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初級中国語授業におけるシャドーイングと ... - 早稲田大学

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祝利・坪田康, ”初級中国語授業におけるシャドーイングとプレゼンテーションの連携によるスピーキング指導に関する実践”,

初級中国語授業におけるシャドーイングと

プレゼンテーションの連携によるスピーキング指導に関する実践

祝 利

1

坪田 康

2

1

九州大学 〒819-0395 福岡県福岡市西区元岡

744

番地

2

京都工芸繊維大学 〒606-8585 京都市左京区松ケ崎橋上町

E-mail: 1syukuri_234@yahoo.co.jp, 2tsubota-yasushi@kit.ac.jp

あらまし グローバル化の進展に伴い、大学の外国語教育は外国語の運用能力の涵養と向上を主要目標としてい る。しかし、大学の初級中国語を修得した学習者でも「言いたいことが言えない」、つまり、スピーキング力が 十分ではないという問題が普遍的に存在している。本稿では、初級中国語授業にシャドーイングとプレゼンテ ーションを中心としたスピーキング活動を導入し、その実践を通して、2 つの手法の組み合わせにより、学習 者のスピーキング力の向上にいかなる効果をもつのかを考察する。

キーワード 初級中国語,スピーキング,シャドーイング,プレゼンテーション

Introduction of speaking activities with shadowing and presentation in introductory course of Chinese language

Li Z

HU 1

Yasushi T

SUBOTA 2

1 Kyushu University, 744 Motooka Nishi-ku, Fukuoka 819-0395

2Kyoto Institute of Technology, Hashikamicho, Matsugasaki, Kyoto, 606-8585 E-mail: 1syukuri_234@yahoo.co.jp, 2tsubota-yasushi@kit.ac.jp

Abstract With the advance of globalization, the main aim of foreign language education in universities is set to foster practical skills of the language. But, in reality, so many students who finish the introductory course of Chinese, often say they can’t say what they want to express. They think their ability to speak Chinese is not enough. In this paper, we report the practice in the introductory course of Chinese in a university, in which we combine shadowing practice with presentation and then think about the effect of it.

Keywords Introductory course of Chinese, Speaking, Shadowing, Presentations

1.

は じ め に

グ ロ ー バ ル 化 の 進 展 に 伴 い 、 大 学 教 育 は 従 来 の 受 動 的 な 教 育 を 改 め 、 学 生 の 能 動 的 か つ 継 続 的 な 学 習 能 力 の 育 成 に 重 点 を 置 く よ う に な っ た 。 特 に 外 国 語 教 育 に お い て は 、 異 文 化 へ の 理 解 と と も に 、 外 国 語 の 運 用 能 力 の 涵 養 と 向 上 が 教 育 の 目 標 と さ れ て い る 。 こ う し た 中 、 中 国 語 教 育 の 一 環 と し て 、 初 級 学 習 者 向 け の 短 期 留 学 ・ 語 学 研 修 の プ ロ グ ラ ム が 制 定 さ れ 、 実 施 さ れ て い る 。 し か し 、 中 国 大 陸 ・ 台 湾 に 留 学 し た 初 級 中 国 語 学 習 者 の 経 験 談 を 精 査 す る と 、「 中 国 語 の 授 業 を 受 け て

き て 文 法 の 理 解 は で き て い て も 、 そ れ ら を 使 っ て 自 分 の 思 い を 伝 え る と い う こ と は 本 当 に 難 し い 」、「 言 い た い こ と が な か な か 出 て こ な い 」 の よ う な 記 述 が 屡 々 見 受 け ら れ る 。 大 学 で 中 国 語 を 1年 間 学 習 し て も 、 ス ピ ー キ ン グ 力 が 不 十 分 で あ る と 感 じ て い る こ と が 分 か る 。

ス ピ ー キ ン グ の 指 導 に 関 す る 研 究 は 、 英 語 や 日 本 語 教 育 分 野 で 多 く の 蓄 積 が あ る が 、 中 国 語 教 育 の 分 野 で は 、音 声(馮(2007)、平 井(2012)な ど)、文 法(荒 川(2015) な ど)、 談 話 分 析(劉(2015)な ど)な ど の 研 究 は あ る も の の 、学 習 者 の ス ピ ー キ ン グ 力 に 注 目 す る も の は 少 な い 。

(2)

曲(2016)は 日 本 人 中 国 語 学 習 者 の 学 習 過 程 に 注 目 し 、 ス ピ ー キ ン グ テ ス ト 及 び そ の 評 価 尺 度 を 作 っ て い る が 、 研 究 対 象 は 中 上 級 の 学 習 者 で あ り 、 初 級 に つ い て は 言 及 さ れ て い な い 。

輿 水(2005)は 中 国 語 の ス ピ ー キ ン グ 指 導 に つ い て 、 学 習 者 側 の 問 題 点 と し て ① 発 音 へ の 不 安 、 ② 語 彙 の 不 足 、 ③ 文 法 ミ ス へ の 不 安 と ④ 話 題 の な さ の 4つ を 指 摘 し て い る 。 こ の 指 摘 に よ り 、 ス ピ ー キ ン グ を 指 導 す る 際 、学 習 者 自 身 に 内 在 し た「 語 彙 と 文 法 」の 知 識 と「 外 国 語 不 安 」 の2つ の 障 壁 を 取 り 除 か な け れ ば な ら な い と し て い る 。 初 級 中 国 語 授 業 に お い て い か に し て 学 習 者 の 語 彙 量 や 文 法 知 識 を 安 定 さ せ 、外 国 語 不 安 を 除 き 、 つ ま り 、「 言 い た い こ と が 言 え な い 」と い う 普 遍 的 に 存 在 す る 問 題 を 解 決 し 、 学 習 者 の ス ピ ー キ ン グ 力 を 高 め る の か に つ い て 検 討 す る こ と が 重 要 で あ る 。

本 研 究 で は 、 第 二 言 語 習 得 に 密 接 に 関 係 す る 「 イ ン プ ッ ト 」 と 「 ア ウ ト プ ッ ト 」 理 論 の 仮 説 に 基 づ い て 、 こ れ ま で 英 語 教 育 や 日 本 語 教 育 に 多 く 実 践 さ れ て い る シ ャ ド ー イ ン グ と プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン の 手 法 を 初 級 中 国 語 の 授 業 に 取 り 入 れ 、 そ の 組 み 合 わ せ が 初 級 中 国 語 学 習 者 の ス ピ ー キ ン グ 力 の 向 上 に い か な る 効 果 を も つ の か を 検 討 す る 。

2

理 論 的 背 景

2.1

. イ ン プ ッ ト 仮 説 と ア ウ ト プ ッ ト 仮 説

第 二 言 語 習 得 の メ カ ニ ズ ム を 巡 っ て 、 さ ま ざ ま な 仮 説 が 立 て ら れ 、そ の 実 証 研 究 が 行 わ れ て き た 。Krashen に よ り 提 唱 さ れ た イ ン プ ッ ト 仮 説 は 学 習 者 が 自 分 の 中 間 言 語(interlanguage)よ り 少 し 進 ん だ 要 素 を 含 む 言 語(i

+1)(少 し 高 い レ ベ ル の 言 語)を 与 え ら れ る と 周 囲 の 状 況 や 文 脈 な ど の 助 け に よ り そ の 意 味 を 理 解 で き 、 そ れ に よ っ て L2 習 得 が 進 む と い う 理 論 で あ る(佐 野 、2005)。

し か し 、 理 解 可 能 の イ ン プ ッ ト だ け で は 文 法 的 に 不 正 確 な 言 語 表 現 を 使 用 す る 学 生 を 生 み 出 す た め 、 理 解 可 能 な ア ウ ト プ ッ ト も 重 要 視 さ れ る よ う に な っ て き た 。 言 語 を 産 出 す る こ と に よ っ て 、 学 習 者 は 自 分 の 中 間 言 語 で 言 え る こ と と 言 え な い こ と の ギ ャ ッ プ に 気 づ き 、 そ の 結 果 、 イ ン プ ッ ト へ の 注 意 が 促 さ れ る 気 づ き 機 能 を 生 み 出 す と 指 摘 さ れ て い る(佐 野 、2005)。こ の よ う に 、 イ ン プ ッ ト だ け で は な く 、 ア ウ ト プ ッ ト も 第 二 言 語 習 得 に お い て 必 須 条 件 と し て 認 識 さ れ て い る 。

2.2.

