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グローバリゼーションの第2フェーズ 21世紀初頭の10年は

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グローバリゼーションの第

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フェーズ

21

世紀初頭の

10年は、グローバリゼーションの第 1フェーズだった。1995

年の世界 貿易機関(WTO)設立は、インターネットが民間で広まり始めた時期とほぼ一致する。

2001

年には中国がWTOに加盟した。国際的にモノ・サービス・情報が自由に行き来 する条件が整い、その

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年間は、国際貿易の伸びが世界の国内総生産(GDP)の伸び を上回った。貿易の進展により、国際的生産ネットワーク(グローバル・バリュー・チ ェーン、GVC)が進化し、GVCに組み込まれた中国や東南アジアの経済は活性化した。

その潮流は、トランプ米政権の登場で一変する。トランプ大統領は、自らを「関税 男」と名乗り、メキシコとの国境に壁を作ることにこだわり、環太平洋パートナーシ ップ(TPP)を離脱し、北米自由貿易協定(NAFTA)を見直し、米中貿易戦争を仕掛 けた。米中という

2大経済大国の貿易戦争は、当然ながら他国を巻き込む。GVCに組

み込まれた国々は、否応なしに米中対立への対応を求められている。

トランプ政権の誕生は、2008年の世界金融危機を発端とするグローバリゼーション の変質によるところが大きい。金融危機からの今日に続く年月はグローバリゼーショ ン第

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フェーズと言えよう。金融危機は特にヨーロッパに大きな影響を与えた。南欧 経済は大きく落ち込み、好調なドイツなどとの経済格差が表面化した。片やアメリカ では、富が上位1%に集中しているとして「ウォール街を占拠せよ(Occupy Wall Street)運 動」が起こった。国際貿易の進展に代表されるグローバリゼーションは、富の集中を 生んだ元凶として、一転して非難の対象となったのである。欧米諸国のこうした現象 は、グローバリゼーションへの反発、排他的思考の広がり、ポピュリズムの台頭につ ながり、ブレグジット(欧州連合〔EU〕離脱)を招き、トランプ政権を生んだ。

成長のエンジンとしての国際貿易

国際貿易や海外直接投資は各国の成長の源泉となってきた。WTO加盟後の中国が 好例だ。中国や高度成長期の日本のように、輸出に牽引されて成長するだけが貿易の 利益ではない。そもそも貿易の目的は財やサービスの輸入である。しばしば批判の対

国際問題 No. 689(2020年3月)

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◎ 巻 頭 エ ッ セ イ ◎

Furusawa Taiji

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象ともなる

GAFA

(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)が供給する先端サ ービスは、間違いなくわれわれの生活を豊かにした。さらに、国境を越えた取引や活 動は、知識の国際伝播を促し、企業間の競争を活発化し、消費者に利益をもたらして いる。

グローバリゼーションへの風当たりは強くなるばかりだが、国際貿易から利益を得 る状況はすでに過去のものになったのだろうか? 人々は「国際貿易は利益を生まな い」と決めつけ、反グローバリゼーションに傾いているのだろうか?

そうではないだろう。情報通信技術(ICT)革命により、特にサービス貿易から得 る利益が大きくなった。国際貿易が大きく進展し、利益も大きくなった反面、その負 の部分も大きくなったということだろう。国際貿易の進展は多くの国の産業構造を変 え、多くの人が職を失い、そして新たな職を得た。新たな職を得られなかった人は長 期間失業したり、あるいは求職活動もやめ労働人口から抜け落ちたりした。第

4次産

業革命とも言われる

ICT革命に牽引された産業構造の変化は、グローバリゼーション

との相乗効果により、デジタルハイテク企業に従事する人たちの所得を飛躍的に伸ば した反面、コンピューターや産業機械に代替されがちな中間所得層を置き去りにした。

グローバリゼーションの負の面にどう向き合うべきか

グローバリゼーションは、人々を豊かにしたが所得格差も拡大させた。所得格差を はじめとする負の面を緩和し、グローバリゼーションの果実を少しでも多くの人に配 るにはどうすればよいのだろう。

国内的には、まずは柔軟な産業構造への転換を図ることだろう。国際貿易は自然な 経済活動であり、その進展を止めることはできない。保護主義的貿易政策・産業政策 により、国際貿易の国内産業への影響を一時的に遅らせることは可能だが、大きな流 れに抗い続けることはできない。したがって、経済の自然な流れに従って産業構造が 柔軟に変化する社会経済体制を築くことが求められる。

産業構造の変化に対応を迫られるのは労働者だ。伝統的には、国際貿易は、その国 が相対的に豊富にもつ生産要素(日本の場合は資本や人的資本)に対する実質報酬を上 げ、稀少な生産要素(日本の場合は労働)への実質報酬を下げるとされる。国際貿易 は全体としては実質所得を増やすので、すべての人の実質所得を増やすには、すべて の人が同じようにそれらの生産要素を保有していればいいことになる。人々が等しく 金融資産をもち、高等教育を受けられるよう、誘導していくべきだろう。一般論とし て、多様性は重要だ。しかし、生産要素保有に多様性がある場合は、勝者から敗者へ の補償が必要となる。こうした補償は不完全になりがちだし、完全な所得補償が行な われたとしても、所得さえ補償されればよいというものでもない。所得補償のように 事後的な再配分によるのではなく、生産要素保有の事前的再配分によって、国際貿易

巻頭エッセイ国際貿易をめぐる環境はどう変わっていくのか

国際問題 No. 689(2020年3月)

