのコミュニケーションが業績低下の一員 と思っていない、若しくは他責にする(関連部署の業務が非効率故、失注する等)傾向があ り、一向に関連部署との関係性が改善されず、負の連鎖に陥る傾向がある。 よって、Type③と Type④では、業績低迷の範囲は個人差があるものの、Type④の営業担 当者のほうが、業績を改善しにくいということは言えるのではないだろうか。 6 5 3.考察内容のまとめ 以上を踏まえて、インタビューにより考察されるのは、下記である。 ・Type①の営業担当者は一定数存在し、営業プロセスは正しく確立されており、関連部署 からの評価も高く、効率の良い仕事ができるため、業績が高い。 ・Type②の営業担当者は、優秀な営業担当者への成⾧過程にある人材。営業プロセスは改 良されてきている状態にあり、改良されている事実が関連部署からの評価の高さにもつ ながっており、営業フォローが得られ、業績は平均以上である。 ・Type③の営業担当者は、営業プロセスが確立されていない状態にある。自身がその状況 を正しく認知しており、関連部署も、本人の課題を理解している。営業の際の不十分な個 を関連部署からのフォローで補えるが、業績は Type①、②に比べ低迷している。業績の 改善有無は、本人の努力次第で結果は様々である。 ・Type④の営業担当者は、営業プロセスが正しいと過信しているが、関連部署からすると、 間違ったプロセスと判断されやすい。そのため関連部署からの評価が低く、社内で協業し て提案を組むことが容易ではない。そのため顧客訴求も上手くいかず、業績が低い。 ・関連部署から評価が低い営業担当者は、 「知識の欠如」 、 「配慮の欠如」 、 「意思疎通意欲の 欠如」が行動特性として見られる。 ・営業担当者が関連部署からの評価が低くなるのは、顧客の話を関連部署に伝える際に、上 記の行動特性によって十分に情報を伝達できず、関連部署の業務効率を下げるからと考 23.

(28) えられる。 ・関連部署から評価が低い営業担当者は、同じヒアリングを顧客に行うため、顧客の評価も 落としやすい。ひいては失注する確率が高くなると考えられる。 ・Type④の営業担当者は、自己評価が高く、顧客の話を関連部署に伝える際に、情報伝達 はできたと考えてしまう。 ・Type④の営業担当者は、いつまでも関連部署との関係性が改善されず、営業の負のスパ イラルにはまり、業績を改善することができないと考えられる。 ・Type③の営業担当者は、改善が見込まれるケースがあり、Type④のほうが業績改善の見 込みは低い。. 24.

(29) 7.アンケート調査 7 1.アンケート目的、手法 本アンケートの目的は、営業担当者が関連部署からの評価を分けてしまう行動を具体的 に検証することである。 インタビューでは、 「今までに営業担当者と共に、顧客への提案内容を詰め、実際に受注 を得た・若しくは得られなかった仕事について、あなた(関連部署)から見て評価が高い営 業担当者とそうではない営業担当者は、営業プロセスにおいて、どのような行動の違いがあ ったか」という質問を最初に提示し、インタビュー回答者の過去の経験に基づいた回答を得 た。しかし、過去の経験を手繰り寄せた回答では、 「実は営業担当者の評価に起因していた 行動」を全て集めることは難しいのではとも考えた。こうしたインタビューでは、評価が高 くなった・低くなった出来事の中でも印象的なものが答えられやすく、例えば挨拶から、報 告・連絡・相談の質・速度などの基本的な振る舞いに関しては見逃されがちになり得る。 よって、インタビュー調査に加えてアンケート調査も行うことで、関連部署から評価を上 げる・下げる行動についてより幅広く検証できるものと考える。 手法に関しては以下のとおりである。 設問は 12 項目用意した。設問として設定したのは、営業担当者が関連部署と協業する上 で、誰しもが経験したことのある行動を取り上げた。客観性を保つために、予め設問を作成 したのち、当研究室の角井宏之君、鈴木慶君の2名に設問内容についてチェックしてもらっ た。角井君は、広告業界で BtoB 営業に従事し、鈴木君は IT コンサルにて営業部門との協 業経験があるため、就業当時の経験に基づいた設問のチェックを依頼した。業界により特徴 的である設問や、内容がほかの設問と相似する設問は削除し、最終的に残った12項目を今 回のアンケート設問とした。設問内容は下記のとおりである。. 25.

