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公開シンポジウム 「アフリカにおける紛争と平和共存の文化」

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公開シンポジウム 

「アフリカにおける紛争と平和共存の文化」 

小和田恆理事長挨拶(16日公開シンポ)  

 

アブバカール前ナイジェリア連邦共和国国家元首閣下、 

トゥーレ前マリ共和国国家元首閣下、 

荒木副大臣閣下 

シンポジウム出席者の皆様、 

並びにご来場の皆様   

  本日は、財団法人日本国際問題研究所と外務省との共催で国際シンポジウム

「アフリカにおける紛争と平和共存の文化」を開催する運びとなりました。皆 様には御多忙の中、この問題に関心をお寄せ頂き、御参加頂きますことに対し て主催者を代表して心からお礼を申し上げます。なお、今回のシンポジウムに 対しては日本経済新聞社、ジャパンタイムズ社の後援を頂きました。この機会 をかりて感謝の意を表したいと存じます。 

 

現在、アフリカで多発している紛争に関して、国際的な関心が高まっておりま す。17 世紀以来の伝統的な国際システムが大きな構造的変化を遂げている中で、

冷戦構造が崩壊し、地域紛争、就中、アフリカにおける紛争の頻発が国際社会 の注目を浴びております。特に今日の紛争の特質はこれが伝統的な国家間紛争 ではなく、国内紛争、就中、統治機能の喪失や社会の分裂に起因する社会的、

経済的、人種的その他文化的要因と結びつくものが、多い点にあります。そし てそれが殊にアフリカにおいて際立っているところに特徴があると申せると 思います。 

 

アフリカの紛争の問題は単にアフリカだけの運命の問題ではありません。影 響を蒙る人々の数という点からも、地域の広さという点からも、地球社会のき

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わめて大きな一部を構成するアフリカが頻発する紛争の犠牲になり、その経済 的、社会的開発が妨げられていることは、世界全体の平和と安全及び繁栄の追 求という見地から国際社会全体の問題なのであります。その意味で、こうした アフリカの紛争への対応は世界的な課題となっていると申せましょう。しかし ながら、これらの紛争の解決は決して口でいうほど容易なことではありません。

今申し上げたようなこれらの紛争の根本原因は、アフリカ社会の中に内在する 問題と深く関わっていることが多いのです。更に19世紀以来の西欧帝国主義 による植民地支配の歴史の遺産が、問題をきわめて複雑なものにしています。

アフリカの多くの国々は 1950 年代から 60 年代初めにかけて植民地の枷から自 由になって独立しました。しかし、この移行過程をスムーズなものとし、安定 的な秩序を作り出すために、それまでの人為的に作られた植民地時代の境界を そのまま引継いでこれを尊重することが 1963 年の OAU 決議で確認され、今日 のアフリカ諸国はそれを継承して今日に至りました。そのことが、今日の人種 的、民族的、言語的、宗教的に複雑な状況をアフリカの国々の中に作り出した ことは、否定できないでありましょう。そしてそういう状況の中で、新しい国 民国家建設の努力が白紙の状態から始まったのです。このような状況を基礎と して、今日アフリカに生じている紛争の多くが、紛争当事国、近隣諸国、リー ジョナルな機関、ドナー諸国、国連などの国際社会からの全ての努力によって も、決して解決が容易でないという現実が生まれています。この現実はこの問 題のむずかしさを何よりも雄弁に物語っているといえるでしょう。それにもか かわらず、我々は、21 世紀の世界秩序ということを考えるときアフリカの問題、

就中、アフリカの紛争の問題にどう対応するのかを今日の国際社会が直面する 最大の課題として考えなければならないのです。 

  真の紛争防止には安定した政治環境の醸成が不可欠であります。アフリカに おける新しい国民国家の理念に基づいた「グッド・ガバナンス」を実現する政 治体制の確立、個人の自由を尊重する社会の育成、公益や公共財を増進するシ ステムの追及、国民レベルでの人々の参加型デモクラシーの実現を通じて、国 民国家を構成する異なったコミュニティーのグループの間に和解をはかる注 意深い国家が必要なのです。即ち、社会の為の諸価値(資源を含む)の国民的 見地からの公正な配分を可能とするような正統性を持った国民国家を作り上 げていくことを促す必要があるのであります。そのためには、人々の

empowerment による「市民社会」が開花し、国がその基盤に立ってユニティ

(unity)と団結(cohesion)を見出すことが必要です。それを基盤として経 済的社会的開発を実現し、国民国家の基礎を固めることができるのです。法の

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支配、公的秩序の確立、司法の尊重を軸とした制度的、社会的インフラストラ クチュアを確立して国民に対して国家としての役割を果す体制が必要なので あります。 

 

  このようにみてくると、アフリカにおける紛争の予防・解決に長期的なアプ ローチで対処していかなければならないことがお判り頂けると思います。そし てそのためには、この問題に単なる対症療法ではなく、体質改善の問題を含む 原因療法を考える必要があります。そしてその見地から、アフリカの政治、文 化、社会を含む文化人類学的な見地からこの問題を考える必要があるのではな いかという問題が生じます。これがこのシンポジウムを支える基本的な考え方 であります。そのための方法論として、紛争予防の基盤となりうる「平和の文 化」「共存の文化」の構築とその推進に向けた努力を行っていくこと、そして そのためのアフリカにおける「市民社会」の役割を議論することが今必要とさ れているのではないかと私どもが考えた所以はこれによるのです。 

 

