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2006 年度

上智大学経済学部経営学科 網倉ゼミナール 卒業論文

~どうすれば巨人戦の視聴率はあがるのか~

A0342433 野中 良亮

(2)

目次

1章、何故このテーマに設定したのか

2章、巨人戦の視聴率推移と現状

3章、一般的に考えられている巨人戦視聴率低迷の原因と検証

4章、新たな仮説の検証

5章、アンケートの方法

6章、アンケートの結果からわかったこと (1)放送スタイルに対する不満

(2)野球有料放送への移行

(3)結論

7章、どうすれば巨人戦の視聴率は上がるのか

(3)

~どうすれば巨人戦の視聴率はあがるのか~

1章、何故このテーマに設定したのか

私が今回「どうすれば巨人戦の視聴率はあがるのか」というテーマにて卒業論文を書こうと考えた のは、私自身が過去にかなりの巨人ファンであったということ、そして近年の巨人戦の視聴率におい て観察される下記の三点の現象について非常に興味をもったということがあります。

○阪神、中日、ソフトバンクなどのローカル戦の視聴率はさほど変化おらず、依然として各球 団の地元では優良コンテンツとしての地位を保ち続けているが、巨人戦の視聴率だけがここ 数年著しく落ちている。巨人の人気だけが急激に低下したとは考えづらい。

○近年、CATV、CS放送の普及などによりコンテンツ数が大幅に増え、多チャンネル化が進ん でいる。テレビ視聴時間が横ばいであるにも関わらず、視聴者の選択肢が増えたために既存 放送局の視聴時間は減少し、それぞれのコンテンツの視聴率がある程度低下してしまうのは 必然であるが、それと比較しても近年の巨人戦の視聴率の低下が非常に著しいため。

○ ここ数年巨人戦の視聴率が下がってきているが、その理由としては巨人の成績が振るわなか ったためにそれに伴い視聴率も低下したと考えられており、巨人がよい成績を収めれば視聴 率もまた以前のようにあがってくるはずであると考えられていて、私自身もそのように考え ていた。しかしながら今シーズン序盤は視聴率の低下が目立ってきた2004年、2005 年度に比べ序盤からかなり好調な出だしであったにも関わらず、好成績は視聴率には結びつ かず、目立った視聴率の伸びが見られなかった(図1参照)。

図1、3・4月期の巨人軍の成績と視聴率

年度 勝敗数(4 月) 月間視聴率(4 月) 年間視聴率

2006 18 勝 6 敗 12.70% 9.60%

2005 9 勝 16 敗 12.90% 10.20%

2004 11 勝 12 敗 15.00% 12.20%

2003 13 勝 11 敗 16.20% 14.30%

上記の三点はここ数年の巨人戦の中継において顕著に見られる現象です。これらの現象が発生した原 因をデータの検証やリサーチを用いて考察すると共に、どうすれば視聴者の興味を再び巨人戦に向け ることが出来るのかを考えていきます。

(4)

2章、巨人戦の視聴率推移と現状

かつて巨人戦といえば非常に優良なテレビコンテンツであり、いわゆるゴールデンタイムに放送さ れても視聴率は毎回20%を越え、当然のように年間の平均視聴率でも20%を越えていました。民放テ レビ業界おいて、視聴率 15%以上が「人気番組」とみなされ、ゴールデンタイムに放送されている番 組でも10%を越えれば最低限合格であるとされているなかで、常に安定して20%を稼ぐことができる 巨人戦は突出したコンテンツでした。しかしながら、図2にもあるように、2001 年度に年間視聴率 15.1%と、ここ30年間では最低の数字を記録して以来、視聴率の低落傾向は続き2005年度には10.2%、

2006 年度にはついに10%台を割り込み9.6%となっています。近年の視聴率の推移を見る限り、視聴 率が回復するような兆候も見られず、これらの影響を受け各テレビ局も巨人戦の中継試合数を削減す る見込みです。

図2、

(5)

3章、一般的に考えられている巨人戦視聴率低迷の原因と検証

近年、様々なメディアで巨人戦の視聴率低迷について注目され、そのたびに視聴率低迷の原因と考 えられる説がいくつも取り上げられていました。しかしながら、私自身としてはこれらメディアにて 論じられていた説に対して強い疑問を感じていました。ここでは、そういった一般的に考えられてい る巨人戦視聴率低迷の原因をデータの比較などを通じ検証したいと考えています。

