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プロアントシアニジンオリゴマーの生物活性 - J-Stage

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620 化学と生物 Vol. 54, No. 9, 2016

プロアントシアニジンオリゴマーの生物活性

ブドウ残渣の有効活用に向けて

プロアントシアニジン類は,ブドウの果皮や種皮,小 豆や黒豆の皮,カカオなどの食品素材に含まれ,抗酸化 活性をはじめとして抗腫瘍,動脈硬化抑制,胃潰瘍抑制 など広範な生物活性が報告されている.特に動脈硬化抑 制に関しては,2006年にCorderらが南西フランス産の 赤ワインがアテローム性動脈硬化に有効であり,長寿と の関連性を 誌に報告した.この論文はフレンチ パラドックスの解明につながる成果としてたいへん注目 を浴びた.赤ワイン中の有効成分としては,エピカテキ ン3〜5量体のガレートとされている.作用機作として は,血管内皮細胞に存在するendothelin-1を阻害するこ とで血圧の上昇を防ぐとされている(1)

一方,抗腫瘍活性に関しては,2003年にKozikowski

らがエピカテキンの2〜8量体を合成し,5量体以上のオ リゴマーに活性があることを報告している(2)

.以上のよ

うにプロシアジンの生物活性においては2量体のような 低分子ではなく,ある程度の重合度を有するオリゴマー に活性があると報告されていることはたいへん興味深い 現象である.

われわれは,ヒト前立腺がん細胞PC-3における抗腫瘍 活性とがん転移原因遺伝子であるFABP5(Fatty acid  binding protein 5)の発現抑制活性を指標として(3)

さま ざまな食品素材のスクリーニングを行った.その結果,

顕著な活性を示す食品素材としてブドウの梗(シャルド ネ)にたどり着いた.ブドウの梗はいわゆる食品残渣で あり,その有効利用という側面でも重要である.

図1ブドウ梗抽出物の前立腺がん細胞における 発現抑制活性と細胞増殖抑制活性

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化学と生物 Vol. 54, No. 9, 2016

ホモジナイズしたブドウの梗を熱水で抽出し,各種クロ マトグラフィーで精製をした.抽出物を悪性度の高いヒ ト前立腺がん細胞PC-3を用いて,調製した成分を培地に 濃度別に添加し,48時間培養後に全RNAを抽出した.標 的分子(FABP5)および内因性コントロール(GAPDH)

について,定量RT-PCR法による解析を行い,

遺伝子の発現を抑制する成分を探索した(図

1

.その

結果,顕著な活性を示す成分を見いだした.活性を示し た成分の最も重要な課題は構造決定であった.まず,核 磁気共鳴装置(NMR)を用いて1Hおよび13C NMRを 測定した.しかし,1H NMRにおいてはピークのブロー ド化により構造決定は困難を極めた.測定温度を−70 から70 Cに変えてもブロード化は解消されなかった.

13C NMRにおいてもピーク強度の問題で,なかなかい いスペクトルは得られなかったが,ケミカルシフト値よ り,フラバン-3-オールの重合体であることが推定され た.標的化合物はフラバン-3-オールの重合体であるとい う予想がついたので,次に水酸基を誘導体化,具体的に はメチル化やアセチル化を行った.ところがこの化合物

は不溶性が高く,反応に用いた溶媒にほとんど溶けな かったために誘導体化は断念した.次なる手段は質量分 析 で あ っ た.種 々 測 定 条 件 を 検 討 し た が,ESI-LC- TOFMS法により分子量は2,475.54(M+H)と決定で き,精密質量(理論値:2,475.5364,実測値:2,475.5425,

誤差:2.4 ppm)も得ることができた.HPLCにおける 合成したエピカテキンオリゴマーとのリテンションタイ ムの比較,比旋光度およびESI-LC-TOFMSにおけるフ ラグメントなどを詳細に検討した結果,基本骨格がエピ カテキンの8量体でそのうち一つがエピガロカテキンで あり,ガレート基を一つ有する構造であることが推定さ れた.ただ,NMR法が役に立たないことで,エピガロカ テキンとガレート基の位置は正確には不明である(図

2

本化合物は 遺伝子の発現を顕著に抑制するだ けでなく,細胞増殖も抑制した.また,アポトーシスの 誘導,さらに細胞骨格系遺伝子の発現を抑制し,細胞形 態を変える活性も有していることがわかった(4)(図1)

このようにプロアントシアニジンの比較的重合度の高 いオリゴマーに顕著な抗腫瘍活性が見られるのはたいへ ん興味深い現象である.一般に,重合度の高い高分子化 合物は腸管などからは吸収されないと考えられており,

