• Tidak ada hasil yang ditemukan

不動産バブルの芽をつみとる制度設計を - Keio

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2025

Membagikan "不動産バブルの芽をつみとる制度設計を - Keio"

Copied!
4
0
0

Teks penuh

(1)

1 不動産バブルの芽をつみとる制度設計を   

「いざなぎ越え」といわれるほど息の長い好景気が続いている。バブル崩壊以降、

下落を続けていた地価も大都市を中心にようやく下げ止まり、不動産市場も活況を取り 戻しつつある。東京や名古屋ではすでに過熱感もあり、バブルの再来を危惧する声も漏 れ聞こえる。 

日本経済における地価の占めるウェイトは大きい。土地の時価総額は 2006 年現在で 約 1200−1300 兆円の規模で GDP 比で約 2.4 倍に達する。ちなみに株式の時価総額が GDP とほぼ同じ 500 兆円ほどである。なお、バブルのピークにあった 1990 年には、地価の 時価総額は約 2400 兆円であったから、丁度半分に縮小したことになる。そして地価が 下落を続けたこの期間、不良債権問題をかかえた銀行部門では資金循環が滞り、日本経 済は塗炭の苦しみにのた打ち回ったことは記憶に新しい。地価が動くと日本経済が動く。

順調な発展をみせつつあるかにみえる最近の不動産市場であるが、はたして死角はない のか以下検討してみたい。 

まず確認しておきたいのは、80 年代後半のバブルの発生は、天災ではなくて人災で あったということである。バブルの原因を行き過ぎた金融緩和にもとめる意見が多いが、

事実はそれほど単純ではない。銀行部門は、80年代初頭から優良企業の銀行離れのせ いで預金過剰に陥っており、金融緩和の追い風とあいまって不動産融資に貸出先をもと めたというのが実態である。つまり、優良な貸出の減少に応じて、80年代の個人の資 産選択なかで銀行預金が縮小していたらバブルは起きなかった可能性が高い。 

左の図は、業種別貸出残高の推移(日本銀行、金融経済統計月報)を示している。

建設、不動産、金融の 3 業種合計の貸出残高は、1985 年から 1990 年までの 5 年間に約 60 兆円から約 140 兆円へと約 80 兆円も急増している。この急増した貸出がバブルをつ くり、その多くが不良債権化したことはいまや常識である。一方、ここ数年来の不動産 向け融資の動きはというと、3 業種合計、不動産業単独いずれをみても貸出残高はそれ ほど顕著に増加していない。むしろ最近の不動産市場の活況を支えているのは、不動産 ファンドを中心とした不動産証券市場であり、この 5 年ほどの間に急成長を遂げ、いま やその市場規模は約 25 兆円と言われている(国土交通省調べ)。不動産ファンドは、一 般の投資家も購入できる上場不動産投資信託(REIT)から、ビークルとして特別目的会 社(SPC)を利用した私募ファンド、不動産特定共同事業や匿名組合契約を利用したも のまで多岐にわたる。様々な形態のファンドが設立されており、不動産市場への資金の 流れは、銀行貸出のデータをみても実態がわからなくなっている。例えば、ある銀行が 不動産投資信託私募ファンドを組成して幹事としてエクイティの一部に投資する一方、

ファンドに参加する投資家に融資をしたとしよう。 投資家が不動産業以外の業種だっ たら、統計上、不動産業向け貸出はゼロである。不動産市場への資金の流れの全貌が把 握できないと、バブルの兆候が出始めたときに対応が後手に回り、手遅れになる危険性

(2)

2

がある。日本銀行、金融庁、国土交通省などの関係官庁は連携して、不動産市場への資 金の流れの実態を解明して早急に統計を整備してほしい。 

バブルの時代には「不動産の価格なんて誰にもわからん」と半ば当然のように語ら れたが、最近の不動産取引の現場はかなり変わってきた。不動産投資信託は、投資家か ら集めた資金で不動産を取得し、賃貸収入を配当に充てる仕組みなので、不動産評価に 収益還元法が導入されやすい。また返済を融資された事業の収益だけに限定するノンリ コース融資が不動産向けに増えている点も見逃せない。2006 年 3 月期から固定資産に 減損会計を義務付けられた大企業が不動産を積極的に放出するようになったことも市 場に厚みを加え、効率的な市場形成に一役を担っている。では、今後不動産バブルは起 きないかといえば必ずしもそうは断言できない。 

不動産投資信託は過去4年間3−5%と高い利回りを達成しているが、これは不動 産の仕入れ価格が安かったことと、低金利が継続しているせいである。銀行からの借入 れ比率が高い不動産投資信託は、金利上昇局面では収益率が下がる傾向が強いことはア メリカの経験で実証済みである。預金過剰の地方銀行、民営化を控える郵便貯金、長期 安定的な投資先をもとめる年金基金などが市場参入に向けて熱い視線を送っているが、

不動産投資信託なら確実に儲かると安易にかまえていないだろうか。市場参入に際して は、投資信託といえども最低限の不動産の知識が必要であろう。バブルは「しろうと投 資家」が市場に大挙して参入したときに生じやすい。 

またバブルは必ずしも資産価格形成に対する無知から起きるわけでもない。いった んバブルがおきると、バブルに乗じて儲けようとするプレーヤーが存在して市場に資金 が流入する限り存続する。銀行は、現在 100 兆円弱の国債を保有しているが、この資金 が何かのきっかけで不動産市場へ流れ込んでこないとも限らない。そうなれば国債金利 も急騰して財政危機につながる危険性もある。そもそも金融システムの制度設計の基本 として、運用能力が超えて資金が過剰になるような金融機関を作ってはいけない。 