(仮説1)野球人気自体が全体的に低下してきているため、それに伴い野球の視聴に対する興味も失 われ巨人戦の視聴率も低下してきている

○地上波の野球放送の大半が巨人の試合であり、近年さかんに巨人の中継試合の視聴率の低下が取り 上げられているために、野球にあまり興味がない人の中には、「巨人戦中継の視聴率低迷=野球人気 の低迷」といったように考えている人が少なから存在しているのではないかと思う。図2からも明 らかなように、確かに巨人戦の視聴率は低下し続けている。しかしながら、各地域におけるそれぞ れの球団の視聴率を調べてみると、実際には巨人戦以外の野球中継の視聴率は地域ごとに見れば依 然として高い視聴率を記録している。読売新聞によると、阪神戦は関西地区で平均 16.2%、ソフト バンク戦は北部九州地区で15.1%、中日戦は名古屋地区で14.4%、広島戦は広島地区で13.5%、日 本ハム戦は札幌地区で 11.8%と、各球団の地元では優良なコンテンツで在り続けており、必ずしも 視聴率=人気ではないが、これらの状況を見る限り野球人気自体が巨人戦の視聴率のように極端に 低下してきているとは考えづらい。また、こちらも必ずしも視聴率と関連があるとは言えないが、

野球人気の一つのバロメータであると考えられる観客数はほとんどの球団が昨年度より増加してい て、全体としても昨年度に比べ約1%の観客動員数増加となっている(図3-1、2)。 もし仮に 野球人気自体が低下していると考えるのであれば、当然観客動員数も減少に転じるはずである。

これら二点から考えるに、仮設1のように野球人気自体が全体的に低下してきているため、それ に伴い野球の視聴に対する興味も失われ巨人戦の視聴率も低下してきているとは極めて考えづらい。

よって仮説1は巨人戦の視聴率低下の大きな要因ではないと考えられる。

図3-1、2005・2006年度の観客数推移(セリーグ)

球団(セリーグ) 観客数(2006) 昨年 1試合平均 前年比%

阪神 3,154,903 3,132,224 43,218 0.7

巨人 2,892,695 2,922,093 39,626 -1

中日 2,398,698 2,284,400 32,859 5

ヤクルト 1,315,389 1,307,731 18,019 0.6

横浜 1,106,511 976,004 15,158 13.4

広島 1,009,481 1,050,119 13,829 -4

合計 11,877,667 11,672,571 27,118 2

(6)

図3-2、2005・2006年度の観客数推移(パリーグ)

球団(パリーグ) 観客数(2006) 昨年 1試合平均 前年比%

ソフトバンク 2,037,556 2,115,977 29,964 -4

日ハム 1,603,541 1,365,643 23,581 17

オリ近 1,390,231 1,356,156 20,445 3

ロッテ 1,349,656 1,334,014 19,848 1

西武 1,196,574 1,103,148 17,597 9

楽天 951,723 977,104 13,996 -2.6

合計 8,529,281 8,252,042 20,905 3

(仮説2)テレビ離れにより、テレビの絶対的な視聴時間が減少し、それに伴って巨人戦を視聴する ために割かれる時間も減少している

○まず、近年当たり前のように語られているテレビ離れが実際に起こっているのかどうかを確認して みたい。テレビ離れという言葉自体を耳にすることはよくあり、その理由として「昔は視聴率が30%

を越える番組がざらにあったが、最近はそういった番組をほとんどみなくなった」などと言われて いることがある。しかしながら、多くの視聴者の注目を集め30%を越える番組が少なくなったこと は事実かもしれないが、視聴者それぞれの好みの多様化により多チャンネル化が進んでいる現代に おいては、視聴の分散により頂点がある程度下がってしまうのは仕方がないことであり、個々人の テレビ視聴時間の減少とは全く結びつかないものだからである。実際、データを検証してみると、

1986年から2005年までのテレビ視聴時間の推移を見ても視聴時間は減少するどころか徐々に増加 してきており、テレビ離れが起こっているとは考えられない(図4)。

図4-1、テレビ視聴時間の推移

0 50 100 150 200 250 300

1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005

年度

視聴時間(分)

