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(2) 特 集1:社. 会 学 に お け る モ ダ ン とポ ス ト ・モ ダ ン. ポ ス ト コ ロ ニ ア ル と ポ ス トモ ダ ン 文化人類学と文化研究 阿久津 1.ポ. ス トコ ロ ニ ア ル と. 昌三. 〈他 者 〉. フ ラ ン ツ ・フ ァ ノ ン は 、 『黒 い 皮 膚 、 白 い 仮 面 』 の な か で 、 白 人 と 黒 人 の 他 者 像(イ マ ー ゴ)の 形 成 に つ い て 、 ラ カ ン の 「鏡 像 段 階 」 の 概 念 を も ち い て 、 次 の よ う に 語 っ て い る 。. 「ラ カ ン が 記 述 した こ の 過 程 を理 解 す れ ば 、 白 人 に と っ て の 真 の 〈 他者 〉 は黒 人で あ る し 、 ま た 黒 人 で あ り続 け る こ と は も は や 疑 い 容 れ な い 。 ま た 、 そ の 逆 も 。 た だ 、 白 人 の 場. 合、 〈 他 者 〉 は 身 体 像 の 次 元 で 、 非 我 と して 、 つ ま り、 同 一 視 で き ぬ もの 、 同化 で き ぬ も の と して 絶 対 的 に知 覚 され る 。 黒 人 の 場 合 は 、 前 述 の 通 り歴 史 的 ・経 済 的 現 実 を 考 慮 に入 れ る 必 要 が あ る。__こ. の(ラ カ ン に よ る 鏡 像 段 階 の)発 見 の 重 要 性 は容 易 に 理 解 で き る. だ ろ う 。 主 体 が 鏡 に 映 る 自分 の 姿 を認 め 、 そ れ に喜 び を 示 す 度 に 、 喜 悦 の 対 象 に な る の は い っ も 、 いわ ば. 〈主 体 固 有 の 心 的 統 一 性 〉 で あ る 」. (フ ァ ノ ン. 、1970:178)。. 『黒 い 皮 膚 、 白 い 仮 面 』 と い う 標 題 に は 、 肌 の 色 の 両 極 を 示 す. 「黒 」 と. 「白 」 の 色 彩 的. な 対 比 の 軸 と 、 身体 生 理 の 「 真 実 」 を象 徴 す る皮 膚 と社 会 関 係 の 「 虚偽 」 を象徴 す る仮面 との 非 対 称 的 な 対 比 の 軸 とが 交 差 して い る(渡 辺 、1997:33)。1952年 に刊 行 さ れ た 『黒 い皮 膚 、 白 い仮 面 』 の な か に は精 神 科 医 と して の フ ァ ノ ン を、 また 、 フ ァ ノ ンの 死 後 1961年 に 刊 行 さ れ た 『地 に 呪 わ れ た る 者 』 の な か に は 革 命 家 と して の フ ァ ノ ン を発 見 す る こ と が で き る 。 こ れ は ポ ス トコ ロニ ア ル な 状 況 と も密 接 に 関 わ っ て く る 。 そ れ は 、 白 人 と黒 人 に 分 割 さ れ た 植 民 地 状 況 で は な く、 そ の 両 者 の 間 を彷 裡 す る 「 患 者 」 の精 神 分 析 で あ り、 そ れ は (symptoms)」. 「植 民 地 的 状 況 の 徴 候(signs)と (バ ー バ 、1992:98)で. そ れ が 原 因 とな る病 的 な 症 状. あ り、 白 人 を希 求 しな が ら、 希 求 す れ ば す る ほ. ど パ ラ ノイ ア に 陥 っ て い く 黒 人 の 姿 が 描 か れ て い る 。 バ ー バ は フ ァ ノ ン の 作 品 の な か に 「同 一 性 の 内 部 に 潜 む 他 者 性 」 を次 の よ う に 読 み と っ て い る 。 「「 科 学 的」 な事実 が 街 での経験 によ って浸 蝕 され て くる。社 会学 的 な観察 が文 学 的な 技 巧 に よ っ て 中 断 され 、 解 放 の 詩 が 、 植 民 地 社 会 の 重 苦 し く、 衰 退 を 思 わ せ る 単 調 さ に対 抗 す べ く 、 不 意 に提 出 さ れ る の だ 」 (バー バ 、1992:98). 