Furemu gainen no saikento : jisshoteki kenkyu no tachiba kara
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(2) 特 集:メ デ ィ ア研 究 にお け る フ レー ム分 析. フ レー ム 概 念 の 再 検 討 実証的研究の立場から. 萩原 滋 1.は. じめ に. 慶 鷹 義 塾 大 学 メデ ィ ア ・コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン研 究 所 の プ ロ ジ ェ ク トの ひ とつ と して 、私 た ち は 「 外 国 関連 報 道 が 構 築 す る世 界 像 」とい う共 同 研 究 を2005年. か ら継 続 して お り、 日本 の 地 上 波 テ レ ビ に. お け る外 国 関 連 報 道 の 内容 につ い て 多 様 な視 点 か らの 分 析 を試 み て い る。 そ の 成 果 は 、 同研 究 所 邦 文 紀 要 『メ デ ィ ア ・コ ミュ ニ ケ ー シ ョン』 誌 で の2度. に わ た る特 集 、総 計12編. る が 、そ の 中 で フ レー ム 分 析 とい う視 点 を明 確 に した の は2004年1月. の論 文 に 結 実 して い. か ら4月 初 め に か け て の 鳥 イ. ン フ ル エ ンザ 報 道 を 対 象 と した 大 坪 論 文 の み で あ っ た 。 鳥 イ ン フル エ ン ザ の 発 生 に 関 して 、 人 に 感 染 す る危 険 性 を は らん だ 「 感 染 症 」 と して の 側 面 、養 鶏 業 者 に 多 大 な 被 害 を及 ぼ す. 「 経 済的損 失」. とい う側 面 、 鶏 肉や 鶏 卵 の 価 格 や 安 全 性 な ど生 活 に影 響 す る 「 食 品 」 と して の 側 面 、 防 疫 の た め の 規 範 の 遵 守 とい っ た 「倫 理 」 的 側 面 の4つ に基 づ い て4っ. を想 定 した 大 坪(2006)は. 、 そ の い ず れ が 強 調 され るか. の フ レー ム を設 定 し、 そ れ ぞ れ に 該 当す る 報 道 量 の継 時 的 変 化 や 報 道 内容 が 国 内 に. 限 定 され る 場 合 と外 国 に 関 連 す る場 合 の フ レー ム の 違 い な ど を検 討 して い る。 一 方 、2004年 (2006)は. 上 半 期 に お け る 日本 と韓 国 の 主 要 な ニ ュー ス 番 組 の 北 朝 鮮 関連 報 道 を比 較 した 李. 、「 核 問題 ・6ヶ 国 協 議 」に つ い て の報 道 が 相 対 的 に 多 い 点 は 両 国 に 共 通 して い る も の の 、. こ の 間 に 日本 で集 中的 に 報 道 され た 「 拉 致 問題 」は 韓 国 で は あ ま り取 り上 げ られ て お らず 、逆 に 「 竜 川 列 車 爆 破 事 故 」 に 関 す る報 道 量 は 韓 国 が 日本 を大 き く上 回 っ て お り、 ま た韓 国 で 重 視 され た 「 南 北 交 流 ・北 朝 鮮 解 放 」 は 日本 で は 等 閑 視 され る と い う具 合 に 日韓 両 国 の テ レ ビニ ュ ー ス で 取 り上 げ られ る トピ ッ ク に顕 著 な違 い が あ る こ とを 明 らか に して い る。 さ らに 北 朝 鮮 の 行 為 、 状 況 、 そ れ に 関す る推 測 や 評 価 とい っ た 報 道 内 容 の 質 的 な分 析 を加 え て 、 両 国 メ デ ィ ア で構 築 され る 北 朝 鮮 像 の 違 い を李(2006)は. 「 韓 国 のTVニ. ュ ー ス は 、 韓 国 と対 話 し、 交 流 を 拡 大 しな が ら、 解 放 に 向 か っ. て 変 化 して い る 「北 朝 鮮 」 を 、 一 方 で 日本 は 、 拉 致 と い う犯 罪 を犯 しな が ら も問 題 の 解 決 に誠 意 を 見 せ ず 、 自分 の 主 張 を繰 り返 し、 事 実 を 隠 し、 相 手 を騙 そ う とす る 「 北 朝 鮮 」 を そ れ ぞ れ の社 会 に 示 して い た の で あ る(p.70)」. と要 約 して い る。. こ う した 北 朝 鮮 に 関 す る 日韓 両 国 の 報 道 内 容 の違 い を フ レー ム の 違 い と して 捉 え る こ と も で き る が 、 こ こで は フ レー ム とい う概 念 は使 用 され て い な い 。 鳥 イ ン フル エ ン ザ とい っ た 特 定 の 争 点 に 関 して は 、リス ク報 道 に共 通 す る よ うな フ レー ム を設 定 しや す い の に対 して 、北 朝 鮮 報 道 に つ い て は 、 何 が 争 点 な い し トピ ック と して 取 り上 げ られ て い る か とい う こ と が 主 た る検 討 課 題 と され て お り、 既 存 の フ レー ム 概 念 が 適 用 しに く い とい っ た こ と が あ る の か も しれ な い 。 しか し、 フ レ0ム 概 念 に. 43.
(3) 三 田社 会 学 第12号(2007). 依 拠 す る こ とな く同 様 の 形 で 鳥 イ ン フ ル エ ンザ に 関 す る報 道 内容 を分 析 す る こ と も 可 能 で あ り、 単 な る説 明 や 解 釈 の 道 具 と して フ レー ム と い う語 を 使 用 す る か 否 か とい う こ と は 、 フ レー ム 分 析 の 本 質 と は 無 縁 な 問 題 と言 え よ う。 そ れ で は フ レー ム 概 念 を用 い る こ とに よ っ て 従 前 とは 異 な る視 界 が どの よ うに 開 け て く る の か 。 フ レー ム 分 析 に 期 待 され る独 自の 貢 献 は 何 な の か。 筆 者 は 、 これ ま で ニ ュ ー ス番 組 だ け で な く、 ドラ マ や バ ラエ テ ィ 、CMな. どを 対 象 と した 各 種 の テ レ ビ放 送 の 内 容 分. 析 を 手 が け て き た が 、 フ レー ム とい う概 念 や フ レー ム 分 析 の 手 法 を用 い た こ とは な い。 本 稿 で は 、 共 通 の 対 象 に 異 な る立 場 で ア プ ロ0チ して き た い わ ば 門 外 漢 と して 、 大 い な る期 待 を 込 め て 、 フ レ ー ム 分 析 の 現 状 と課 題 につ い て 考 え て み た い1) 。. 2.フ. レー ム 概 念 の 整 理 と フ レー ム 研 究 の 位 置 づ け. 1980年. 代 以 降 の メデ ィ ア研 究 の 分 野 で 「フ レー ム 」 「フ レー ミン グ」 「フ レー ム 分 析 」 「フ レー ミ. ン グ 効 果 」 とい っ た 語 を タイ トル に 含 む 論 文 を数 多 く見 受 け る よ うに な っ た 。 しか し、 そ れ らを 一 括 して. 「フ レー ム(フ. レー ミ ン グ)研. 究 」 と称 して も 、 そ の 内 容 は 研 究 者 の 立 場 や 研 究 目的 に よ っ. て 大 き く異 な り、核 とな る よ うな 理 論 的 背 景 も広 く認 め られ る よ うな 方 法 論 も 見 当 た ら な い の が 現 状 で あ る。今 回 の シ ン ポ ジ ウム で 話 題 提 供 者 とな っ た 竹 下 俊 郎 、藤 田真 文 、大 石 裕 の3氏. に して も 、. そ れ ぞ れ に 関 心 を異 に して お り、 共 通 の 議 論 の 対 象 とな る よ うな フ レー ム分 析 へ の 視 点 は示 され て い な か っ た よ うに 思 わ れ る。 こ う した 現 状 に 対 して は 、 「 い くつ か の研 究 で は 、フ レー ム概 念 を 比 喩 的 な 意 味 で 用 い て い るの に 対 して 、 他 の研 究 で は ス トー リー の トピ ック 、 属1生、 あ る い は 争 点 の位 置 づ け に フ レー ム を 還 元 し て い る(Carragge&Roefs,2004)」. 、 「フ レー ミ ン グ は 、 明 確 化 され 広 く適 用 で き る よ うな概 念 で は. な く、研 究 課 題 に 直 接 に 置 き換 え る こ と が で き な い メ タ フ ァ ー にす ぎ な い(Brosius&Eps,1995)」 とい っ た批 判 が な され る一 方 で 、 「 フ レー ム は 、そ の 多 様 性 ゆ え に 、 ま た あ る部 分 で は 定 義 や 使 用 に あ る程 度 の 柔 軟 性 を もた らす 不 正 確 さゆ え に メ デ ィ ア の適 切 な メ タ フ ァー と な っ て い る(Watson, 2007)」 い っ た 寛 容 な 見 方 も示 され て い る。学 問 的 背 景 の 異 な る研 究 者 が 多様 な ア プ ロ0チ ム研 究 を行 っ て い る こ と に 対 してHetrog. and McLeod(2001)は. で フ レー. 、極 度 に 開 放 性の 高 い 概 念 が 最 も. 創 造 的 な メデ ィア 分 析 を 導 く とい う可 能 性 と共 に 、 研 究 成 果 や 方 法 論 、 理 論 的 結 論 が 蓄 積 しに くい とい う限 界 を示 唆 して い る。 多 様 な ア プ ロー チ が フ レー ム研 究 を活 性 化 す る と して も 、 不 要 な 概 念 上 の 混 乱 は 避 け るべ き も の で あ り、 これ ま で に も フ レー ム 概 念 を 明 確 に して 各 種 の フ レー ム研 究 を 整 理 しよ う とす る試 み が 数 多 くな され て い る(Entman,1993;Pan&Kosicki,1993;鹿 下 、1998;Scheufele,1999;烏. 谷 、2001;大. 石 、2005な. 野 、1996;Price&Tewksbury,1997;竹 ど)。 そ の 中 で は 、政 治 コ ミュ ニ ケ ー シ ョン. に お け る フ レー ミン グ研 究 を 「フ レー ム の タイ プ(メ デ ィ ア フ レー ム か オ ー デ ィ エ ン ス フ レ0ム か)」 と 「フ レー ム の使 用 法(独 (1993)の. 立 変 数 か 従 属 変 数 か)」 の2つ. の 次 元 を組 み 合 わ せ て整 理 したScheufele. モ デ ル が 広 く援 用 され て お り、特 に メデ ィ ア フ レー ム とオ ー デ ィエ ン ス(あ る い は 個 人). フ レー ム を 区別 す る こ とは 、概 念 整 理 の うえ で き わ め て 有 効 な手 段 と な っ て い る。竹 下(1998)は. 44. 、.