シ ャ ド ー イ ン グ と プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン

シ ャ ド ー イ ン グ と は 聞 こ え て き た 音 声 を も と に 、 こ こ ろ(頭)の 中 で 内 的 な 符 号 化 を 行 い 、 ど の よ う な 発 音 で あ る か 認 識 し 、 そ の 後 、 そ れ を 声 に 出 し て 発 声 す る タ ス ク で あ る(門 田 ,2011)。 こ れ ま で 、 英 語 教 育 や 日 本 語 教 育 に お い て 数 多 く の 実 践 研 究 に よ っ て 、 シ ャ ド ー イ ン グ の 導 入 に よ り 、学 習 者 の リ ス ニ ン グ 力 を 高 め 、

発 話 速 度 の 向 上 、 英 語 音 素 の 調 音 、 ま た 学 習 者 の 発 話 量 と 質 の 向 上 に 効 果 が あ る こ と が 指 摘 さ れ て い る(飯 野 ,2014)。中 国 語 教 育 分 野 に お い て は 、趙(2009)で は 、 初 級 中 国 語 授 業 に シ ャ ド ー イ ン グ の 手 法 を 導 入 し 、 ア ン ケ ー ト 調 査 を 通 し て 、シ ャ ド ー イ ン グ が 学 習 者 の「 中 国 語 に 対 す る 戸 惑 い を 解 消 す る 」、「 中 国 語 の リ ズ ム 、 抑 揚 を 身 に つ け る 」、「 意 味 理 解 」を 促 し 、「 集 中 力 」や

「 や る 気 」 を 高 め る こ と に 役 立 つ と 指 摘 し て い る 。 ま た 、 張(2017)で は 、 持 続 的 な シ ャ ド ー イ ン グ の 導 入 が 学 習 者 の 声 調 の 習 得 に 効 果 が あ る と 指 摘 し て い る 。 し か し 、 シ ャ ド ー イ ン グ は 学 習 者 の ス ピ ー キ ン グ 力 に い か な る 影 響 が あ る の か に つ い て は 触 れ て い な い 。

門 田(2011)で は 、 日 本 人 英 語 学 習 者 を 対 象 者 に し た 実 験 研 究 を 通 し て 、 シ ャ ド ー イ ン グ に 以 下 の よ う な 新 た な 効 果 が 潜 在 的 に 存 在 し て い る と 指 摘 し て い る 。 ① シ ャ ド ー イ ン グ は 学 習 者 の 発 音 ス ピ ー ド を 速 く し 、 そ れ に よ っ て 、 使 わ れ て い る 語 句 や 構 文 の 記 憶 ・ 再 生 が よ く な る 。 そ の 理 由 と し て は 、 音 韻 ル ー プ 内 の 内 語 反 復 の 速 度 の 向 上 に よ り 、 そ の 記 憶 容 量 が 拡 大 す る か ら で あ る と 解 釈 し て い る 。 ② シ ャ ド ー イ ン グ は ス ピ ー キ ン グ の た め の 内 的 発 話(リ ハ ー サ ル)を 促 進 す る 可 能 性 が あ る 。 こ の 新 し い 研 究 発 見 に よ り 、 初 級 中 国 語 授 業 に シ ャ ド ー イ ン グ の 練 習 を 取 り い れ れ ば 、 学 習 者 が ス ピ ー キ ン グ を 行 う 際 に 存 在 す る「 文 法 ・語 彙 」に 関 す る 不 安 を 解 決 す る こ と が 期 待 で き る 。

し か し 、 築 山(2013)で は 、 シ ャ ド ー イ ン グ に よ る 言 語 知 識(語 彙 ・ 構 文)の 内 在 化 は 全 て の 言 語 知 識 が 内 在 化 さ れ る わ け で は な く 、 そ こ に 学 生 が 必 要 と 考 え る 表 現 で あ る か ど う か が 影 響 す る 可 能 性 が あ る こ と 、 言 語 知 識 の 内 在 化 に は 、 シ ャ ド ー イ ン グ だ け で は な く 、 さ ら な る ア ウ ト プ ッ ト の タ ス ク が 必 要 で あ る と 指 摘 し て い る 。 し た が っ て 、 本 研 究 で は 、 シ ャ ド ー イ ン グ の 手 法 を 取 り 入 れ る 上 に 、「 聴 く ・話 す ・ 読 む・ 書 く 」の 4 技 能 の 総 合 型 活 動 と 評 さ れ る プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を ア ウ ト プ ッ ト タ ス ク と し て 導 入 す る 。

プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン は 、 自 分 の 問 題 意 識 を 人 に 伝 え 、 人 と の イ ン タ ラ ク テ ィ ブ な や り 取 り に よ っ て 、 自 ら の 学 び を 獲 得 す る 過 程 で あ る(武 末,2019)。 こ れ ま で 、 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン は 英 語 教 育 、 日 本 語 教 育 ま た 中 国 語 教 育 で 多 く 実 践 さ れ て お り 、 学 習 者 が 自 信 を つ け 、 外 国 語 に 対 す る 好 感 度 を 高 め 、 ま た 、 話 す 力 を 高 め る 効 果 が あ る と 指 摘 さ れ て い る(藤 田・山 形・竹 中 、2009)。

以 上 の 先 行 研 究 を 踏 ま え 、 本 研 究 で は 、 学 習 者 の ス ピ ー キ ン グ 力 に 関 わ る ① 語 彙 ・ 文 法 不 足 と ② 外 国 語 不 安 の 問 題 を 解 決 す る た め に 、 学 習 者 の ス ピ ー キ ン グ 力 を 高 め る た め に 、 初 級 中 国 語 授 業 に シ ャ ド ー イ ン グ と プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を 取 り 入 れ 、 そ の 実 践 を 通 し て 、 2 つ の 手 法 の 組 み 合 わ せ が 学 習 者 の 中 国 語 力 、 特 に ス

(3)

ピ ー キ ン グ 力 の 向 上 に 対 し て い か な る 効 果 を も つ の か を 検 討 す る 。 実 践 の 構 図 は 以 下 の と お り で あ る 。

3. 初 級 中 国 語 授 業 に お け る ス ピ ー キ ン グ 活 動 2018年 5月 か ら 2019年2 月 ま で 、 前 期 と 後 期 に 分 け て 初 級 中 国 語 ク ラ ス(36人)に シ ャ ド ー イ ン グ と プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を 中 心 と し た ス ピ ー キ ン グ 活 動 を 実 施 し た 。シ ャ ド ー イ ン グ は 授 業 内 容 の 一 部 と し て 、計20 回 行 い 、 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン は 前 期 と 後 期 の 期 末 テ ス ト と し て 2回 実 施 し た 。 学 習 者 の プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン に 対 し て 、加 藤 ・祝 ・坪 田(2013)に 基 づ い て 、自 己 評 価・

ペ ア 評 価・母 語 話 者(教 師・教 室 外 の 母 語 話 者)に よ る 3 者 評 価 を 行 っ た 。 ま た 学 習 者 に と っ て 、 前 期 と 後 期 の ス ピ ー キ ン グ の 活 動 は 効 果 が あ る か ど う か を 分 析 す る た め に ア ン ケ ー ト 調 査 を 実 施 し た 。

ク ラ ス は 第 一 著 者 と 中 国 人 教 師 が ペ ア で 、 週 1回 ず つ リ レ ー 式 で 担 当 し た 。 ペ ア の 中 国 人 教 師 が 文 法 の 説 明 を 中 心 に 担 当 し 、 第 一 著 者 が 主 に 教 科 書 の 会 話 文 の 説 明 と 練 習 を 担 当 し た 。 授 業 に 使 用 す る 教 材 は 『 ビ デ オ で 学 ぶ 入 門 中 国 語 一 年 生 の こ ろ 』(朝 日 出 版 社)で あ る 。 こ の 教 材 は 日 本 で の 大 学 生 活 を 背 景 と し 、 食 堂 や 図 書 館 、 ア ル バ イ ト 先 な ど の 場 面 に お い て 中 国 人 留 学 生 と 日 本 人 中 国 語 学 習 者 と の 会 話 が 中 心 と な っ て い る 。 教 材 の 構 成 及 び 場 面 設 定 は 表1に 示 す と お り で あ る 。

こ の 教 材 に は 、DVDが 付 属 し て お り 、主 人 公 3人 の 会 話 を リ ア ル タ イ ム で 鑑 賞 す る こ と が で き る こ と が 大 き な 特 徴 で あ る 。 ビ デ オ の 構 成 は ① 字 幕 な し 会 話 ② 中 国 語 字 幕 付 き 会 話 ③ 文 法 ポ イ ン ト ④ 会 話 文 に 関 す る Q

&A⑤ 日 本 語 字 幕 付 き 会 話 ⑥10人1句(年 代 別 、男 女 別 の 10 人 よ り 1 フ レ ー ズ を 10 回 リ ピ ー ト す る)の 6 つ の 部 分 か ら な る 。 中 国 語 字 幕 あ り ・ な し の 構 成 と な っ て い た た め 、 シ ャ ド ー イ ン グ を 導 入 す る 際 に 非 常 に 役 立 っ た 。

3.1.

