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小学校教員養成課程に在籍する学生の観察・実験に関する技能

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宮崎国際大学教育学部紀要『教育科学論集』第7号(2020)44-53頁

小学校教員養成課程に在籍する学生の観察・実験に関する技能 の向上を目指した取り組み

「理科実験ゼミ」の成果と展望

坂倉 真衣 森川 友梨奈

古里 陽奈

要約

主体的・対話的で深い学びの実現を目指し、理科においても問題解決型の授業が重視されている。将来小 学校教員として問題解決型授業を構想するためには、教員養成の段階から、学生の観察・実験に関する技能 を向上させることが必要である。宮崎国際大学教育学部において2020年度前期に試験的に行なった「理科 実験ゼミ」は、学生の観察・実験の技能向上を目指し、実施した取り組みである。「理科実験ゼミ」では、

学生が理科実験計画シートを作成し、準備の段階から理科の見方・考え方を整理したことで、事前に問題意 識を共有した上でゼミに臨むことができた。アンケートによれば、ゼミに参加した学生は、観察・実験に関 する技能向上という成果に加え、実験の妥当性を検討する力が身につき、実際の授業での児童の意見に柔 軟に対応できるようになったことなどを成果として実感していた。今後は、教科に関する科目「理科」、 教職に関する科目「理科教育法」と段階的に組み合わせ、観察・実験器具の操作に自信を持てるという状 況までを見据え、学生の技能向上を行なっていくことが必要である。

キーワード:小学 校教員 養成 、小 学校 理科 教育 、観 察・ 実験 に関す る技能 、理 科実 験ゼ ミ

1. はじめに

平成 29年度 に告 示さ れた 学習 指導 要領 にお いて 、「 観察・実験 などに 関す る基 本的 な技 能を 身 に付 ける よう にす る」とい う目標が 明示 され た。従来 から 小学 校理科に おい ては 、観 察・実 験 を 通 し た 問題 解 決 型の 授 業 が重 視さ れ て き た 。具 体 的 には、「 自 然の事 物 ・ 現 象 に対 す る気 付 き 、問題 の設 定 、予想 や仮 説の 設定 、検証 計画の 立案 、観 察・実 験の実 施 、結果 の処 理 、考 察 、結 論の 導出 」と いう 過程 を経 験で きる よう な理 科授 業が 構想さ れ、実 施さ れて いる 。今 後 は 、主 体的・対 話的 で深 い学 びの 実現 を目 指し 、児 童自 身が 問題 を見いだ し、主体 的に 問題 を 解 決す る活 動を 授業 内外 で充実 させて いく こと が必 要で ある 。

よっ て小 学校 教員 には 、観 察・実験 など に関 する 基本 的な 技能お よび児 童の 問題 解決 能力 を 育 む授 業を 構想 する 力が さらに 求め ら れこ とと なる 。し かし なが ら、小学 校教 員は 必ず しも 理 科 を指 導す る上 で肯 定的 な意識 を持っ てい る訳 では ない 。例 えば、 平成 22年 度小 学校 理科教 育 実態 調査(科 学技 術振 興機構 2011)によ れば 、「 理科 全般 の内 容の指導 」に 対す る意 識と し て、4 割程度 の教 員が「 苦手」 または「 やや 苦手」 と回 答し てい る。また「 理科 の観 察・実 験 に つい ての 知識・技 能」に対 する 意識 では 、自 らの 知識・技 能に つい て「 低 い」また は「 やや 低 い」と回 答し た教 員が 6割 近くに上 る。小学 校教 員は 、理 科指 導に 苦手 意識 があ り、特に 観 察 、実験 に関 する 技能 への苦 手意 識が 強 い こと が分 かる 。このよ うな 傾向 は 、特 に教 職経 験年 数 が浅 い教 員に 顕著 であ り、経 験年数 が 5 年未 満の 教員 では 、「 理科 全般 の内 容の 指導 」に 対