。. だ が、 フ ァ ノンは 「「 科 学 的 」 な 事 実 が 街 で の 経 験 に よ っ て 浸 蝕 され 」 な が ら も 、 ア ル ジ ェ リア の ブ リダ 病 院 を 辞 任 し、FLN(民 族 解 放 戦 線)で 活 動 を 開 始 しな が ら も 、 臨床 に 立 ち 、r地 に 呪 わ れ た る者 』 を 叙 述 し て い くの で あ る 。 ポ ス トコ ロニ ア ル な 状 況 は 「 今 な お 植 民 地 主 義 は 暴 虐 な る亡 霊 と し て う ろ つ い て い る」 と い う 認 識 を も つ こ と が 必 要 とな る で あ ろ う(崎 山 、1995;冨. 山 、1996)。 17.
(3) 三 田 社 会 学 第3号(1998). と こ ろで 、 フ ァ ノ ン の テ キ ス トと 同 時 代 的 に ア メ リカ で 出 版 され た ク ライ ド ・ク ラ ッ ク ホ ー ン の 『人 間 の た め の 鏡 』 (1949)と. 題 した 人 類 学 の 入 門 書 の な か に も 〈鏡 像 〉 を 発. 見 す る こ とが で き る 。 「 未 開 人 を研 究 す る と 、 わ れ わ れ 自 身 が よ りよ く理 解 で き る よ う に な る。 通 常 は わ れ わ れ は 、 自分 が 特 殊 な レ ン ズ を通 し て 人 間 の 生 活 を 見 て い る こ と に気 づ か な い 。 丁 度 、 魚 が 水 の 存 在 に 気 が つ か な い よ う な も の で あ る 。 同様 に 、 自 分 の 生 活 して い る社 会 の 地 平 か ら 抜 け 出 した こ と の な い研 究 者 に は 、 自分 自 身 の 思 考 を作 り上 げ て い る 習 慣 に 気 が つ く こ と は と て も望 め な い 。 人 間 を 研 究 す る 者 は 、 そ の 対 象 ば か りで な く見 る 目 に つ い て も知 らね ば な らな い 。 人 類 学 は 、 人 間 に対 して あ る 大 き な 鏡 を か か げ て 、 人 間 自 身 に 、 そ の 変 幻 き わ ま りな い姿 を 見 せ よ う とす る も の で あ る」 (傍 点 原 文) こ こ に は 、 異 文 化(other て 自 文 化(our. culture)を. culture)を. (ク ラ ック ホ ー ン 、1971:26)。. 理解 す る こと は 〈 鏡 〉 (=人 類 学)を. 媒介 と し. 理 解 す る こ と で あ る と い う 論 理 を 読 み とる こ とが で き る 。 渡. 辺公 三 によれ ば 、 「 鏡 と して の 人 類 学 」 と い う 比 喩 は 、 戦 後 の 文 脈 の な か で 形 成 さ れ た 、 人 類 学 の 「も っ と も新 し い 現 代 的 〈 創 設 神 話 〉 」 の 表 現 で あ り、 戦 後 の 人 類 学 が 「 民族 誌 的 〈 私 〉 を形 成 す る も の と して の 鏡 像 段 階 に 達 した と い う」 こ と で 、 「こ の 楽 天 的 な 鏡 像 と フ ァ ノ ン の あ る 切 迫 感 を 帯 び た 鏡 像 の 隔 た りが 、 人 類 学 そ の も の の 楽 天 的 な 思 考 態 度 を 象徴 す る もの で は な い こ と を願 わ ず に は い られ な い」 と危 惧 して い る(渡 辺 、1997:60)。 しか し、 この 楽 天 的 な 思 考 態 度 は 、 人類 学 だ けの 問 題 群で は な いだ ろ う。 こ れ は 、社 会 学 、 経 済 学 、 政 治 学 な ど の 隣 接 諸 学 問 に も共 通 す る 「 鏡 と して の 社 会 科 学 」 と い う 問 題 群 が あ る 。 