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ミヤマカラスアゲハの本州西南低地での連続発生

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Naturalistae, no. 11: 11-14 (2007)

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 〒700-0005 岡山県岡山市理大町1-1 岡山理科大学総合情報学部生物地球システム学科 Department of Biosphere-Geosphere System Sci- ence, Okayama University of Science, 1-1 Ridai-cho, Okayama, 700-0005 Japan

日本産アゲハチョウ科のなかでも最美麗種の一 つ, ミヤマカラスアゲハ (Papilio [Achillides] maackii) は, 本州ではどちらかといえば山岳地に産するが, 2006年の夏から秋にかけて, 岡山市平野部のへりに 位置する理大町岡山理科大学周辺 (以下「岡理大」

北緯34度41分48秒,東経133度55分42秒) で, 複数世 代にわたって発生したことを示す, 次の3つの採集

・観察, さらにこの蝶の蛹色の発現にかかわる知見 を観察と飼育から得たので報告する.

(1) 2006年6月22日, 岡理大構内6号館で2♂♂を栗林 が採集し, 小林に届けた. 1頭は小林が6月26日まで冷 蔵庫に保管している間に死んだので, 標本とした (Fig.

1). もう1頭は, 同日, 冷蔵庫から取り出した時にまだ 生きていたので, 小林が水道水で薄めたオレンジ・

ジュースを給餌後, 放した.

(2) 2006年9月22日, 岡理大に隣接するダイミ山(通 称「半田山」, alt. 160m)の岡山大学 (以下「岡大」) 演習林内の道沿いで1♀を高崎が採集した. 水道水で 薄めた蜂蜜を給餌しながら, 約2週間にわたってキ ハダで採卵を試みたところ, 多数の受精卵が得られ た. まだ産卵しそうで元気だった10月4日に放した.

(3) 2006年10月中旬, 上記 (2) で得られた卵から孵 化した幼虫に与える餌として, 川口と蓮尾が岡理大 構内21号館玄関北横にあるカラスザンショウ (Fig.

2) の葉を採取していたところ, 終齢幼虫を複数発見

・採集した. 同終齢の色彩・斑紋のパターンは, (2) の卵から得られた飼育個体終齢よりも色調がかな り明るかったので, 別個体の♀が産んだ卵から生じ

ミヤマカラスアゲハの本州西南低地での連続発生

-2006年夏秋, 岡山理科大学付近で-

高崎浩幸・川口尚樹・栗林正志・蓮尾 亮・小林秀司

Unusual successive occurrence of the Maackii Peacock (Papilio maackii; Papilionidae) at Okayama University of Science, southwestern Honshu lowland, in 2006 summer and autumn

Hiroyuki TAKASAKI, Naoki KAWAGUCHI, Tadashi KURIBAYASHI, Ryo HASUO, Shuji KO- BAYASHI

Abstract: Adults of the Maackii Peacock (Papilio [Achillides] maackii; Papilionidae), a rare swal- lowtail butterfly around Okayama University of Science (34°41′48″N,133°55′42″E), southwestern Honshu lowland, were recorded there in the summer and autumn in 2006 along with larvae and pupae in the autumn. This unusual successive recording of the highland species in a lowland is probably due to the increase of one of its larval foodplants, Zanthoxylum ailanthoides (Rutaceae), growing in forest gaps formed by a typhoon in 2004 in the area. Incidentally, all green-type pupae, though only two, found on a whitish wall away from the foodplant tree, and predominantly brown-type pupae obtained under a dark captive breeding condition suggest light (and/or humidity) is one of the primary factors, other than genetical, determining the pupal coloration in this papilionid.

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高崎浩幸・川口尚樹・栗林正志・蓮尾 亮・小林秀司

Fig. 1. 岡山理科大学構内で2006年6月22日に採集されたミヤマカラスアゲハ♂ (前翅長 = 67mm, 左表, 右裏; 標本は川口尚樹が所蔵).

One of the Maackii Peacock males (Papilio [Achillides] maackii; forewing length = 67mm, left upperside, right underside) captured in the campus of Okayama University of Science on 22 June 2006 (specimen in N. Kawaguchi's collection).