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す る意 識と して 6 割 近く が「 苦手 」「 やや 苦手 」、「 理科 の観 察・実 験につ いて の知 識・ 技能 」 に 対す る意 識で は 8 割以 上が 「低い 」「や や低い 」と 回答 して いる 。大 学在 学時 に、 観察 ・実 験 に関 する 科目 を受 講し た学生 は受講 して いな い学 生に 比べ 、理 科指 導へ の苦 手意 識が 低い と い う結 果を 鑑み ると 、教 員養成 の段階 から 対策 を講 じる こと が必要 である と言 える 。

教 員養 成課 程に 目を 向け ると 、一 般大 学で 小学 校教 員 養 成の 認定課 程を有 する 学部 の大 半は 人 文科 学系 であ り 、そ のため 理数 科目 を苦 手と する 学生 が多 い。それ にも 関わ らず 、免許 法上 で は 、教 科に関 する 科目 とし て理 科の 単位 の修 得は 必須 では なく 、教 職に 関す る科 目の 理科教 育 法 2 単位 のみ が必 修と されて いる大 学が 8割 以上 に上 る。つま り、カリ キュ ラム 上は 大学 生 4 年 間で、理科 関連の 科目 を最 低2単 位と るこ とで、小学 校教 員免 許を取 得で き、将来教 員と し て理 科の 授業 を行 うこ とがで きるの であ る 。こ のよう な課 題は 、すでに 多く 指摘 され てお り、

教 員養 成大 学に おけ る限 られた 時間数 の中 で学 生の 観察 、実 験 に 関す る技 能を 含む 理科 指導 力 を 確実 に育 成す るた めの 取り組 みがな され てい る( 例え ば、 安藤 2013、 岩間 ・松 原 2019、 鶴 ケ 谷 2019)。

宮 崎国 際大 学教 育学 部で は、2020年 現在 、教 科に 関する 科目「理 科 Ⅰ」およ び、教職に 関す る 科 目 「 理 科教 育 法 Ⅰ」 は 必 修で ある 。 ま た 必 修で は な いが 「 理 科 Ⅱ」「 理 科 教 育 法Ⅱ 」 に加 え 、 教 養 科 目と し て も「 生 命 と科 学」「 環境 と 科 学」 な ど 自然 科 学 に関す る 科 目 が 複数 開 講さ れ て い る 。 さら に 理 数科 目 を 苦手 とす る 学 生 が 多い こ と を踏 ま え、「理数 科 教 育 ゼ ミ」 な ど学 生 の理 数科 指導 力向 上を 目指し た自主 ゼミ も実 施さ れて いる 。本 学に おい て学 生が 講義 内で 理 科 を学 ぶ機 会は 、他大 学の小 学校 教員 養成 課程 に在 籍す る学 生より は多い 。これ らの 中で 、観 察 、 実 験 に 関す る 技 能の 向 上 を中 心的 に 扱 う も のは 「 理 科 Ⅱ 」 で ある が、「 理科 Ⅱ 」 は選 択 科 目 で あ る た め、 受 講 する 学 生 は多 くな い 。 ま た 「理 科 教 育法 Ⅰ」「 理科教 育 法 Ⅱ 」 にお け る模 擬 授 業 の 中 でも 、 観 察、 実 験 は行 うが 、 あ く ま でも 模 擬 授業 の 実 施お よび 検 討 が 中 心で あ り 、 学 生の 観察 、実 験に 関す る技 能を 向上 する のは 、講 義や 現在 実施 して いる 自主 ゼミ だけ では十 分 では ない 。

以 上の よう な状 況を 踏ま え、2020年度 後期 から 実施 した のが 、「 理科 実験 ゼミ 」で ある 。「理 科 実験 ゼミ 」は 、「 理科 」お よび 「理 科教 育法 」を 受講 し終 えた本 学教育 学部 3 年 生か らの 要 望 が あ り 、 実施 す る こと と な った ゼミ で あ る。「 理科 教 育 法」 受 講 後に、 問 題 解 決 型の 授 業を 構 想す るた めに は、学生 自身 がま ずは 観察 、実験の 技能 を高 める こと が必 要で ある こと を実感 し たこ とが 、実 施す るに 至っ た 大 きな 理由 であ った 。ま た、3 年生が 2年 次の 際に は「 理科 Ⅱ」