例 え ば 、 日本 の 社 会 学 に お い て 、 「 色 メ ガ ネ 」 (=欧 米 諸 国 か ら輸 入 さ れ た 明 治 期 か ら最 近 ま で の 社 会 学 理 論)を. か け て 、 近 代 化(モ. ダ ナ イ ゼ ー シ ョ ン)と い う多 次 元 的 な 概. 念 を 媒 介 と して 、 〈 他 者 〉 及 び 〈自 己 〉 を 見 て き た と い う 問 題 群 が あ る(富 永 、1991)。 ま た 、 〈他 者 の 客 観 性 〉 と も 呼 ぶ べ き 視 点 は 、 ル ー ス ・ベ ネ デ ィ ク トの 『菊 と 刀 』 (1946)に. も マ ー ガ レ ッ ト ・ミ ー ドの 『サ モ ア の 思 春 期 』 (1928)に. も発 見 す る こ と が. で き る 。 こ こ で は紙 幅 の 関 係 で ベ ネ デ ィ ク トの 引 用 に と どめ る 。 「日本 につ い て 書 く 日本 人 は 、 本 当 に 重 要 な 事 柄 を、 そ れ が 彼 に と っ て 、 彼 が 呼 吸 す る 空 気 とお な じよ う に慣 れ き っ た 事 柄 で あ り、 眼 に つ か な い事 柄 で あ る た め 、 見 の が して し ま(い)._..国. 民 〔日本 人 〕 が 自 らの 世 界 観 を 分 析 す る こ と に 期 待 を か け る わ け に は い か. な い 」 (ベネ デ ィ ク ト、1967:12)。 この ア メ リカ の 著 名 な 人 類 学 者 を 引用 した の は 、 「 文化 相対 主 義」 が内包 す る 問題群 を 提 示 す る た め で あ る。 文 化 相 対 主 義 と は 「異 な る 文 化 を もつ 人 々 は 、 異 な る 世 界 に 住 む 、 異 な る 概 念 体 系 を も つ 、 経 験 を 異 な る 仕 方 で 組 織 して い る」 (浜 本 、1985:113)と. 定義. されて い るが、 その 論理 的な 帰結 は 、 「 異 文 化 理 解 は 不 可 能 で あ る 」 と い う こ と に な りか ね な い(太. 田 、1998,95-141)。. 逆 に 言 え ば 、 日本 の 社 会 科 学 が 、 欧 米 の 学 問 の 「 色メ. ガネ」 をか けて 、そ の覇権 構 造 のなか で 〈 他 者 〉 及 び 〈自己 〉 を 見 て き た と い う 問 題 群 が 18.
(4) 特 集1:社. 会 学 に お け る モ ダ ン と ポ ス ト ・モ ダ ン. あ る だ ろ う 。 これ は 日本 に お け る社 会 科 学 の ア イ デ ンテ ィ テ ィ の危 機 で も あ る 。 2.前. 近 代/近. 代/後 近 代. 酒井 直樹 は 、 前 近 代 と近代 とい う歴 史 ・地 政的 対 照 関係 が 、地 域 研 究(エ リア ・ス タ デ ィ ー ズ)の よ う な 学 問 分 野 で 、 言 説(デ ィ ス ク ー ル)を 組 織 す る た め の 重 要 な 装 置 と して 機 能 して き た こ と を示 唆 して い る 。 「 ポ ス トモ ダ ン あ る い は 後 近 代 は 、 そ の 用 語 が さ し示 す とお り、 近 代 に と っ て ひ と つ の 他 者 な わ け だ が 、 そ う した ポ ス トモ ダ ン をわ れ わ れ 自 身 が と らわ れ て い る 〈 近 代的 〉言 説 の 内 部 で 同 定 す る こ とは で き な い の で は な い か __後. 近 代 と近 代 とい う 区別 あ る い は 対 立. を 構 成 す る も の は何 か 、 さ ら に 、 近 代 を ひ と つ の 全 体 と して 考 え る う え で ど う して も必 要 な 〈 近 代 な らざ る もの 〉 、 非 近 代 、 と近 代 と の 対 立 と は 何 な の か を あ らか じめ 問 う て み る こ と は 、 あ な が ち 無 駄 な 作 業 と は い え な い だ ろ う。 