前 期 授 業 中 の シ ャ ド ー イ ン グ 活 動

シ ャ ド ー イ ン グ 活 動 を 取 り 入 れ た 授 業 の 流 れ は 図 2 が 示 す と お り で あ る 。

授 業 の 冒 頭 で 、 文 法 の 復 習 と 新 出 単 語 の 確 認 を し た 後 、 リ ピ ー テ ィ ン グ の 形 で 教 師 に つ い て 会 話 文 の 音 読 を 行 う 。 教 師 が 読 む ス ピ ー ド を 調 整 し な が ら 学 習 者 の 発 音 を 訂 正 し 、 文 の 区 切 り な ど に 注 意 を 向 け さ せ る 。 本 文 を 流 暢 に 読 め る よ う に な っ て か ら 、 本 文 の 説 明 を 行 う 。 内 容 を 十 分 理 解 し た と 確 認 後 、 シ ャ ド ー イ ン グ 練 習 に 移 る 。1 回 目 と 2 回 目 で は 教 科 書 を 見 な が ら 、 教 師 の 後 に 1秒 ほ ど の 間 隔 を 置 い て す ぐ 読 む 。そ の 際 、 学 習 者 の 様 子 な ど を 鑑 み 、 教 師 が 読 む ス ピ ー ド を 調 整 し た り 、 発 音 し に く い 部 分 ま た 長 文 を 数 回 に わ た っ て 繰 り 返 し て 読 ん だ り す る 。そ の 後 、DVDの ビ デ オ を 鑑 賞 す る 。 ビ デ オ の 音 声 は 中 国 人 が 普 通 に 会 話 す る と き の ス ピ ー ド で あ る た め 、 中 国 語 初 心 者 に と っ て は や や 速 い 。 実 際 の 中 国 人 の 話 す ス ピ ー ド に 慣 れ る た め に 、 中 国 語 字 幕 つ き の ビ デ オ を 見 な が ら 音 声 に つ い で シ ャ ド ー イ ン グ を 2回 す る 。そ の 後 、ビ デ オ の 音 声 を 消 し 、 学 習 者 に 字 幕 な し の 画 面 を 見 せ な が ら 、 会 話 文 の 復 唱 を さ せ る 。音 読 と シ ャ ド ー イ ン グ 練 習 終 了 後 、3~4人 で グ ル ー プ を 組 ん で 、 教 科 書 の 会 話 文 に 類 似 す る 場 面 を 設 定 し 、 学 習 者 に 自 由 会 話 を 作 ら せ る 。 会 話 を グ ル ー プ 内 で 練 習 後 、 ク ラ ス の 前 で 発 表 す る 。 学 習 者 が 練 習 ま た は 発 表 す る 時 、 そ の 発 音 や 文 法 の 誤 り な ど に 対 し 、 教 師 は 随 時 フ ィ ー ド バ ッ ク を 行 う 。

3.2.

前 期 の プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 活 動

前 期 の 期 末 テ ス ト と し て プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 活 動 図 1 実 践 の 構 図

2シ ャ ド ー イ ン グ を 取 り 入 れ た 授 業 の 流 れ 表1 教 材 の 内 容 構 成

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表2 グ ル ー プ メ ン バ ー に よ る 評 価 表 を 行 っ た 。 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 活 動 は ① 簡 単 な 自 己 紹 介 と ② 文 章 の 音 読 の2つ の 部 分 か ら な る 。 自 己 紹 介 は 学 習 者 が こ れ ま で 習 っ て き た 文 型 と 語 彙 を 利 用 し て 作 っ た 内 容 で あ る 。 テ ス ト の 時 に 学 習 者 は 原 稿 な し で 発 表 す る 。 音 読 に 使 用 す る 文 章 は 教 科 書 の 内 容 に 関 連 す る 60~70 字 の 読 物 で あ る 。 テ ス ト 当 日 に 学 習 者 に 配

布 す る 。プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 活 動 の 全 課 程 を 録 画 す る 。 加 藤 ・祝・坪 田(2013)に よ る と 、客 観 的 に 評 価 を 行 う

た め に 、 自 己 ・ ペ ア ・ 母 語 話 者 に よ る3者 評 価 が 相 互 補 完 的 に は た ら き 、 効 果 が あ る と 指 摘 し て い る 。 こ の 理 論 に 基 づ い て 、 本 研 究 の 評 価 は 、 学 習 者 の 発 表 に 対 し て 、グ ル ー プ メ ン バ ー に よ る 評 価 と 母 語 話 者(教 師・

教 室 外 の 母 語 話 者)に よ る 評 価 、ア ン ケ ー ト 調 査 を 通 じ た 自 己 紹 介 の3つ か ら 構 成 し た 。 な お 、 教 師 と 母 語 話 者 に よ る 評 価 は 、 校 内 に 年 一 度 に 行 わ れ た 中 国 語 コ ン テ ス ト の 評 価 基 準 に 基 づ き 作 成 し た 。 評 価 項 目 と し て は 、 ① 「 発 音 」: 普 通 話 の 正 し い 発 音 が で き て い る か 、 中 国 語 と し て 自 然 か 、②「 内 容 」:自 分 の 考 え や 思 い を 伝 え ら れ る か 、③「 伝 達 力(流 暢 さ)」:声 の 大 き さ 、間 合 い( ポ ー ズ )、声 へ の 感 情 の 込 め 方 、④「 非 言 語 表 現 」: 表 情 や パ フ ォ ー マ ン ス 、 発 表 の 工 夫 、 個 性 の 発 揮 の 4 つ を 設 定 し た 。 そ れ ぞ れ の 項 目 に 5点 満 点 で 点 数 を つ け る 形 で あ る 。 教 室 内 活 動 終 了 後 、 そ の ビ デ オ を 教 室 外 の 母 語 話 者 に み せ 、 母 語 話 者 に よ る 評 価 を し て も ら う 。 教 室 外 母 語 話 者 に よ る 評 価 と 教 師 に よ る 評 価 を 合 わ せ た も の が 学 習 者 の 期 末 テ ス ト の 成 績 と し た 。 グ ル ー プ メ ン バ ー に よ る 評 価 は 発 表 者 と 他 の 学 習 者 と の 意 見 交 換 に 使 う た め に 用 い 、 期 末 テ ス ト の 成 績 に は 組 み 込 ま な い こ と と し た 。

テ ス ト を 開 始 す る 前 に 36人 の 学 生 を ラ ン ダ ム に6 つ の グ ル ー プ に 分 け た 。 ア イ ス ブ レ イ ク と し て 、 グ ル ー プ メ ン バ ー 全 員 が 名 前 や 出 身 、 趣 味 な ど に つ い て 話 し 合 わ せ た 後 、1人 ず つ 自 己 紹 介 と 文 章 の 音 読 を 行 い 、 グ ル ー プ メ ン バ ー と 相 互 に 評 価 さ せ た 。 グ ル ー プ メ ン バ ー に よ る 評 価 に は 下 記 の 表2に 示 す も の を ワ ー ク シ ー ト と し て 利 用 さ せ た 。