(4) 特 集:メ デ ィ ア研 究 に お け る フ レー ム分 析. 「フ レー ミ ン グ研 究 と は 、 メデ ィ ア が あ る 争 点 や 出 来 事 を どの よ うに フ レー ミ ン グ(枠 付 け)し. な. が ら報 じ る の か 、 そ し て そ れ が 受 け 手 の 現 実 認 識 と ど う 関 連 して い る か を 追 求 す る も の で あ る (p.208)」. と して い る が 、 そ れ は メデ ィア フ レー ム とオ0デ. ィ エ ン ス フ レー ム の 関 連 を 示 唆 した も. の と言 え よ う。ま た フ レー ム概 念 に は 、社 会 学 と心 理 学 とい う異 な る 出 自が 存 在 し(Pan&Kosicki, 1993;烏. 谷 、2001)、 フ レー ム 研 究 に は社 会 学 的 ア プ ロー チ と心 理 学 的 ア プ ロー チ の2っ. る(鹿 野 、1996;竹. 下 、1998)と. の流 れが あ. され て い る が 、 前 者 は メデ ィア フ レー ム 、 後 者 は オ ー デ ィ エ ン ス. フ レー ム に 概 ね 依 拠 して い る と解 釈 で き る。 これ ま で フ レー ム に つ い て は 、 い くつ も の 定 義 が な され て い る 。 そ の 中 で 引用 され る こ とが 多 い 「シ ン ボ ル 操 作 者 が 、言 語 で あ れ 、 映 像 で あ れ 、 言 説 を 日常 的 に 組 織 化 す る際 に 依 拠 す る で き ご と の認 知 、 解 釈 、 表 象 、 す な わ ち選 択 、 強 調 、排 除 に 関 す る持 続 的 な パ タ ー ン(Githn,1980)」. 、「 知. 覚 され た 現 実 の い くつ か の側 面 を 選 択 し、 そ れ を伝 達 す る テ キ ス トの 中 で 際 立 た せ る も の で あ り、 記 述 され た 項 目に 対 して 、 特 定 の 方 法 で の 問 題 の 定 義 、 因 果 的 解 釈 、 道 徳 的 評 価 そ して/ま 処 の 推 奨 を促 進 す る も の で あ る(Entman,1993)」. たは対. 、「 報道 内容 に文脈 を与 え、選択 、強調 、排 除、. 推 敲 に よ っ て争 点 は 何 な の か を 示 唆 す る よ うな 中 心 的 な組 織 化 の ア イ デ ア(Tankard,2001)」. とい. っ た 定 義 は 、 い ず れ も ニ ュー ス 報 道 に お け る メデ ィア フ レー ム に 関 す る もの で あ る。 こ こ で の メ デ ィ ア フ レー ム は 、 ニ ュー ス の 制 作 過 程 に お け る 報 道 枠 組 み とい う こ と に な る の に対 して 、 オ ー デ ィ エ ン ス フ レー ム は 、 そ の 受 容 過 程 に お け る人 々 の 認 識 枠 組 み 、 す な わ ち認 知 心 理 学 にお け る 「 ス キー マ(schema)」. や. 「 ス ク リプ ト(script)」2)と. い う概 念 に ほ ぼ 対 応 す る こ と に な. ろ う。 これ ま で メデ ィ ア研 究 に お け る フ レー ム 分 析 の 多 く は 、 メデ ィ ア フ レー ム を 主 た る対 象 と し て き た が 、 今 回 の シ ン ポ ジ ウ ム で の藤 田真 文 の 報 告 は 、 オ ー デ ィ エ ン ス フ レー ム に 焦 点 を 当 て 、 ニ ュ ー ス に 限 らず 、 一 般 的 な ス トー リー 理 解 の メ カ ニ ズ ム を言 語 学 的 な視 点 か ら考 察 した も の で あ っ た。 と こ ろ でScheufele(1999)は ア フ レー ム 、2)独. 、 前 出 の2つ. の 次 元 を組 み 合 わ せ 、1)従. 立 変 数 と して の メデ ィ ア フ レー ム 、3)従. 属 変 数 と して の メデ ィ. 属 変 数 と して の 個 人 フ レー ム 、4). 独 立 変 数 と して の個 人 フ レー ム とい う4類 型 に先 行 研 究 を分 類 した 後 で 、 あ る過 程 の 結 果 が 、 そ の 後 の 過 程 に入 力 され る とい う形 の プ ロ セ ス モ デ ル に よ っ て フ レー ミン グ の概 念 化 を試 み て い る。 す な わ ち 、1)組. 織 の 圧 力 、 ジ ャー ナ リス トの イ デ オ ロギ ー や 態 度 、 職 業 的価 値 や 他 の エ リー トな ど. の 入 力 か らメ デ ィ ア フ レー ム が 形 成 され る過 程 を 「フ レー ム 構 築(frame. building)」 、2)メ. ア フ レー ム か らオ ー デ ィ エ ン ス フ レー ム が 形 成 され る過 程 を 「フ レー ム設 定(frame. ディ. setting)」、3). オ ー デ ィエ ン ス の フ レー ム が 責 任 の 帰 属 や 態 度 、 行 動 な どに 影 響 す る過 程 を 「 個 人 レベ ル で の フ レ ー ミン グ効 果(individual-level effects of framing)」 、そ して4)ジ ャ ー ナ リス トの 個 人 レベ ル の 変 数 が メ デ ィ ア フ レー ム の 入 力 要 因 に 反 映 され る過 程 を (journalists as audiences)」. 「 オ ー デ ィ エ ン ス と して の ジ ャ ー ナ リス ト. と して い る の で あ る。. 既 存 の フ レー ム研 究 の4類 型 とプ ロセ ス モ デ ル との 対 応 を 考 え る と 、 メ デ ィ ア フ レー ム を従 属 変 数 と した ニ ュ ー ス の 制 作 過 程 に 関 す る研 究 が. 「フ レー ム構 築 」 に該 当す る の は 明 らか で あ る。 ま た. 45.
(5) 三 田社 会 学 第12号(2007). メ デ ィ ア フ レー ム を独 立 変 数 、 オ ー デ ィエ ン ス(個. 人)フ. レー ム を 従 属 変 数 とす る の が. 「フ レー ム. 設 定 」 で あ り、 議 題 設 定 の パ ラ ダ イ ム を フ レー ミ ン グ 効 果 に拡 張 した 竹 下 俊 郎 の 研 究 は 、 ま さに こ の 過 程 を 検 証 し よ うと した も の で あ る。そ して オ ー デ ィエ ン ス(個 人)フ レー ム を独 立 変 数 とす る 「 個 人 レベ ル の フ レ0ミ. ン グ効 果 」に 関 して は 、Tversky. and. Kahneman(1981)3)に. 示 され る よ うな. 個 人 の判 断 枠 組 に 焦 点 を 当 て た 心 理 学 的 研 究 が 典 型 例 に な る も の と思 わ れ る。 しか し、 政 治 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン を 念 頭 に 置 い たScheufele(1999)は. 、 これ らの 心 理 学 的 研 究 に は 言 及 せ ず 、 社 会 変. 革 を 目指 した集 合 行 為 が 発 展 す る うえ で 争 議 や 対 立 を解 釈 す る フ レー ム を 人 々 が 共 有 す る こ との 重 要 性 、 多 くの 人 々 を 動 員 し、 動 機 づ け るた め の マ ス タ ー フ レー ム の 必 要 性 を 強 調 した 社 会 運 動 に 関 す る文 献 を例 示 して い る。 フ レー ム に 関 す る 先 行 研 究 の 中 に は4つ. の類 型 の い ず れ に も分 類 で き な. い も の や 複 数 の 類 型 に該 当す る も の が 存 在 す る は ず だ が 、 「 オ ー デ ィエ ン ス と して の ジ ャー ナ リス ト」と して想 定 され た フ ィー ドバ ッ クル ー プ に は 、そ れ に 該 当 す る研 究 類 型 そ の もの が 存 在 しな い。 犯 罪 報 道 や 選 挙 報 道 で 多 く の ジ ャ0ナ. リス トが 共 通 の フ レー ム を 用 い る こ とに 関 し て 、 ジ ャ ー ナ リ. ス トも一 般 の 人 々 と同 様 に 自分 が 接 した ニ ュ ー ス の フ レー ム に 影 響 され る とい う視 点 か ら解 釈 し よ う とす る試 み は興 味 深 い が 、Scheufele自. 身 が 指 摘 して い る よ うに 、組 織 的圧 力 や 規 範 な ど が 関 与 す. る可 能 性 は否 定 で きず 、ま だ この 過 程 に 関す る研 究 の 提 案 は試 論 の 域 を脱 して は い な い よ うで あ る。 フ レー ム研 究 の 体 系 化 を図 っ た わ け で は な い が 、Nelson and W皿ey(2001)も 政 治 コ ミュ ニ ケ ー シ ョン研 究 に お け る フ レー ム の 種 類 と して1)集 合 行 為 フ レー ム(collective action frames) 、2) 決 定 フ レー ム(decision frames)の4つ. frames)、3)ニ. ュ ー ス フ レー ム(news. frames)、4)争. 点 フ レー ム(issue. を 挙 げ て い る。 こ の うち 「 集 合 行 為 フ レー ム」は 、 Scheufele(1999)が. 個 人 フ レー. ム を独 立 変 数 とす る研 究 と し て例 示 した 社 会 運 動 に お け る フ レ0ム 概 念 に 該 当 す る も の で あ る。 こ こで は 主 と して 現 実 の社 会 運 動 で 人 々 が 共 有 す る フ レ0ム に 焦 点 が 当 て られ て い る が 、 大 石 裕 は 、 社 会 運 動 に 関 して ど の よ うな 報 道 が な され た か とい う点 に 着 目 し、 メ デ ィ ア フ レー ム の 関 与 を基 軸 と した分 析 を試 み て い る。 「 決 定 フ レー ム 」 は 、 上 記 のTversky. and Kahneman(1981)が. よ うな意 思 決 定 の 際 の 判 断 枠 組 、す な わ ち オ ー デ ィ エ ン ス(個 人)フ. 示 した. レー ム に該 当す るの に 対 して 、. 「 ニ ュ ー ス フ レー ム 」 「 争 点 フ レー ム 」 は 、 メ デ ィ ア フ レー ム を 表 わ す も の で あ る。 こ こ で の 「ニ ュ ー ス フ レー ム」 は 、特 定 の 争 点 で は な く、 ニ ュー ス 全 体 に該 当 す る よ うな 一 般 的 フ レー ム 、 「 争点 フ レー ム 」 は 、 特 定 の 争 点 の報 道 内容 に 関 す る個 別 ・具 体 的 な フ レー ム と して 概 念 化 され て い る。. フ レー ム 研 究 の 主 要 な典 拠 の ひ とつ で あ る でGamsonは. "Fuming. 、本 格 的 な フ レー ム分 析 は 、1)ニ. ュ ー ス の 制 作 過 程 、2)テ. テ キ ス トと オ ー デ ィ エ ン ス の 複 雑 な 交 互 作 用 の3つ Carragee. and Roefs(2004)も. public life"(2001)と. い う論 文 集 の 序 言 キ ス トの 分 析 、. 3). の 要 素 を 含 ま ね ば な ら な い と して い る 。. 同 様 に 、 フ レー ミ ン グ研 究 の 最 大 の魅 力 は 、 ニ ュ ー ス テ キ ス トを制. 作 過 程 と受 容 過 程 に 結 び つ け る潜 在 力 に あ る と した うえ で 、 「 理 想 的 に は 、い か に して 政 治 的 行 為 者 に よ っ て フ レー ム が 提 供 され る か 、 ニ ュ ー ス ス ト0リ ー を 構 築 す る うえ で い か に して ジ ャー ナ リス トが フ レー ム を使 用 す る の か 、 そ れ らの ス トー リー は フ レー ム を どの よ うに して 明確 化 す る の か 、. 46.
