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リボソーム生合成とその調節 - 化学と生物

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【解説】

リボソーム生合成とその調節

水田啓子

リボソームが正常に合成されないことに起因するリボソーム 病が次々と見いだされている.本稿では,真核生物における リボソーム生合成の機構について概説し,リボソーム生合成 が破綻したときに起きる現象について解説する.また,出芽 酵母のリボソーム生合成調節タンパク質の研究によって明ら かになった,リボソーム生合成と細胞内のほかの制御システ ムとの関連や,さまざまな生物種におけるリボソームの不均 一性など,新たな課題についても紹介する.

はじめに

リボソームは細胞内でタンパク質を合成する工場のよ うな役割を担っているので,知られている地球上のすべ ての生物が備えている重要な装置である.では,リボ ソーム生合成に異常が生じると,細胞あるいは個体はど うなるのだろうか? 古くからよく知られている例とし て,リボソームタンパク質遺伝子の異常によってショウ ジョウバエの身体の矮小化を引き起こすMinute変異が ある.この変異のように,正常に機能するリボソームが 不足すると,翻訳されるタンパク質量が減少するため

に,発育遅延が引き起こされるのは当然のことと理解さ れるかもしれない.しかし,リボソーム生合成の重要性 はそれだけにとどまらない.リボソーム生合成に異常が 生じると,翻訳量が減少するとともに,細胞内のさまざ まなシステムに影響が及ぶ.正常にリボソームが合成さ れなくなることが原因と考えられるヒトの病気が次々と 発見され,リボソーム病 (Ribosomopathy) と総称され

ている(1, 2)

.後述するように,これらの疾患の原因遺伝

子が同定され,リボソーム生合成に異常を引き起こすこ とがわかっているが,その発症過程の詳細な分子メカニ ズムは不明である.これを解明するためには,リボソー ム生合成の詳細な機構について,また,リボソーム生合 成とほかの細胞内システムがどのように連携しているの かを明らかにすることが不可欠である.

リボソームの組立て

真核生物(出芽酵母/哺乳類)のリボソームは,3種 の rRNA (25S/28S, 5.8S, 5S) と46種/47種のタンパク 質からなる大サブユニットと,1種の rRNA (18S) と 33種(Asc1/RACK1を含む)のタンパク質からなる小 Regulation of Ribosome Biogenesis

Keiko MIZUTA, 広島大学大学院生物圏科学研究科

(2)

サブユニットから構成される.リボソームの生合成は,

核小体におけるrRNA遺伝子 (rDNA) の転写に始まる.

rDNAは染色体上に反復し,たとえば出芽酵母では第 12番染色体上に約150コピー並んで存在する(図

1

.こ

の染色体上のrDNAリピートに,リボソーム生合成に 必要なRNAやタンパク質,さらには合成途中のリボ ソームサブユニット前駆体が集合して,非常に密度の高 い 領 域,す な わ ち,核 小 体 が 形 成 さ れ る.rRNAは 35S/47Sという長い前駆体として,RNAポリメラーゼI によって転写される.rRNA前駆体は修飾(メチル化と 擬ウリジル化)とプロセシング(切断やトリミング)を 受けて,18S, 25S/28S, 5.8S rRNA へと成熟する.この とき,プロセシングと同時進行的に,数多くのリボソー ムタンパク質がrRNAに結合して,大小2つ(60Sと 40S)のリボソームサブユニットが組立てられる(3)

.一

方,5S rRNAはRNAポリメラーゼIIIによって転写さ れて,リボソームタンパク質とともに組立途中のリボ ソーム前駆体にリクルートされる.5S rRNAをコード する遺伝子は,出芽酵母では35S rRNA遺伝子と交互に 存 在 し,核 小 体 で 転 写 さ れ る(図1)

哺 乳 類 の5S  rRNA遺伝子は47S rRNA遺伝子のリピートとは離れて おり,核質で転写される.リボソームタンパク質は,

RNAポリメラーゼIIによって転写されたそれぞれの mRNAから翻訳されてつくられる.したがって,リボ ソーム生合成には,RNAポリメラーゼ I, II, III すべて の系が必要である.