評 価 表 に 「 よ か っ た と こ ろ 」、「 真 似 し た い と こ ろ 」 と 「 改 善 す べ き と こ ろ 」 の 項 目 を 設 け て お り 、 グ ル ー プ メ ン バ ー は 発 表 者 の 発 表 に 対 し て 、 意 見 や ア ド バ イ ス を 自 由 に 記 入 す る 。 学 習 者 は 発 表 後 、 グ ル ー プ メ ン バ ー か ら の フ ィ ー ド バ ッ ク に 基 づ き 、 練 習 を 繰 り 返 し 、 最 後 に 教 師 の 前 で 2つ の 内 容 を 発 表 し 、 教 師 に 評 価 し て も ら う 。

3.3

. 前 期 ス ピ ー キ ン グ 活 動 の 結 果 に つ い て

本 節 で は 、 実 例 を 紹 介 し な が ら 、 学 習 者 の プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン に 対 し て 行 わ れ た グ ル ー プ メ ン バ ー に よ る 評 価 、母 語 話 者(教 師・教 室 外 の 母 語 話 者)に よ る 評 価 、 自 己 評 価 を 含 む ア ン ケ ― ト 調 査 の 結 果 に つ い て の 分 析 を ま と め る 。

3.3.1

グ ル ー プ メ ン バ ー に よ る 評 価

グ ル ー プ メ ン バ ー に よ る コ メ ン ト を 教 師 ・ 母 語 話 者 に よ る 評 価 の 基 準 に 照 ら し 合 わ せ て 、 表 3が 示 す4つ の 面 に 分 け る こ と が で き る 。

(1)よ か っ た と こ ろ 、 真 似 し た い と こ ろ

表3が 示 す よ う に 、伝 達 力 に 関 す る 記 述 が 最 も 多 い 。 中 国 語 を 4ヶ 月 学 習 し て い た 学 習 者 は 他 人 の 発 表 を 聞 く 際 、最 も 注 目 す る 部 分 が 速 度(流 暢 さ)、声 の 大 き さ 、 文 の 区 切 り な ど で あ る こ と が わ か っ た 。

(2)改 善 が 必 要 な と こ ろ

表4に よ る と 、 学 習 者 に 存 在 す る 問 題 点 は 非 言 語 表 現 の 部 分 に あ る 。 特 に 発 表 者 の 表 情 、 視 線 、 元 気 か ど う か 、 つ ま り 発 表 す る 際 の 様 子 が よ く 観 察 さ れ る こ と が わ か っ た 。 ま た 、 発 音 が 上 手 な 学 習 者 か ら 発 音 に 関 す る 具 体 的 な 指 摘 も あ る 。さ ら に 、そ の 他 の 記 述 か ら 、 学 習 者 は 他 人 の 発 表 を 聞 く 時 、 集 中 す る 様 子 が 想 像 で き る 。

3 前 期 グ ル ー プ メ ン バ ー に よ る 評 価(1)

(5)

3.3.2

ア ン ケ ー ト 調 査 に つ い て

(自 己 評 価 含 む) ア ン ケ ー ト 調 査 の そ れ ぞ れ の 質 問 項 目 に つ い て 、 学 習 者 が い か に 答 え た の か に つ い て 見 て い く (ア ン ケ ー ト 用 紙 は 付 録 資 料 1を 参 照) 。

(1)中 国 語 で 話 す こ と に 対 し て ど の よ う な 感 情 を 持 っ て い る か 。

表5が 示 す よ う に 、36名 の 回 答 者 の う ち 、約 半 数 の 学 習 者 が 中 国 語 を 話 す こ と に 対 し 、「 楽 し い 、わ く わ く 」 と 評 し て い る 。 し か し 、 約 半 数 の 学 習 者 は 「 緊 張 ・ 不 安 ・ 自 信 が な い 」 と 評 し て い る 。 具 体 的 に 何 に 対 し て

「 緊 張 ・ 不 安 」 を 感 じ た か を 調 べ る と 、「 発 音 、 声 調 、 ま た 伝 わ る か ど う か 」 の 3点 が 挙 げ ら れ て い た 。

(2)中 国 語 で 話 せ る よ う に な る た め の 方 法

ス ピ ー キ ン グ 力 を 高 め る 方 法 に つ い て 、 表6が 示 す と お り 、 学 習 者 は 主 に 発 音 と 発 話 の2つ の 面 か ら 答 え た 。 発 音 の 面 に お い て は 、 繰 り 返 し て 練 習 し 、 誰 か に 正 し て も ら う こ と が 重 要 だ と 指 摘 さ れ て い る 。 ま た 、 発 話 の 面 に お い て は 、 母 語 話 者 と 話 す の が よ く 挙 げ ら れ 、 ネ イ テ ィ ブ の 人 か ら 自 然 と 習 得 す る と い う 意 欲 が 窺 え る 。

(3)活 動 の 感 想

・ 緊 張 し た

・ い ろ い ろ な 人 の 発 表 を 聞 け て 、 自 分 に 足 り な い も の が 見 え て き た 。

・ 自 己 紹 介 も で き た し 、 ち ょ っ と は 中 国 語 が 話 せ る よ う に な っ た と 実 感 で き て う れ し い 。

・ テ ス ト と な る と 緊 張 し て し ま っ た 。 も っ と 自 信 を 持 て る よ う に な り た い 。

・ 聞 き 取 る の が 難 し い

グ ル ー プ(3人 ~4人)に よ る 発 表 は 普 段 の 授 業 で 毎 週 の よ う に 行 っ て い た が 、1 人 で グ ル ー プ 全 員 に 対 し て プ レ ゼ ン を 行 い 、 他 の メ ン バ ー に コ メ ン ト し て も ら う 形 は は じ め て で あ る 。 上 記 の コ メ ン ト か ら 、 グ ル ー プ の 中 で プ レ ゼ ン す る こ と を 通 し て 、 他 人 の 発 表 を 聞 く こ と が で き 、 他 人 の 優 れ た 点 や 誤 り に 気 づ き 、 さ ら に そ の 気 づ き を 自 分 自 身 の 発 表 に 活 か せ る と い う 効 果 が あ っ た こ と が 見 て と れ る 。 ま た 、 学 習 者 が 「 中 国 語 で 話 せ た 」 と い う 達 成 感 や 自 信 あ り げ な 様 子 も 伝 わ っ て き た 。

3.3.3

母 語 話 者 に よ る 評 価 を 合 わ せ た 結 果

本 節 で は 、 グ ル ー プ メ ン バ ー に よ る 評 価 と ア ン ケ ー ト 調 査 に 母 語 話 者 に よ る 評 価 を 合 わ せ て 、 前 期 の ス ピ ー キ ン グ 活 動 の 結 果 に つ い て ま と め る 。

(1)問 題 点

① 話 す こ と に 対 す る「 緊 張 ・不 安 」の 存 在:中 国 語 で 話 す 時 の 感 情 に つ い て 約 半 数 の 学 習 者 が 「 緊 張 」 や 「 不 安 」 を 挙 げ て い る 。 特 に 中 国 語 の 発 音 、 声 調 及 び 話 し た 内 容 が 伝 わ っ た か ど う か に 関 す る 不 安 で あ る 。 そ の 不 安 や 自 信 の な さ が 他 の メ ン バ ー に も 伝 わ り 、 グ ル ー プ メ ン バ ー に よ る 評 価 の 中 に も 「 自 信 が な い 、 心 配 し す ぎ 」 の よ う な 記 述 が み ら れ る 。

② 声 が 小 さ く 、 ア イ コ ン タ ク ト が な い : グ ル ー プ メ ン バ ー に よ る 評 価 と 母 語 話 者 に よ る 評 価 の 双 方 で 指 摘 さ れ て お り 、 そ の 理 由 と し て 本 人 は 「 高 校 以 来 、 人 の 前 表5 中 国 語 に 対 す る 感 情(数 字 は 人 数)

4 前 期 グ ル ー プ メ ン バ ー に よ る 評 価(2) 表6 中 国 語 を 話 せ る よ う に な る 方 法 ( 前 期 )

(6)

で 発 表 す る こ と が あ ま り な い 」 と し て い た 。

③ 文 章 の 音 読 が 流 暢 で は な い : 母 語 話 者 に よ る 評 価 で よ く 取 り 上 げ ら れ て い た 点 で あ る 。 音 読 に 使 用 し た 文 章 は 教 科 書 の 内 容 に 関 連 す る 読 物 で あ る 。 漢 字 に 読 み 方 を 表 す 「 ピ ン イ ン 」 が 付 さ れ て い る も の の 、 未 習 の 語 彙 が あ っ た り 、 長 文 で あ っ た り す る た め 、 学 習 者 に と っ て 発 音 と 文 の 区 切 り が や や 難 し い も の と 思 わ れ る 。 ま た 、 練 習 不 足 も 音 読 が 流 暢 で は な い こ と の 要 因 の 一 つ で あ る と 考 え ら れ る 。