(6) 特 集:メ. デ ィア研 究 に お け る フ レー ム分 析. そ し て オ ー デ ィエ ン ス個 々人 が こ れ らの フ レー ム を ど う解 釈 す る の か を フ レー ミ ン グ研 究 は 調 べ る こ と に な る(p.215)」. と して い る。 これ ら の 主 張 の 背 後 に は 、議 題 設 定 パ ラ ダ イ ム の フ レー ミ ン グ. へ の 拡 張 に 典 型 的 に 示 され る よ うな フ レー ミ ン グ効 果 研 究 の 流 れ に 対 す る 批 判 が 隠 され て い る。 ニ ュ ー ス の フ レー ム は 、 ジ ャー ナ リス トが 自動 的 に作 り上 げ る もの で は な く、 そ こ に は さ ま ざ ま な 立 場 の 当 事 者 や 関 係 者 が 提 供す る 多 様 な フ レー ム が 関 与 して お り、 そ の い ず れ が選 択 され るか に つ い て は 権 力 、 ヘ ゲ モ ニ ー 、 闘 争 とい っ た概 念 を用 い た 説 明 が 必 要 に な る こ と も あ ろ う。 実 際 に ア メ リカ で はMRAP(Media. Research. and Action Proj ect)と い うプ ロ ジ ェ ク トが あ り、 フ レー ム分. 析 を使 っ て 社 会 運 動 や 地 域 集 団 が ニ ュー ス メデ ィ ア を通 じて 自分 た ち の 政 治 的 目標 を達 成 す る の を 援 助 す る た め の 実 践 活 動 が行 わ れ て い る よ うで あ る(Ryan,. Carrage,&Meinhofer,2001参. 照)。 フ. レー ミン グ効 果 研 究 で は 、 テ キ ス トの 内 容 を 実 験 的 に操 作 す る こ と は あ っ て も 、 そ れ を 所 与 の も の と して 扱 う こ とが 多 く、 制 作 過 程 に 対 す る配 慮 が 欠 如 して い る こ と は 事 実 で あ る。 ま た フ レー ミ ン グ 効 果 に 限 らず 、 大 多 数 の メ デ ィ ア 効 果 研 究 で は 、 与 え られ た メ ッセ ー ジ を 自動 的 に 受 容 す る 「 受 け 身 の オ ー デ ィエ ン ス(passive. audience)」. を 暗 黙 裡 に 想 定 して い る が 、 実 際 の 人 々 は 、他 の情 報. や 個 人 的 経 験 を参 照 しつ つ 、 よ り積 極 的 な 姿 勢 で メ ッセ ー ジ を理 解 し よ う とす る こ との 方 が 多 い の で あ ろ う4)。 フ レー ミ ン グ効 果 研 究 に 対 す るGamson(2001)やCarragee. and. Roefs(2004)の. 批判 は、 当. を 得 て い る と言 わ ざ る を得 な い が 、 そ れ は 理 想 論 的 な 研 究 目標 で あ り、 実 際 に ニ ュ ー ス の 制 作 過 程 か ら受 容 過 程 ま で を 視 野 に 入 れ て 実 証 的 研 究 を 実 施 す る の は 至 難 の 業 で あ る。 以 下 で は 、 フ レー ミ ン グ 効 果 研 究 を 中 心 に 、 そ こ で ど の よ うな フ レー ム が 実 際 に 用 い られ 、 そ れ は どの よ うに抽 出 され た か とい うこ とを 考 察 して み よ う。. 3,メ. デ ィア フ レー ム の 抽 出 と フ レー ミ ン グ効 果 の 検 証. これ ま で の 実 証 的 研 究 で 使 用 され た フ レー ム は 、 多 種 多 様 で あ り、 標 準 的 な フ レー ム の セ ッ トが 用 意 され て い る わ け で は な い 。 どの よ うな フ レー ム を 設 定 す る か は 、研 究 目的 に よ っ て 異 な り、 基 本 的 に は 研 究 者 の 自 由裁 量 に 任 され て い る が 、 この 点 に 関 して は 前 出 のNelson. and W皿ey(2001). に よ る 「ニ ュー ス フ レー ム 」 と 「 争 点 フ レー ム 」 の 区 別 を 考 慮 す る 必 要 が あ ろ う。 研 究 対 象 とな る 争 点 の種類 に よって 「 争 点 フ レー ム 」 が 異 な っ て く る の は 当 然 だ と して も 、 「ニ ュー ス フ レー ム 」 に 関 して は 、 さ ま ざ ま な ニ ュ ー ス に 共 通 に適 用 で き る 普 遍 性 の 高 い もの が想 定 され て い る の で あ る。 た と え ばIyengar(1991)が (episodic frame)」 frame)」. の2項. 設 定 した. 「具 体 的 な 事 例 を積 み 重 ね る 形 の エ ピ ソ ー ド型 フ レー ム. と 「一 般 的 ・抽 象 的 観 点 か らの 描 写 を 中 心 とす るテ ー マ 型 フ レー ム(thematic. 対 立型 の 図 式 は 、 公 共 的 争 点 の 提 示 の仕 方 に 関 す る も の で あ り、 報 道 内 容 に か か わ. りな く適 用 可 能 な ニ ュ ー ス フ レー ム の 典 型 例 と言 え よ う。 あ る い は 選 挙 報 道 に 関 して 、 「 各 候輔 者 の 政 策 の 違 い な ど を紹 介 す る争 点 型 フ レー ム(issue る 戦 略 型 フ レー ム(strategic. frame)」. frame)」. と を 区別 したCappe■a. と 「 誰 が優 勢 か とい っ た 対 立 を強 調 す and Jamieson(1997=2005)の. も争 点 フ レー ム で は な く、 ニ ュ ー ス フ レー ム と して 位 置 づ け る こ とが で き る か も しれ な い 。. 47. 図式.
(7) 三 田社 会 学 第12号(2007). Nelson. and. W皿ey(2001)の. フ レー ム 分 類 を 引 用 した竹 下 俊 郎 は 、 ニ ュ ー ス フ レー ム を 「 汎用. 的 な 争 点 フ レー ム」、 争 点 フ レー ム を 「ア ドホ ッ ク な争 点 フ レー ム 」 と して い る が 、 ニ ュー ス フ レー ム は 、 特 定 の 争 点 の どの 面 を 取 り上 げ るか とい っ た 報 道 内容 で は な く、 どの よ うな 方 法 で争 点 を 提 示 す る か とい う形 式 面 に 依 拠 して い る よ うに 思 わ れ る の で 、 そ れ を 「 汎 用 的 争 点 フ レー ム 」 とす る の は 、 適 切 で は な い か も しれ な い 。 い ず れ に しろ 竹 下 俊 郎 は 、 比 較 や 追 試 が 容 易 な こ とか らア ドホ ッ ク な争 点 フ レ0ム. よ り も汎 用 的 な も の が 望 ま しい と した うえ で 、Iyengarな. どの2項. 対 立型 のフ. レー ムモ デ ル は 単 純 す ぎ る と して 、 汎 用 型 か つ 多 項 目型 の フ レー ム モ デ ル の採 用 を 提 唱 して い る の で あ る。 ま た フ レー ミン グ効 果 に 関 して 「メデ ィ ア が 示 す 争 点 フ レー ム 」 が 「 受 け 手 が 抱 く争 点 フ レー ム 」 を 規 定 し、 そ れ が 後 続 の 効 果 を もた らす とい うプ ロセ ス の 中 で2項 対 立 型 の フ レー ム モ デ ル を 用 い た研 究 は 、 中 間 の オ ー デ ィ エ ン ス フ レー ム の 検 証 をバ イ パ ス して 、 メ デ ィ ア フ レー ム の 効 果 を測 定 して い る こ と に も批 判 の 目が 向 け られ て い る。 た とえ ばIyengar(1991)は 、争点型 フ レ ー ム よ りも エ ピ ソー ド型 フ レー ム に よ っ て社 会 ・経 済 的 争 点 の原 因 や 責 任 が 、構 造 的 な状 況 要 因 よ り も、 当 事 者 や 関 係 者 の 個 人 属 性 に帰 属 され や す く な る こ とを 明 らか に して い る し、Cappella Jamieson(1997ニ2005)は. and. 、選 挙 報 道 に 関 す る 戦 略 型 フ レー ム に よ っ て 政 治 家 に 対 す る不 信 感 や 政. 治 へ の 無 関 心 、 シ ニ シ ズ ム が 強 化 され る こ と を検 証 して い る 。 これ らの 研 究 で オ ー デ ィエ ンス フ レ ー ム を分 析 対 象 と して 考 慮 して い な い の は確 か で あ る 。 前 出 のScheufele(1999)の プ ロセスモ デ ル で 言 え ば 「メ デ ィア 設 定 」 の 過 程 を考 慮 せ ず に 「 個 人 レベ ル で の フ レー ミ ン グ 効 果 」 の 検 証 が 行 わ れ て い る こ とに な ろ う。. フ レー ミン グは 、 何 も ニ ュ ー ス 報 道 に 限 られ る わ け で は な い が 、 何 に よ っ て ニ ュ ー ス の フ レー ミ ン グ が な され る か とい う こ とに 関 してGamson and Lasch(1983)は 、1)メ タ フ ァ ー 、2)エ キ ゼ ン プ ラー 、3)キ (framing. ャ ッ チ フ レー ズ 、4)描. devices)」 と して お り、 ま たPan. を 「 修 辞 学 的 構 造(rhetorical. stmctures)」. 写 、5)視 and. 覚 的 イ メ ー ジ の5つ. Kosicki(1983)は. と捉 え た うえ で 、 そ れ 以 外 に 逆 ピ ラ ミ ッ ド型 の 書 式 な. ど 単 語 や フ レー ズ を 文 章 に 配 置 す る 持 続 的 な パ タ ー ン で あ る structures)」 、い わ ゆ る5WIHな. 「統 語 法 的 構 造(syntactical. どス トー リー 展 開 を構 成 す る の に 必 要 な 「ス ク リプ ト構 造(script. stmctures)」. 、 そ して 争 点 を 報 じる 際 の 仮 説 検 証 的 側 面 を表 わ す. structures)」. を 加 え た4つ. (1997)は. 「テ ー マ 構 造(thematic. の 構 造 的 次 元 に フ レー ミ ン グ装 置 を 分 類 し て い る。 さ らにGhanem. 、 ニ ュー ス 報 道 の ほ とん どす べ て の 特 徴 が フ レ0ミ. ニ ュ ー ス 項 目の トピ ック 、2)(大 デ ィ ア フ レー ム の4次. を 「フ レー ミ ン グ 装 置. 、 そ れ ら の フ レ0ミ ン グ装 置. ン グ 装 置 に な る と した うえ で 、1). き さや 位 置 な ど の)表 現 、3)認. 知 的 属 性 、4)情. 動 的属 性をメ. 元 と して 提 示 して い る。. 新 聞 な ど の 印 刷 メ デ ィ ア とテ レ ビ を 中 心 とす る放 送 メ デ ィ ア で は 、 実 際 に使 用 され る フ レ0ミ ン グ装 置 に違 い が あ る と思 わ れ る が 、 新 聞 を想 定 し た 実 験 的研 究 で は 、 テ キ ス トの 本 質 的 部 分 は 同 一 に して 、 見 出 しや 写 真 な どの 周 辺 的 部 分 で フ レー ム を 操 作 して 、 そ の 効 果 を 検 証 しよ う とす る こ と が 少 な くな い(Shen,2004;Nelson&Willey,2001な. ど)。 映像 が 重 要 な役 割 を 果 た す テ レ ビ報 道 に. 48.