が 開講 され てお らず 、講 義で 観察 、実 験自 体を 行う 機会 が少 なかっ たこと も要 望が あっ た理 由 で ある 。

本 稿で は、2020年度 後期に 実施 した「 理科 実験 ゼミ 」を 振り 返り 、そ の成 果と 課題 につ いて 整 理す る。そ れを 踏ま え、小学校教員養成課程に在籍する学生の観察・実験に関する技能の向上を目指 した取り組みにおける今 後の 展望 につい て考 察す る。

2.2020年度後期に実施した「理科実験ゼミ」の概要

まず本章では、2020年度後期に実施した「理科実験ゼミ」の概要について報告する。

(1) 実施期間と参加者数

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小学校教員養成課程に在籍する学生の観察・実験に関する技能の向上を目指した取り組み

-「理科実験ゼミ」の成果と展望-

2020年度後期の理科実験ゼミは、2020年内に10月5日から10月26日までの約1ヶ月間、毎週月曜1 限、5限に試験的に実施をした。教育学部3年生の希望者を対象に、森川、古里が中心となって準備と当日 のゼミの運営を行った。森川、古里は、2年次に行われる「忍ケ丘教養Ⅳ」において、理科教育に関するテ ーマで研究を行なったという経緯があり、「理科実験ゼミ」を中心となって運営するに至った。学生たちは、

理科教育法Ⅰ〜Ⅲでの経験を踏まえ、実験や観察に関する技能の必要性を感じたことから学生発案の実験 ゼミを実施することとなった。

理科実験ゼミは、理科室で行い10月中に全5 回程度実施した。11月以降は、教育実習のため休止した が、今後も実施予定である。各回の参加者は10〜13名程度であり、延べ50名程度の学生が参加をした。

(2) 「理科実験ゼミ」で扱った観察、実験の内容、当日のゼミの進め方 (2)-1 扱った内容およびゼミ当日までの準備

理科実験ゼミでは、宮崎県内の小学校で使用されている小学校理科の教科書(啓林館出版)を参考に、そ こに記載されている観察、実験を主に取り扱うこととした。具体的には、まず第3学年~6学年の教科書の 内容をエネルギー分野、粒子分野、生命分野、地球分野ごとに分け、2020年度講義はエネルギー分野と粒 子分野を中心に行うこととした。中でも、エネルギー分野においては、「電気で明かりをつけよう(第 3 学 年)」「かん電池のはたらき(第4学年)」「電流と電磁石(第5学年)」「発電と電気の利用(第6学年)」を選 抜した。粒子分野においては、「もののあたたまり方(第4学年)」「ものが燃える仕組み(第6学年)」を選 抜した。選抜理由としては、学生自身が小学生からこれまで、電気に関する事項を苦手としており、模擬授 業においても実験がうまくいかなかったことからである。

実施にあたっては、「理科実験ゼミ計画シート」(付録1 参照)を事前に作成した上で当日運営に取り組 んだ。実験ゼミ計画シートでは、平成 29年 度に告 示さ れた 学習指導要領において重要視されている「理 科の見方・考え方」を確認できるようにし、学習問題、予想、方法、結果、考察、まとめという実際の授業 の流れに沿って教科書の内容をゼミ参加者の学生自身がまとめた。運営者であった森川、古里には、自分た ちが全て準備するのではなく、学生自身が解決したい課題を明確にして主体的にゼミに参加をして欲しい という想いがあった。ゼミに参加する1人1人の学生の課題が明確であれば、お互いにとって学び合える 環境になると考えたからである。従ってゼミの準備にあたっては、参加する学生それぞれが担当する単元 を決め、担当者が理科実験ゼミ計画シートを協力して作成した。