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の利益を人々に均等に分配するのが肝要だろう。

国際的努力も重要だ。すべての国は、WTO下の国際ルールにのっとり行動するこ とが求められる。ドーハ開発ラウンドの停滞は、多角的貿易自由化交渉の難しさを印 象付けたが、紛争処理メカニズムはWTOの最も重要な機能のひとつであり、このメ カニズムを維持することが大切だ。加盟国は、必要な改革を行ないながら、WTO体 制の維持を図らなくてはならない。

政治に翻弄される国際貿易

国際貿易はしばしば国際政治に翻弄されてきた。1929年に起きた世界恐慌と前後 し、アメリカをはじめとする諸国が輸入関税を大幅に引き上げた。1980年代の日米貿 易摩擦では、自動車や半導体などの貿易に政府が関与した。そして今また、トランプ 政権が仕掛けた米中貿易戦争が起こり、日韓それぞれが輸出管理におけるホワイトリ スト国からお互いを排除するという日韓経済問題が発生した。

トランプ政権は、2018年、対中国の大幅な貿易赤字と中国による外国企業への技術 移転強要を問題視し、太陽光パネルや鉄鋼・アルミなどの対中国関税を引き上げ、両 国は貿易戦争に突入した。ここでトランプ政権は

2つの大きな間違いを犯した。まず

はその目的だ。トランプ政権は、アメリカが多大な貿易赤字を抱えるのは悪いこと で、それは、アメリカが中国や日本、そしてドイツといった対米黒字を抱える国に搾 取されているからだと考える。しかし、アメリカの貿易赤字はアメリカの過少貯蓄と コインの表裏であり、ましてや二国間の貿易不均衡は問題視されるべきものではな い。もうひとつは、経済活動の現状をアメリカのもつ経済的・軍事的な力で変更しよ うとしていることである。国際貿易だけでなく、経済活動をめぐるあらゆる国際ルー ルは、大国にとって都合がいいように力ずくで変更されるべきではない。

日韓経済問題はどうだろう。こちらのきっかけは徴用工などの問題をめぐる二国間 の政治的デッドロックだ。政治的に解決が難しくなったので、経済制裁を加え状況を 打開しようとするのは感心できない。また、貿易措置を隠れ蓑にし、膠着状態にある 政治対話から一息つこうとしているようにもみえる。

米中貿易摩擦と日韓経済問題は、いずれも貿易が制限され経済に悪影響を与えると いう共通点をもつが、経済活動の現状を変えようとして始まった貿易摩擦は大国の都 合がいいように通商ルールが変更される危険性をもつのに対し、政治的問題から始ま った貿易摩擦は問題解決後は以前の経済状態に戻るだろう。その意味で、後者のほう がまだ許容範囲にあると考えられる。

国際貿易の行方

米中貿易摩擦、日韓経済問題、WTOの機能不全など、今日の国際貿易をめぐる環

巻頭エッセイ国際貿易をめぐる環境はどう変わっていくのか

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境は必ずしもよいものではない。国際貿易はこれからどうなっていくのだろうか?

環境は好転するのだろうか?

国際貿易は、すべての国に利益を与えるとても自然な経済現象である。政治はそこ に介入し一時的に影響を与えることはあっても、流れを変えることはできない。した がって、国際貿易をめぐる環境はいずれ好転していくのではないか。貿易への政治介 入は、トランプ氏個人の信条から端を発している。何年後になるかわからないが、ト ランプ氏の任期終了とともに、政治介入は収束していくのではないか。「トランプ政 権の誕生は原因ではなく結果である」とよく言われる。確かにトランプ政権後も、米 中の対立は残るだろう。また、中国がトランプ政権のように、力で経済秩序の変更を 迫るようになるかもしれない。しかし、アメリカや中国は、国際貿易の恩恵を受けて 発展してきたわけで、国際貿易の大幅な縮小を望むとは考えにくい。

国際貿易が将来それほど政治に翻弄されなくなるだろうと考える理由はほかにもあ る。人工知能(AI)の急速な発展である。かなり広範にわたる仕事が、AIによって人 から置き換わるだろうと言われている。機械化で恩恵を受けたホワイトカラーが今回

AIの標的だ。AIが多くのことを人並みかそれ以上にできるようになれば、産業構

造の大幅な変化は避けられない。リチャード・ボールドウィン(2019)は、AIと遠隔 知能(RI: Remote Intelligence)に先進国の職は脅かされるようになるだろうと語る(RI はICT革命によって可能になる途上国の人たちによるテレワークを指す)。そしてその変革 は、大激変をもたらすと予想する。この激変に比べれば、貿易による国内産業への影 響は微々たるものだ。政治家は、AI革命が引き起こす変化に対応することで手一杯に なるだろう。

■参考文献

リチャード・ボールドウィン(2019)(高遠裕子訳)『グロボティクス:グローバル化+ロボッ ト化がもたらす大激変』(原著=Richard Baldwin, The Globotics Upheaval: Globalization, Robotics, and the Future of Work、日本経済新聞出版社。

巻頭エッセイ国際貿易をめぐる環境はどう変わっていくのか

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ふるさわ・たいじ 東京大学大学院教授 http://www.furusawa.e.u-tokyo.ac.jp/home/

Referensi

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Morison ) で あ る6。 ジ ョ ン ソ ン は「旋 回」(The Turn),「逆旋回」(The Counter turn),「静止」(The Stand)という名称を用いてト ライアッド形式を採用したが,これが他の詩人に広がることはほとんどなかった。 英国独自のピンダリック・オードを確立したのは,エイブラハム・カウリー (Abraham

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