同 時 に 、 後 近 代 だ け で な く 、 近 代 に対 立 す る も う ひ と つ の 非 近 代 との 対 照 で 近 代 は これ ま で 規 定 さ れ て き た の だ か ら、 こ こ で あ ら た め て 近 代 対 前 近 代 と い う 区 別 を も視 野 に 入 れ る必 要 が あ る の で は な い だ ろ う か 」 (酒 井 、 1996:3-4). 。. これ らの 言 説 装 置 を 通 じて 、 近 代/前 近 代 、 西 洋/非 西 洋 と い う二 項 対 立 の構 図 が 設 定 され た が 、 そ れ は 「西 洋 な る仮 想 さ れ た 同 一 性 」 を 定 立 す る た め で あ っ た 。 酒 井 は 「 西洋 な る神 話 」 を 創 造 した 社 会 学 者 のハ ー バ ー マ ス を 次 の よ う に 批 判 して い る 。 「一 方 で 西 洋 を 眼 に見 え る も の と す る 鏡 と して の 非 西 洋 が 必 要 で あ る と認 め な が ら も 、 他 方 で そ の よ う に して 報 告 者 に よ っ て 提 供 され た 非 西 洋 文 化 の 鏡 が 実 は 多 くの 曇 りを も っ た も の で あ る か ど うか は ま っ た く問 わ な い の で あ る 。 彼 の も と に 届 け られ た 鏡 は 、 民 俗 学 者 や 人 類 学 者 の 異 国 趣 味 の 産 物 にす ぎ な い の か も しれ な い の だ 。 __ハ て 、 共 約 不 可 能 性(in comme. nsurability)は. せ いぜ い文化 欄. ー バー マ ス に とっ 主義 と い う、そ れ 自身が. ニ セ の 問 題 を 意 味 す る に す ぎ な い の で あ る 」 (酒井 、1996:7-8)。 ここには 、 「 鏡 と して の 人 類 学 」 と い う 比 喩 との 類 縁 関 係 を 読 み と る こ とが で き る と 同 時 に 、 文 化 相 対 主 義 が 最 も忌 み 嫌 うは ず の エ ス ノ セ ン ト リ ッ ク(自 民 族 中心 的)な 発 想 が 忍 び こ ん で い る の で あ る 。 明 治 期 の 進 歩 史 観 の 導 入 に 始 ま り 、1930年. 代 以 降 の京 都学 派 の知 識 人 た ち の 西 洋/非 西 洋の 関 係 性 を め ぐ る議 論 を経 て 、 戦 後 期 の いわ ゆ る 「 近代化 論」. 及び 「 地 域 研 究 」 と い う系 譜 に は 、 〈 鏡 〉 を媒 介 と して 、 〈 我 々〉 と 〈 他 者 〉 と い う対 比 の 軸 と、 〈 近代 〉 〈 前近 代〉 〈 非 近 代 〉 と い う非 対 称 的 な 対 比 との 軸 と が 交 差 して い る. 。 例え ば、 「 近代化 論」で は、 「 近 代 化」 と は 「ヨー ロ ッパ 化 」 と同 一 視 され て い た もの を 、 「ア メ リカ 化 」 と同 一 視 す る こ と と地 政 的 に 移 行 させ る こ と で 、 〈 我 々〉 と 〈 他者 〉 の表 象 を め ぐ る位 相 を 変 化 させ て き た の で あ る。 ま た 、 「 地 域 研 究 」 は 、 第2次 世 界 大 戦 後 、 ア メ リカの国 際 関係論 の なか で、 「 エ リア ・ス タ デ ィ ー ズ 」 と い う こ と ば で 使 わ れ た も の で あ る が 、 「日本 研 究 」 「ア フ リカ研 究 」 「ア ジ ア 研 究 」 な どの よ う に 、 各 国 別 、 各 地 域 19.