視聴時間

(7)

次に、巨人戦の平均視聴率とテレビ視聴時間の推移を重ねて考えてみたい。この二つのデータの推 移を比較してみると、巨人戦の平均視聴率が25%を超えていた 1987年のテレビ視聴時間が3 時間 45分、視聴率が下がり始めた1999年(20.3%)が4時間9分、2005年で4時間30分となってい るため、巨人戦の視聴率は低落傾向にあるがその一方でテレビの視聴時間は減っているどころかむ しろ増えている。このことから、テレビ離れが起きていないことはもちろんだが、テレビの視聴時 間の推移と巨人戦の視聴率の低下には関連がないと考えられる。よって、仮説2は巨人戦の視聴率 低下の大きな要因ではないと考えられる。

図4-2、巨人戦の平均視聴率とテレビの平均視聴時間

0 5 10 15 20 25 30

1986 1988

1990 1992

1994 199

6 199

8 200

0 200

2 2004 年度

平均視聴率(%)

0 50 100 150 200 250 300

平均視聴時間(分)

平均視聴率 視聴時間

(8)

(仮説3)巨人の成績が振るわなかったために、視聴者の興味が徐々にそがれていきそれに伴い視聴 率も低下していった

○様々なメディアにおいて、ここ数年の巨人戦の視聴率の落ち込みは成績の不振により早い段階から 視聴者の興味がそがれていったしまったことが原因であり、成績さえ上向けばまた以前のように視 聴率も戻り、当たり前のように 20%前後まで回復するはずであると考えられていた。また、ここ数 年の視聴率の落ち込みは一時的なものであり、巨人人気、巨人ブランドはまだまだテレビのコンテ ンツとして有力なものであると思われていた。冒頭にもあるように、2006年度序盤の巨人はここ数 年になく好調であり4月には首位にもたっていた。しかしながら、4月の平均視聴率は過去20年間 において最低の数字(9.6%)を記録し、巨人が強ければ視聴率は上がるという神話はもはや過去の ものであるということが現実に浮き彫りとなった。グラフ(図 5-1、2)を見てみると明らかなよう に、月間・年間ともに1989年から1995年のあたりまでは平均視聴率と勝率は似通った動きを見せ ていて、常に 20%を越えてはいるものの、巨人が強ければ視聴率は上がり巨人が弱ければ視聴率は 下がるという神話の通りとなっている。しかし、1996 年~1998 年にかけたあたりから成績とはほ とんど関係なく視聴率が推移しだし、いくら成績が振るわなくとも常に安定的に 20%以上の視聴率 を記録し続けている。視聴率に大きな変化が見られるようになったのは1999年~2006年にかけて のあたりからであり、視聴率と成績の間には目立った相関が見られないのはもちろんだが、この間 には視聴率が大きく下がり続けていて、今まで維持してきていた 20%前後の視聴率を大きく割り込 むようになってきている。これらのデータからも読み取れるように、1996年のあたりから成績と視 聴率の間にはほとんど相関が見られなくなっている。仮説のように「巨人の成績が振るわなかった ために、視聴者の興味が徐々にそがれていきそれに伴い視聴率も低下していった」とは考えられな い。よって、仮説3は巨人戦の視聴率低下の大きな要因ではないと考えられる。

図5-1、月間平均視聴率と勝率(4月)

0 5 10 15 20 25 30

1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006

年度

平均視聴率(%)

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8

勝率(%)

月間平均視聴率(4月)

勝率(4月)

(9)

図5-2、年度別平均視聴率と勝率

0 5 10 15 20 25 30

1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006

年度

平均視聴率(%)

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8

勝率(%)

