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    2001 年度

  上智大学経済学部経営学科   網倉ゼミナール  卒業論文

      『児童書はなぜ売れなくなったのか?』

        A9841229       佐藤  光子

        2002 年 1 月 18 日 提出

(2)

児童書の売り上げが落ちている。(ここでの児童書とは、あくまで文字中心の「読み物」であり、

絵本は入らない。)年々進む少子化、テレビゲームをはじめとした子どもの趣味の多様化、児童 文学の衰退、と、さまざまな要因がささやかれている。児童書の世界に、一体何が起きているの だろうか。

出版業界の現状

まず、出版界全体の流れを見てみたい。下のグラフでは、出版物のうち、書籍(雑誌は含まない)

の年間販売額を5年おきに示した。

書籍販売金額 (単位・億円)

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 1950年

1960年 1970年 1980年 1990年

       資料出所:(社)全国出版協会・出版科学研究所『出版指標・年報』各年度版 順調に伸びてきたように見えるが、近年は、1997年以降、4年連続でマイナス成長を続けてお り、業界全体が苦しい状態に直面している。

次に、書籍の年間新刊出版点数を見てみたい。児童向け書籍(学習参考書は除く)の新刊点数と、

書籍全体の新刊点数のそれぞれの推移を挙げる。

児童書の新刊点数の推移

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000

1986年 1987年 1988年 1989年 1990年 1991年 1992年 1993年 1994年 1995年 1996年 1997年 1998年 1999年

(3)

書籍全体の新刊点数の推移

0 10000 20000 30000 40000 50000 60000 70000

1986年 1987年 1988年 1989年 1990年 1991年 1992年 1993年 1994年 1995年 1996年 1997年 1998年 1999年

       資料出所:(社)全国出版協会・出版科学研究所『出版指標・年報』各年度版 児童書は微増だが、出版物全体の新刊点数がこの10数年間で飛躍的に増加したことが見て取れ る。

このデータから、新刊出版物に占める児童書の割合をグラフにする。

新刊出版点数全体に占める児童書の割合

0.0%

1.0%

2.0%

3.0%

4.0%

5.0%

6.0%

7.0%

8.0%

1986年 1987年 1988年 1989年 1990年 1991年 1992年 1993年 1994年 1995年 1996年 1997年 1998年 1999年

       資料出所:(社)全国出版協会・出版科学研究所『出版指標・年報』各年度版 出版点数が激増する中、児童書が占める割合は年々下がっている。

続いて、売り上げの面から児童書を見てみよう。出版物の総売り上げに占める、児童書の売り上 げの割合をグラフに示す。

(4)

出版物(雑誌含む)売り上げに占める児童書の割合

0.0%

1.0%

2.0%

3.0%

4.0%

5.0%

6.0%

1988年 1989年 1990年 1991年 1992年 1993年 1994年 1995年 1996年 1997年

        資料出所:「90年代の出版物販売チャンネルの変化はどうなっているか?」

      『谷平吉の出版流通コラム』1998年2月8日号 出版業界全体が、不振といわれる中でも、児童書の売り上げの占める割合は年々下がっている。

出版業界の中でも特に児童書市場が落ち込んでいることが見て取れる。

では次に、どんな児童書が売れているのかを見てみよう。

全児童書の約半数近く(99 年:46.1%)が、出版物分類の「7、芸術」である。出版物分類と は、出版物をその内容に応じて、

 0 総記  1 哲学  2 歴史  3 社会科学  4 自然科学  5 技術  6 産業  7 芸術  8 言語  9 文学

の 10 個のカテゴリーに分けたものである。ちなみに書籍全体でみると、「7、芸術」の割合は

20.0%(99年)に留まっている。なぜ、児童書ばかりが、「7、芸術」分野の出版物の割合がこ

れほどまでに高いのか。

実は、ポケモンなどのキャラクター関連本や児童向け漫画、そしてゲーム攻略本などが、この「7、

芸術」に分類されているのである。

参考までに、児童書に占める「7、芸術」の割合の推移を挙げる。

(5)

