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大村先生,ご受賞おめでとうございます - J-Stage

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化学と生物 Vol. 54, No. 1, 2016

大村先生,ご受賞おめでとうございます

まずもって,微生物由来の生理活性物質にかかわって きた古い仲間の一人として,今回の先生のノーベル生理 学・医学賞ご受賞に,心からのお祝いを申し上げます.

10月5日の夕方,漫然と見ていたテレビの画面にテ ロップで流れたご受賞のニュースは,私には二重の意味 で大きな驚きでした.もちろん一つは嬉しい驚きです が,もう一つはこのニュースのテレビ解説が初めのうち は支離滅裂だったことで,私たち仲間の間ではよく知れ わたっているご業績が,広い世間にはまだこんなにしか 知られていないことを知って驚いたのです.今回のご受 賞を祝う動きは世界の仲間の間に拡がっていますが,そ れは新しい医薬の供給源としての微生物に対する関心 が,しばらく前から潮が引くように消えてしまっている ことへの危機感の裏返しでもあります.今回の吉報が,

こうした現状を改善するきっかけになることを望んでい ます.

「山川草木悉皆成仏」という心性をどこかに植え付け られている日本人にとって,自然の中の微生物から薬を 探すスクリーニングという仕事は向いているのかもしれ ません.しかし今回のご受賞の対象となった,エバーメ クチンの発見からイベルメクチンの実用化に至るご業績 は,単に「向いている,いない」というだけの話ではな いことは明らかです.米国メルク社と対等の立場での緊 密な産学共同研究体勢の確立,世界の医薬開発動向を見 据えた動物薬という目標設定,ゴルフ場も含む広範な環 境から分類学的にも多様な微生物を分離する組織的努 力,活性検定・評価作業との有機的な連携,有効成分の 分離・構造決定から誘導体合成等々,総合的であると同 時に極めて先見的な取り組みは,大村という個性と駆動 力があってこそ機能したのであり,その成果はまさに先 生によっているのです.イベルメクチンがWHOを介し てアフリカのオンコセルカ症患者に光明をもたらし,そ の根絶が視野に入りつつあるという人道的貢献にも,深 い尊敬を捧げたいと思います.

先生のお仕事はそれに止まらず,北里研究所を率いて これまでに膨大な数の微生物由来の新規化合物を発見 し,それらの作用機構や生合成経路を明らかにしてこら

れました.たとえば脂肪酸合成の特異的阻害剤としての セルレニンや,ユビキチンを介するタンパク質分解にか かわるプロテアソームを標的とするラクタシスチンなど の発見は,生化学,細胞生物学分野の基礎研究に極めて 重要な武器を提供しました.一方でマクロライド抗生物 質の一つエリスロマイシンに,腸管蠕動促進ホルモンで あるモチリンのアゴニストとしての作用が発見されると,

その抗菌活性をなくしアゴニスト活性を大幅に増強した 誘導体を作り出して,新しい治療薬の開発へとつなげま した.これらほんの数例からもわかる,基礎から応用に わたる幅広い成果と柔軟な研究姿勢は,ご受賞の土台で あると同時にさらにその先への展望を示すものです.

今回のノーベル生理学・医学賞は,微生物や植物から 見いだされる新しい生理活性物質の探索研究に,久しぶ りに光を当ててくれました.この分野では,これまでわ が国が大きな業績を上げてきていることは世界が広く認 めるところであり,第二,第三の受賞の報を聞くのも近 きにありと信じます.そこで考えるのは,むしろその先 の問題です.微生物から新規活性物質を探索するという 戦略はリスクが大きく,それを実行することは企業のみ ならず,長期の視野が重要なはずの大学ですら,困難に なっているように見受けられます.代わって浮かび上 がっているのは,急速に積み上がる病因タンパク質の構 造情報や化合物バンクなどを元に,目的の機能をもった 医薬を人間の知恵を頼りに設計しようとする戦略です.

しかし,そうした既知の情報から出発する「設計」が,

生物圏で最大の種の多様性を保有する微生物から未知の モノまたは現象を見つけ出し,さらに新しい原理や概念 さえ導き出すこともある「探索」に完全に取って代わる ことはできないでしょう.先生のご受賞に励まされて,

また先生が示された継続する意志の力を見習って,次の 世代の人たちの中から新しい探索研究の動きが数多く生 まれてくることを願ってやみません.

(別府輝彦, 東京大学名誉教授)

Copyright © 2016 公益社団法人日本農芸化学会 DOI: 10.1271/kagakutoseibutsu.54.3

日本農芸化学会

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プロフィール

別府 輝彦(Teruhiko BEPPU)

<略歴>1956年東京大学農学部農芸化学科卒業/1961年同大学農 学部助手/1977年同教授/1994年日本大学生物資源科学部教授/

2009年退職<研究テーマと抱負>改めて微生物とは何かを問い直 したい<趣味>庭いじり

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