平均視聴率 勝率

(仮説4)多チャンネル化の影響により視聴者が分散され、視聴率の頂点が低下してきた。それに伴 って巨人戦の視聴率も低下してきている

○近年、視聴者の好みの多様化や多チャンネル化の影響により、以前のように特定の番組が視聴者の 関心を一身に集めるようなことが少なくなったため、目立って高い視聴率を獲得するような番組が 減ったと言われている。視聴者の好みが多様化しているかどうかはわからないが、チャンネル数が 大幅に増加していることは事実であり、テレビの平均視聴時間が横ばいであるにも関わらずその選 択肢が増えたとなれば、視聴時間が分散されてしまい、特定の時間の特定の番組に集中する視聴者 が減少してしまう可能性があることは確かである。このことは巨人の試合中継にも当てはまること であり、巨人をさほど見たくないにも関わらず地上波の放送の関係で選択肢がなく、仕方なしに試 合中継をみていたが多チャンネル化により選択肢が増えたことにより、地上波の巨人戦ではなく他 のチームの試合を有料放送などによって見るようになる、といったようなことも考えられる。ここ ではまず、実際に多チャンネル化によりいわゆる高視聴率番組が減少し、視聴率の頂点が下がって きているのかどうかを検証してみたい。

(※ワールドカップ、オリンピックなど、視聴者の好みによらず非常に国民全体としての関心が高 く開催のたびに高い視聴率を獲得しているが、双方とも四年に一度の巨大なイベントであり、あく まで「通常」のテレビ放送の様態を調べたいという今回の検証の趣旨から外れているため「高視聴 率番組」には含めて数えていない。)

(10)

図6、視聴率30%を越えた番組本数と巨人軍年間視聴率の推移

0 5 10 15 20 25

19 95 19 96

19 97 19 98

19 99 20 00

20 01 20 02

20 03 20 04

20 05 20 06 年度

番組本 数( 本)

0 5 10 15 20 25

年間 視聴率 ( % )

30%を越えた番組の本数 年間視聴率

図6からわかるように、1997年を境に視聴率30%を越えた番組の本数が17本から8本へと半分以 下に大幅に減っている。当時のテレビ中継の状況を考えるに、本数が大幅に減ったことの原因の一 つして考えられるのが1996年からサービスが開始されたパーフェクTV(現スカイパーフェクTV)、

1997年からサービスが開始されたディレクTV(スカイパーフェクTVと統合)の影響である。多 メディア・多チャンネル時代の開始と見られるCS放送の直接受信がはじまった1992年から始まり、

1996年にパーフェクTV、1997年にディレクTVがサービスを開始したことで、いよいよ本格的な

「多メディア・多チャンネル時代」に入ったと言われている。1997年はちょうど多メディア・多チ ャンネル時代の始まりの時期にあたっており、明確なデータがないので断言はできないが、パーフ ェクTV・ディレクTVの開始が高視聴率番組の減少に対して何らかの影響を与えていて、多チャ ンネル化による視聴者の分散と視聴率の頂点の低下の間には関係があると考えられる。

ここで、巨人戦の年間平均視聴率と高視聴率番組の本数の推移を比較してみると、高視聴率番組 の本数は1997年に大きく減少した後は特に大きく変化することもなく10本以下で推移し続けてい る。大幅に増加するようなことも見られない。それに対して巨人戦の視聴率は、視聴率が大きく下 がる2001年の前までは20%前後という高い数字で安定して推移し続けている。多チャンネル化の影 響により視聴率の頂点が下がったことは確かかもしれないが、そのことが巨人戦に影響を与えてい るとは見受けられないように思われる。これらの状況から考えるに、仮説にある多チャンネル化の 影響による視聴者の分散が巨人戦に視聴率の低下の直接的な原因になっているとは考えづらい。よ って、仮説4は巨人戦の視聴率低下の大きな要因ではないと考えられる。

(11)

4章、新たな仮説の検証

上記の3章にて、いわゆる一般的に考えられている巨人戦の視聴率低迷の原因をデータの比較など を通じ検証してきました。データを検証する前の私自身の考えてしては、仮説3のように巨人の成績 が振るわなかったために視聴者の興味がそがれてしまってことが視聴率低下の原因であり、成績さえ 上向けば視聴率も同じように上向いていくはずであると考えていました。そのため、2006年度の前半 の巨人は例年にない好成績を収めていたので、視聴率もかなり上がっているとはずだと考えていたの ですが、実際はデータのような状況であり、他の仮説に関してもデータを検証する限りは、そのどれ もが巨人戦の視聴率の低迷に対して直接に影響を与えているとは考えられませんでした。しかしなが ら、数年間で著しく視聴率が下がるからには必ず何かしらの理由があるはずであり、それは一般的に は考えられていないようなものであるかもしれません。