(2)良 い と こ ろ

① 自 信 を つ け ら れ た : 学 習 者 は プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を 行 う 際 、「 緊 張 や 不 安 」を 感 じ て い た 。そ の 一 方 で 、中 国 語 で 発 表 す る こ と を 通 し て 、「 中 国 語 が 話 せ る よ う に な っ た と 実 感 し た 」 と い う 記 述 か ら 分 か る よ う に 、 自 分 自 身 の 言 葉 で 中 国 語 を 話 す 自 信 が つ い た 学 習 者 も い た よ う で あ る 。

② 学 習 者 の 間 の 協 同 学 習 を 促 し た : グ ル ー プ メ ン バ ー に よ る 相 互 評 価 を 通 し て 、 学 習 者 間 の 交 流 が で き 、 相 手 の 良 い 点 や 改 善 点 に つ い て 話 し 合 う こ と が で き た 。 双 方 の 良 い 点 や 改 善 点 を 次 の 発 表 に 活 か す こ と が で き た 。 こ れ に よ っ て 、 学 習 者 同 士 の 協 同 学 習 が 促 進 さ れ た 。

(3)共 通 の 誤 り 約4か 月 間 の 学 習 を 通 し て 、学 習 者 の 中 国 語 力 は 、 文 法 に お い て は ほ ぼ 同 じ 水 準 に 達 し て い た が 、 発 音 と 流 暢 さ に 差 が つ い て い た 。 母 語 話 者 、 グ ル ー プ メ ン バ ー に よ る 相 互 評 価 の 双 方 で 、 発 音 上 の 共 通 の 誤 り が 指 摘 さ れ て い る 。 例 え ば 、 声 調 の 区 別 が で き て い な い 、 ま た 、 捲 き 舌 音 と 声 調 を 正 確 に 発 音 で き て い な い と い う 点 で あ る 。

(4)中 国 語 の 話 す 能 力 を 高 め る た め に は:多 く の 学 習 者 が 「 口 を 使 っ て 声 を 出 し て 繰 り 返 し て 、 練 習 す る 」 こ と と 、「 ネ イ テ ィ ブ の 人 と 話 す 」こ と を 挙 げ て い る 。中 国 語 母 語 話 者 が 少 な い と い う 環 境 の 中 で 、 い か に 中 国 人 と 話 す 量 を 増 や す か は 課 題 で あ る が 、 今 回 の 授 業 で 実 施 し て き た シ ャ ド ー イ ン グ と プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン の 組 み 合 わ せ は 一 つ の 有 効 な 解 決 法 で は な い か と 考 え て い る 。

3.4. 後 期 の ス ピ ー キ ン グ 活 動

前 期 の ス ピ ー キ ン グ 活 動 の 結 果 を 踏 ま え 、 後 期 に お い て は 、① 学 習 者 の 発 音 に 共 通 に 存 在 す る「 捲 き 舌 音 」 と 「 声 調 」 の 問 題 を 解 決 す る た め 、 音 読 と シ ャ ド ー イ ン グ の 練 習 に よ り 多 く の 時 間 を 割 く よ う に し 、 シ ャ ド ー イ ン グ の 手 法 を 通 し て 学 習 者 が ア ク セ ン ト と 発 音 を 自 然 と 身 に つ け る よ う に 指 導 し た 。 ② 学 習 者 が ロ ー ル プ レ イ を 行 う 際 、 話 す 音 量 や 視 線 、 非 言 語 表 現 な ど に 注 意 さ せ 、 よ り 自 然 な 会 話 が で き る よ う に 指 導 し た 。 3.5

. 期 末 の プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 活 動

前 期 と 同 様 、 後 期 の 期 末 テ ス ト で も プ レ ゼ ン テ ー シ

ョ ン 活 動 を 課 し た 。 後 期 の プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン は ① 短 い ス ピ ー チ と ② 文 章 の 音 読 の 2つ か ら な る 。 ス ピ ー チ は 、 学 習 者 の 既 習 文 型 と 語 彙 を 考 慮 し 、 テ ー マ を 「 将 来 の 私 」、「 私 の 故 郷 」と「 私 が 好 き な ○ ○(場 所・も の 等)」 の 3 つ と し た 。 学 習 者 は 3 つ の テ ー マ か ら 1 つ を 選 択 し 作 文 を す る 。 作 文 の 内 容 は 事 前 に 教 師 に よ る ネ イ テ ィ ブ チ ェ ッ ク を 行 う 。 テ ス ト 当 日 に 発 表 者 が 作 文 の 内 容 を 暗 唱 し て 発 表 す る 。音 読 に 使 用 し た 文 章 は 、 年 度 末 に 校 内 で 行 わ れ た 1年 生 向 け の 中 国 語 コ ン テ ス に 採 用 さ れ た 中 国 文 学 作 品 の 一 部 分 で あ る(80 字 前 後)。 音 読 用 の 文 章 は テ ス ト 当 日 に 学 習 者 に 配 布 し た 。

プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 活 動 の 当 日 、 前 期 と 同 じ よ う に 、 ク ラ ス の 36 人 を ラ ン ダ ム に6つ の グ ル ー プ に 分 け た 。 学 習 者 は ま ず グ ル ー プ の 中 で ス ピ ー チ と 文 章 の 音 読 を 行 い 、 グ ル ー プ メ ン バ ー か ら 評 価 し て も ら う 。 グ ル ー プ メ ン バ ー か ら の コ メ ン ト を 参 考 に 練 習 し 、 そ の 後 、 教 師 の 前 で 発 表 し 、 教 師 に 評 価 し て も ら う 。 学 習 者 に 同 じ よ う な 臨 場 感 を 与 え る た め に 、 教 師 の 前 で 発 表 す る 際 に の み タ ブ レ ッ ト で 録 画 す る 。 発 表 終 了 後 、 学 習 者 の 自 己 評 価 を 含 ん だ 後 期 の ス ピ ー キ ン グ 活 動 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 を 実 施 す る 。 活 動 終 了 後 、 録 画 し た ビ デ オ を 教 室 外 の 中 国 語 母 語 話 者 に み せ 、 教 室 外 の 母 語 話 者 に よ る 評 価 を も ら う 。

グ ル ー プ メ ン バ ー 、 教 師 及 び 母 語 話 者 に よ る 評 価 の 項 目 は 前 期 と 同 じ で あ る 。 自 己 評 価 を 含 む 後 期 の ス ピ ー キ ン グ 活 動 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 は 付 録 資 料 2の と お り で あ る 。

3.6

. 後 期 ス ピ ー キ ン グ 活 動 の 結 果 に つ い て

本 節 で は 、 実 例 を 挙 げ な が ら 学 習 者 の プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 活 動 に 対 し て 、グ ル ー プ メ ン バ ー や 母 語 話 者(教 師・教 室 外 の 母 語 話 者)は い か に 評 価 し た の か 、及 び 自 己 評 価 を 含 ん だ 後 期 ス ピ ー キ ン グ 活 動 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 の 結 果 に つ い て ま と め る 。

3.6.1

グ ル ー プ メ ン バ ー に よ る 評 価

(1)良 か っ た と こ ろ 、 真 似 し た い と こ ろ

表7に 示 さ れ た コ メ ン ト か ら 、 前 期 と 比 べ 、 中 国 語 を8ヶ 月 学 習 し た 学 習 者 は 他 人 の 発 表 を 聞 く 際 、 一 層 内 容 に 注 目 す る よ う に な っ た 傾 向 を 示 し て い る 。 発 表 者 が 故 郷 や 好 き な こ と に つ い て 紹 介 す る 時 、 そ の 内 容 だ け で な く 、 気 持 ち も 聞 き 手 に 伝 わ り 、 発 表 自 体 は 他 人 に 影 響 を 与 え る 力 を 持 っ て い る と い え る 。 ま た 、 伝 達 力 の 項 目 に 、「 速 度 が 速 い 、流 暢 だ 」と い う 評 価 も 屡 々 見 ら れ る 。 非 言 語 表 現 に お い て も ジ ェ ス チ ャ や 表 情 が 豊 か に な っ た と い え る 。