予想や方法については、教科書に記載されているもののみならず、実際の児童が発想しそうなことを推 測し、児童が発想した方法も行えるよう実験器具の準備を行った。児童が発想しそうなことを推測し、その 方法も行えるように準備を行ったことが、本年度実施した理科実験ゼミの特長であるが、これは、今回のゼ ミの参加者である 3 年生が理科教育法Ⅰ〜Ⅲで模擬授業を実施、検討した際に出た課題が踏まえられてい る。その課題とは、学生自身が授業を計画する際に、教科書に記載された方法のみにこだわってしまい、児 童から出る発想を柔軟に生かし切れなかったという課題である。児童から出る本来科学的にも妥当である 方法を授業に取り入れられなくでは、問題解決型の学習にならないのではないかという意見が出されてい た。このような課題を踏まえ、理科実験計画シートを作成したことで、準備の段階から理科の見方・考え方 を学生自身が整理したり、学習問題に対する児童の反応等を推測し共有したりすることができ、ゼミ当日 は、参加学生が同じ問題意識をもって、観察・実験に臨むことができた。

(2)-2 ゼミ当日の進め方と参加した学生たちの様子

当日は、事前に作成した理科実験ゼミ計画シートをスクリーンに映して全体に共有し、児童が発想する

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と推測される予想について改めて検討した。次に、児童が考え る方法を推測し、その方法が科学的に妥当であるのか、実際に 行えるのかについて話し合った。そして教科書に記載された実 験は児童にとっては自然な思考の流れと言えるのかについて も話し合いを行った。その際、運営者である森川、古里が一方 的に解説を行うのではなく、参加した学生全員で話し合えるよ うにした。このような進め方によって、参加した学生は、実験 器具の適切な扱い方を知るだけでなく、児童の目線に立ち授業 をする際の教材研究の場としても活用することができた。

ゼミ当日の様子について、2020年10月19日に実施したゼミを例に挙げて説明する(図1参照)。10月 19日のゼミでは、粒子分野「もののあたたまり方(第4学年)」(図2参照)で扱われる観察、実験を取り 扱った。「もののあたたまり方(第4学年)」において、水、金属、空気のそれぞれがどのように温まってい くのかを調べるについて実験を行う際に、教科書には示温シールや示温インクを使用し、温度による色の 変化によって温まり方を捉える方法が記載されている。しかしながら、本単元に入った時点での児童は、示 温シールや示温インクの存在は知らず、方法を考える際に児童の発想からは出てきにくいと推測した。よ って、児童の立場に立った方法を考えたとき、水、金属を温める際に、まずは温度計を使って、どこから速 く温まるかを調べるというものが自然なのではないかという意見が出された。これを踏まえ、実際に温度 計を用いて、実験を行なってみたところ、水が対流している様子を若干は見ることができたが、温度計のみ ではどこからどのように温まっているかは非常に捉えにくかった。さらに、温度計で測りながら観察する ことでやけどの危険もあるなどの課題もあることが分かった。その後、教科書に記載された示温シールや 示温インクを使用して実験をしたところ、温度の変化を色の変化によって捉えることができ、対流も容易 に確認することができた。最後にこれらの実験を通しての考察を行った。このような過程を経て、児童が自 然に発想すると推測される「温度計を用いる」という方法のみでは捉えにくい対流という現象を、「可視化」

するために示温シールや示温インクが、実験の中で使われていることに学生自身で気づいた。つまり、教科 書に記載されていることをただ真似るのではなく、示温シールや示温インクは、温度の変化を可視化する ために使われるものであるということを理解することができた。教科書に記載された方法を教師が予め一 方的に提示してしまうのではなく、子どもが発想する方法を元に、より科学的に妥当な方法へと問題解決 していう過程を学生自身が経験す

ることができたと言える。

これ以外のゼミにおいても、児 童が発想する方法を考えて実際に 実験を行い、それを教科書に記載さ れた実験と比較することで、当初の 課題であった児童から出る本来科 学的に妥当である方法を授業にう まく取り入れ、それを元にした問題 解決型の学習を行っていくという

感覚を掴むことができた。このよう 図2.「もののあたたまり方」(『わくわく理科4』啓林館(p139、141より)

図1. ゼミの様子

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小学校教員養成課程に在籍する学生の観察・実験に関する技能の向上を目指した取り組み