(5) 三 田 社 会 学 第3号(1998). 別 の研 究で あ って、. 〈他 者 〉. (=特. 定 の 民 族 、 国 、 地 域)に. の 総 合 的 な 理 解 を 目 的 と した もの で あ っ た 。 特 に 、 い て は 、 最 近 に な っ て 、 文 化 研 究(カ に よ る 論 文 が あ る(成. つ いて の. 「学 際 的 」 と い う 名. 「日 本 研 究 」 に み ら れ る 言 説 装 置 に つ. ル チ ュ ラ ル ・ス タ デ ィ ー ズ)の. 田 ・フ ジ タ ニ ・酒 井 、1995;ハ. 対談 、鼎談 等 の形 式. ル ト ゥ ー ニ ア ン ・酒 井 、1997)。. 地 域 研 究 の 在 り方 も ま た 脱 中 心 化 、 脱 本 質 化 の な か で 再 検 討 さ れ る べ き で あ ろ う 。. 3.ジ. ェ ン ダ ー と エ ス ニ シテ ィ. ポ ス トコ ロニ ア ル な 知 識 人 の ひ と りで あ る ア リ ・ラ タ ン シ は 、植 民 地 的言 説 に お け る ジ ェ ン ダ ー と セ ク シ ュ ア リ テ ィ に つ い て 、 次 の よ う に 記 述 して い る 。 「 非 ヨ ー ロ ッパ の 〈 他 者 〉 と そ の 空 間 が 、 選 択 され て 女 性 化 さ れ 、 ヨー ロ ッパ 人 に よ る 侵 入 と領 有 、 従 属 化 を正 当 化 す る......この 女 性 化 に よ っ て 、 〈 他 者 〉 は 隠 喩 的 に も喚 喩 的 に も 女 性 的 な もの と して 構 築 され る 。......これ と対 照 的 な の が 、 今 度 は 〈 他 者 〉 の 男 を相 応 しい 男 性 性 が 欠 け た 存 在 と して 描 き 出 す 言 説 で あ る 。_...こ の よ う な 男 ら し さ 、 女 ら し さ の構 築 は 、 「 本 国 」 に お い て も植 民 地 に お い て も 、 性 的 な 差 異 が 文 化 的 、 政 治 的 に 再 構 築 さ れ る プ ロ セ ス の 一 部 で あ っ て 、 〈ウ ェ ス ト〉 と 〈レ ス ト〉 と が 編 成 され る さ い の 複 雑 な 相 関 関 係 を示 して い る 」 (ラ タ ン シ 、1996:41)。 ラ タ ン シ は帝 国 主 義 や 植 民 地 政 策 な ど の 植 民 地 的 言 説 に み られ る 「 セ クシュ ア ライゼー シ ョ ン」 の 現 象 を読 み と っ て い る 。 裸 体/衣 服 、 口承 文 化/書 承 文 化 、 技 術 的 な 停 滞/テ ク ノ ロ ジ ー の 進 歩 等 な どの 二 項 対 立 は 、 「ジ ェ ン ダ ー 」 と 「 セ ク シ ュ ア リテ ィ」 の 政 治 化 に よ っ て 構 築 さ れ て き た(和. 田 、1995;中. 村 、1997)。. これ は 、 非 西 洋 社 会 と い う 〈 他. 者 〉 の 文 化 を否 定 す る こ とで 、 未 開 ある い は 野 蛮 と み なす こ と で 〈自己 〉 を規 定 して き た 、 と同 時 に 、西 洋 社 会 の な か に未 開 的 な る も の 、野 蛮 な る も の と して の 〈 他 者 〉 を見 い だ し 、 それ ら を周 縁 化 す る こ とで 〈 自己 〉 の中 心 化 をは か っ て き た 。 この イ メー ジ は 、 「 探検 記」 「 旅 行 記 」 「民 族 誌 」 等 に掲 載 さ れ た 絵 画 、 版 画 、 写 真 とい う虚 構 の 〈 鏡 〉 を 媒 介 と して オー セ ン テ ィ ッ ク に視 覚化 され て きた(Edward. s,1992;Kuklick,1991;St㏄. ジ ェ ン ダ ー と 同様 に 、 エ ス ニ シ テ ィ 、 人 種 主 義(レ. ㎞g,1987)。. イ シ ズ ム)の な か に も未 開/文. 明の. 世 界 観 が 浮 き彫 りに な る だ ろ う。 