リボソームの組立ての制御

リボソームサブユニットの組立てには,構成成分以外 に,多くのsnoRNA(small nucleolar RNA ; 核小体低分 子RNA)と調節タンパク質が必要である(図

2

.以下,

もっとも研究が進んでいる出芽酵母における知見を中心

に紹介する.box C/D  またはbox H/ACAと呼ばれる 共通配列をもつ,それぞれ43種と28種のsnoRNAは,

rRNAと塩基対を形成することによって,rRNAの2′- - メチル化部位または擬ウリジル化部位を決定するガイド RNAとして,触媒活性をもつ Nop1 (fibrillarin) または  Cbf5 (dyskerin) をそれぞれ中心とする4つのタンパク 質と複合体を形成する(4)

.rRNA修飾の意義について完

全には解明されていないけれども,その異常が,リボ ソーム生合成に影響を及ぼすこと(5, 6)

,翻訳の忠実度 

(fidelity) に影響を及ぼすこと(7)

,また,ゼブラフィッ

シュの初期発生に異常をきたすことが報告されてい る(8)

いくつかのsnoRNAはrRNA前駆体の切断(成熟)に かかわる.長いrRNA前駆体の転写は,まず40Sサブユ ニットを構成する18S rRNAの側から始まる(図1)

snoRNA U3といくつかのタンパク質の複合体は転写途 中のrRNA前駆体に結合して,40Sサブユニットの組立 てを開始する.転写が進むにつれて,60Sサブユニット の組立に必要なタンパク質が結合し,rRNA前駆体が切 断され,40Sと60Sの2つのサブユニット合成系に分か れてさらに組立てが進行する.

一方,リボソームサブユニットの組立てにかかわる調 節因子として,出芽酵母において約200のタンパク質が 同定されている(9)

.調節タンパク質には,rRNA前駆体

図2出芽酵母におけるリボソームを構成するRNAとタンパク 質,およびリボソーム生合成に必要なRNAとタンパク質

図1出芽酵母の第12番染色体上の rDNAリピート

18S, 5.8S, 25S rRNA は 35S rRNA 前 駆体として転写される.18S rRNA  は33種のタンパク質とともに40Sリ ボソームサブユニットを構成する.

5.8S rRNAと25S rRNAは,別 に 転 写された5S rRNAおよび46種のタン パク質とともに60Sリボソームサブ ユニットを構成する.

(3)

のプロセシングに機能するNucleaseやrRNAを修飾す る酵素,RNA helicaseやATPase, GTPase, タンパク質 リン酸化酵素などが含まれている.またそれ以外に,生 化学的な機能が同定されていない多くの調節タンパク質 が存在し,それらはリボソームタンパク質を正しい位置 にリクルートするとともに,rRNA前駆体が正しい位置 で切断されるよう,rRNAの構造を保つ役割を果たして いると推定される.最近,調節タンパク質がリボソーム 前駆体へリクルートされる順番が相次いで決定され,そ れが非常に厳密に制御されていることが明らかにされつ

つある(10〜15)

.大小2つのリボソームサブユニットの組

立ては,核小体から核質へ,さらには細胞質へと場所を 移動しながら行われる.組立ては細胞質で完成するの で,細胞質に局在する調節タンパク質や,核と細胞質と を行き来する調節タンパク質もある.

酵母の核小体と核膜に局在するリボソーム調節タン パク質

Ebp2Rrs1

私たちが長年研究してきた出芽酵母のEbp2とRrs1 は,おもに核小体に局在して60Sリボソームサブユニッ トの組立てに必須なリボソーム生合成調節タンパク質で ある.Ebp2またはRrs1をコードする遺伝子を破壊する とどちらも致死となるので,私たちはEbp2とRrs1の機 能を知るために,PCRによってランダムに変異を導入 することによって温度感受性   変異株と   変異 株を作製し,それらがどのような表現型を示すかを調べ た.リボソームサブユニットの組立ての過程で,rRNA の修飾・プロセシングとリボソームタンパク質のアセン ブリが同時進行的に起こるので,リボソーム生合成を解 析するために,ショ糖密度勾配超遠心分離によるポリ ソームパターン解析,[3H] で標識したメチオニン(メ チル化を検出)またはウラシルによるrRNAのパルス チェイス実験,プライマー伸長法などがよく用いられ る.これらの手法を用いて,制限温度下の   変異株 と    変異株において,25S rRNAへの成熟が遅れて その前駆体が蓄積し,合成される60Sリボソームサブユ ニット量が減少することを明らかにした(13, 16〜20)

一方,これらの変異株を制限温度にすると,核の形態 が丸くなくなり,釣鐘型あるいは扁平な形であることを 観察した.これを契機として解析を進め,Ebp2とRrs1 は核小体におもに局在するが,核膜にも局在することを 見いだした(21, 22) (図

3

A)

.では,これらのリボソーム

調節タンパク質はどのようにして核膜に局在し,また,

核膜でどのような機能を果たしているのだろうか? 