(30) 番号. 質問項目. Q1. 当該の営業担当者は、仕事に関連する他部門のメンバー(以下、関連部署)と、情報共有が出来ている。 Q2. 当該の営業担当者は、関連部署と、情報が軽微なものであっても、共有を行っている。 Q3. 当該の営業担当者は、自分が原因で起きたミスやトラブルの報告、相談を、即座に関連部署に報告している Q4. 当該の営業担当者は、情報を共有する関連部署担当者の仕事の内容・ボリュームを理解している。 Q5. 当該の営業担当者は、情報を共有する関連部署担当者の上司、部下などの関係性を把握している。 Q6. Q7.. 当該の営業担当者は、関連部署に情報を共有し作業を依頼する際、関連部署の業務をなるべく少なくするよう、 顧客から得た情報を一度整理して、「関連部署に何をしてほしいか」明確にしている。 当 該の 営業 担当者は 、関 連部 署に情 報を 共有 し作業 を依 頼す る際、 関連 部署 の作業 効率 性を あげ るため、 営業担当者自身で行える作業は必ず自分で行っている。. Q8. 当該の営業担当者は、関連部署に情報を共有し作業を依頼する際、ゆとりをもった作業期限を設定している Q9. 当該の営業担当者は、関連部署に作業や同行を行わせた後、口頭、電話、メールいずれかの方法で謝意を述べている。 Q10. 当該の営業担当者は、普段から関連部署担当者には、電話・メールのみならず頻繁に顔を合わせるようにしている。 Q11. 当該の営業担当者は、関連部署担当者と関係性構築・維持の為に食事や飲酒をともにする機会を作るようにしている。 Q12.. 当該の営業担当者は、関連部署に依頼した作業内容を元に行った業務(顧客への訪問や交渉など)の結果を、 つつがなく関連部署に報告している。 【表3 アンケート質問項目】. 回答に協力頂いた対象者は、営業担当者と協業し、顧客提案を作成、訴求したことのある 関連部署の担当者、計 21 名である。この内上記のインタビューにも回答くださったのは 11 名である。この 21 名に各々、過去に協業した営業担当者の中で、評価の高い営業担当者と 評価の低い営業担当者を一人思い浮かべてもらい、その営業担当者が、各項目の行動がどれ くらい出来ていたかを、10 点満点で評価してもらうことにした。. 26.

(31) 7 2.分析手法・手順 回答されたデータを、下記の手順で分析をしていく。 (1)項目ごとに、評価の高い営業担当者、評価の低い営業担当者の平均点を算出する。 (2)対応のある2群の平均値差の検定(t 検定)を実行する。その結果が統計的に有意 であるかを検証する。 (3) (2)算出結果から cohen’s d を導出し、評価の高い営業担当者、評価の低い営業担 当者の各項目における平均点の差が、関連部署の評価に対しどれだけの効果があ るかを算出する。 7 2 1.平均点の算出 回答された点数から、各項目の平均点をグラフ化すると下図のとおりである。. 【図9 評価の高い営業担当者と評価の低い営業担当者 各設問の平均点】. 27.