活性発現のメカニズムの解明が待たれている.そのため には重合度選択的な化学合成が不可欠であり,それが達 成されれば標的タンパク質や生体内での動態などが明ら かになると考えられる.特に重合度の高いプロアントシ アニジン類が活性を示す場合が多く,筆者らは新たな合 成法の開発を急いでいる.しかし,この実現には大きな 壁がある.たとえば構造解析では,多数のアトロプ異性 体や高分子化による不溶化など,NMRでの解析はたい へんな困難を伴うことが予想される.したがって,今後 は新たな構造解析の手段も開発する必要がある.重合度 の高いプロアントシアニジンの研究をさらに進めるに は,現存の方法にはない新規な方法論の開発が必要とな るに違いない.複雑な構造を有する重合度の高いプロア ントシアニジン類を重合度選択的に合成することが可能 になれば,生命科学分野をはじめとしたさまざまな分野 に波及効果をもたらすことが期待でき,新たな科学の発 展につながることが期待される.

  1)  R.  Corder,  W.  Mullen,  N.  Q.  Khan,  S.  C.  Marks,  E.  G. 

Wood, M. J. Carrier & A. Crozier:  , 444, 566 (2006).

  2)  A. P. Kozikowski, W. Tückmantel, G. Böttcer & L. J. Ro- manczyk Jr.:  , 68, 1641 (2003).

  3)  E. A. Morgan, S. S. Forootan, J. Adamson, C. S. Foster,  図2ブドウの梗から単離されたプロアントシアニジンオリゴ

マー(ガロ基とガレート基の位置は未決定)の推定構造

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622 化学と生物 Vol. 54, No. 9, 2016 H.  Fujii,  M.  Igarashi,  C.  Beesley,  P.  H.  Smith  &  Y.  Ke: 

32, 767 (2008).

  4)  H.  Fujii,  S.  Kawahara  &  H.  Makabe:  PCT  Int.  Appl. 

(2013), WO 2013081046 A1 20130606.

(真壁秀文

*

1

,河原誠一 *

2

,藤井 博 *

3

, *

1 信州大学大 学院農学研究科機能性食料開発学専攻,

*

2 株式会社サ ンクゼール生命科学研究室,

*

3 信州大学先鋭領域融合 研究群バイオメディカル研究所)

プロフィール

真壁 秀文(Hidefumi MAKABE)

<略歴>1992年東北大学農学部農芸化学科 卒業/1994年同大学大学院農学研究科農芸 化学専攻博士課程前期修了/1997年同大学 大学院農学研究科農芸化学専攻博士課程後 期修了,博士(農学)/1997年日本学術振興 会 海 外 特別 研究員(米国Purdue大 学)/

1999年信州大学農学部応用生命科学科助手 

/2001年同大学大学院農学研究科機能性食 料開発学専攻助教授/2007年同大学大学院 農学研究科機能性食料開発学専攻准教授 2011年同大学大学院農学研究科機能性食料 開発学専攻教授,現在に至る<研究テーマと 抱負>生理活性天然物の合成,有機金属化 学を用いた新規反応の開発<趣味>風景写 真,自然散策<所属研究室ホームページ>

http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/agri  culture/overview/labo/l-function/post-8.php 河原 誠一(Sei-ichi KAWAHARA)

<略歴>1987年近畿大学農学部農芸化学科 卒業/1989年大阪府立大学農学研究科農芸 化学修士課程修了/同年高砂香料工業株式 会社入社,総合研究所基礎研究所に配属/

1997年高砂香料工業退社/同年株式会社斑 尾高原農場(現在の株式会社サンクゼール)

入社,ワイン醸造課配属/1999年同社品質 管理部に配属/2011年生命科学研究室を立 ち上げ現在に至る<研究テーマと抱負>ブ ドウ残渣の有効利用.flavanol oligomerの 構造決定と体内動態の解明,植物での役割 や成り立ちを解明したい<趣味>ナチュラ リスト,ナチュラルヒストリー,昆虫採集

藤 井  博(Hiroshi FUJII)

<略歴>1983年東北大学大学院理学研究科 化学専攻博士後期課程修了/同年同大学抗 酸菌病研究所(現加齢医学研究所)助手 

/1988年米国ロックフェラー大学生化学・

分子生物学研究室博士研究員/1991年新潟 大学医学部生化学第二講座講師/1994年同 大学医学部生化学第二講座助教授/2001年 同大学大学院医歯学総合研究科助教授を併 任/2007年信州大学農学部応用生命科学科 応用生物化学分野教授/2014同大学先鋭領 域融合研究群バイオメディカル研究所代謝ゲ ノミクス部門教授,現在に至る<研究テーマ と抱負>ゲノム情報の発現と機能制御機構 の解析,核内受容体シグナルと疾患制御機 構の解析<趣味>スポーツ<所属研究室 ホームページ>www.shinshu-u.ac.jp/institu  tion/ibs/department/igacm.html, http://

www.shinshu-u.ac.jp/faculty/agriculture/

Copyright © 2016 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.54.620

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