そ の 場 合 に 問 題 とな る の は 「 部 族 」 と い う概 念 で あ る 。 例 え ば 、 新 聞 報 道(最 だ が__)で. も こ れ は 社 会 科 学 に お け る 民 族 問 題 を 扱 った 学 術 書 に もみ られ る の. は 、 ヨ ー ロ ッパ に関 して は 「民 族 紛 争 」 とか 「 民 族 対 立 」 と論 述 され る が 、. ア フ リカ の民 族 紛 争 の 事 例 とな る と、 そ れ が 「 部 族 抗 争 」 とか 「 部族 対立」 と論述され る。 言 い 換 え れ ば 、 暗 黙 の うち に、 西 洋 社 会 で は 「 民 族 対 立 」 を も ち い て 、 非 西 洋 社 会(特 に 、 ア フ リカ 社 会)で. は 「 部 族 対 立 」 を もち い て 使 い分 け が 採 用 さ れ て い る。 こ の コ ンテ ク ス. トで は 、 ア フ リ カ を 「 未 開 」 と い う西 洋 社 会 の 視 点 か ら 、 ア フ リ カ の 民 族 紛 争 を モ ダ ンで は な い遅 れ た も の と して 「 部 族 対 立 」 と記 述 さ れ る の で あ る(松 田 、1998:17-20)。 こ に も植 民 地 的 言 説 を読 み と る こ とが で き る。 ま た 、 こ の よ うな 発 想 は 、 構 造=機 20. こ 能主 義.
(6) 特 集1:社. 的 な 諸 学 問 領 域(人 類 学 、 社 会 学 、 比 較 政 治 学 等)に. 会 学 に お け る モ ダ ン と ポ ス ト ・モ ダ ン. も踏 襲 され て き た 。 こ こ に は 〈 他者 〉. を見 る 「 色 メ ガ ネ 」 を 愛 用 す る こ と で 、 境 界 の あ る 確 固 と した 「 部 族 の ま と ま り」 が あ る と 認 識 して き た 植 民 地 支 配 の 虚 構 が 見 え 隠 れ して お り、 そ の 後 の 脱 植 民 地 化 の 状 況 の な か で も、 〈 他 者〉 を見 る新 しい 「 色 メ ガ ネ 」 (=シ ス テ ム 理 論)の. な か に も い き続 け る こ と. に な った 。. 4.. 〈 文化 〉 の脱 中心化 、脱本 質化. 姜 尚 中 は 、 『オ リエ ン タ リズ ム の 彼 方 へ 一 近 代 文 化 批 判 』 の な か で 、 サ イ ー ドの オ リエ ン タ リズ ム 批 判 を受 け て 、 次 の よ うな 最 も根 源 的 な 問 題 を提 起 して い る 。 「〈 他 者 〉 と は 何 な の か 、 そ れ は ど の よ う な 言 説 や 制 度 的 実 践 の働 き を 通 じて ね つ 造 さ れ る の か 、 また 〈 他 者〉 との関係 依存 性 のな かで で きあが る アイデ ンテ ィテ ィ とは何 なの か 、 と い う こ と だ 。 そ れ は 、 具 体 的 に は メ トロポ リ タ ン的 な 文 化 と 、 周 縁 的 で 脱 中 心 的 な 文 化 の 表 象 との か か わ り を 問 う こ と な の だ 」 (姜 、1996:4)。 文 化 人 類 学 は 、 エ リ ッ ク ・ホ ブ ズ ボ ウ ム とテ レ ン ス ・レ ン ジ ャ ー の編 集 に よ る 『創 られ た 伝 統 』 (1983)に よ っ て 、 伝 統/近 代 と い う 二 項 対 立 関 係 を揺 る が す 衝 撃 を 受 け た 。 そ れ は 、 い か に 伝 統/伝. 統 的 な る もの が 近 代 の 言 説 装 置 の な か で 政 治 的 な 意 図 に よ っ て 創. られ た も の で あ る の か を 暴 露 し て い る(Hobsbawm. and Ranger. ,1983)。 