(32) 7 2 2.対応のある2群の平均値差の検定(t 検定)の実行 今回のアンケートでは、一人の回答者につき、評価の高い営業担当者、評価の低い営業 担当者それぞれ回答頂いているので、対応のある t 検定を実行する。 統計ソフトの SPSS(version25)を使用して実行した結果が下記である。. 対応サンプルの差 質問のペア. 平均値. 標準偏差. 差の 95% 信頼区間 下限. t値. 自由度. 上限. 有意確率 (両側). Q1 H - Q1 L. 6.10. 2.59. 4.92. 7.27. 10.80. 20.00. 0.00. Q2 H - Q2 L. 5.48. 2.94. 4.14. 6.82. 8.53. 20.00. 0.00. Q3 H - Q3 L. 5.33. 2.83. 4.04. 6.62. 8.62. 20.00. 0.00. Q4 H - Q4 L. 5.43. 2.71. 4.19. 6.66. 9.17. 20.00. 0.00. Q5 H - Q5 L. 4.71. 3.21. 3.25. 6.18. 6.73. 20.00. 0.00. Q6 H - Q6 L. 6.48. 1.81. 5.65. 7.30. 16.43. 20.00. 0.00. Q7 H - Q7 L. 4.76. 2.95. 3.42. 6.10. 7.40. 20.00. 0.00. Q8 H - Q8 L. 5.52. 2.86. 4.22. 6.82. 8.86. 20.00. 0.00. Q9 H - Q9 L. 6.00. 2.98. 4.64. 7.36. 9.22. 20.00. 0.00. Q10 H - Q10 L. 5.62. 3.34. 4.10. 7.14. 7.71. 20.00. 0.00. Q11 H - Q11 L. 3.95. 3.64. 2.30. 5.61. 4.98. 20.00. 0.00. Q12 H - Q12 L. 6.48. 2.29. 5.43. 7.52. 12.94. 20.00. 0.00. 【表 4 対応のある2群の平均値差の検定(t 検定). 結果】. 各質問ごとに検定の結果を記す。 1.営業担当者の関連部署に対する情報共有の出来は、関連部署から評価の高い営業担当者 と低い担当者の間で評価に差がある。 (t(20)=10.80, p<.00) 2. 営業担当者の関連部署に対する軽微な情報の共有の出来は、関連部署から評価の高い営 業担当者と低い担当者の間で評価に差がある。 (t(20)=8.53, p<.00) 3. 営業担当者が関連部署に対し行う、営業担当者が原因で起きたミスやトラブルの報告、 相談の出来は、関連部署から評価の高い営業担当者と低い担当者の間で評価に差がある。 (t(20)=8.62, p<.00). 28.

(33) 4.営業担当者が、協業する関連部署の担当者が行う仕事の内容・ボリュームに対して持つ 理解の出来は、関連部署から評価の高い営業担当者と低い担当者の間で評価に差がある。 (t(20)=9.17, p<.00) 5. 営業担当者が、協業する関連部署担当者の上司、部下などの関係性の理解の出来は、関 連部署から評価の高い営業担当者と低い担当者の間で評価に差がある。 (t(20)=6.73, p<.00) 6. 営業担当者が、関連部署に情報を共有し作業を依頼する際、顧客から得た情報を一度整 理して、 「関連部署に何をしてほしいか」内容を明確にする行動の出来は、関連部署から 評価の高い営業担当者と低い担当者の間で評価に差がある。 (t(20)=16.43, p<.00) 7. 営業担当者が、関連部署に情報を共有し作業を依頼する際、営業担当者自身で行える作 業をする行動の出来は、関連部署から評価の高い営業担当者と低い担当者の間で評価に 差がある。 (t(20)=7.40, p<.00) 8.営業担当者が、関連部署に情報を共有し作業を依頼する際、ゆとりをもった作業期限を 設定している行動の出来は、関連部署から評価の高い営業担当者と低い担当者の間で評 価に差がある。 (t(20)=8.86, p<.00) 9. 営業担当者が、関連部署に作業や同行を行わせた後、謝意を述る行動の出来は、関連部 署から評価の高い営業担当者と低い担当者の間で評価に差がある。 (t(20)=9.22, p<.00) 10. 営業担当者が、関連部署担当者に普段から電話・メールのみならず頻繁に顔を合わせる 行動の出来は、関連部署から評価の高い営業担当者と低い担当者の間で評価に差があ る。 (t(20)=7.71, p<.00) 11. 営業担当者が、関連部署担当者と関係性構築・維持の為に食事や飲酒をともにする機会 を作る行動の出来は、関連部署から評価の高い営業担当者と低い担当者の間で評価に 差がある。 (t(20)=4.98, p<.00) 29.