Ebp2とRrs1はどちらも膜貫通ドメインをもたない.そ

こで,まずこれらを核膜につなぎ止めているタンパク質 を探した結果,Mps3に依存して,Ebp2とRrs1が核膜 辺縁に局在することを見いだした(図3B)

.Mps3は,

真 核 生 物 の 間 で 広 く 保 存 さ れ て い る SUN (Sad1- UNC84) ドメインタンパク質ファミリーに属する,核 の内膜を1回貫通するタンパク質である.Mps3のN末 端側は核質に露出し,SUNドメインを含むC末端側は 核膜の内腔に存在する.SUNドメインタンパク質は,

SUNドメインと特異的に相互作用する,KASH (Klarsi- cht, ANC-1, and Syne homology) ドメインをもち核外 図3A 出芽酵母におけるリボソーム生合成調節タンパク質 Ebp2の局在.(B 出芽酵母の核膜におけるEbp2Rrs1の局 在のモデル図.(C 出芽酵母におけるEbp2Rrs1の局在と機 能のモデル図

(A) 野生株細胞の抗Ebp2抗体による間接免疫蛍光観察.Ebp2は 核小体と核膜に局在する.染色体DNAのうち,rDNAリピート

(核小体領域のうち黒く抜けたようになっている部分)の周りに核 小体が形成されている.(B) Ebp2とRrs1はMps3との相互作用を 介して核膜辺縁に局在する.Mps3はN末端側を核質に,C末端側 を内腔に露出している.(C) Ebp2とRrs1は核小体において,60S リボソームサブユニットの組立に機能し,核膜において,核形態 の維持やテロメアのクラスター形成・サイレンシングに関与する.

(4)

膜を貫通するKASHドメインタンパク質との相互作用 を介して,核の外側と内側とをつなぎ,さらに細胞骨格 との相互作用により,核の形態維持,染色体の核内配 置,核の移行など,多様な機能にかかわることが多細胞 生物において示されている(23)

出芽酵母において,

Mps3はテロメアに結合するタンパク質との相互作用を 介して,核膜におけるテロメアのクラスター形成やテロ メアのサイレンシングに機能をもつことが報告されてい

(24, 25)

.出芽酵母の1倍体細胞において,16本の染色

体の両端に存在する32のテロメア領域は,束ねられて 核膜につなぎ止められている.したがって,テロメアに 結合するタンパク質Rap1に蛍光タンパク質GFPを融合 させると,蛍光顕微鏡で数個のfociとして観察される.

 変異株と   変異株を許容温度から制限温度にシ フトさせることにより,このfociの数が統計学的に有意 に増加したことから,これらの変異株ではテロメアのク ラスター形成に異常があることを示すことができた.ま た,テロメア領域近傍では,遺伝子が存在しても転写さ れないというサイレントな状態になっているが,変異株 ではこのサイレンシングが弱まっていることも見いだし た.これらの結果から,出芽酵母のEbp2とRrs1は,核 小体においてリボソーム生合成に機能をもち,一方,核 膜辺縁ではテロメアのクラスター形成やサイレンシン グ,核形態の維持に機能していると考えている(図 3C)

動物細胞の核膜は,タンパク質ラミンから構成されラ ミナと呼ばれる細かい網目構造によって裏打ちされてい る.核膜は核形態を維持するだけでなく,ラミンと染色 体との相互作用を介して,染色体の安定性や遺伝子発現 の制御に重要な役割を担っている.酵母の核はこのラミ ナ構造をもたないので,核内膜の内側に存在するEbp2 やRrs1などのタンパク質がこの役割の一部を担ってい るのかもしれないと想像している.

上述のEbp2とRrs1以外にも,リボソーム生合成調節 タンパク質が本来の機能のほかに,DNA複製や細胞分 裂など細胞周期と深くかかわっていること(26) や細胞極 性に関与すること(27) などが示唆されている.