-「理科実験ゼミ」の成果と展望-

にゼミにおいては、実験器具の適切な扱い方を知ることをはじめ、授業力向上のための学びの場としても 有意義であった。

3. 2020年度後期に実施した「理科実験ゼミ」の成果と課題

―参加者への事後アンケート、ヒアリング結果より

全5回の実験ゼミ終了後、Google formを用いてアンケートを実施した。アンケートでは、「参加した回 数」「実験ゼミに参加して、身に付いたことはありますか」「あると答えた人は、どんなことが身に付いたか 教えてください」「改善点があれば教えてください」「今後やりたいこと(単元や進め方などについてでも 可)」の5点について尋ねた。参加者全13人中10人から回答があった。アンケートを回収後、特に「どん なことが身に付いたか」については、アンケートへの回答のみでは、参加した学生が具体的にどのような力 が身に付いたと感じたのかが分からなかったため、結果をもとに、参加者にヒアリングし、補足を行った。

まず、「参加した回数」について尋ねた質問では、10名中6名が「すべて参加」、4名が「ほぼ参加」と回 答している。多くの学生が、ゼミに積極的に参加をしたことが分かる。次に、「理科実験ゼミに参加して、

身についたこと」を尋ねた設問では、受講生全てが「ある」と回答した。そして、「あると答えた人に、ど んなことが身についたか」を尋ねた設問では、実験に関することと児童に関することの大きく 2 つの面か らの回答があった(表1 参照)。実験に関することについては、まず実験器具を適切に扱う力が身につい たという回答が最も多かった(回答1、2、3、6、7)。具体的には、電流計、コンデンサー、気体検知管、

示温インクなど実験器具の名称は知っているものの学生にとってはあまり馴染みがなく、これまで扱っ たことのないものが挙げられていた。また、実際に実験を行うことで、注意点やポイントが分かったり、

予想通りにいかない際に何が原因なのかを考えたりするなど実験そのものに関する理解が深まったと いう回答もあった(回答4、5、6、8)。具体的には、「もののあたたまり方(第4学年)」及び「ものの 燃え方と空気(第6学年)」で扱われる実験が複数挙げられており、これらの単元で扱われる実験は、ゼ ミ参加前の学生にとって理解がしにくかったと考えられる。実際に行うことで、「実験が必ずしも成功す るとは限らないこと」を知り、改めて事前実験の大切さを知ったという回答もあった(回答8)。児童に関 することに対しては、児童がどのような予想を立てるかなどの児童目線で考えることができ、実際の授 業での児童の意見に対応できるようになったと回答している(回答 9)。回答 10 は、児童の発想する方 法をもとに教師が科学的に妥当な方法を提示していくことが重要であることに気がついたという実験、児 童の両方に関する内容であった。

表1. 理科実験ゼミに参加して、身についたこと

※ヒアリングでは、アンケートへの回答の主に下線部について、具体的にどのような内容であるのかを尋ね補足を行った。

アンケートへの回答

(全て原文のまま)

ヒアリングによる補足

1.教科書に載っている内容の妥当性を 考える力や実験器具の適切に扱う力を 身につけました。

・電流計の使い方

・並列つなぎの仕方

→直列つなぎは簡単だが、並列つなぎ は難しかった。

・コンデンサーの扱い方

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実験に関すること

→手回し発電機で速くたくさん回し すぎると、コンデンサーが壊れてし まった。

2.実験器具等の操作の仕方 ・気体検知管の扱い方

3.やったことのない実験もできてよか った。家ではできないものも多かった のでありがたかった。

・4 年生の粒子分野の「水のあたたま り方」で、示温インクを用いた実験。

4.実験結果の実際について(結果がは っきり分かるか、そうでないか、どのよ うに実験を行えばはっきり分かるよう になるかの工夫などについて)