(34) 12. 営業担当者が、関連部署に依頼した作業内容を元に行った業務の結果(顧客の反応など) を、つつがなく関連部署に報告する行動の出来は、関連部署から評価の高い営業担当者 と低い担当者の間で評価に差がある。 (t(20)=12.94, p<.00). 7 2 3.cohens’d の算出 7 2 2.の結果から、質問項目の行動の出来が、関連部署からの評価の優劣を分ける 一つの要因となりそうなことは言える。しかし、12 個の質問項目の中で、どの質問項目が 関連部署の評価に大きな影響を与えるのかは、先の結果だけでは分からない。よって、以下 に更なる考察を施す。 今回は cohens’d の指標を使い、質問ごとに効果量を算出する。その算出された値を比較 して、ほかの問いに比べ大きいものが、より関連部署の評価に大きな影響を与えるものと考 える。計算式は、水元・竹内(2010)を参照し、下記のとおりとした。. 設問ごとに、cohen’s d の算出結果を表にすると、次項の通りとなる。. 30.

(35) 平均値 ペア 1 ペア 2 ペア 3 ペア 4 ペア 5 ペア 6 ペア 7 ペア 8 ペア 9 ペア 10 ペア 11 ペア 12. 度数. 標準偏差. Q1 H. 8.86. 21.00. 1.11. Q1 L. 2.76. 21.00. 2.05. Q2 H. 8.19. 21.00. 1.81. Q2 L. 2.71. 21.00. 1.98. Q3 H. 9.00. 21.00. 1.22. Q3 L. 3.67. 21.00. 2.46. Q4 H. 8.19. 21.00. 1.86. Q4 L. 2.76. 21.00. 1.64. Q5 H. 8.52. 21.00. 1.63. Q5 L. 3.81. 21.00. 2.29. Q6 H. 8.95. 21.00. 0.80. Q6 L. 2.48. 21.00. 1.47. Q7 H. 7.81. 21.00. 1.66. Q7 L. 3.05. 21.00. 1.77. Q8 H. 8.00. 21.00. 2.41. Q8 L. 2.48. 21.00. 1.72. Q9 H. 8.76. 21.00. 1.58. Q9 L. 2.76. 21.00. 2.07. Q10 H. 8.29. 21.00. 1.87. Q10 L. 2.67. 21.00. 1.62. Q11 H. 7.00. 21.00. 2.77. Q11 L. 3.05. 21.00. 1.77. Q12 H. 8.81. 21.00. 1.40. Q12 L. 2.33. 21.00. 1.56. 【表5 cohen’s d 算出結果】. 31. cohen's d 3.70 2.89 2.75 3.10 2.37 5.46 2.77 2.64 3.26 3.20 1.70 4.37.

(36) 7 3.考察 前項で求めた cohens’d の値が大きかった順に質問項目を並べると、下記のとおりである。 Q6. 当該の営業担当者は、関連部署に情報を共有し作業を依頼する際、関連部署の業務をな るべく少なくするよう、顧客から得た情報を一度整理して、 「関連部署に何をしてほしいか」 明確にしている。 (cohens’d=5.46) Q12. 当該の営業担当者は、関連部署に依頼した作業内容を元に行った業務(顧客への訪問 や交渉など)の結果を、つつがなく関連部署に報告している。 (cohens’d=4.37) Q1.当該の営業担当者は、仕事に関連する他部門のメンバー(以下、関連部署)と、情報共有 が出来ている。 (cohens’d=3.70) Q9. 当該の営業担当者は、関連部署に作業や同行を行わせた後、口頭、電話、メールいずれ かの方法で謝意を述べている。 (cohens’d=3.26) Q10. 当該の営業担当者は、普段から関連部署担当者には、電話・メールのみならず頻繁に 顔を合わせるようにしている。 (cohens’d=3.20) Q4. 当該の営業担当者は、情報を共有する関連部署担当者の仕事の内容・ボリュームを理解 している。 (cohens’d=3.10) Q2. 当該の営業担当者は、関連部署と、情報が軽微なものであっても、共有を行っている。 (cohens’d=2.89) Q7. 当該の営業担当者は、関連部署に情報を共有し作業を依頼する際、関連部署の作業効率 性をあげるため、営業担当者自身で行える作業は必ず自分で行っている。 (cohens’d=2.77). 32.