リボソームの不均一性

出芽酵母では,79種のリボソームタンパク質のうち 59種は2つの重複した遺伝子によってコードされてい る.これら2つの遺伝子とその産物(パラログ)は,た とえば, / , Rpl11a/Rpl11b  というよ うに,それぞれ A/B, a/b として区別されている.2つ

のリボソームタンパク質パラログはアミノ酸配列の相同 性が非常に高く,たとえば,Rpl11a/Rpl11bは全長174 アミノ酸残基のうち,N末端から3番目のアミノ酸残基 が異なる (Thr/Ala) のみである.そのため,リボソー ムタンパク質パラログはリボソームに組み込まれて同じ 機能を果たすと考えられてきたが,機能的に完全に同じ とは限らないことが示唆されている.2つの遺伝子のう ち一方を破壊した株を用いてその表現型を調べた結果,

細胞極性,細胞のサイズ,薬剤感受性などさまざまな固 有の表現型が観察され,A, B 2つの遺伝子のうちどちら を破壊するかによってそれぞれ異なる表現型が観察され ている(28)

.リボソームタンパク質のパラログの組み合

わせによって,異なるリボソームが構成されると仮定す ると,驚くべき数のリボソーム種が存在することにな る.

特定のmRNAに結合して翻訳するリボソームの種類 が決まっているという考えは魅力的である.   の mRNAは出芽の芽の先端で翻訳されることによって,

Ash1タンパク質が芽の先端で発現するが,このときの 翻訳に関与するリボソームは特殊であることが示唆され ている.たとえば, ,  ,  ,    を破壊すると,   のmRNAの芽の先端への局在と そこでの翻訳に影響を及ぼすのに対して,それらのパラ ログ遺伝子  ,  ,  ,   の破 壊はほとんど影響を及ぼさないし,それらの過剰発現も それぞれのパラログ遺伝子の破壊による欠陥を補わな い.すなわち,発現量の差によるのではない.特定のパ ラログが   のmRNAの芽の先端への局在とそこで の翻訳に関与していることを示唆する(28)

一方,哺乳類では,リボソームタンパク質をコードす るDNA配列として,非常に多くの配列が見つかってい るが,その多くは偽遺伝子であり,ほとんどのリボソー ムタンパク質は一つの遺伝子によってコードされてい る.しかし,いくつかのリボソームタンパク質につい て,組織特異的なパラログの存在が見いだされている.

マウスの精巣から精製されたリボソームにはL10とL39 のそれぞれパラログが組み込まれているが,肝臓には見 いだされないこと,またその逆に,L22パラログが肝臓 からのリボソームに見いだされるが,精巣には発見され ないことが報告されている(29)

.組織特異的なリボソー

ムタンパク質の組み合わせのリボソームが存在すること を示唆する.

また,さまざまな生物種において,リボソームタンパ ク質は翻訳後修飾を受けることが知られている.これも リボソームの不均一性をもたらす要因となりうる.植物

(5)

では多くのパラログが存在するとともに,さまざまな修 飾を受けることが報告されている.さらに,rRNAの塩 基置換による多様性や修飾もリボソームの不均一性を生 じさせる可能性がある.「ヒストンコード」に倣って,

「リボソームコード」という考えが提唱されている(28)

リボソームストレス

リボソームは数種のrRNAに数多くのリボソームタン パク質が結合して構成されているので,これらの発現は 同時に調節される必要がある.主に出芽酵母をモデル生 物として用いた研究によって,栄養源や温度などの環境 変化に応答して,rRNAとリボソームタンパク質をコー ドする遺伝子群が協調的に転写制御を受けることが,古 くから知られている(3, 30)

近年,哺乳類細胞において,細胞内でリボソーム生合 成に異常が生じたときのストレス応答が見いだされ,

「リボソームストレス」あるいは「核小体ストレス」と 呼ばれる.たとえばrRNA遺伝子の転写が抑制されて rRNAが不足するとき,あるいはrRNA前駆体が正常に

プロセシングされないとき,リボソームタンパク質がリ ボソーム生合成に使われなくなるために,リボソームに 組み込まれない遊離のリボソームタンパク質が増加す る.これによって,p53依存的な細胞周期の停止やアポ トーシス(プログラムされた細胞死)が引き起こされ る.がん抑制タンパク質として知られる転写活性化因子 p53は,がん細胞をアポトーシスに導いて死滅させる働 きをする.正常な細胞においてp53は極めて不安定なタ ンパク質であり,p53を特異的に認識するE3ユビキチ ンリガーゼ MDM2(ヒトではHDM2)によってp53は ポリユビキチン化され,プロテアソームで速やかに分解 される.一方,余剰リボソームタンパク質 L5, L11, L23,  S7 などがMDM2に結合すると,MDM2はp53に結合す ることができなくなり,その結果,p53が安定化され,