  アフリカ社会はその固有の歴史、社会、慣習、言語を通じて独自の共同体と してのアイデンティティ、社会的靭帯、集団的連帯の空間を作ってきました。

そうした共同体の連帯は屡々、国民国家の連帯より強いものがあります。また アフリカには、異質で雑多なものを受け容れて共存するという伝統が存在する といわれます。そうした伝統によって育まれた知恵をうまく活用することがで きれば、アフリカは外の勢力の使嗾や利権との結びつきに毒されずに、国民レ ベルにおいて真の連帯を実現した新しい国民国家の建設に成功し、さらには、

進んで時代遅れとなりつつある近代国際システムの基盤となってきた主権国 家の枠をも乗り越えた、新しい人間集団の共存のあり方を示すような共同体の 実現を目指すことが期待されるのです。そのような多部族共存の論理と倫理を 建設的な方向で推進し政治思想として開発することができれば、アフリカとい う地域をグローバル化する今日の国際社会の中で、ユニークな可能性として生 かしていくことも出来るかもしれません。 

 

  こうしたアフリカにおける「平和共存の文化」を構築することに成功すれば アフリカにおいて作られつつある国民国家というものの正統性が確立される ことになります。そしてその下で政府によるガヴァナンスの機能が高められ、

正統性がチャレンジされることから生じる紛争を予防していくことが容易に なっていくと考えるのです。 

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  アフリカの文化、社会に密着した形でこの「平和共存の文化」をどの様に構 築していくのか、というのはきわめて野心的な課題であります。この問題を考 えるに当たっては、今日のアフリカの紛争の多くが権力を握る一握りのパワ ー・エリートや軍閥(War Lords)、さらには経済的資源の支配と結びついた国 の内外の勢力によって引き起こされているという現状を直視する必要がある でしょう。アフリカの人々がこの現状をどう克服し、市民レベル、国民レベル で紛争予防及びアフリカ「平和共存の文化」の構築の過程に参加することをど う実現するのかが大きな課題となるのです。その見地から女性、知識人、メデ ィア、教会その他多様なアフリカにおける「市民社会」の役割を考えることが 重要となってきます。そういう「市民社会」の成長が真に責任持つ政府の存在 を保障するからです。ここにお集まりになったパネリストは内外からのアフリ カ紛争問題の世界的な有識者の方々であります。パネリストの皆様がこの点に 焦点を当てた議論をしていただき、知的貢献を行って戴くことが、問題解決へ 向けての大きな指針を与えることとなることを期待致します。 

 

去る 1 月初旬に、森総理大臣が日本の現職の総理大臣としては初めて、サブ サハラ・アフリカを訪れ、南アフリカ、ケニア、ナイジェリアの3ヶ国を公式 訪問しました。これは、日本とアフリカの関係において画期的なことでありま す。同時にこの訪問は今申し上げたように、紛争と開発のはざまにあって苦悩 するアフリカの問題に日本がアフリカのパートナーとして一緒に取り組もう という決意を行動で示したものでありました。この訪問により、日・アフリカ 関係は新時代に入ったと言えます。これを契機として、私ども日本国民の間に アフリカ問題についての理解が深まり、アフリカに対する関心が高まることを 心から期待致します。そういうことに役立つのであれば、本シンポジウムは極 めて時宜を得たものとなると考えるのであります。 

 

アフリカ開発については、日本は、冷戦構造崩壊後の世界秩序を構築する上 で、この問題が、最も重要な問題であるとの認識に基づいて、世界に先立って、

この問題に取り組むためのイニシアティブをとりました。即ち、既に1993 年の東京サミットにおいて、冷戦構造崩壊後の世界においてもはや東西対立に 毒されない環境の下で、開発問題を戦略的に考える必要があることを強調し、

具体的には ownership と partnership の二つの原則を基盤とした「新開発戦略」

を策定して、これを各国に提案しました。この面での先進国間の共通の戦略を

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作り出すために、OECD におけるコンセンサスの形成に積極的に努力し、その結 果 OECD による「新開発戦略」の採択に主導的役割を果たしました。更に、9 3年には特にアフリカの開発問題に焦点を当てて、TICADIを、また98 年にはTICADIIを開催しました。更に国際社会が開発の問題に援助供与 国、援助受取国という区別に基づいて対立するのではなく、国際社会全体の新 たな共通の問題として認識し、そのための開発戦略を国際的な枠組みの中でコ ンセンサスに基づいて進めることの重要性を主張して、国連その他の場で積極 的なイニシアティブを発揮してきたのであります。 

 

  アフリカを中心とする紛争の予防の問題についても、わが国は既に98年1 月に、「紛争予防戦略に関する東京国際会議」を開催し、紛争のあらゆる段階 での努力をたゆみなく継続的に行う包括的アプローチの必要性を提唱しまし た。更に、昨年7月の「九州・沖縄サミット」においては、紛争問題に対する 具体的な方針を「 紛争予防に関する宮崎イニシアティブ」として取り纏めまし た。日本が今後ともアフリカ問題に対するこうした自らのイニシアティブに誇 りをもち、リーダーシップをとり続けていくことがきわめて重要だと考えるの であります。 

 

  今日のシンポジウムはこのような日本が重ねてきた努力の延長線上の試み として位置づけられるべきものです。このようなイニシアティヴが真のモメン タムを得て大きな流れとなるためには、日本の中において、もっともっとアフ リカのこと、アフリカの現状についての理解が深まり、関心が高まることが大 切です。幸い若い人達の中でアフリカへの関心は増大しております。それが単 なる知的好奇心のレベルをこえて、アフリカの人達との人間としての共感、ア フリカの問題克服努力への連帯へとさらに発展していくことを期待するもの であります。 

 

今回のシンポジウムを通じて、アフリカの現状についての我々日本人一人一 人の理解と関心が高まっていくことを願って本日のシンポジウム開催に当た っての主催者としての問題意識をこめたイントロダクションを終わりたいと 思います。 

ご静聴有難うございました。 

(了) 

 

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