Fig. 2. 2006年10月に終齢幼虫が複数, 見つかった岡山理科大学構内のカラスザンショウ(9年生, 樹高 = 約6m, 胸高直径 = 約10cm). →: 緑色タ イプの蛹が見つかった位置.

The Zanthoxylum ailanthoides (Rutaceae; 9-year-old, height = ca. 6m, diameter at breast height = ca. 10cm) foodplant tree on which last instar larvae were found. →: points where green-type pupae were found.

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ミヤマカラスアゲハの本州西南低地での連続発生

た幼虫であろうと考えられる.

(4) 2006年10月末頃までに, 同21号館玄関の雨水の 排水パイプ近くで, 庇がかぶって直接雨のかからな いモルタル壁面(クリームがかった白色)と庇の 境目に, 緑色タイプの休眠蛹2個体が付着している のを, 高崎が発見した (Figs. 2, 3). なお, (2) の卵から得 られた幼虫を終始暗い条件 (発泡スチロール製の箱 [内幅32.5cm, 奥行き23.5cm, 高さ15.5cm] に新聞紙1枚 で蓋をして全体を新聞紙で覆ったものを飼育容器と し、一般住宅の暗い室内に置いた) で高崎が飼育した ものでは, 壁面, 新聞紙面, 食樹の枯れ枝, 生枝の蛹化 場所にかかわらず, 大多数 (96/101=95%) が褐色タイ プの蛹となった (Fig. 4).

以上の採集・観察から, 2006年の夏から秋にかけ て, 岡理大付近でミヤマカラスアゲハの成虫発生が, 2~3世代 ((1)~(2) の間にももう1世代) にわたっ て続いたことは確実であって, さらに2007年の春世 代の発生も予想される.

岡山市の市街地や低山地では, ミヤマカラスアゲ ハは稀で, わずかに中村 (1985) による岡山市湊操南 の記録が正式に残るだけである. ただし, 岡理大の北 には, 記録はないものの, 金山 (alt. 499m) があって, 岡 山市街地をはさんだ南反対側にそびえる金甲山 (alt.

403m) や常山 (alt. 307m) からは, 複数の記録がある (三 宅, 2002). すなわち, 岡理大付近でミヤマカラスアゲ ハが稀に見られることがあったとしても, 不思議で はない. とはいえ, 今回, 数世代が連続して発生した

ことは, 特筆すべきことである. (2000年秋に岡山市 津島中, 岡大薬学部北門東側に植栽されているキハ ダで, 複数の若齢幼虫を高崎 [未発表] は発見し, 人為 的な発生を疑っていた. しかし, 今回の連続的な発生 個体の採集・観察からは, 岡大薬学部で見つかったそ れらの幼虫も自然的な発生事例であった可能性も十 分に考えられる.)

上記 (3) の発生木であるカラスザンショウは, 岡理 大21号館が完成して周囲にヒイラギナンテンの植え 込みが作られた1997年春に, 高崎が蒔いた種子から 芽生えたものである (2006年現在, 未だに開花せず雌 雄不明). 以来10年近く, 高崎が毎日のように出勤・退 出時に眺めてきた. アゲハチョウ, クロアゲハ, モンキ アゲハの成虫や, アゲハチョウ, クロアゲハの幼虫・

蛹が確認されたことは多数回あったが, カラスアゲハ やミヤマカラスアゲハの飛来はこれまでなかった. ダ イミ山, 岡理大に隣接する法界院の墓地や, 半田山植 物園付近にもカラスザンショウの若木が以前からあ り, くわえて法界院の墓地に近い半田町の民家1軒の 庭にはキハダ (胸高直径約10cm) の植栽さえある. しか し, 過去15年近くの間, 高崎はカラスアゲハもミヤマ カラスアゲハもこの地域では見出していない (上記 岡大薬学部での幼虫記録を除く).

今回, ミヤマカラスアゲハがこの地域で連続発生 したことは間違いない. 発生に関連すると考えられ る岡理大周辺における最近の環境変化には次のこと がある. ダイミ山を横切る中国電力の高圧電線やその

Fig. 3. 食樹から離れた明るい壁面で見つかった緑色タイプのミヤ マカラスアゲハ蛹.