視聴率低下の原因となっているはずである要因を探るために、データの検証だけではなく、アンケ ートなどを通じて直接に視聴者の意見を得ることで、そこから新たな原因を探していきたいと考えて います。

5章、アンケートの方法

アンケートの形式には選択式を用います。また、有料放送などに入っているかなり野球がすきな視 聴者と野球自体を全くみないような視聴者が野球の中継に対して同じような意見や嗜好を持っている とは非常に考えにくいので、アンケートのデータを利用する際には、巨人、もしくは野球に対してど の程度興味を持っているかによって、「G+などの有料放送に入っている熱狂的野球ファン」「地上波の 野球はほとんど視聴している」「以前は野球中継を視聴していたが現在はほとんど視聴していない、も しくは全く視聴していない」「野球にそれほど興味がなくめったに視聴しない」「野球自体を全くみな い」、以上の5つのグループに区分します。5つのグループの分析を通じ、巨人戦の視聴率低下の原因 を探るとともに、最終的には巨人、野球に対する興味の度合いが全く違う 5 つのグループそれぞれの 興味をどうすればまた再び巨人戦に向けることができるのかを検討していきたいと考えています。

(12)

6章、アンケートの結果からわかったこと

今回のアンケートから、データの検証だけではわからなかった、視聴率の低下につながるような大 きな原因が見えてきました。それは、スカイパーフェク TV などの野球専門の有料放送の存在です。

現在の野球の放送スタイルに不満を持っている視聴者は決して少なくはなく、また熱心な視聴者ほど 不満は強く、視聴者を無視しているともいえる放送スタイルが視聴者の地上波離れを招き、有料放送 などへと流れてしまう強い原因となっています。ここでは、アンケートから得られた地上波離れの原 因を明らかにするとともに、野球有料放送の現状を検証していきます。

(1)放送スタイルに対する不満

アンケートの結果からわかったこととして、週に3~5回以上試合中継を見ている、野球(巨人)

に対して関心の高い視聴者ほど現在の野球の放送形態に対して不満を持っており、なかでも試合の放 送時間が中途半端であるという意見が多く見られた。これは私自身も不満に感じている点の一つでは あるが、現在の野球中継は 19 時開始で 21 時に終了という非常に中途半端な中継スタイルになってい る。ところが実際の野球の試合はほとんどが 18 時に試合を開始し 22 時頃に試合終了となっており、

地上波にてテレビ中継が開始される 19 時には既に試合の三分の一近くが終了していることに加え、テ レビ中継の終了が 21 時であるために試合の展開によっては終了まで試合が放送されずに終わってしま う。試合中継の延長時間も年々少なくなっており、2001 年までは 1 時間 30 分あった試合中継の延長が 2002 年には休日のみ 1 時間 30 分で平日は 1 時間、2003 年には全試合で 1 時間、2004 年には休日のみ 1 時間で平日は 30 分、2005 年には全試合で 30 分、2006 年も全試合で 30 分だがフジテレビのみ事実上 延長中継なしとなっている。視聴率が下がったから放送時間を短くするということを理解できなくは ないが、アンケートにもあるように野球に対して関心が高い視聴者ほど試合の放送時間に対して不満 を持っているため、放送時間の短縮は熱心な視聴者の野球中継離れを招くだけであり、視聴率にとっ ては極めて逆効果であるように考えられる。図2の視聴率の推移を見ても明らかなように、放送時間 の短縮が始まった 2002 年以降は視聴率が下がり続けており、視聴率が先か放送時間が先かという議論 はあるかもしれないが、視聴率の低下に対して何かしらの影響を与えていることは間違えなく、試合 を始まりから終わりまで放送する有料放送に視聴者が流れてしまう原因の一つになっているのではな いかと考えられる。

野球中継をほとんど見ない、もしくは全くみないといった視聴者は、野球の放送時間ではなく、野 球の試合時間そのものが長いということに不満を持っているようである。野球の試合は平均で 3 時間 以上、地上波で放送されているだけでも 2 時間はある。近年のように視聴者の好みが多様化し、選択 肢も増えている状況では余程の興味がない限りは、2 時間以上も同じ番組を見てもらうことは難しいの かもしれない。