さ らに、 そ の 代 後 半 か ら1990年 代 初 期 に か け て 、 『オ リエ ン タ リズ ム 』 以 降 隆 盛 して き た 「 ポ ス トコ ロ ニ ア ル 理 論 」 と呼 ば れ る 「 異 文化 理解 の メタ理 論」 で. 衝 撃 が 最 も強 か っ た の は 、1980年. あ る 。 ポ ス トコ ロニ ア ル 理 論 は 、 異 文 化 理 解 を 中心 とす る文 化 人 類 学 を 西 欧 の植 民 地 主 義 と と も に 隆 盛 し た 学 問 で あ る と して 批 判 す る こ と に 主 眼 が お か れ て い る 。 太 田好 信 は 、 ポ ス トコ ロニ ア ル 批 判 の な か で 、 「日本 に お い て 文 化 人 類 学 を 学 ぶ 意 義 とは 何 か 」 を 問 い か けて い る。. 「 文 化 人 類 学 は欧 米 を 中心 に 、 (多 くの 場 合)英 語 を学 術 用 語 とす る学 問 と して 制 度 化 され て い っ た 。 これ は 文 化 人 類 学 の グ ロ ー バ ル 化 に見 え る か も しれ な い。 だ が 、 実 際 は 学 問 が 国 家 ・言 語 ・文 化 複 合 体 内 部 で 完 結 して し ま っ た 結 果 な の で あ る。__欧. 米 理 論 の盲 目的 な 追 従 や 模 倣 は 、 こ れ ま で も何 度 と な く批 判 さ れ て き た 。 しか し、 そ れ は 、 あ る世 界 と も う ひ と つ の 世 界 を 結 び つ け よ う と す る グ ロー バ ル な プ ロセ ス で もあ る 。 そ して 、 そ こ で は 翻 訳 がキ ー ワ ー ドと して機 能 す る。 覇 権 を握 る社 会 に お い て 制 度 化 され た 学 問が グ ロ ー バ ル に 広 が る よ りは 、 この 翻 訳 を と お して 世 界 が 連 結 す る ヴ ィ ジ ョン に 、私 は 賛 同 す る 。 __文 化 人 類 学 と い う 学 問 は 、 欧 米 の 文 化 人 類 学 が 世 界 規 模 で 伝 播 す る プ ロ セ ス を グ ロ ー バル 化 と して 誤 認 し、 そ の 結 果 、 学 問 の 均 質 化 が 進 行 す る と い う 「 悲 劇 的(ト プ ロ ッ ト」 に も と つ い た 物 語 に よ っ て 文 化 を 語 ろ う と す る 」 304-305). ラ ジ ッ ク な). (太 田 、1996:286,. o. このような欧米 を中心 とす る学問体系の覇権構造 に対する問題提起 は何 も文化人類学だ 21.
(7) 三 田 社 会 学 第3号(1998). け で は な い だ ろ う。 これ は 日本 に お け る 社 会 科 学 全 般 に 通 じる こ とで あ ろ う。 「トラ ン ス ポ ジ シ ョ ン」 の 射 程 か ら 、 い か に新 し い学 問 の 可 能 性 を模 索 す る か にか か っ て い る 。 文 献 バ ー バ,H.K.1992. 「フ ァ ノ ン を 想 起 す る こ と 一 自 己 ・審 理 ・植 民 地 的 状 況 一 」 (田 中 聡 志 訳). [イ マ ー ゴ]』3(7)、96-110頁 ベ ネ デ ィ ク ト,R.1967 ク ラ ッ ク ホ ー ン,C.1971. 『文 化 人 類 学 の 世 界 』. 『地 に 呪 わ れ た 者 』. 1970 1985. Hobsbawm,E.. 1997. 1996. The. University 1998. 1997. 149-181頁. The. Inven tion of Tradition,Cambridge. Savage. Within:The. Social. 1996. ラ タ ン シ,A.1996 頁 、870,110-140頁 1996. サ イ ー ド,E.1986. 「文 字 と い う 文 化 」. British. Anthropology,1885-1945. 『現 代 ア フ リ カ の. 