(7)

(2)改 善 が 必 要 な と こ ろ

表 8 が 示 す と お り 、 前 期 に 引 き 続 き 「 声 が 小 さ い 、 表 情 、 自 信 が な い 」 の よ う な 問 題 が あ る 。 ま た 、 前 期 と 比 べ 、「 声 調 」 の 指 摘 が ほ と ん ど な く 、「 捲 き 舌 音 」 に 関 す る 指 摘 が 多 く な っ た 。 伝 達 力 の 項 目 に 最 も 指 摘 さ れ て い る の は 流 暢 さ で あ る 。 プ レ ゼ ン は 暗 記 す る こ と が 求 め ら れ た が 、 発 表 日 は ち ょ う ど 後 期 の 試 験 期 間 中 に あ る た め 、 他 の 科 目 の 復 習 な ど に よ っ て 、 暗 記 で き て い な い 、 ま た は 流 暢 で は な い 学 習 者 は 少 な く な か っ た 。

3.6.2

ア ン ケ ー ト 調 査 に つ い て

(

自 己 評 価 含 む

) ア ン ケ ー ト 調 査 の 質 問 項 目 に 対 し て 、 学 習 者 に よ る 回 答 は 以 下 の と お り で あ る 。

(1) 本 日 の 発 表 に つ い て の 感 想

表 9 が 示 す よ う に 、 学 習 者 か ら 流 暢 さ に 心 残 り が あ

る と い う 感 想 が 最 も 多 い 。発 表 者 自 身 の 発 音 に つ い て 、 自 己 評 価 で 賛 否 両 方 も あ る 。し か し 、発 表 に 対 し て「 緊 張 」 と い う 表 現 は 大 幅 に 減 少 し た 。

(2)中 国 語 の 授 業 で は ス ピ ー キ ン グ 練 習 が 十 分 か 、そ の 理 由 は ? (A: 十 分 で あ る B: 普 通 に で き た Cで き て い な い)

表 10 が 示 す よ う に 、 こ れ ま で の ス ピ ー キ ン グ 活 動 に 対 し て 、 ク ラ ス の 約 4分 の3の 学 習 者 が 「A十 分 で あ る 」 と 評 価 し て い る 。 そ の 主 な 理 由 と し て 、 授 業 中 の 読 む 活 動 と 会 話 練 習 を す る こ と を 通 し て 、 文 と 単 語 を 覚 え る こ と が で き た か ら と 理 由 を 挙 げ て い る 。 さ ら に 、 テ ス ト 前 に 暗 記 す る 必 要 が な い ほ ど 覚 え た と い う 記 述 も あ る 。 こ こ か ら 、 シ ャ ド ー イ ン グ を 中 心 と し た 読 む 練 習 を 通 し て 、 文 や 語 彙 に 対 し て 、 長 期 的 に 記 憶 す る 効 果 が あ る 可 能 性 が 示 唆 さ れ る 。 し か し 、 ク ラ ス の 中 に は 発 表 に 対 し て 強 い 不 安 を 持 つ 学 習 者 も ま だ い る こ と も 事 実 で あ る 。

(3)前 期 よ り 上 達 し た と こ ろ は ?

「 聴 く ・話 す ・読 む ・書 く 」の 中 国 語 の4技 能 の う ち 、 ど の 技 能 が 上 達 し た か と い う 質 問 に 対 し 、 学 習 者 の 回 表7 グ ル ー プ メ ン バ ー に よ る 評 価(1)

8 グ ル ー プ メ ン バ ー に よ る 評 価(2)

9 後 期 の 活 動 に つ い て の 感 想

10 後 期 ス ピ ー キ ン グ 活 動 が 十 分 か

(8)

答 は 表11の と お り で あ る 。

表11が 示 す よ う に 、「 聴 く 」 よ り 、「 話 す ・読 む ・書 く 」に 関 す る 回 答 が 多 い 。「 読 む の が 速 く な り 、難 し い 文 章 を 読 め る よ う に な っ た 」。 ま た 、「 書 く 」 こ と に つ い て は 、 表 現 力 が 豊 か に な っ た と い う 記 述 も あ る 。 さ ら に 、「 話 す 」 こ と に つ い て は 、「 伝 え ら れ る こ と が 増 え た 」、「 話 す 時 止 ま ら な い よ う に な っ た 」 な ど 、 中 国 語 を 以 前 に 比 べ て 自 由 に 駆 使 で き る よ う に な っ た 一 面 を 見 せ て い る 。 そ の ほ か 、 全 体 的 に 上 達 し た と 評 す る 学 習 者 も 数 人 い た 。

(4) 中 国 語 を 話 す 能 力 を 高 め る に は ?

中 国 語 を 話 す 能 力 を 高 め る 方 法 を 見 直 す 際 、 前 期 は

「 多 く 読 む 、 ネ イ テ ィ ブ の 人 と 話 す 」 と い う 答 え が 多 か っ た が 、 中 国 語 を 学 習 し て8ヶ 月 が 経 っ た 後 期 の 回 答 で は 、 表12が 示 す と お り 、「 多 く 読 む 」 は 相 変 わ ら ず 多 く 挙 げ ら れ て い る が 、「 話 す 」 に つ い て は 、「 ス ピ ー キ ン グ の 機 会 を 増 や す 」、「 発 表 す る 」 と い う 表 現 に 変 わ っ た 。 こ こ か ら 、 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 活 動 は す で

に 学 習 者 に 受 け 入 れ ら れ 、 ス ピ ー キ ン グ へ の 効 果 が 学 習 者 に 認 め ら れ た も の と 考 え ら れ る 。

3.6.3

母 語 話 者 に よ る 評 価 を 合 わ せ た 結 果

本 節 で は 、 グ ル ー プ メ ン バ ー に よ る 評 価 、 自 己 評 価 を 含 ん だ ア ン ケ ー ト 調 査 結 果 に 、 母 語 話 者 に よ る 評 価 を 加 え 、 後 期 の ス ピ ー キ ン グ 活 動 の 結 果 に つ い て ま と め る 。

(1) 外 国 語 不 安 の 緩 和 : 前 期 の ス ピ ー キ ン グ 活 動 の 効 果 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 で は 、「 不 安 」や「 緊 張 」に 関 す る 記 述 が ク ラ ス の 約 半 数 を 占 め て い た が 、 後 期 の 調 査 で は 、こ の よ う な 記 述 は ま だ 存 在 し て い る も の の 、 前 期 よ り 大 幅 に 減 少 し て い た 。

(2)読 み ・書 き と と も に ス ピ ー キ ン グ 力 が 上 達 し た : 学 習 者 に よ る 自 己 評 価 の 中 に 、「 読 む ス ピ ー ド が 速 く な っ た 」、「 文 章 の 表 現 力 が つ け ら れ た 」 と い う 読 み 書 き に 関 す る 評 価 が あ っ た 。ス ピ ー キ ン グ 力 に つ い て は 、「 伝 え ら れ る こ と が 増 え た 」、「 い ろ ん な こ と が 言 え る よ う に な っ た 」、「 自 分 が 表 現 し た い こ と を 中 国 語 で 言 え る よ う に な っ た 」 な ど 、 学 習 者 が 自 分 自 身 の 上 達 ぶ り を 感 じ 取 っ た 表 現 が 屡 々 み ら れ た 。 こ こ か ら 、 ス ピ ー キ ン グ 活 動 を 通 し て 、学 習 者 は「 言 い た い こ と が い え る 」 よ う に な っ た と い う 効 果 が 見 ら れ た 。