児童書に占める「7.芸術」の割合

0.0%

5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

30.0%

35.0%

40.0%

45.0%

50.0%

1970年 1980年 1990年 1999年

      資料出所:出版ニュース社『出版年鑑』各年度版 子どもを取り巻くメディアが多様化するとともに、「7、芸術」の割合は上昇しているようだ。

ポケモンなど、キャラクター関連書の圧倒的売り上げの中で、児童文学など既存の子どもの本は 大きな苦戦を強いられていることは間違いない。

子どもを取り巻く読書環境の現状 −− 学校読書調査

全国学校図書協議会と毎日新聞社が共同で毎年行っている「学校読書調査」がある。1954年、

学校図書館法が施行されたのを機に、生徒・児童がどんなものを読んでいるかの実態をつかむた めに始まったもので、2001 年で第 46回目を迎えている。最新版では、小学生(4〜6年生の みであることに注意してほしい)4184人、中学生は 3683人を調査対象者としている。子ども の読書傾向の実態が表われていると思うので、ここにいくつかの調査結果を引用したい。

まず、子どもたちが1か月に何冊程度本を読むのかについての調査結果の推移である。

5月1か月分の読書冊数平均

0 1 2 3 4 5 6 7 8

1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 年

冊 小学生

中学生

こうして見ると、近年言われている「子どもの読書離れ」は実はそれほど進んでいないのではな

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いか、という印象を抱く。

しかし、次のグラフに注目してほしい。同じ調査(1999年のもの)を学年別・男女別に分けて まとめたものである。

学年別・男女別 5月1か月間の1人あたりの 読書冊数平均(99年)

0 2 4 6 8 10 12

小4 小5 小6 中1 中2 中3

冊 男子

女子

学年が上がるにつれ本を読まなくなってしまう傾向が顕著に表れている。本以外のメディアに 徐々に流されていってしまうということだろうか。塾通いなどで時間がなくなっていくことも関 係している可能性もある。

次に、1か月間に読んだ本の冊数がゼロだと回答した子どもの割合をグラフにする。

1か月間における不読書者(0冊回答者)の推移

0 10 20 30 40 50

1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 年

% 小学生

中学生

急激というほどではないにしろ、本を読まない子どもの割合は確実に増えていることが見て取れ る。

なぜ、児童書は売れなくなったのか

* 子ども対象の娯楽・メディアの多様化

1980 年代半ば以降、家庭用ゲーム機が登場し人気を集めた。その後 90年代もパソコンや携帯

(7)

電話の急激な普及、そして子どもたちの間ではカードゲームの人気など、子どもをとりまくメデ ィアは多様化を続けてきた。年々、本以外のメディアに囲い込まれ、流れていってしまっている と考えられる。

* 学校図書館の充実

学校図書館の整備の面では、文部省が93年から97年までの5年間に総額500億円の予算で、

蔵書数を92年時点から1.5倍に増やそうという計画が打ち出され、各地方自治体に地方交付税 交付金として分配された。その効果が一部あってか98年度時点での蔵書数は、

  小学校平均 7068冊(前年と比べ+307冊)

  中学校平均 9021冊(同じく+714冊)

  高校平均 21391冊(同じく+391冊)

になっている。学校図書館の蔵書が充実し、お金を出して本を買う必要がなくなってきたと考え られる。

* 国が児童書文化を軽視 −− 下支えなし

もともと、子ども向けの出版物は、読者の成長とともに読み捨てられてしまう運命にある、とも 言える。

戦前は全ての出版物が旧内務省の検閲を受けた。検閲が終わると旧帝国図書館(現在の国立国会 図書館)に交付されたが、同図書館では子ども向けの出版物は価値が低いとして多くを処分した。

書庫不足のため外部に保管され、火災にあった資料もある。こうして、公的機関で系統的に収集・

保存されることがなかったため、かなり部数が多かったものでも姿を消してしまうことになった のである。

このような過去の事実は、現在の児童書の苦境に直接影響を及ぼすものではない。しかし、児童 文学や児童文化の発展の流れを、一時期であれ確実に、遅らせたり止めてしまったと言えるだろ う。また、つい最近まで児童文学や児童文化について真剣に考えようとする動きが生まれてこな かったのは、「子どもの本は価値が低い」という過去の考え方が、部分的であれいまだに日本で 残っているからではないだろうか。

児童文学・児童文化の研究が伝統的なアカデミズムの体系に含まれていないことや、この関連の 学科を置いている大学が全国で2校(いずれも私立の女子大)しかなく、研究者が育ちにくいこ とも、このような過去の考え方が表れていると思われる。

近年になって、ようやく国が子ども向け出版物の重要性を認識し始め、国立国会図書館上野支部 をこの分野専門の図書館に改組(「国際子ども図書館」として 2001 年に部分開館)し、資料の 収集・保存に着手した。このような新しい動きについては、後の部分で詳しく述べたい。

仮説:新しい本が出てこない構造?