細胞周期の停止やアポトーシスを引き起こす(31) (図

4

なかでも,L11の発現は翻訳レベルでも調節されてお り,このp53の調節において中心的役割を担っていると 考 え ら れ て い る(31)

.L11は ま た,3つ のRNAポ リ メ

ラーゼすべての活性化因子であるc-Mycに結合して阻害 する(32)

.なお,L11は60Sサブユニットの中央突起に位

置し,前述の出芽酵母のRrs1はL11とL5‒5S rRNA複 合体に結合し,リボソーム前駆体にリクルートする調節 タンパク質であるというモデルを私たちは提出してい る(33)

リボソーム病 Ribosomopathy

はじめに述べたように,リボソーム生合成の異常を原 因として引き起こされるヒトの病気をリボソーム病 

(Ribosomopathy) と呼んでいる.最もよく知られてい るのは,Diamond‒Blackfan貧血症であろう.赤血球造 血が障害される先天性の造血不全症である.Diamond‒

Blackfan貧血の原因遺伝子として,約10種のリボソー ムタンパク質遺伝子が同定されている.相同染色体の一 方の遺伝子の不活化によって引き起こされるハプロ不全 

(haploinsufficiency) である.

Shwachman‒Diamond症候群は常染色体の劣性遺伝 による骨髄異常疾患である.大小2つのリボソームサブ ユニット間の会合に関与するタンパク質をコードする 

 遺伝子の変異(34) が原因とされている.発生過程 において上顎形成異常を引き起こす常染色体の優性遺伝 に よ る Treacher Collins  症 候 群 は,rDNAの 転 写 と rRNAの メ チ ル 化 に か か わ るtreacleを コ ー ド す る 

  の変異である(35)

.X染色体連鎖の劣性遺伝疾

患,先天性角化異常症Dyskeratosis congenitaはリボ 図4リボソームストレスのモデル図

アポトーシスを誘導することによってがん細胞を死滅させるp53 は,正常な細胞において極めて不安定なタンパク質である.リボ ソーム生合成が正常に行われるとき,ポリユビキチン (Ub) 化さ れて分解される.一方,リボソーム生合成に異常をきたすと,遊 離のリボソームタンパク質 (RP) がMDM2に結合することによっ て,p53が安定化され,それによって細胞周期の停止やアポトー シスが引き起こされる.

(6)

ソームRNAを擬ウリジル化する酵素dyskerinをコード する遺伝子の変異により引き起こされる.この変異は rRNAのプロセシング異常とともに,テロメアの長さに も影響を及ぼすことが報告されている.

上述の多くの疾患では,がん化のリスクが増大する.

また,多くのがん細胞でリボソームタンパク質の発現が 亢進していることが示されているが,リボソーム生合成 の制御不能ががん化の直接の原因かどうかは不明であ る.

おわりに

リボソーム生合成とほかの制御システムとがリンクし ていることを考えると,リボソーム生合成に異常をきた したときに,リボソーム量の変化,翻訳量の変化のほか に,さまざまな影響を考える必要がある.今後,細胞に おけるリボソーム生合成系の重要性がますます明らかに なっていくと考えている.リボソーム生合成の仕組み,

調節タンパク質の機能などをさらに詳細に解明すること によって,疾患の発症メカニズム,予防や治療に役立つ ことを期待している.

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プロフィル

水田 啓子(Keiko MIZUTA)    

<略 歴>1972年 京 都 大 学 理 学 部 卒 業/

1977年同大学大学院理学研究科修了,理 学博士取得/福井医科大学研究員,教務 職員,法医学教室助手を経て,1989年広 島大学原爆放射能医学研究所助手/1997 年同大学工学部助教授/2001年同大学生 物生産学部教授/2002年同大学大学院生 物圏科学研究科教授(改組),現在に至る

<研究テーマ>細胞増殖におけるリボソー ム生合成の重要性を明らかにすること

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新規ペプチドライゲースの相同遺伝子の機能解析 これまで当研究室では,放線菌が生産するペプチド系抗生物 質であるフェガノマイシンの生合成に関与する新規ペプチドラ イゲース (PGM1) を見出している (図1A).本酵素はアミジ ノフェニルグリシン誘導体のカルボキシル基を ATP の存在下 でリン酸無水物へと活性化させ,ここにリボソームによって生