(3)学 習 者 が 自 信 を つ け た:前 期 と 比 べ て 、後 期 の テ ス ト で は 、 学 習 者 が 自 信 に 満 ち て 中 国 語 を 駆 使 し て 話 し て い た と 母 語 話 者 が 評 価 し て い た 。そ の う ち 、「 接 続 詞 や 四 字 熟 語 を 積 極 的 に 使 用 す る 学 習 者 が か な り い る 」 と も 述 べ て い た 。 接 続 詞 と 四 字 熟 語 の 使 用 は 実 際 、 中 上 級 の 学 習 者 に 求 め ら れ る 中 国 語 力 の 一 部 で も あ る 。 (4)語 彙 と 文 法 の 記 憶 に 長 期 的 な 効 果 が あ る:こ れ ま で の シ ャ ド ー イ ン グ と プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 活 動 の 効 果 に 関 す る 調 査 で 、 学 習 者 の 4分 の3が 「 十 分 で あ る 」 と 答 え て い る 。 特 に 授 業 中 の 音 読 と シ ャ ド ー イ ン グ に つ い て は 、「 本 文 を 何 度 も 読 ん で 速 く 読 め る よ う に な っ た 」、「(音 読 や シ ャ ド ー イ ン グ で)本 文 を 言 い ま く っ て 、 テ ス ト 前 暗 記 す る 必 要 が な い 」 と い う 記 述 が あ っ た 。 こ れ ら の 記 述 か ら 、 授 業 中 に 大 量 な 音 読 と シ ャ ド ー イ ン グ 活 動 を 取 り 入 れ る こ と に よ り 、 学 習 者 が 文 章 を 読 む 際 の 流 暢 さ が 増 し 、 発 音 や 内 容 を 自 然 に 身 に つ け る 効 果 が あ る と 考 え ら れ る 。 ま た 、 こ の 効 果 は 期 末 ま で の 長 期 間 に わ た っ て 継 続 す る こ と が で き た と も い え る 。 (5)問 題 点

① 前 期 と 同 じ よ う に 捲 き 舌 音 や 声 調 の 正 確 さ に ま だ 問 題 を 残 し て い る が 、 学 習 者 自 身 が そ の 間 違 い に 気 づ く こ と が で き 、 そ し て 修 正 し よ う と い う 姿 勢 が 見 ら れ る 。 ② 発 表 す る 際 、 相 変 わ ら ず ア イ コ ン タ ク ト が 足 り な い と 指 摘 さ れ て い る 。③ 文 章 の 音 読 に つ い て は 、「 文 の 区 切 り が な く 、 ピ ン イ ン に た よ り す ぎ る 」 と い う 点 も 指 摘 さ れ て い る 。 文 学 作 品 を 読 む 際 、 内 容 を 十 分 理 表11 前 期 よ り 上 達 し た 部 分

12 中 国 語 を 話 す 能 力 を 高 め る 方 法 ( 後 期 )

(9)

解 せ ず ひ た す ら 読 む に は 、 文 の 区 切 り を 正 し く で き な い こ と は 考 え ら れ る が 、 声 調 の 不 正 確 さ と ア イ コ ン タ ク ト の 足 り な さ か ら 、 普 段 の 発 音 指 導 及 び プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン に 関 す る 指 導 は ま だ 十 分 で は な い と 考 え ら れ る 。

4. 考 察

初 級 中 国 語 授 業 に お い て 、 前 期 ・ 後 期 に わ た っ て 継 続 的 に シ ャ ド ー イ ン グ と プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を 中 心 と し た ス ピ ー キ ン グ 活 動 を 取 り 入 れ る こ と に よ り 、 学 習 者 の 声 調 と 発 音 の 正 確 さ に ま だ 問 題 が 存 在 し て い る も の の 、 学 習 者 の ① 中 国 語 に 対 す る 不 安 が 軽 減 さ れ 、 ② 自 信 を 持 っ て 流 暢 に 話 せ る よ う に な っ た 、 と い う 先 行 研 究 で 指 摘 さ れ て い る 効 果 が み ら れ た 。そ れ 以 外 に も 、 シ ャ ド ー イ ン グ と プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン の 導 入 に よ り 、

③ 学 習 者 の 中 国 語 ス ピ ー キ ン グ 力 が 高 ま り 、 ④ 学 習 者 が 習 得 し た 語 彙 ・文 法 知 識 が 長 期 記 憶 に 貢 献 す る 効 果 を 確 認 で き た 。 し か し 、 こ れ ら の 効 果 は 偶 然 の 結 果 な の か 、 そ れ と も 学 習 段 階 が 上 が っ た こ と に よ る 自 然 な 習 得 の 結 果 な の か 、 原 因 を 特 定 す る こ と は で き て い な い 。 こ の 問 題 を 解 決 す る た め に 、 ス ピ ー キ ン グ 活 動 を 取 り 入 れ て い な い 統 制 群 ク ラ ス(40 人)と の 比 較 を 行 っ た 。

統 制 群 の ク ラ ス と 実 験 群 の ク ラ ス の 担 当 は 共 通 で あ り 、第 一 著 者 は 主 に 会 話 文 の 説 明 と 練 習 を 担 当 し た 。 統 制 群 ク ラ ス の 全 学 期 の 授 業 の 流 れ は 図 3の と お り で あ る 。

統 制 群 の ク ラ ス と 実 験 群 の ク ラ ス の 授 業 の 違 い は 、 授 業 中 に シ ャ ド ー イ ン グ の 導 入 の 有 無 で あ る 。 実 験 群 の ク ラ ス の 学 習 者 の ス ピ ー キ ン グ 力 と 比 較 す る た め に 、 統 制 群 の ク ラ ス に 後 期 の 期 末 テ ス ト の み に プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を 実 施 し た 。 な お 、 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン の 内 容 と 形 式 は 実 験 群 の ク ラ ス と 同 じ で あ る 。

学 習 者 の プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン に 対 し て 、 グ ル ー プ メ ン バ ー に よ る 評 価・母 語 話 者(教 師・教 室 外 の 母 語 話 者) に よ る 評 価 と 、 自 己 評 価 を 含 ん だ ス ピ ー キ ン グ 活 動 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 を 行 っ た 。 評 価 項 目 や 評 価 基 準 は 実 験 群 と 同 じ で あ る 。

教 師 及 び 母 語 話 者 に よ る 評 価 は 期 末 テ ス ト の 成 績 と さ れ た 。実 験 群 ク ラ ス の 平 均 点 は80点 で あ る が 、統 制 群 ク ラ ス 全 体 の 平 均 点 は 60 点 に と ど ま っ て い る 。 ま た 母 語 話 者 に よ る と 、 統 制 群 学 習 者 の 発 表 内 容 が 短

く 、 字 数 が 少 な い 、 学 習 者 に 「 話 そ う 、 伝 え よ う 」 と い う 意 欲 が 薄 い 。 そ の 他 、 統 制 群 が 実 験 群 と 同 じ よ う に 中 国 語 を 8ヶ 月 学 習 し て い た が 、 統 制 群 ク ラ ス 全 体 の 水 準 は 半 年 し か 学 習 し て い な い よ う な 印 象 を 母 語 話 者 に 与 え た 。

ア ン ケ ー ト 調 査 で は 、「 本 日 の 活 動 に つ い て の 感 想 」 の 項 目 に 、40人 の う ち 、20人 が「 緊 張・不 安 」と 挙 げ て お り 、16人 は 「 楽 し か っ た 」 と 表 現 し 、4人 は 「 発 音 は 難 し か っ た 」 ま た は 「 わ か ら な い 」 と 記 入 し て い る 。 こ の 結 果 か ら 、 学 習 者 は 中 国 語 を 8ヶ 月 学 習 し て い て も 、 は じ め て プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を 行 う と 、 中 国 語 に 対 す る 不 安 が 強 く 存 在 し て い る こ と が わ か っ た 。 こ れ に 対 し て 、 前 期 か ら プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を 取 り 入 れ た 実 験 群 の 学 習 者 に そ の 不 安 は 、 後 期 に な る と 大 幅 に 軽 減 さ れ た 。 こ こ か ら 、 早 期 に プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を 導 入 す る こ と は 、 不 安 の 軽 減 に 効 果 が あ る と 考 え ら れ る 。

上 記 の 実 験 群 と 統 制 群 の プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン の 結 果 を 比 較 す る こ と を 通 し て 、 早 期 か つ 継 続 的 に シ ャ ド ー イ ン グ と プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を 実 施 す る こ と は 、 早 い 段 階 に 学 習 者 の 不 安 や 緊 張 感 を 緩 和 し 、 自 信 を つ け る こ と が で き 、 ま た 、 学 習 者 の 発 音 の 正 確 率 を 高 め 、 発 話 量 を 増 や し 、 学 習 意 欲 を 高 め る 効 果 が あ る こ と を 示 唆 し て い る 。