(8) 特 集:メ デ ィ ア研 究 に お け る フ レー ム 分析. 関 してMassaris and Abraham(2001)は 、人 種 的 偏 見 な ど言 葉 にす る と反 発 を 呼 ぶ よ うな メ ッセ ー ジ を伝 え る うえ で視 覚 的 イ メ ー ジ が 有 効 に 働 く と して 、 た と え ば 目的 を も っ た 活 動 に従 事 して い な い 黒 人 の 映 像 を ニ ュー ス で 繰 り返 し示 す こ とが ネ ガ テ ィブ な ス テ レオ タ イ プ を導 く こ と を視 覚 的 フ レー ミ ン グ の事 例 と して 挙 げ て い る。ま た2000年 たColeman&Banr血g(2006)は. の ア メ リカ 大 統 領 選 挙 の テ レ ビ報 道 を 対 象 と し. 、 候 補 者 の 映 像 の み に 着 目 して ブ ッ シ ュ よ り も ゴ ア の 方 が好 意. 的 に 描 か れ た こ とを 明 らか にす る と共 に 、 テ レ ビ ニ ュー ス を よ く見 て い た 人 た ち の 方 が ブ ッシ ュ よ り も ゴ ア の 性 格 を好 意 的 に 評 価 す る と い う調 査 結 果 を 視 覚 的 フ レー ミ ン グ に よ る もの と解 釈 して い る。 確 か に写 真 や 映 像 とい っ た 視 覚 情 報 は 、 大 き な イ ンパ ク トを もつ と して も、 そ こ で扱 わ れ る フ レー ム は 、 必 然 的 に 「ポ ジ テ ィ ブ ーネ ガ テ ィ ブ 」と い っ た評 価 次 元 に 還 元 され ざ る を 得 な い 。 そ う し た 単 純 化 され た フ レー ム で は な く、 内 実 を 伴 っ た メ デ ィ ア フ レー ム を取 り上 げ る 際 に は 、 や は りテ キ ス トを 主 た る 対 象 とす る 内 容 分 析 が 必 要 に な る。. ニ ュ0ス. フ レー ム の 内容 分 析 に は 、Sometko. and. Valkenburg(2000)が. 指 摘 す る よ うに 、 事 前. に 定 義 した い くつ か の 理 念 的 フ レー ム を 用 い て 、 どの フ レー ム が 使 用 され た か 、 そ の 程 度 を測 定 す る 「 演 繹 的 ア プ ロ ー チ 」 と、 特 定 の 争 点 の フ レー ム の 仕 方 を探 りな が ら事 後 的 に分 析 す る 「 帰 納的 ア プ ロ ー チ 」 の2つ (1997ニ2005)に. の 方 法 が 考 え られ る 。 前 出 のIyengar(1991)やCappella. and. Jamieson. よ るニ ュ ー ス フ レー ム の 分 析 は 、 演 繹 的 ア プ ロ ー チ に 基 づ い て い る の に 対 して 、. 争 点 フ レー ム に 関す る 内 容 分 析 で は 帰 納 的 ア プ ロ ー チ が と られ る こ と が 多 く、 竹 下 俊 郎 が 批 判 す る よ うに 、 汎 用 性 の 乏 しい ア ドホ ッ クな フ レー ム が 設 定 され る傾 向 が 強 い。 特 定 の争 点 に 制 約 され な い メ デ ィア フ レー ム を 提 唱 したChyi. and McCombs(2004)で. は 、 時 間(現 在 、過 去 、 未 来)と 空. 間(個 人 、 共 同 体 、地 域 、社 会 、国 際)を 組 み 合 わ せ て1999年4月. の コ ロ ンバ イ ン高 校 で の銃 撃 事. 件 の 新 聞 報 道 を分 析 し、 事 件 発 生 か らの 時 間経 過 に 伴 っ て 個 人 レベ ル の 報 道 が 減 少 し、 社 会 レベ ル の 記 事 が 増 加 す る こ とや 過 去 よ り も将 来 へ の言 及 が 増 え る とい っ た フ レー ム の 変 化 を報 告 して い る。 しか し、 どの 争 点 に も適 合 す る汎 用 性 の 高 い フ レー ム を 得 る た め に 時 間 と空 間 に 限 定 した 分 析 を行 うとい うの で あ れ ば 、 そ れ は 本 末 転 倒 の よ うに 思 わ れ る。Hertog. and McLeod(2001)が. 提 唱す る. よ うに 、 広 い 範 囲 の 現 象 に あ て は ま る抽 象 的 ・一 般 的 な も の を フ レー ム の 中 心概 念 と して 設 定 し、 必 要 に応 じて 、 具 体 的 ・個 別 的 な 周 辺 的 フ レー ム を 併 用 す る とい うの が 現 実 的 な方 法 な の か も しれ ない。 よ り具 体 的 な メ デ ィ ア フ レー ム の測 定 に 関 してTankard(2001)は て い る。 第1は (the media and. 、 キ0ワ ー ドや 共 通 の 用 語 に 基 づ い て フ レー ム を 同 定 す る 「メデ ィア ・パ ッケ ー ジ package. Modigliani(1989)の. (1999)は. approach)」. と呼 ばれ る方 法 で あ る。 こ こ で は 原 子 力 発 電 に 関す るGamson. 研 究 が 例 示 され て い る が 、 そ れ を 朝 日新 聞 の 社 説 分 析 に適 用 した 大 山. 「 原 子 力 は 期 待 され るエ ネ ル ギ ー(Progress)」. Independence)」 Paths)」. 、3つ の ア プ ロ ー チ を 区 別 し. 「 原 子 力 の経 済 性 に 疑 問(Not. 「国 家 が 自 立 す るた め に必 要(Energy. Cost Effective)」 「 代 替 エ ネ ル ギ ー を検 討 す べ き(Soft. 「 原 子 力 は 危 険 、 未 完 の 技 術 、統 制 不 能(Runaway)」. 49. 「 無 責 任 、 事 故 隠 し、 組 織 へ の 不 信.