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(2)野球有料放送への移行

今まで野球中継は地上波で見るものであると認識されていたが、近年スカイパーフェク TV などから 野球の有料放送サービスが開始されている。視聴者にとって野球の有料放送サービスの魅力は大きく 二つあり、一つは地上波では中途半端にしか見ることができない試合中継を始まりから終わりまで視 聴できること、そしてもう一つが巨人戦以外の球団の試合を1シーズンを通して視聴できることであ る。上記の(1)にて記述したように、週に3~5回以上試合中継を見ている、野球(巨人)に対して関 心の高い視聴者ほど現在の野球の放送形態に対して不満を持っており、更に「G+」、スカイパーフェ ク TV の「プロ野球セット」など野球の有料放送に加入している割合が高いことがアンケートからわ かった。野球をたまにしか視聴しないにわかファンとは違い、熱心に野球を視聴しているファンであ ればこそ通常より高い費用を払ってでもより高い満足度を得るために有料放送に加入するというのは 至極当然な選択なのかもしれない。

巨人の主催試合を全試合中継し、巨人関連のコンテンツをメインに扱っている「G+」という巨人チ ャンネルがスカイパーフェクTVにあり、加入者数が520万人前後に達している。G+に加入している 視聴者の全員が必ずしも巨人戦を視聴するために加入しているとは限らないが、前述のアンケートの 結果にもあるように熱心な野球ファンであればあるほど有料放送に加入している傾向が強いことから、

多くの熱心な巨人ファンも同じようにG+に加入していると考えられる。G+の放送開始は2002年で

(当時はG+ SPORTS & NEWSという名称)、そのあたりからの地上波の視聴率の推移を見ると低下 の一途をたどっている。520 万という数字は決して小さな数字ではなく、それだけの数の視聴者が地 上波からいなくなると考えると、G+が地上波の巨人戦視聴率に与えた影響というのはかなり大きなも のであったと考えられる。

(3)結論

アンケートの結果とデータの検証を通じてわかったのは、有料放送の影響の大きさと、野球に対し て熱心な視聴であればあるほど地上波の放送スタイルに対して不満を持っており、地上波から離脱し ていく傾向が強いということである。3章の仮説4にて、多チャンネル化による視聴率の頂点の低下 は地上波巨人戦の視聴率に対して影響を与えているとは考えられないと述べたが、それは巨人ファン という集団にとって魅力的な選択肢がその時点で存在しなかったということであり、2002年に「G+」

という新しい選択肢ができてからはデータを見る限りでは大きく影響を与えているように考えられる。

「G+」の巨人戦に特化しているという番組の性質と 520 万人という加入者の数を考えるに、近年の 巨人戦視聴率低下の最大の原因は、多チャンネル化による新たな野球放送の出現と、それに伴って視 聴率に安定的に貢献してくれる熱心な巨人ファンが地上波から離脱してしまったことであると考えら れる。

(14)

7章、どうすれば巨人戦の視聴率は上がるのか

結論から先に述べると、今後巨人戦の視聴率が上がる可能性は極めて低い、もしくは下がり続ける 一方なのではないかと思います。前述のように、視聴率に安定的に貢献してくれると考えられる熱心 な巨人ファンはより高い満足度を求めて既に有料放送へと視聴方法を変えています。熱心な視聴者は 不満に対して積極的に声を発することで野球中継のスタイルの改善にも寄与してくれるものであるは ずですが、有料放送というより満足度が高い魅力的な逃げ場があるために、そういった効果を望むこ ともできません。放送時間の問題などからも、地上波が有料放送から視聴者を取り戻すほど魅力的に 変わる可能性は低く、むしろその魅力の低さからより一層の地上波離れが進むのではないかと考えら れます。地上波を積極的に視聴している巨人ファンも確かにいますが、地上波の野球中継の本数は今 後削減されていく見通しで、放送時間も中途半端で中継の本数も少ないとなれば不満はたまる一方で あり、野球に対する興味が強ければ有料放送へと流れ、興味が弱ければ視聴自体をやめる方向に向か うのではないかと考えられます。さらに、今までは地上波しかなく、野球中継の選択肢が巨人戦しか 存在しなかったために仕方がなしに巨人戦を見ていた視聴者も多く存在していましたが、そういった 視聴者も自分の気に入った球団の試合をシーズンを通して視聴することができる有料放送に流れてい るため、結果として地上波の視聴率低下へとつながっています。また、野球をほとんど見ない、もし くは全く見ないような視聴者は野球自体にほとんど興味を持っていないため、そういった視聴者に野 球、さらには巨人に対して興味をもたせ新たに取り込むということも近年のように個々の好みが多様 化し、多チャンネル化している状況では非常に難しいのではないかと考えられます。