児童書の苦境が言われている中で、『ズッコケ三人組シリーズ』のような昔からの定番ものは、

相変わらず好調な売れ行きを見せているようだ。しかしその一方で、最近の新刊がヒットを続け、

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ついには定番ものになりつつある、というような話はほとんど聞かない。

そこで2つの仮説を立てたい。

① 児童書市場は、「息の長い定番もの」と、「すぐ消える新刊」の二重構造になっているので はないか。

② 新刊が出ても、それを盛り立てて長続きさせる努力を業界がしていないのではないか。

この2つの仮説について、出版・販売の両面から考えていきたい。

まずは出版サイドから考えてみたい。80年代以降、小学高学年の児童書離れ(特に創作児童文 学)が激しくなってきた。初版八千部から一万部だった最盛期に比べ、現在は初版絶版も珍しく ない。その一方で、前述したように、年間の出版物点数は多くなっている。

こうした実情には、出版サイドの「出版は賭博性がある。だからついつい数打てば当たる、で余 計に本を作ってしまう」「編集者は良いものを出したいと思っているが創作文学は売れない。売 れない創作文学よりは幼年ものやヤングアダルトという安全パイをふることになる」という葛藤 があるようだ。しかし、このような傾向は、仮説①の「すぐ消える新刊」の流れを強めていると は言えないだろうか。

次に販売サイドについて考えたい。情報化の波は、書店の棚管理、商品管理にも影響を与えてい る。POSシステムが導入され、効率的な販売方法が追求されつづけている。

書籍取次ぎ大手の日販(日本出版販売)は書店を対象に次のような情報サービスを展開している。

日販のホームページから引用する。

〜 売れ筋商品の売り上げを伸ばすために 〜

「日販ていばん」システム

50万点にも及ぶ書籍群。その中で立地や規模に合った売れ筋商品を絞り込むことは、大変な作 業を伴います。もちろん、全て取り揃えることなど不可能です。そこで、日販は各店舗の特性に 会った商品管理が効率よく出来る「ていばん」システムを、文庫・コミック・児童書・実用書・

ビジネス書などの各ジャンルで稼動させています。これは、全国の書店の売り上げデータを基に、

各ジャンル売れ筋商品をメインとした商品群を絞り込み、さらに、店舗特性に応じた商品のグル ープ化を行うことにより、最適な棚作りの企画・提案をするものです。同時に、それらの商品を 安定的に供給し、効率的な棚管理、商品管理をサポートします。

このようなシステムは、効率販売と言う観点から見れば、確かに役に立っているのかもしれない。

どの本を店頭に並べるのがベストなのか分からない書店にとっても、指針となり頼れるものであ ろう。

しかし、児童書の場合は、時代を反映した内容というわけでもなく、出版されてすぐにヒットと いうのは難しい。むしろ、長い期間子どもたちに読み継がれていく中で、じわじわと評判が広が っていく性格のものであろう。そのような、効果がすぐに表れにくい本は、これまでよりも早く

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見切りをつけられ、棚から取り除かれてしまうことになってしまうことにならないか。さらにそ のデータが他の書店にも提供され、同じような動きが広がっていくこともあるだろう。

私が立てた仮説②は微妙に間違っているようだ。売り上げ重視の効率販売という観点からすれば、

いつ売れるかわからない児童書の新刊をいつまでも棚に置いておくような「努力」は意味がない のだろう。情報化、そしてそれに伴う流通のスピード化は、児童書にとって思わぬ弊害になって いるように感じられた。

どんな改善策が試みられているか 国

1999年8月の国会で、2000年を「子ども読書年」とする決議が全会一致で採択された。そして 2000年5月5日には、東京・上野の国立国際子ども図書館が一部開館し、記念行事も多彩に展 開された。「子ども読書年」を一過性のイベントだけで終わらせないよう、2001年12月には「子 ども読書推進法」が国会で可決され、成立した。決議の趣旨を生かし、子どもたちの読書環境を 整備するための共同の取り組みが進められている。