(9) 三 田社 会 学 第12号(2007). (Public Accountability)」 でGamsonら. 「ポ シテ ィブ/ネ. の 提 示 した7つ. ガ テ ィ ブ の フ レー ム併 記(Devil's. Bargain)」. とい う形. の フ レー ム を 再 解 釈 して い る。ま た 最 近 で は 、単 語 の 出現 頻 度 を 計 算. して キ ー ワー ドを選 出 、 そ れ らの 共 起 性 に 基 づ い て 多 変 量 解 析 に よ っ て フ レー ム を抽 出す る フ レー ム ・マ ッ ピ ン グ とい う分 析 手 法 が 開 発 され て お り、そ れ を2005年12月. のASEAN首. 脳 会 議 の 朝 日、. 読 売2紙 の報 道 に適 用 した 結 果 を莫(2007)が 報 告 して い る。 第2は 、 「 多 次 元 的 概 念 と して の フ レ ー ミン グ(framing as a multidimensional concept)」 と呼 ば れ る も の で あ り 、妊 娠 中絶 に 関 して 「 記 者 の性別 」 「 記 事 の位 置 」 「中絶 賛 成 派 を何 と 呼 ぶ か 」 「中絶 反 対 派 を何 と呼 ぶ か 」 「 女 性 と胎 児 の ど ち らの権 利 を優 先 す る か 」 「 記 事 の 道 徳 志 向性 」 「 い つ 生 命 が 始 ま るか の議 論 」 「 胎 児 を何 と呼 ぶ か 」 とい う具 体 的 な8項. 目を 設 定 、そ れ を コー ド化 す る こ とで フ レー ミン グ を測 定 したSwenson(1990). の 研 究 が 例 示 され て い る。 そ して 第3は. 、 専 門 家 が 明 確 に 定 義 した フ レー ム の リス トを用 意 し、 そ. れ に基 づ い て 記 事 を 分 類 す る 「フ レー ム リス ト法(the Tankardた. listof frame. approach)」. とい うも の で あ り、. ち は 、 こ の 方 法 を採 用 して い る。. い ず れ も 取 り上 げ る トピ ッ ク ご と に独 自 の フ レー ムや そ の指 標 を 見 つ け 出 さね ば な らな い とい う 点 は 共 通 して い るが 、 こ う した形 で の 分 析 が 蓄 積 す る につ れ て 、 多 くの 研 究 で 共 通 に 用 い られ る 普 遍 性 の 高 い フ レー ム 概 念 が 出 現 す る 可 能 性 も考 え られ る 。 た と え ばSometko (2000)は 興 味(human. and. Valkenburg. 、 先 行 研 究 で使 用 され た各 種 の フ レー ム を整 理 して 「コ ン フ リク ト(co㎡ 睦ct)」「 人 間的 interest)」 「 経 済 的 結 果(economic. consequences)」. 「 道 徳 性(morality)」. 「 責任. (responsibility)」 と い う5っ を 設 定 し、 そ れ らを 一 般 的 な ニ ュ ー ス フ レー ム の カ テ ゴ リー と して い る。 これ は 竹 下俊 郎 が 推 奨 す る 汎 用 型 ・多 項 目型 の フ レ0ム モ デ ル とい うこ と に な る が 、 そ れ に よ っ て ニ ュ ー ス フ レー ム が 網 羅 され る こ とを 想 定 して い る わ け で は な い 。 特 定 の ニ ュ ー ス を分 析 す る 際 に は 、 そ れ を5つ. の フ レー ム の い ず れ か に分 類 す る の で は な く、 そ れ ぞ れ の フ レー ム の 有 無 を. チ ェ ックす る形 に な っ て い る こ と に注 意 す る 必 要 が あ る。 こ う した メ デ ィ ア フ レー ム を 用 い た 研 究 に は 、 オ ー デ ィエ ン ス へ の 影 響 や オ ー デ ィエ ン ス フ レー ム との 対 応 を 考 慮 せ ず 、 時 間 経 過 に 伴 う変 化 や メ デ ィ ア に よ る違 い の 検 証 を 目的 とす る も の が 少 な く な い 。 オ ラ ン ダ の 全 国 紙4紙 (2000)は. とテ レ ビ ニ ュ ー ス3番. 、全 体 に 「責 任 」 と 「コ ン フ リク ト」 の2つ. 組 を 分 析 したSometko. and. Valkenburg. の フ レー ム が 多 く使 用 され る こ とを 明 らか. にす る と共 に 、 ニ ュー ス メデ ィ ア の 中 で は新 聞 とテ レ ビの 違 い よ りも 、 そ れ が シ リア ス な もの か セ ン セ ー シ ョナ ル な も の か とい う次 元 に よ る違 い の 方 が 大 き く、 シ リア ス な新 聞 や ニ ュ ー ス番 組 で は 「責 任 」や 「コ ン フ リク ト」と い うフ レー ム に依 拠 す る傾 向 が 顕 著 な の に 対 して 、 セ ンセ ー シ ョナ ル な メデ ィアは. 「 人 間 的 興 味 」 とい う フ レー ム を 多 用 す る とい う結 果 を報 告 して い る。 一 方 、 メ デ ィ ア. とオ ー デ ィエ ン ス に 共 通 す る フ レー ム と して 「 経 済(㏄onomic)」 感(powerlessness)」. 「 人 へ の 影 響(human. impact)」. 「コ ン フ リク ト(confhct)」. 「 道 徳 的 価 値(moral. value)」 の5っ. 「 無力 を設定. したNeuman, Just, and Crigler(1992)は 、 ジ ャー ナ リス トは 「コ ン フ リク ト」 に 関 連 した フ レ ー ム を好 ん で 用 い る の に 対 して 、 オ ー デ ィエ ン ス は 「 人 へ の影 響 」 とい うフ レー ム に よ っ て解 釈 す る傾 向 が 強 い こ と を 明 ら か に して い る。. 50.
(10) 特集:メ. デ ィア 研 究 にお け る フ レー ム分 析. メ デ ィ ア フ レー ム が オ ー デ ィエ ンス に 与 え る影 響 の 検 証 を 目的 とす る研 究 に は 、 世 論 調 査 や 意 識 調 査 の 結 果 に基 づ い て 特 定 の イ ベ ン トや 争 点 に 関 す る メデ ィ ア フ レー ム との 対 応 を検 証 す る形 の マ ク ロ 分 析 と メデ ィア フ レー ム を 実 験 的 に操 作 して 、 そ の 後 の 実 験 参 加 者 の 反 応 を測 定 す る 形 の ミ ク ロ分 析 が 含 まれ る。 個 人 レベ ル の フ レー ミ ン グ効 果 の 検 証 に は 、 後 者 の 実 験 的 手 法 の 方 が 因 果 関 係 を 明 らか に しや す い とい う意 味 で 利 点 が あ る。 た だ し、 竹 下 俊 郎 が批 判 して い る よ うに 、 これ ら の 実 験 的 研 究 で は 、 オ ー デ ィエ ン ス フ レー ム を検 証 す る こ とな く、 特 定 の争 点 に 関 す る態 度 な どの 後 続 効 果 を測 定 す る こ と が 多 く、 ま た 実 験 的 に 操 作 す る フ レー ム は 、 少 数 に 限 定 せ ざ る を え ず 、 多 く の 場 合、2項. 対 立 型 の形 式 を と っ て い る。 た とえ ば ポ ー ラ ン ドのEUへ. 係 国 の 対 立 や 論 争 を 強 調 した. の参 入 に関す る報告 で、 関. 「コ ン フ リク ト」 と収 支 決 算 な どオ ー デ ィ エ ン ス との 関 連 性 を 明 確 に. した 「 経 済 的 結 果 」 とい う2つ の フ レー ム を 用 意 したde Vreese(2004)は た こ とを 自 由 に 書 い て も ら う とい っ た 方 法(thought. hsting)で. 、 EU拡. 大 につい て思 っ. オ ー デ ィエ ン ス フ レー ム を 測 定 し. て お り、 前 者 の フ レー ム は コ ン フ リ ク トに 関す る 思 考 、 後 者 の フ レー ム は 利 害 得 失 に 関 す る 思 考 を 促 進 す る こ と を確 か め て い る。 しか し特 定 の争 点 に 関 して 提 示 され た フ レー ム に 沿 う形 の 理 解 や 解 釈 が 促 進 され た と して も、 そ れ は む しろ 当然 の 結 果 と も言 え よ う。 フ レー ミ ン グ 効 果 を 検 証 す る 際 に 、 オ ー デ ィ エ ン ス フ レー ム をバ イ パ ス して 後 続 効 果 の 測 定 が な され る の は 、 お そ ら く多 くの 研 究 で 提 示 され た フ レー ム に 沿 っ た 解 釈 や 理 解 が促 進 され る こ と を 自明 の前 提 と して い る か らで あ ろ う。 実 際 、思 考 を方 向 づ け る うえ で の フ レー ム の 有 効1生を確 認 したde Vreese(2004)の. 研 究 で は 、EU. 統 合 の 拡 大 方 針 の 支 持 とい っ た 態 度 の測 定 もな され て お り、 そ れ に 関 して フ レー ム に よ る有 意 差 は 認 め られ な い とい う結 果 が 報 告 され て い る の で あ る。 先 述 した よ うに 「 エ ピ ソー ド型 フ レー ム 」 と 「 テ ー マ 型 フ レー ム 」 と い う2項 対 立 の 図 式 を用 い たIyengar(1991)は. 、 そ れ に よ っ て 責 任 の 帰 属 が影 響 され る こ とを 示 し て お り、 Cappena. Jamieson(1997=2005)で. and. は、選挙 報道 にお ける 「 戦 略 型 フ レー ム」 が政 治 家 に 対 す る不 信 感 や シ. ニ シ ズ ム を 助 長 す る こ とを確 か め て い るわ け だ が 、 他 に も さ ま ざま 形 で の フ レー ミン グ効 果 の 検 証 が な され て い る。 た と え ばNelson,. Oxley, and. Clawson(1997)は. 、KKKの. 集会 を 「 社会 秩序 の. 崩壊」 で はな く、 「 発 言 の 自由 とい う権 利 の 行 使 」 と フ レー ム した 時 に 、KKKに ま る こ とを 示 して い る し、Kinder. and. Sanders(1990)は. 対 す る許 容 度 が 高. 、黒 人 に対す る 「 積 極 的差別 是正措 置. (affirmative action)」 を 「白人 に 対 す る逆 差 別 」 と フ レー ムす る か 「 黒 人 に対 す る不 当 な利 益 」 と フ レー ム す る か に よ っ て 、 そ の 政 策 に 対 す る 白 人 の 支 持 が 変 化 す る こ とを 明 らか に して い る。 これ らの研 究 で は 、 受 け 手 側 の 個 人 差 を 考 慮 して い な い が 、 最 近 の 実 験 的 研 究 で は 、 そ う した 個 人 差 を 変 数 と して 導 入 す る こ とが 多 くな っ て い る。 た と え ば 「 積 極 的 潮1」是 正 措 置 」 に 関 して 、 不 平 等 や 差 別 を解 消 す る た め に必 要 とい う 「 救 済 行 為 フ レー ム(remedial す る こ と の利 益 を 強 調 した (2005)は. 「 多 様1生 フ レー ム(diversity. action frame)」. frame)」. の2っ. と多 様 な 人 々 と接. を 設 定 したRichardson. 、 事 前 に 実 験 参 加 者 の 人 種 的 態 度 を 測 定 して お り、 後 者 の フ レー ム に よ っ て 是 正 措 置 に. 対 す る支 持 と人 種 的 態 度 の 結 び つ き が 緩 和 され る こ と を 明 らか に して い る。 ま た 道 徳 性 や 倫 理 とい. 51.