One of the green-type pupae of Papilio maackii found on a nearby whitish wall away from the foodplant tree.

Fig. 4. 暗い飼育容器内で得られた大多数が褐色のミヤマカラスア ゲハ蛹 (褐色:緑色 = 96:5).

The predominantly brown-type pupae of Papilio maackii obtained in a dark captive breeding container (brown:green = 96:5).

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高崎浩幸・川口尚樹・栗林正志・蓮尾 亮・小林秀司

鉄塔の下は 定期的に薮が苅り払われるが, そこには 2006年現在, 多数のカラスザンショウの若木が見られ る. さらに, 2004年10月上旬に通過した台風22号で, ダ イミ山の岡大演習林のヒノキ人工林に倒木が多数生 じたが, その伐採跡地に多数のカラスザンショウが生 えてきている (類似のことは, おそらく金山の裾野に も多数箇所で生じている可能性が高い). すなわち, ミ ヤマカラスアゲハの発生をささえうる食樹の好条件 が, 岡理大周辺に近年ととのっている. 都市部に植栽 された食樹で散発的に発生する事例 (福田ほか, 1982) の単なる類例追加に終わるのか, それとも定着するの か, 2007年以降の消長に注目したい.

なお, アゲハチョウやクロアゲハの蛹の多型に関 与する刺激としては, 植物からの匂い, 蛹化面の幅・

粗滑・曲率, 湿度, 温度, 日長など複数の要因が絡ん でいるが, 背景色の影響は受けないことが明らかに されている (Ishizaki and Kato, 1956; 大西・日高, 1956;

Hidaka, 1961; Honda, 1979, 1981; 加藤, 2005). しかし、ミ ヤマカラスアゲハの蛹に見られる緑色と褐色の「両 型の発現機構については調べられていない」(福田ほ か, 1982) という. 今回, 食樹から離れた明るい壁面で は緑色, 暗い飼育容器内では大多数が褐色となった.

このことから, 遺伝的な要因を除けば, 蛹化場所の光 条件(および/あるいは湿度条件)が, 決定的では ないにせよ, その重要な因子の1つとなっていること が示唆される.

本稿をまとめるにあたり, 岡山理科大学生物地球 システム学科の名取真人教授には、画像処理の援助 を受けた. また, 同学科の田川純教授および中村圭司 助教授には改稿に有益なコメントをいただいた. 記 して謝辞とします.

引用文献

福田晴夫,浜栄一,葛屋健,高橋昭,高橋真弓,田 中蕃,田中洋,若林守男,渡辺康之 (1982)「原色 日本蝶類生態図鑑 (I)」保育社, 277pp.

Hidaka, T. (1961) Recherches sur le mécanisme endocrine de l'adaptation chromatique morphologique chez les

nymphes de Papilio xuthus L. J. Fac. Sci. Univ. Tokyo.

IV, 9: 223-261.

Honda, K. (1979) Environmental factors affecting the pupal coloration in Papilio protenor demetrius Cr. (Lepi- doptera: Papilionidae). I. Effect of chemical stimulus (odor). Kontyû, 42: 191-195.

Honda, K. (1981) Environmental factors affecting the pupal coloration in Papilio protenor demetrius Cr. (Lepidop- tera: Papilionidae). II. Effect of physical stimuli. Appl.

Entomol. Zool., 16: 467-471.

Ishizaki, H. and M. Kato (1956) Environmental factors af- fecting the formation of orange pupa in Papilio xuthus.

Mem. Coll. Sci. Univ. Kyoto. B, 23: 11-18.

加藤義臣 (2005) 形態と体色. 本田計一, 加藤義臣 (編),「チョウの生物学」64-89.

三宅誠治 (2002)「岡山県蝶類データ集:西暦2000年以 前発行分」イデアス,岡山県玉野市, v+1162pp.

中村具見 (1985) ミヤマカラスアゲハを岡山市街地で 採集.「すずむし」120:18.

大西英爾, 日高敏隆 (1956) アゲハチョウおよびクロア ゲハの蛹型に対する環境条件の影響. 「動物学雑 誌」, 65(5): 185-187.

(2006年12月23日受理)

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