課題図書制度

夏になると、銀色のシールを貼った「課題図書」を書店の店頭で見かける。「青少年読書感想文 全国コンクール」の対象に選ばれた図書である。このコンクールは、全国学校図書館協議会が主 催し、毎日新聞社が共催する催しで、2002 年で第 48回目にもなる長い歴史を持つ。全国の多 くの学校で読書感想文を夏休みの宿題にして生徒から集め、コンクールに出しているということ だ。

おそらく、「子どもを本好きにしたい、子どもと本との接点を作りたい」という主催者の願いが、

このコンクールにはこめられているのだろう、と私は考えた。しかし、宿題として強制的に本を 読まされて、子どもは本好きになるものだろうか。むしろ、読書嫌いの子どもを増やすだけでは ないか。

それでも、この制度の始まった頃は、児童書の新刊が極端に少なかったので、育成と普及という 役割もあった。しかし、今は年間の出版物点数も増大し、そういう時代ではない。だから、こん な制度は意味がない、もうやめたほうがいい、という意見が、少しこの制度について調べただけ で、あちこちで見られた。

実は、主催者・出版社・流通業者・著者の利権がからんでいるから、やめられないのである。主 催者は銀色のシールを有料で出版社に引き取らせ、本に張らせる。全国の学校で宿題に出される ので、シールのある本は一時的にせよ必ずベストセラーになる。子どもが本を読まなくなり、子 どもの数も減少して、売り上げが落ち込んでいる中だからこそ、出版関係者には非常においしい 話である。これまでの課題図書のリストを見てみると、同じ出版社から一度に2冊は課題図書に しない、というルールもあるように見受けられ、平和的に運営されているようだ。子どものため、

というような顔をしたこの制度の裏側では、出版業界や関連団体の都合でこんな仕組みが出来て いたのだった。

(10)

子どもと本とをつなぐ存在を

児童書や児童文学の関係者の議論では、「児童書の内容が面白くないから売れないのでは」とい う意見が多く見られた。

しかし、本当にそうだろうか。では、面白い本であれば売れるだろうか。

放っておいたら子どもは本など自発的には読まないと私は思う。大体、面白い本が売られていて も、それを子どもで自力で見つけ出すということは不可能だ。

また、活字を読むというのはそれなりに頭を使うし、骨の折れる作業だ。他のメディアがこれほ ど発展している今の時代、テレビやゲームなど、「ラク」なメディアに流れていってしまうのは 当然だとさえ思う。

そこで、子どもと本が出会うきっかけを、大人たちが積極的に提供していく必要があると思う。

果たして今、子どもと本をつなぐような存在は機能しているといえるだろうか。親・学校図書館・

地域図書館・書店の4つについて少し考えてみたい。

まず、一人一人の子どもに最も近い存在である親についてだが、子どもが児童書を読むか読まな いか、買うか買わないか、については、多くの場合、子ども本人にまかせっきりだと思う。

同じ子どもの本でもまだ絵本であれば、「子どもに読んで聞かせる」「子どもとともに読む」的な 意識が親にもあるから、本屋でも内容を簡単にチェックしたり、どれを買うか子どもに意見する など、ある程度熱心だと思う。

しかし、「読み物」である児童書の内容に興味を持ち実際にチェックするほどの時間は親にはな い。前の部分で触れたことだが、児童書分野の研究者は非常に少ないので、「子どもに読ませた い児童書」を親たちに紹介してくれるようなガイド本もほとんど出ていない。よって、親が子ど もに、特定の児童書を読むように薦めるということはあまりないのではないかと思う。

次に、それぞれの子どもが通う学校の図書館であるが、先に述べたように蔵書数は増えており、

内容的には充実しつつある。しかし、それらを支える専門職員はほとんどの学校には配置されて いない。おかれている場合もその身分や条件は多種多様で、全校に正規で置かれているのはわず かな自治体だけである。1人が何校も兼務したり、月に数日の勤務だったりと、専門職としての 安定的な仕事ができにくいようだ。