(11) 三 田社 会 学 第12号(2007). っ た 価 値 観 に基 づ く 「 価 値 フ レー ミン グ(value. framing)」. とに 焦 点 を 合 わせ た 「 結 果 フ レー ミン グ(consequence. と ど の よ うな 結 果 が 生 じ るか とい う こ. framing)」. の2つ. を用 意 したShen(2004). は 、 倫 理 や 価 値 に 基 づ く判 断 を す るか 、利 得 に 基 づ く判 断 を す る か とい う次 元 で 事 前 に 実 験 参加 者 を グル0プ. 分 け して お り、 そ う した 受 け 手 側 の 判 断 枠 組 に 一 致 した 時 に ニ ュ ー ス フ レー ム の 効 果 が. よ り大 き くな る こ とを確 か め て い る。 これ らの 実 験 的 研 究 で は 、 実 際 の新 聞 や テ レ ビ報 道 の 一 部 を変 更 して フ レー ム の 操 作 を す る こ と も あ る し、 実 験 用 の テ キ ス トを 新 た に創 出 す る こ と も あ る。 ま た テ キ ス トの本 質 的 部 分 を 一 定 に し て 、 見 出 しや 写 真 、 テ ロ ッ プ な どの 周 辺 的 部 分 で フ レー ム の 操 作 が な され る こ と もあ る し、 テ キ ス ト自体 に操 作 を加 え る こ と も あ る。 い ず れ に し ろ フ レー ミ ン グ 効 果 の 検 証 を 目的 とす る 実 験 的 研 究 で は 、 メ デ ィ ア フ レー ムや オ ー デ ィ エ ン ス フ レー ム を体 系 的 に 捉 え よ う とす る 姿 勢 は 乏 し く 、 ま た 送 り手 と受 け 手 の相 互 作 用 が 考 慮 され る こ と は あ ま りな い 。. 4.フ. レー ミ ン グ研 究 へ の 議 題 設 定 パ ラ ダ イ ム の 拡 張. マ ス メ デ ィア の議 題 設 定 機 能 に 関 す る研 究 は 、McCombs な 数 に の ぼ っ て い る。 そ れ が1960年. and. Shaw(1972)以. 降 、す で に膨 大. 代後 半 まで の 「 限 定 効 果 論 」の 流 れ を変 え 、効 果 研 究 の 焦 点 を. 態 度 変 容 か ら現 実認 識 に 移 行 させ る こ と に よ っ て メデ ィ ア の 強 力 な効 果 の 新 た な 探 求 を導 く原 動 力 の ひ とっ とな っ た こ とは 広 く知 られ て い る。 そ の 理 論 的 骨 子 は 「 マ ス メデ ィ ア で 、 あ る争 点 や トピ ッ クが 強 調 され れ ば され る ほ ど、 そ の争 点 や トピ ック に 対 す る人 び との 重 要 性 の 知 覚 も高 ま る(竹 下 、1998、p4)」. とい う こ と に な る が 、各 争 点 に 対 す る報 道 量(メ デ ィ ア講題)と 各 争 点 の 重 要 度 に 関. す る人 々 の 認 識(公. 衆 議 題)と. の 間 に 高 い 相 関 が あ る こ とは 多 くの 研 究 で 繰 り返 し裏 づ け られ て い. る。 竹 下 俊 郎 が指 摘 して い る よ うに 、1990年 「属 性 型 議 題 設 定(attribute. 代 に 入 っ て 議 題 設 定研 究 で も、 争 点 の 中 身 が 注 目 され 、. agenda-setting)」. が 提 起 され る こ と に な る わ け だ が 、 この 種 の 研 究. が 深 化 す る に つ れ て 、 特 定 の争 点 や トピ ッ ク が どの 程 度 報 道 され た か とい う量 の 問 題 か ら、 ど の よ うに 報 道 され た か とい う質 の 問 題 に 関 心 が 向 か うの は 、 あ る 意 味 で 当然 の 趨 勢 と も言 え よ う。 しか し、 特 定 の 争 点 や トピ ッ ク に 関 す る報 道 量 を 測 定 す る の は 容 易 だ と して も 、 ど の よ うな 報 道 が な さ れ た か とい う中 身 に 関 して は 、 そ れ を測 定 す る方 法 が 確 立 され て い る わ け で は な い 。 従 来 の議 題 設 定 研 究 の パ ラ ダ イ ム に従 え ば 、 特 定 の 争 点 に 関 す る 下 位 争 点 を 設 定 し、 そ れ ら の報 道 量 を測 定 す る と共 に 、 そ れ ぞ れ を 人 々 が どの 程 度 重 視 し て い る か を調 べ て 、 そ の 対 応 関 係 を 検 討 す る こ とに な ろ う。McCombs. and Shaw(1993)は. 、特 定 の争 点 の い か な る属 性 を重 視 す るか とい う属 性 型 議 題 設. 定 を フ レー ミ ン グ と ほ ぼ 同 一 視 し、 フ レー ミ ン グ を 議 題 設 定 研 究 の パ ラ ダ イ ム に包 摂 可 能 な もの と して い る。 しか し議 題 設 定 の 視 点 か らフ レー ム を トピ ッ クや 属 性 な ど に 還 元 す る こ と に対 して は 、 ニ ュ ー ス 制 作 に お け る フ レー ム の 構 築 過 程 を 重 視 す る立 場 の研 究 者 か ら強 い 反 発 を 受 け 、 あ る 種 の 覇 権 争 い の よ うな 状 況 を招 来 す る こ と に な っ た(Kosicki,1993な 2001年. に 出 版 され た"teaming. ど)。. public life"1こは 、 さ ま ざま な 立 場 の研 究 者 の 論 文 が 収 録 され て い. 52.
(12) 特 集:メ. る が 、 そ の 中 でMcCombs. and Ghanem(2001)は. デ ィア 研 究 にお け る フ レー ム分 析. 、公 衆 議 題 に 対 す る マ ス メ デ ィ ア の 影 響 力 に つ. い て 豊 富 な研 究 の 蓄 積 が あ る議 題 設 定 研 究 の 伝 統 と メ デ ィ ア の 中 に 見 出 され る フ レー ム や そ の 起 源 に 注 目 し て き た フ レー ミン グ研 究 の 伝 統 は 、 相 互 補 完 的 で あ り、 そ れ らを 統 合 す る こ とに は 、 い く っ も の理 論 的利 点 が あ る 、 と述 べ て い る。 そ れ に対 してPan. and. Kosicki(2001)は. 、メデ ィア言. 説 が 人 々 に 対 して 何 を す る か で は な く、 人 々 が メ デ ィア 言 説 に い か に 対 処 す る か とい う視 点 が 重 要 と して 効 果 研 究 の パ ラ ダイ ム で フ レー ム を捉 え る こ との 限 界 を 指 摘 して い る し、 メ デ ィ ア の メ ッセ ー ジ は構 築 され る もの だ とい う特 質 を 重 視 す るMaher(2001)も 、フ レー ム を対 象 の 単 な る属 性 と して 扱 う議 題 設 定 の 方 法 に 強 い 抵 抗 感 を示 して い る。 従 来 の議 題 設 定 研 究 で は 、 メ デ ィ ア議 題 を 形 成 す る 要 因 に つ い て の配 慮 が 乏 し く、 逆 に フ レー ミ ン グ研 究 で は 、 フ レー ム が 公 衆 に 与 え る影 響 へ の 関 心 を 欠 い て い た の は 事 実 で あ り、 そ の 意 味 で は McCombs. and Ghanem(2001)が. 指 摘 す る よ うに 、2つ. の研 究 の 流 れ に は 相 互 補 完 的 な側 面 も確. か に 存 在 す る。 しか しフ レー ム の 捉 え方 は 多 様 で あ る と して も 、 そ れ を トピ ック や 属 性 に還 元 す る こ と に は 大 き な 限 界 が あ る の も ま た 確 か で あ る。 属 性 型 議 題 設 定 に 関 してMcCombs (1993)は. 、それ は 「 何 に つ い て 考 え るか(what. 課 題 か ら、 特 定 の 争 点 につ い て. to think. 「ど の よ うに 考 え る か(howto. about)」. and. Shaw. とい う従 来 の議 題 設 定 の 研 究. think about it)」 とい う方 向 へ と適. 用 領 域 を 拡 張 す る試 み と して位 置 づ け て い る 。 お そ ら く議 題 設 定 研 究 の 最 大 の魅 力 は 、 メ デ ィ ア 議 題 と公 衆 議 題 とい う概 念 が 明 確 に 操 作 化 され て お り5)、 ま た 両 者 の 順 位 相 関 を み る とい っ た 標 準 的 な 検 証 方 法 が 確 立 して い る こ とで あ ろ う。 しか し 「 何 につ い て 考 え るか 」 を量 的 に捉 え るの は 比 較 的 容 易 だ が 、 「どの よ うに 考 え る か 」 を 測 定 す る の は き わ め て 難 しい 。 実 証 性 を重 視 す る議 題 設 定 の 立 場 か らは 、 特 定 の 争 点 に 関 して 、 どの よ うな 下 位 争 点 な い し属 性 が 重 視 され る か と い う形 で フ レ ー ム を 操 作 化 し、 下 位 争 点 の 報 道 量 と重 要 性 認 知 の 相 関 を み る とい う形 で フ レー ミ ン グ 効 果 を 検 証 す る こ とに な ろ う。 し か し、 こ う した 方 法 で は 「どの よ うな フ レー ム が 使 わ れ た か 」 は 明 確 に され て お らず 、 そ れ に よ っ て 属1生型 議 題 設 定 の 検 証 が で き た と して も 、 そ れ を フ レー ミ ン グ 効 果 とす る の は 少 し無 理 が あ る よ うに思 わ れ る 。. こ の 点 に 関 して 同 じデ ー タ を 用 い て フ レー ミ ン グ効 果 と属 性 型 議 題 設 定 効 果 を 別 個 に 検 証 した竹 下 俊 郎 の研 究 は 、 注 目に 値 す る。 特 定 の 争 点 に 制 約 され な い 汎 用 型 か つ 多 項 目の フ レー ム モ デ ル を 指 向 す る竹 下 は 、 ま ずEdelstein,. Ito, and Kepphnger(1989)に. 壊」「 対 立」 「 不 確 実 さ」 「 解 決 への措 置」 「 妨 害 」 の7つ. 基づ いて 「 損失」「 必 要」 「 制度崩. の カ テ ゴ リー か らな る 「問 題 状 況 フ レー ム」. を 設 定 す る。 そ して 低 迷 す る 日本 の 経 済 状 況 の うち何 が 問題 か とい うテ ー マ の フ ォ ー カ ス グル ー プ イ ン タ ビ ュ0を 通 じて12項. 目の 質 問 を作 成 し、そ れ ぞ れ が どの 程 度 問 題 か とい う評 定 尺 度 を含 む 質. 問 紙 調 査 を 実 施 す る と共 に 、 調 査 時 点 よ り前 の1年. 間 の 朝 日、 読 売2紙. の経済 ニ ュース の内容 分析. を 行 っ て い る 。 こ こ で は 経 済 関 連 記 事 を 上 記 の12項 目か らな る経 済 問 題 の 下 位 争 点 、問 題 状 況 フ レ ー ム の7つ の カ テ ゴ リー の 両 方 で 分 類 し、 い ず れ に つ い て も コー ダ ー 間 の 判 断 が 高 い 水 準 で 一 致 ず る こ と を確 認 して い る。 さ らに12項. 目の 経 済 状 況 に対 す る 問題 認 識 を 因 子 分 析 して4因 子 を抽 出 、. 53.