第10巻. 神 話 と メ デ ィ ア』 岩 波 書 店 、. 1995. 1991. 1995. 「討 議. ア メ リカ の. 「日 本 」 、 ア メ リカ か ら の 声 」 『現. 。 『岩 波 講1座文 化 人 類 学. 第12巻. 思 想化 さ れ. 。. 『トラ ン ス ポ ジ シ ョ ン の 思 想 』 世 界 思 想 社 。 「人 種 差 別 主 義 と ポ ス トモ ダ ニ ズ ム(上. ・下)」. (本 橋 哲 也 訳)『. 思 想 』868,31-54. 。 『死 産 さ れ る 日本 語 ・日本 人 一 「日 本 」 の 歴 史 ・地 政 的 配 置 』 新 曜 社 。 『オ リエ ン タ リズ ム 』. (今 沢 紀 子 訳)平. 「暴 力 の 重 ね 書 き を 再 読 す る 一r地. て 一 」 『現 代 思 想 』23(6),104-119頁. 凡社 。. に 呪 わ れ た 者 』 の フ ァ ノ ン の あ らた な 可 能 性 に 向 け. 。. An throplogy,The. Free. Press.. 「日 本 の 近 代 化 と 欧 米 の 社 会 学 思 想 一 日 本 の 精 神 的 近 代 化 過 程 の 一 側 面 」 『思 想 』808、. 。. 冨 山一 郎. 1996. 「対 抗 と遡 行 一 フ ラ ン ツ ・フ ァ ノ ン の 叙 述 を め ぐ っ て 」 『思 想 』866、91-113頁. 渡辺公 三. 1997. 「人 種 あ る い は 差 異 と して の 身 体 」 『岩 波 講i座文 化 人 類 学. 岩 波 書 店 、31-66頁. 22. ,. 。. 『岩 波 講 座 文 化 人 類 学. 「ポ ス トコ ロ ニ ア ル 批 判 を 越 え る た め に 」. Stocking,G.W.Jr.,1987,Victorian. 4-38頁. of. 。. 1998. 富 永健 一. His tory. 「民 族 対 立 の 社 会 理 論 一 ア フ リカ 的 民 族 編 成 の 可 能 性 一 」 武 内 進 一 編. る 周 辺 世 界 』 岩 波 書 店 、283-307頁. 崎 山政 毅. U nivers ity Press. Press.. 代 思 想 』23(9)、8-37頁. 酒井直樹. す ず 書 房。. 。. 『創 られ た 伝 統 』 紀 伊 國 屋 書 店 、1992]。. 成 田 龍 一 、 タ カ シ ・フ ジ タ ニ 、 酒 井 直 樹. 太 田好 信. Press.. す ず 書房 。. (海 老 坂 武 ・加 藤 晴 久 訳)み. 紛 争 を 理 解 す る た め に 』 ア ジ ア 経 済 研 究 所 、15-39頁 中村雄祐. 談社 。. University. 『オ リ エ ン タ リ ズ ム の 彼 方 へ 一 近 代 文 化 批 判 一 』 岩 波 書 店 。. Kuklick,H.,1991,. 松 田素 二. 1860-1920,Yale. 「〈 対 談 〉 日 本 研 究 と 文 化 研 究 」 『思 想 』877、4-53頁.. and]Zanger,T.(eds.),1983,. Cambridge. (外 山 滋 比 古 ・金 丸 由 雄 訳)講. (鈴 木 道 彦 ・浦 野 衣 子 訳)み. r黒 い 皮 膚 ・白 い 仮 面 』. [前 川 啓 治 ・梶 原 景 昭 他 訳 尚中. 会思 想 社 。. 「文 化 相 対 主 義 の 代 価 」 『理 想 』626、105-121頁. ハ ル ト ゥ ー ニ ア ン,H.・ 酒 井 直 樹. 姜. (長 谷 川 松 治 訳)社. An thropology&Photography. フ ァ ノ ン,F.1969. 浜 本満. 。. 『菊 と 刀 』. Edwards,E.(ed.),1992,. 『imago. 。. 第5巻. 。. 民族 の 生成 と論 理 』.
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