これでは、蔵書数ばかりが増え、その案内役がいない、ということだ。子どもにしてみれば、ど の本を読めばいいかわからず、子どもと本が出会う機会が失われてしまう。

次に地域の図書館であるが、不況の影響で大人からのニーズが高まり、子ども部門は特に重視し ていないようだ。

最後に書店であるが、日々の子供の行動範囲(家と学校の往復とその周辺)の中にあるような小 さな書店は、商店街の衰退とともにどんどん消えつつある。事実、80年代以降、1万店以上の

(11)

商店街の書店が廃業、倒産し、やはり1万店以上の郊外型書店が出店したとされている。この結 果、子どもにとって書店は、親に車で連れていってもらわないと行けない場所になりつつある。

しかし、それでは休日に家族みんなで車に乗って郊外型の大型書店へ行くか、というとこれはあ まり現実的ではない気がする。むしろ、休日に家族で郊外のショッピングセンターに行ったとき に、そこのテナントの書店をのぞく程度であろう。いずれにせよ、子どもにとって書店は遠い存 在になりつつある。

このように見てみると、子どもと本との仲介役になるような存在は、現段階ではあまり機能して いないように思われる。私個人としては、子どもとの物理的な距離が近く、採算性に縛られるこ ともない、学校図書館が、子どもと本をつなぐ役割を果たすには最も妥当ではないかと感じた。

もちろんそのためには、専門職員の問題など解決されなければならない問題はたくさんある。し かし、せっかく多額の予算が投入されているのだから、それらを活かして子どもの利用しやすい 図書館になる必要があるだろう。子どもに本に触れる機会を積極的に与えていくとともに、児童 書文化を継続的に伝承していくのが望ましいと感じた。

−−−−−

児童書は、「買う人」と「読む人」が違うものであり、ある意味特殊な市場とも言える。「読む人」

から「買う人」へ、買ってほしいと要請しなければならず、通常の購買行動よりも手間が1つ多 い。このため実際の購買まで到達しにくいとも考えられる。

しかし、逆に考えれば、「買う人」と「読む人」、つまり親と子どもの両方に訴えかけていくこと ができる。

もしも今後、親に向けて、「児童書が子供の成長に与える有用性」というようなメッセージを継 続して発信していけば、児童書に対する親の意識が高くなっていく可能性もある。「買う人」の 意識が変われば、比較的容易に売り上げに結びつくのではないか。

また、子どもたち自身を良書に触れさせる運動を、学校図書館などで地道にやっていけば、20 年後、30年後に、彼らが親になったとき、同じ本をその子どものためにもう1度手にとろうと する動きは必ず起こってくると思う。

こう考えてみると、気の長い話ではある。しかしここまで見てきたように、児童書の衰退には、

社会の移り変わりを反映した、さまざまな要因が絡んでいた。児童書を本当に復活させようとす るならば、あせることなく、かなり長期的な視野で取り組む必要があると思う。

(12)

参考文献

小田光男「書店かつての魅惑どこへ」『読売新聞夕刊』2001年11月21日

「児童書パッタリ」『産経新聞』1997年9月11日

「「児童文学の危機」と作家らがフォーラム」『産経新聞』1998年5月11日

「不況?多様化?図書館利用者増える」『産経新聞』1999年5月23日

長岡善幸「児童書は本当に売れなくなっているのか?」『ず・ぼん』ポット出版、1999 日本子どもを守る会編『子ども白書2000』草土文化

野上暁「二年連続のマイナス成長に」『日本児童文学』1999年5月号

(社)全国出版協会・出版科学研究所『出版指標・年報』各年度版

(社)出版梓会・出版ダイジェスト社『出版ダイジェスト』各号

(社)読書推進運動協議会『読書推進運動』各号 出版ニュース社『出版年鑑』各年度版

全国学校図書協議会・毎日新聞社『学校読書調査』各年度版

『全国書店新聞』2001年12月12日・19日各号 学校図書館情報誌『ぱっちわーく』1999年9月号

ウェブ上で参考にしたもの

「谷平吉の出版流通コラム」NO.7、NO.21 日本出版販売のホームページ

「子どもの読書環境」http://www.biwa.ne.jp/~m-kanou/20000921.html http://www1.harenet.ne.jp/~sakutyu/sakura/6gatu/kiji6.htm

Referensi

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