(13) 三 田社 会 学 第12号(2007). それ らが 「 制度 崩壊 」 「 損失 」 「 不確 実 さ」 「 対立」 の4つ の フ レー ムにほ ぼ対 応 してい る こ とを確 か めた うえで、内容分析 を通 じて 明 らかに され た12項 目の争 点 の報 道 量の割合 と意識 調査 で の各 項 目 の重要 度 の評 定 平均値 のll圓 立相 関 を と り、それ が有 意 な正 の値 を とるこ とで属 性型議 題設 定効 果 を 検 証 してい る。 一方 、 フ レー ミング効 果 に関 して は、回答 者 ごとに4つ の問題 状況 フ レー ムに対応 す る因子得 点 を算 出 し、新 聞へ の接融 度 と政府 の経 済政策 へ の関心度 を掛 け合 わせ た 「 経 済報道 へ の注意度 」 との相 関係数 を求 めてお り、経 済報道 にお ける言及 頻度 が高 い 「 制 度崩壊 」 と 「 不確 実 さ」 の2っ の フ レー ムに 関 して 両変数 間 に有意 な正 の相 関がみ られ た こ とをフ レ0ミ ング効果 の裏 づ け と してい るの であ る。 この よ うに周到 な手続 きを経 て竹 下俊郎 は、属性型 議題 設定 効果 とフ レー ミング効 果 を分 離 して い るわ けだ が、前者 の検 証 は標 準 的 な手続 きに基 づい てい るの に対 して、経 済報 道へ の注意 度 とい う変数 を導入 した後 者 の手続 き は、 きわめ て独 自性 の 高い もの とな ってい る。経 済記 事 を注 意 して よ く読む 人 ほ ど、報 道 で強調 され る問題 状況 フ レー ムを よ り重要 な もの と考 える とい うこ とが フ レ ー ミング効果 の根拠 と され てい るが 、重 要性認 知 と経済 報道 へ の注意度 との正の相 関 は、新 聞 で多 く取 り上 げ られ た フ レー ム に関 してのみ認 め られれ ば よいの か、 あ るいは フ レ0ム の言 及頻度 に応 じて相 関の大 き さが変動す る ことが求 め られ るの か。 こ こで の内容 分析 で は、各記 事 の内容 を7っ の カテ ゴ リー のいずれ か に分類 す る形 式 を とって い るが 、そ の記事 に各 フ レ0ム が含 まれ て いた か ど うか をチ ェ ックす る形 で コー デ ィ ング した場 合には、分 析結 果 は異 なって くるのか。経 済報道 へ の注 目度 とい う個 人差 の変数 を導入す るこ とで、 よ り精緻 な分析 が可能 にな る と して も、順位や 平 均 値 とい った集合 デー タに基 づ く従来 の検 証方 法 に比べ る と、 分析結 果 が変動 しやす く、安定 性を 欠 くこ とに なろ う。経済 報道へ の注 目度 に基づ いて 回答 者 を3群 に分 け、それ ぞれ の群 で12項 目の 下位 争 点の報 道量 と重 要性認 知 の順位相 関を とった場 合、 いずれ の群 で も正 の相 関 がみ られた もの の、経 済報道 に多 く接 して い る人 た ちの間 で相 関が強 ま る傾 向 は出現 して い ない。む しろ経 済報道 との接触 度 の低 い人 た ちの 間で 、わず か に相 関 が高 くな ってお り、 こ うした形 で個人 差 を考慮 した 精緻 な分 析 を して い く と、議題 設 定の基 本構想 に反 す る よ うな結果 も現れ て くるので あ る。 いか な る争 点 を取 り上げ るか とい うこ とよ りも、 どの よ うなフ レー ム で報 じるか とい う点 に関 してメデ ィ ア問の違 いが現 れや す い とすれ ば、新 聞だ けで な く、 テ レ ビな ど他 の メデ ィア情報 も考 慮す る必要 が 生 じるはず であ る。 メデ ィア情報 へ の依 存度 が 高い政 治 ・外 交 とい った問題 に比 べ る と、経 済 問 題 は よ り身近 な話題 で あ り、 メデ ィア情報 よ りも 日常的 な実経 験や 周 囲 との会 話や 情報 交換 の影響 力 が強 くな る可 能性 も考 え られ る。 汎用性 の 高い多 項 目の図式 を用 い てフ レー ミン グ効果 を検 証す る試 み は貴重 な もの だ として も、竹 下 自身 が指 摘 してい る よ うに 、 ここで採用 され た フ レー ムモデ ル の妥 当性 の 問題 も含 めて、 フ レー ミング効果 の標 準的 な検証 方法 を確 立す る前 に解 決す べ き課 題 が 山積 してい るのは確 かで ある。. 5. む すび メ デ ィ ア 研 究 に お け る フ レー ム 分 析 は 、 主 と して メ デ ィ ア フ レー ム を研 究 対 象 と して き た。 フ レ. 54.
(14) 特 集:メ デ ィ ア研 究 に お け る フ レー ム分 析. 一 ミ ン グ効 果 を検 証 す る 際 に は 、 特 定 の 争 点 や イ ベ ン トに 関す る 受 け 手 の 認 識 や 評 価 が 考 慮 され る と して も 、 そ れ は メ デ ィ ア フ レー ム と の 関 連 で 取 り上 げ られ る の で あ っ て 、 受 け 手 の判 断 枠 組 、 オ ー デ ィエ ン ス フ レー ム 自体 の解 明 を 目指 す も の で は な い 。 伝 統 的 な フ レー ミ ン グ の 研 究 者 は 、 メ デ ィ ア 効 果 を生 み 出す メ ッセ ー ジ の 特 質 と し て フ レー ム を 捉 え る こ と に批 判 的 で あ る。 しか しメデ ィ ア効 果 の 検 証 を直 接 の 目的 と し な い 場 合 で も 、 受 け 手 の 認 識 枠 組 み との 関係 を 考 慮 せ ず に 意 味 の あ る メ デ ィ ア フ レー ム を 設 定 す る の は 難 しい 。 フ レー ム の 捉 え 方 は 多 種 多 様 で あ る が 、 ニ ュ ー ス 報 道 に 関 して 言 え ば 、 何 に つ い て 報 じ る か で は な く 、 ど の よ うに 報 じ る か とい うこ とが フ レー ム の 本 質 を構 成 す る こ とに な ろ う。 しか し、 ニ ュー ス トピ ッ ク を フ レー ム と等 価 な もの と して扱 う こ とは で き な い と して も 、 何 に つ い て 報 じ る か とい うこ と も フ レー ム を 構 成 す る う えで 大 き な役 割 を 果 た して い る。た とえ ば2004年 の ニ ュ ー ス番 組 で の 北 朝 鮮 関連 報 道 を 比 較 した 李(2006)は して い た の に対 して 、 韓 国 で は 「 竜川 列 車爆 破事故 」や. 、 日本 で は. 上 半 期 の 日韓 両 国. 「 拉 致 問題 」 に 報 道 が 集 中. 「 南 北 交 流 ・北 朝 鮮 解 放 」 につ い て 日本 よ. りも 多 く報 道 す る とい う具 合 に 両 国 の ニ ュ ー ス で 取 り上 げ られ た トピ ッ ク に 顕 著 な 違 い の あ る こ と を 明 らか に して い る。 さ ら に北 朝 鮮 の 行 為 や 状 況 、 そ れ に 対 す る推 測 と評 価 な どの 質 的 分 析 を加 え た 李 は 、 た とえ ば. 「 拉 致 問 題 」 に 関 す る 韓 国 の 報 道 は 、 小 泉 首 相 と金 正 日総 書 記 と の 首 脳 会 談 で の. 「 対 話 ・妥 協 ・合 意 ・譲 歩 」 とい っ た 行 為 に も っ ぱ ら焦 点 が 合 わ され て い た の に 対 して 、 そ れ に加 え て 日本 の テ レ ビで は 日朝 交 渉 過 程 にお け る 北 朝 鮮 側 の 「固 執 ・対 立 ・非 難 ・要 求 」 あ る い は 「 隠 蔽 ・欺 隔 」 とい っ た 行 為 も多 く取 り上 げ られ る とい う具 合 に 同 じ トピ ッ ク で も 日韓 両 国 の扱 い に 違 い の あ る こ と を示 し て い る。 こ の よ うな 「 拉 致 問題 」 の 取 り扱 い の 違 い を 日韓 両 国 の フ レー ム の 違 い と して 捉 え る こ と も で き る が 、 そ の トピ ッ ク が 日韓 両 国 の 北 朝 鮮 関 連 報 道 の 中 で 占 め る 比 重 の 違 い を無 視 す る こ とは で き な い 。先 述 した よ うに 李 自身 は 、フ レー ム とい う概 念 を 使 用 して い な い が 、 どの よ うな トピ ッ ク を 多 く取 り上 げ る か とい う こ と も 日韓 両 国 の 北 朝 鮮 関 連 報 道 の フ レー ム の 違 い を 明 らか にす る うえ で 重 要 な 要 素 とな っ て い る の で あ る 。 こ の よ うに 北 朝 鮮 に 関 す る 日韓 両 国 の テ レ ビ報 道 に は 、 取 り上 げ る トピ ック の 分 布 の み な らず 、 取 り上 げ 方 に も違 い が あ り、そ れ ら を 通 じて 異 質 な 北 朝 鮮 像 が構 築 され て い る こ とを示 す と同 時 に 、 そ う した 違 い を も た らす 日韓 両 国 の社 会 的 背 景 に も李 は言 及 して い る。 す な わ ち韓 国 で は 「民 族 の 同 質 性 を 回 復 す る」 こ とが 北 朝 鮮 報 道 の 新 た な 規 範 と して 確 立 しつ つ あ る の に 対 して 、 日本 で は少 な く と も拉 致 問題 が解 決 され る ま で は 「 非 難 され る べ き 対 象 」 と して 北 朝 鮮 を位 置 づ け る 空 気 が支 配 的 で あ り、 そ う した 規 範 に適 合 す る枠 組 み で 処 理 で き る か ど うか が 両 国 の ニ ュ ー ス の 選 考 基 準 と して機 能 す る可 能 性 が 指 摘 され て い る の で あ る。 フ レー ム 概 念 の 曖 昧 さの 理 由 の ひ とつ は 、 何 が フ レー ム の 対 象 とな る か に つ い て の 合 意 が 得 られ て い な い こ とに あ ろ う。 そ う した 対 象 は 広 狭 さ ま ざ ま な 水 準 で 設 定 され 、 そ れ に 応 じて 抽 象 度 の 異 な る多 様 な フ レー ム 概 念 が 使 用 され る こ とに な る。 た と え ば 拉 致 問 題 は 、 北 朝 鮮 に 関 す る ニ ュ ー ス トピ ック の ひ とつ で あ り、 い ず れ を 対 象 とす る か に よ っ て フ レー ム の 捉 え 方 が 異 な っ て く る の は 当 然 で あ る。 フ レー ム 分 析 に基 づ く研 究 が 蓄 積 す る につ れ て適 用 範 囲 の 広 い標 準 的 な フ レー ム 概 念 が. 55.