(37) Q3. 当該の営業担当者は、自分が原因で起きたミスやトラブルの報告、相談を、即座に関連 部署に報告している (cohens’d=2.75) Q8. 当該の営業担当者は、関連部署に情報を共有し作業を依頼する際、ゆとりをもった作業 期限を設定している (cohens’d=2.64) Q5. 当該の営業担当者は、情報を共有する関連部署担当者の上司、部下などの関係性を把握 している。 (cohens’d=2.37) Q11. 当該の営業担当者は、関連部署担当者と関係性構築・維持の為に食事や飲酒をともに する機会を作るようにしている (cohens’d=1.70) Cohen’s d の値が一番大きい Q6.の内容は、インタビューでも全員が共通して、評価の高 い人は指示・依頼内容が明確であり、評価の低い人は指示・依頼内容が曖昧という回答があ った。よって、当該の質問内容が、関連部署の評価に対する効果量が大きいことは、納得が できる。 また、2 番目に d 値が大きかった Q12.に関しても、インタビューで半数以上が、評価の 低い営業担当者の特徴として、「依頼して作業した内容のその後の進捗内容が聞かれない」 ことを挙げており、整合性が取れる内容である。さらに、3 番目に大きい値が出た Q1.に関 しては、インタビューで全員が共通して、評価の高い営業担当者と低い営業担当者の違いに ついて述べていた内容であり、d 値が高くなることは容易に推察された。 一方で、Q9.の値が、他の質問と比べて大きい値になったことは特筆すべきと考える。協 業をした際に謝意を述べることは、営業担当者のみならず、社会人としての一般的なマナー である。しかし、今回のアンケート結果からは、 「協業した際、謝意を述べることができる」 営業担当者は、関連部署から評価が高く、 「協業した際、謝意を述べることが出来ない」営 業担当者は、関連部署から評価が低いと考察できる。ここで、 「謝意を述べることができな い」というのは、以下のパターンに分けることが考えられる。一つは、全く謝意を述べない パターンで、二つ目は謝意が浅薄だと関連部署に受け取られるパターン。最後に、謝意を述 べるのが遅いパターンである。上記に分けた根拠としては、インタビューの中で、3 名が営 業担当者の謝意の伝え方について述べられており、謝意が伝わらない理由として上記のよ うな経験があったことをヒアリングしたことにある。 その次に d 値が大きかった Q10.と Q4.に関しては、関連部署に対して、営業担当者が 33.

(38) 常に関連部署に配慮する意識が出来ていることが、関連部署への評価が分かれる点となり 得そうだ。協業する上では、当然互いについての理解が重要ではあることは容易に想像がつ くが、今回のアンケートでは、営業担当者側が関連部署に対して理解をしようとする姿勢が、 評価につながりそうだと言える結果となった。 さて、全質問の中で最も d 値の低かった Q11.について触れておきたい。上記にも述べた 通り、協業する上で互いの理解は必要だと考える。実際、営業担当者が関連部署に対する理 解の努力が評価につながり得ることは、本アンケートから考察できる。しかし、食事や飲食 の機会を作る場合は、例えば Q10.のように、頻繁に顔を合わせて情報共有を図る方法より、 関連部署の評価を上げる効果が薄いと言える。食事や飲食の機会をやみくもに作るのでは なく、面と向かい、配慮ある態度をもって、必要な情報共有を行う心がけが、関連部署との 評価を上げるうえで必要な行動ではないだろうか。 そのような行動を保ち、加えて作業・指示内容を明確にすることを心掛け、協業後の謝意 を明確に、すぐに伝えることが、関連部署の評価を上げ、営業活動を行いやすくし、引いて は業績の向上につながる方法と考える。. 34.

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