アメリカでの野球中継を見てみても、各球団ごとに持っているケーブルテレビなどの有料の専門チ ャンネルで自身の球団の試合を特化して放送することが大半であり、全国放送されるような試合とい うのはごくわずかな非常に注目された試合のみとなっています。今後日本においてもこの流れは加速 していくだろうと思われることからも巨人戦の視聴率を以前のように戻すことは非常に困難であると 考えられます。野球会全体の視聴者を維持・増加するという点から考えるのであれば、地上波にて週 3~5回程度、積極的に野球中継を見ている視聴者をいかにして有料放送へ取り込んでいくのかが重 要になってくるのではないかと思います。

私の結論としては、今後巨人戦の視聴率が上がることはなく、下がり続ける一方なのではないかと 思います。

(15)

参考文献

E.M.ロジャーズ 『イノベーション普及学』

Albert O. Hirschman 『離脱・発言・忠誠―企業・組織・国家における衰退への反応』

朝日新聞社 『朝日データ年鑑ジャパンアルマナック〈2006〉』

参考資料

株式会社ビデオリサーチ(http://www.videor.co.jp/index.htm)

日本野球機構オフィシャルサイト(http://www.npb.or.jp/)

総務省情報通信統計データベース(http://www.johotsusintokei.soumu.go.jp/)

(16)

アンケート

Q1, 性別(男・女)

Q2, 週に何回程度スポーツ中継を見ますか?最も近いものを選択してください。

1、6回以上 2、3~5回 3、1~2回 4、週に1回未満 5、全く見ない

Q3, よくTVで中継を見るスポーツを3つ選択してください。

1、サッカー 2、野球 3、バスケットボール 4、テニス 5、ゴルフ 6、アメリカンフットボール

Q4, 週に何回程度野球中継を見ますか?最も近いものを選択してください。

1、6回以上 2、3~5回 3、1~2回 4、週に1回未満 5、全く見ない

Q5, Q4にて1か2を選択した方へ質問です。何か野球の有料中継に加入していますか?

1、はい 2、いいえ

Q6、 Q5にて1を選択した方へ質問です。どのような有料中継に加入していますか?

Q7, Q4にて3、4、5のいずれかを選ばれた方へ質問です。どちらかあてはまるものを 選択してください。

1、以前から野球中継は全くみていなかった

2、以前は野球中継を見ていたが最近あまりみなくなった

(17)

Q8, Q7にて2を選ばれた方へ質問です。以前は週に何回程度野球中継を見ていました か?最も近いものを選択してください。

1、6回以上 2、3~5回 3、1~2回 4、週に1回未満 5、全く見ない

Q9, TVでよく野球中継を目にする球団を選択してください(複数選択可)。 1、中日ドラゴンズ 2、阪神タイガース 3、ヤクルトスワローズ 4、読売ジャイアンツ 5、広島カープ 6、横浜ベイスターズ

7、日本ハムファイターズ 8、西武ライオンズ 9、ソフトバンクホークス 10、千葉ロッテマリーンズ 11、オリックス・バッファローズ

12、東北楽天ゴールデンイーグルス

Q10、 すきな球団を選択してください(複数選択可)。

1、中日ドラゴンズ 2、阪神タイガース 3、ヤクルトスワローズ 4、読売ジャイアンツ 5、広島カープ 6、横浜ベイスターズ

7、日本ハムファイターズ 8、西武ライオンズ 9、ソフトバンクホークス 10、千葉ロッテマリーンズ 11、オリックス・バッファローズ

12、東北楽天ゴールデンイーグルス

Q11、 野球中継(地上波のみ)についてあてはまるものを選択してください(複数選択可)。 1、ルールがわからない 2、試合時間が長い 3、知っている選手がいない 4、中継時間が中途半端(最初と最後が放送されない) 5、実況がうるさい

6、延長する必要がない 7、巨人戦以外の試合を見たい 8、MLBの方が面白い 9、興味そのものがない

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