バブルを未然に防ぐためにはどうすべきか。金融政策がその任に当たるべきである ことは言うまでもないが、政策手段の限られている中央銀行に過大な期待をもとめるべ きではないであろう。中央銀行の第一の任務はあくまで物価の安定であり、物価がデフ レ傾向にあるときに資産価格の高騰がおきた時、金融引き締めの実施は難しい。また首 都圏で資産価格の高騰が起きても、地方で景気停滞が続けば、金融引き締めはやはり現 実的な政策ではない。かつてバブル退治と称して不動産向け融資が直接規制されたが、

反動が大きく利用は慎むべきであろう。代案として考えられるのが、2007 年春から実 施される新 BIS 規制を利用することである。企業向け貸出のリスクを一律に計算してき たこれまでの仕組みを改め、新 BIS 規制は、 個別貸出ごとにリスクを算定して、銀行 の貸出リスクの分散の促進を狙いとしている。不動産融資については、地価の上昇期に ほぼすべての銀行が貸出を急増させるという傾向がある。しかしながら、個々の銀行は、

不動産融資のリスクを評価するのに他の銀行の行動までは考慮に入れないので、結果と

(3)

3

してリスクの過小評価が生じやすい。自己資本比率の分母であるリスク資産を、通常の 融資を貸出額の 100%で評価したときに、不動産向け融資には、例えば 125%で評価す るといった具合に、高めにリスクウェイトを設定することで、銀行資金の流入による不 動産市場の加熱を未然に防ぐという方法は検討に値しよう。ファンドを通じた資金の流 れが抜け道として利用されないように同時に網にかける必要があることは言うまでも ない。 

不動産市場はわが国の資産市場のなかで最大であり、その市場整備の及ぼす影響は 計り知れない。 不動産の資源配分の向上にとどまらず、金融システムの安定と資金循 環の円滑化に寄与しよう。バブルを 2 度と起こさないような制度設計を怠らないことが、

不動産市場ひいては日本経済の持続的な成長をもたらすであろう。 

(4)

業種別貸出残高(1980-2006)

0 20 40 60 80 100 120 140 160

1980 1981

1982 1983

1984 1985

1986 1987

1988 1989

1990 1991

1992 1993

1994 1995

1996 1997

1998 1999

2000 2001

2002 2003

2004 2005

2006

(兆円)

建設 金融 不動産

3業種(建設,不動産,金融)

Referensi

Dokumen terkait

257 も の づ く り 創 造 卒業研修 (必修 4 単位) 2年前後期 ものづくり創造工学科教員 授業テーマ・内容 ものづくり創造工学科における学修の締めくくりとして、研究・研修グループに所属し、指導教員の指導のもとで特定のテーマについ

廃棄物に係る意識等についてのアンケート 調査票番号 事業所名 ↑お手数ですが、調査票に記載されている調査票番号を転記してください 問1.産業廃棄物の発生抑制やリサイクルに向けた取り組み等について 貴事業所では産業廃棄物の発生抑制やリサイクルに向けた取り組みを行っていますか。 (☐)1.行っている (☐)2.行っていない(問2にお進みください)

5.1 はじめに 前の章の最後のほうで,市場リスクの価格についてふれ た.これは市場ポートフォリオという,特殊なポートフォ リオを考えて安全資産と2つで有効フロンティア全体が張 られるとき,リスクと超過期待収益率の間に非常に簡単 な線形の関係があることを示している.(ここで超過期待 収益とは,ポートフォリオ収益率と安全資産の収益率の 差を指す.)

確定的であるはずの行動が,観察できない別の人にと って曖昧であるとは: 黒いセールスマン:この地域は営業が厳しいし,頑張っても営 業成績のアップは難しそうだ.今日はゆっくり休もうか... 黒い企業経営者:今期も赤字でこのままでは倒産する.経営 者の立場は維持したいので,決済を粉飾しよう.状況が改善 すれば見つからないはずだ...

成されパスフロー変数と強制制約式を含む CNDMLPn (P─, A─K)において、デザイン変 数の連続条件である (21)式を0-1条件に戻 した問題をCNDMBn (P─, A─K)とおく。 CNDMBn (P─, A─K)は一部のデザイン変数 が固定され、かつパスや強制制約式が限定さ れた問題であるため、 CNDMBn (P─, A─K)の

理的要件)が準用されているが(13 条の 2)、同号に適合しないというこ とである。同号に基づく県の審査基準は「埋立ての規模及び位置が、適正 かつ合理的か」というものであるが、軟弱地盤が確認されたのに災害防止 に十分配慮した検討が実施されていないことから、この基準に適合しない とされた。④は、設計変更を承認する要件として準用される公水法 4 条 1 項 2

機会費用の応用 • 比較優位の原理 自国は外国に対して比較優位を持つ財 を輸出する。 自国は外国より機会費用の安い財に比 較優位を持つ。 自国は外国より機会費用の安い財を輸 出する。 • 比較生産費説 自国は外国に対して相対的に安く生産... 比較優位の原理の結論 • 貿易を行う国はみな利益をえる。 交換の利益 生産の特化の利益

最適成長理論 である。これを最大にするkを見つけるには、右辺を微分してゼロとおいて整理する。こ れにより、 f 0 k=n+ 5.4 を得る。この条件を黄金律という。 以下では、この条件の意味を考えてみよう。上の式の左辺は資本の限界生産力である。黄 金律はこれが産出量の成長率に等しいことを要求する。また、 C L =fk0k f 0 k