5. 終 わ り に

本 研 究 で は 、 初 級 中 国 語 の 授 業 に お い て シ ャ ド ー イ ン グ と プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を 中 心 と し た ス ピ ー キ ン グ 活 動 を 取 り 入 れ た こ と に よ る 効 果 を 検 証 し た 。 こ の 2 つ の 手 法 の 組 み 合 わ せ に よ り 、 初 期 段 階 に 学 習 者 が 中 国 語 を 使 用 し て 話 す 際 、 不 安 や 緊 張 、 自 信 の な さ が 多 く み ら れ る も の の 、 継 続 的 に シ ャ ド ー イ ン グ と プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を 実 施 す る こ と で 、 学 習 者 が 中 国 語 を 話 す と き の 不 安 が 軽 減 さ れ 、 緊 張 が 緩 和 さ れ 、 自 信 が つ け ら れ る よ う に な り 、 学 習 者 の ス ピ ー キ ン グ 力 向 上 に 対 す る 効 果 が 見 ら れ た 。 ま た 、 シ ャ ド ー イ ン グ を 中 心 と し た 読 む 活 動 を 通 し て 、学 習 者 は 語 彙 ・文 法 知 識 を 長 期 的 に 記 憶 す る こ と が で き た と い う 効 果 も 見 ら れ た 。 さ ら に 、 シ ャ ド ー イ ン グ と プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を 取 り 入 れ て い な い ク ラ ス と の 比 較 に よ り 、 初 級 中 国 語 授 業 に お い て 早 期 か つ 継 続 的 に シ ャ ド ー イ ン グ と ス ピ ー キ ン グ 活 動 を 取 り 入 れ る こ と が 学 習 者 の 中 国 語 発 音 の 正 確 率 を 高 め 、 発 話 量 を 増 や し 、 中 国 語 に 対 す る 不 安 を 早 い 段 階 に 軽 減 す る こ と が で き 、 中 国 語 で 話 す 意 欲 を 強 め る こ と に 効 果 が あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。

(10)

6. 今 後 の 課 題

本 研 究 で は 、 初 級 中 国 語 授 業 に お い て 、 シ ャ ド ー イ ン グ と プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン の 組 み 合 わ せ に よ り 、 学 習 者 の ス ピ ー キ ン グ 力 に い か な る 効 果 を も た ら し た か を 、 主 に ア ン ケ ー ト 調 査 の 結 果 に 基 づ い て 考 察 し た が 、 こ の2つ の 手 法 が ス ピ ー キ ン グ 力 と い か な る 相 関 関 係 が あ る の か は 他 稿 に 譲 り た い 。 ま た 、 本 研 究 で は プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン の テ ー マ は 教 師 が 選 定 し た が 、 学 習 者 が 調 査 を 行 い 、 学 習 者 の ニ ー ズ に 基 づ い て 選 定 す る 方 が 望 ま し い と 考 え る 。 さ ら に 、 本 研 究 の 実 践 で は 、 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を ス ピ ー キ ン グ 活 動 の 一 環 と し て 、 前 期 と 後 期 の 期 末 テ ス ト の 2回 し か 行 え な か っ た 。 今 後 は プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン を 実 施 す る 回 数 や 頻 度 な ど を 考 慮 し 、 継 続 的 に プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン の 効 果 を 考 察 し て い き た い 。

謝 辞:本 研 究 は 基 盤 研 究(c)「 遠 隔 地 の 外 国 語 話 者 と の 協 働 に よ る 外 国 語 ス ピ ー キ ン グ 授 業 の 充 実 化 の 研 究 」 (代 表 者:坪 田 康 課 題 番 号:16k02882)の 助 成 研 究 の 一 部 で あ る 。

[1] 馮 蘊 澤, “ 中 国 語 の 音 声 ”,白 帝 社,2007年

[2] 平 井 勝 利,“ 教 師 の た め の 中 国 語 音 声 学 ” 白 帝 社, 2012年

[3] 荒 川 清 秀, “ 動 詞 を 中 心 に し た 中 国 語 文 法 論 集 ”, 白 帝 社,2015年

[4] 劉 驫, “ 談 話 空 間 に お け る 文 脈 指 示 ”, 京 都 大 学 学 術 出 版 会,2015年

[5] 曲 明, “ 中 国 語 学 習 者 を 対 象 に し た ス ピ ー キ ン グ テ ス ト 評 価 尺 度 の 開 発 ”, 外 国 語 教 育 研 究,第 19 巻 , pp.39-57,2016年

[6] 輿 水 優, “ 中 国 語 の 教 え 方 ・ 学 び 方 - 中 国 語 科 教 育 法 概 説 - ”,日 本 大 学 文 理 学 部,2005年

[7] 佐 野 富 士 子 ,“ 文 献 か ら 見 る 第 二 言 語 習 得 研 究 ”, 開 拓 社,2005年

[8] 門 田 修 平 ,“ イ ン プ ッ ト を ア ウ ト プ ッ ト に つ な ぐ シ ャ ド ー イ ン グ : 理 論 と 実 践 の 連 携 ”,2011年 [9] 飯 野 厚“ 音 読 ・ シ ャ ド ー イ ン グ が ス ピ ー キ ン グ に 与 え る 効 果 ”, 中 部 地 区 英 語 教 育 学 会 紀 要,pp.37-42,

2014年

[10] 趙 菁“ シ ャ ド ー イ ン グ 法 の 初 級 中 国 語 教 育 へ の 応 用 ― 教 室 に お け る シ ャ ド ー イ ン グ の 実 践 を 中 心 に ー ”,

外 国 語 教 育 フ ォ ー ラ ム,pp.35-48,2009年

[11] 張 文 青 ,“ 中 国 語 の 声 調 学 習 に お け る シ ャ ド ー イ ン グ 練 習 法 の 持 続 的 効 果 の 実 証 的 研 究 : 音 声 知 覚 と 産 出 の 向 上 を 目 指 し て ”, 通 訳 翻 訳 研 究 (17), pp69-92, 2017年

[12] 築 山 さ お り“ 初 中 級 日 本 語 学 習 者 の 運 用 力 向 上 を, 目 的 と し た シ ャ ド ー イ ン グ の 活 用 に つ い て ”,同 志 社 大 学 日 本 語 ・ 日 本 文 化 研 究 第11号,pp39-57, 2013年 [13] 武 末 裕 子 ,“L2と し て の フ ラ ン ス 語 に よ る プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 活 動 か ら 考 察 す る リ ス ニ ン グ ・ ス ピ ー キ ン グ ス キ ル ”,西 南 学 院 大 学 学 術 研 究 所 フ ラ ン ス 語 フ ラ ン ス 文 学 論 集 , 第 62号 ,pp.67-91,2019年

[14] 藤 田 玲 子 ・ 山 形 亜 子 ・ 竹 中 肇 子, “ 学 生 の 意 識 変 化 に 見 る 英 語 プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 授 業 の 有 用 性 ”,東 京

経 済 大 学 人 文 自 然 科 学 論 集,第128号,pp36-53,2009年

[15] 加 藤 康 代,祝 玉 深,坪 田 康 ,“ 日 本 語 学 習 者 に よ る 自

己・ピ ア・第 3者 評 価 か ら の 学 び:ビ デ オ 制 作 に よ る 遠 隔 地 間 大 学 交 流 よ り ”,日 本 教 育 工 学 会 論 文 誌 ,37(2), pp.165-176,2013年

[16] 門 田 修 平 ,“ シ ャ ド ー イ ン グ と 音 読 の 科 学 ”,コ ス

モ ピ ア 株 式 会 社,2007年

付 録

資 料1 前 期 授 業 ア ン ケ ー ト ケ ー ト 用 紙

(11)

資 料2 後 期 授 業 ア ン ケ ー ト 用 紙

Referensi

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る。2年目,仕事の関係で近隣の日本語学校の留 学生や日本語教師に留学生活の話をする経験をす る。自分で他者に働きかけること,自分のことを 語ることが他者の人生に意味があり,助けになる という自覚,自分の経験の価値を自覚するように なった(「日本社会で有能な自己」の自覚)。3年 目の異動で日本語のみで仕事をこなすようになっ た仁子さんは,次第に日本語で仕事をすることに

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