(15) 三 田社 会 学 第12号(2007). 出 現 す る可 能 性 も考 え られ る が 、 多 様 な フ レー ム概 念 の 存 在 は 、 一 概 に 否 定 され るべ き も の で は な い の か も しれ な い 。 多 くの 争 点 に適 用 可 能 な 普 遍1生の 高 い フ レー ム を 追 求 す る よ り も、 研 究 目的 に 応 じて 多 様 な フ レー ム 概 念 を使 い 分 け る こ との 方 が よ り現 実 的 で あ り、 現 状 で は 有 効 性 も 高 い よ う に 思 わ れ る。 テ キ ス トの 分 析 を 通 じて フ レ0ム. を抽 出す る 際 に 、 ニ ュ ー ス の 制 作 過 程 に 注 目す る の. で あ れ ば 、 ジ ャ ー ナ リス トが 用 い る フ レ0ム は 何 か とい う視 点 が 必 要 に な る と して も 、 オ ー デ ィ エ ン ス へ の影 響 とい っ た 受 容 過 程 に配 慮 す る の で あれ ば 、 そ れ を 検 証 す る の に 必 要 な フ レ0ム を 研 究 者 の側 で 任 意 に 設 定 す る の が 望 ま しい こ と も あ ろ う。 ニ ュー ス の 制 作 過 程 、 受 容 過 程 の い ず れ に注 目す る にせ よ 、 い か な る フ レー ム が 用 い られ る か とい う視 点 か らの 分 析 が 重 要 な意 味 を もつ の は 間 違 い な い が 、 そ れ を どの よ うな形 で概 念 化 す る か とい う こ と に つ い て は 、 今 後 の 研 究 の 蓄 積 を 待 っ て 、 さ らな る検 討 を加 え る必 要 が あ る と言 え よ う。. 【註 】 1)2006年7月8日. に行 わ れ た 三 田 社 会 学 会 の シ ン ポ ジ ウム 「 メ デ ィア 研 究 に お け る フ レー ム 分 析 」に 筆 者 は 、. 討 論 者 とい う立 場 で 参 加 した が 、そ の 時 の 発 言 だ け で は 、質 量 と も に 論 文 を 構 成 す る の に不 十 分 な た め 、 こ こ で は 新 た な 形 で 関 連 す る文 献 の レ ビ ュ ー を試 み た 。 竹 下 俊 郎 、 藤 田真 文 、 大 石 裕 の3氏. の 報 告 に対 す る コメ. ン トも加 え て い るが 、い ず れ も シ ン ポ ジ ウ ム の 際 に 配 布 され た 資 料 に 基 づ く も の で あ り、本 誌 に収 録 され た3 氏 の 論 文 を 参 照 して い な い こ と を お 断 り して お き た い 。 2)社. 会 的 事 象 や 人 間 に 関す る社 会 的 ス キ ー マ に つ い てFiske&Taylor(1991)は. す る知識 体系 で ある. 「 人(persorゆ. 、 特 定 の他 者 や 人 間 一 般 に 関. ス キ ー マ 」、 特 定 の 集 団 や 役 割 に 関 す る 「 役 割(role)ス. 事 象 の 生 起 頂序 や 手 続 き に 関 す る 「 事 象(event)ス. キ ー マ 」、 社 会 的. キ ー マ 」、 自分 自身 に 関す る 「自己(selOス. キ ー マ 」 の4. 種 類 を 想 定 して お り、 この う ち行 動 や 出 来 事 の 連 鎖 に 関 す る 「 事 象 ス キー マ 」 は 、 ス ク リプ トと同 義 と解 され てい る。 3)た と え ば 特 殊 な 病 気 の 発 生 に 際 して2種. 類 の ワ ク チ ンの い ず れ を採 用 す る か と い っ た意 思 決 定 の 実 験 課 題 で 、. 全 く 同 じ条 件 で あ っ て も 生 存 確 率 とい っ た利 得 を 強 調 した 表 現 を 用 い る と リス ク 回 避 的 選 択 、死 亡 確 率 とい っ た 損 失 を 強 調 した 表 現 を 用 い る と リ ス ク 志 向 的 選 択 が 多 くな る と い う具 合 に 異 な る判 断 枠 組 が 働 く こ と が 示 され て い る。 4)こ. の 点 に 関 してKosicki. and McLeod(2000)は. て 他 の 情 報 源 を 探 す(active (re且ective integrators)」. processing)」 「 関連す る龍. う能 動 的 な ニ ュ ー ス 情 報 処 理 の3様 5)た. 、 「 メ デ ィ ア 情 報 は 不 完 全 で 偏 りが あ る とい う想 定 に 基 づ い 「メ デ ィ ア か ら得 た 情 報 に つ い て 考 え 、 他 の 人 々 と話 し を す る. を 探 す た め に マ ス メデ ィア を禾r」 用 す る(selective. とい. 式 を提 示 して い る 。. だ し公 衆 議 題 の 測 定 水 準 と して 個 々 人 の 重 要 性 の認 知 を 表 わ す. 要 と考 え られ る度 合 い を文橡. scanners)」. 「 個 人 内 議 題 」 の 他 に 、 日常 会 話 の 場 で 重. とす る 「 対 人 議 題 」、世 間 一 般 の 人 々 の 重 要 陸認 知 の 推 測 を反 映 した 「 世 間 議 題」. の 区 分 が な され て い る し 、ま た 議 題 設 定 効 果 の 水 準 に 関 して も争 点 の 存 在 を 認 知 す る か 否 か とい う 「 認知 モデ ル(awareness. model)」 、一 定 の 閾 値 を超 え た少 数 の争 点 の み を対 象 とす る 「 顕 出 性 モ デ ル(sahence. 56. mode1)」 、.
(16) 特 集:メ. さま ざ ま 争 点 の 重 要 性 の 順 位 の転 移 を想 定 した. デ ィ ア研 究 に お け る フ レー ム分 析. 「 優 先 順 位 モ デ ル(priority. の3つ. model)」. の概 念モ デル が. 区別 され て い る 。. 【文 献 】 Brosius,. H. B.,&Eps, against. Cappela,. P.,1995,"Prototyping. aliens. and. University. Carragee,. Press.(=平. selection. Journal. ηノ窃 θp螂. 林 紀 子 ・L]田 一 成 監 訳 、2005、. neglect. of power. salience. shootings."Journalism. Evidence Comm. for a second-level unication. in the. case. of violence. ofCommunication,10,391-412.. βaη ゴ 訪 θ.ρ召配 た800d. New. Yc)rk:Oxford. 『政 治 報 道 と シ ニ シ ズ ム ー 戦 略 型 フ レ ー ミ ン グ. in recent. framing. research:'Journal. of. the. process. Communication TV. of framing. Coverage. of the. Columbine. Quarterly,81,22-35.. news'affective. agenda-setting. effects. 「ふ た つ の. of frames. andMass. framing. effect through. visual. in political television. Comm. unication. of the. presidential. candidates. framing."Journalism. andMass. news. on issue. interpretation. and. frame. Quarterly,81,36・52.. 「 北 朝 鮮 」 一 日本 と 韓 国 のTVニ. ア ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 』(慶 A.. and. Quarterly,83,313-328.. C. H.,2004,"The. 李 光 鏑 、2006、. andMass. S.,2006,"Network. salience・"Journalism. Entman,. o!卿'α9甜. M.,2004,"Media. R.,&Banning,. Edelstein,. News. unication,54(2),214-233.. school. de Vreese,. events. in Germany."European. W.,2004,"The. H.1.,&McCombs,. Coleman,. key. ミ ネ ル ヴ ァ 書 房.). K. M.,&Roefs, Comm. seekers. K. H.,1997,6瞬al. の影響 過程』. Chyi,. asylum. J.,&Jamieson,. through. ュ ー ス に お け る 北 朝 鮮 報 道 の 内 容 分 析 一 」、 『メ デ ィ. 磨 義 塾 大 学 メ デ ィ ア ・ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 研 究 所 紀 要)、56、59-71.. S., Ito, Y.,&Kepplinger,. H.. M.,1989,. R. M,1993,"Framing:Toward. Communication. clarification. and. of a fractured. culture.. New. York. paradigm.",lournal. Longman.. ofComm. unication,. 43(4),51-58. Fiske, Gamson,. S.T,&Taylor, W. S.E.,1991,. A.,2001,"Foreword"ln. Perspectives Lamson,. Social. on media. W. A.,&Lasch,. S.D. and. Lamson,. W.. a.,&Modigliani,. Shaw,&D. Gitlin, Hetrog,. T.,1980,. J. M.,&McLeod,. whole. Gandy,. the. Jr.,&A.E.. ofthe. political. A.,1989,"Media. sodal. culture. welfare. Grant(Eds.),. world.. Mahwah,. of social welfare. state. discourse. α7ヒaη 読)㎜al. in the tapestry:The. H. Weaver(Eds.), The. H.. Yc)rk:McGraw-Hi皿. Social. Framingpublic. life. NJ:1」EA.. policy."ln. S. E. Spiro&E.. andpoliticalperspectives.. San. Diego,. pp.397-415.. apProach."∠4加. S.1.,1997,"Filling. ed). New. understanding. Evaluating. Press,. constructionist Ghanem,. our. Reese,0.. K. E.,1983,"The. Yuchtoman-Yaar(Eds.), CA:Academic. Cognition(2nd. world. Comm. D. M.,2001,"A. public. opinion. on. nuclear. power. A. o〆6bαbわi野 ∼95,1-37.. second. uni'cation. is watching.. and. level of agenda and. Berkley. democracy.. University. multiperspective. 57. approach. setting."In. M.. NJ:Lawrence. of California to framing. E. McCombs, Erlbaum,pp. D. 3-14.. Press. analysis. A field guide."In. L..
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