・6 年生の粒子分野の「ものの燃え方 と空気」

→瓶の中に酸素を入れ、その中にろう そくを入れて燃え方を調べる実験

→実際にやって目で確認することで、

どのくらいで消えるのか、どのように 燃え続けるのかなどのイメージがし やすくなった。

5.実験の手順、結果などの理解。 教科

書を見て流れを確認するだけでなく、

実際にやってみることで自分自身の理 解がより深まった。

・4 年生の粒子分野の「もののあたた まり方」での実験

・6年生の粒子分野の「ものの燃え方 と空気」での実験

6.実験の仕方、注意点、ポイントがわか った

・4 年生の粒子分野の「もののあたた まり方」の「金ぞくのあたたまり方」

の実験

→金属を温める場所に注意すること。

・6 年生の粒子分野の「ものの燃え方 と空気」の「ものが燃えるときの空気 の変化」の実験

→気体検知管を使用する際に注意す ること。

7.知らなかった実験器具を知ることが できた。

・示温インク

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小学校教員養成課程に在籍する学生の観察・実験に関する技能の向上を目指した取り組み

-「理科実験ゼミ」の成果と展望-

8.模擬実験を行うことの大切さ。あと、

実験が必ずしも成功するとは限らない ことを知りました。

・実験が成功しないときに、何が原因 なのかを考えることができ、事前に対 応することができる。

児童に関すること

9.児童がどのような予想を立てそうか 等の児童目線で考えることができた。

・実際の授業での児童の意見に対応し やすくなった。

実験、児童の両方に 関すること

10.模擬授業では実験出来なかったと ころもできたので、とてもためになり ました!私の担当させてもらったとこ ろでは、コイルの巻き方がとても難し くて、児童の意見(コイルの巻き数を増 やす→巻き数を児童に決めさせると 300とか大きい数字になる)をそのまま 実験につなげるのは難しいのではない かな〜と思いました。教師が児童が巻 けるくらいのある程度大きな数字を提 示する必要があるなあと思いました。

・コイルの巻き方

→コイルの巻き数を増やせばいいと 分かったのはいいが、巻き数を児童に 決めさせると 300 回などの大きな数 字になってしまう。

→教師が児童が巻けるくらいのある 程度大きな数字を提示する必要があ ることが分かった。

「改善点」について尋ねた設問では、「人数、場所、器具についての把握や連絡」「実験によっての時間 配分、把握(目安の時間検討)」などと、担当分野の準備がよりやりやすくなったり、より計画的に行っ たりするような意見が出た。「今後やりたいこと」について尋ねたでは、「新設の3年「音のせいしつ」

をやりたい」「月と太陽の分野が苦手な人が多いと思うので、その単元について十分な知識と技術が欲し い」「一つの単元全ての授業が作ってみたい」「実験ができない分野で、どのように授業を展開すれば よいか、どのような資料を使うと効果的なのかなどについて学びたい」「まだ行っていない実験をやりた い」など意欲的な回答が挙がった。

これらを踏まえて、今後もまずは、本年度作成した「理科実験ゼミ計画シート」を活用し、参加する学 生自身が事前準備を十分に行った上で問題意識を共有してゼミに臨むという運営方法を続けたい。なおそ の際に、「理科室なのか講義室なのか、どんな器具が揃っているのかの連絡がもっと密にできると、担当 分野の準備がやりやすかった」という改善点を踏まえ、実験器具の事前把握や、実施場所についての事前 連絡を綿密に行うことなどを心がけていきたい。これらは、理科実験ゼミとは直接関係がないことのよう に思われるが、他の授業等もある学生がゼミに主体的に参加する上で、重要なことであると考える。ま た、「空白の時間ができていた」「最初にある程度の目安の時間を提示するのもいい」という改善点を踏 まえ、本年度は、単元ごとで予め日時を区切っていたが、空白の時間が出来るだけないよう、実験内容に よって目安を定め、時間を決めて行っていきたい。今後の内容としては、新設の第3学年の「音の性 質」や地球分野の知識や指導技術を身につけたり、1つの単元を決めて全授業を作成したり、実験がで きない分野に関しての授業で使う資料についての考察を行ったりしようと考えている。引き続き、参 加した学生の様子や、アンケート結果を踏まえ、学生にとってさらに充実した学びの時間となるよ う、より良いゼミの運営について検討していきたい。

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4. 小学校理科教員養成における観察・実験に関する技能の向上を目指した今後の展望

―教科に関する科目と教職に関する科目、そして自主ゼミのそれぞれに期待されること-

以上、2020年度前期に試験的に実施した理科実験ゼミの成果と課題についての総括を行ってきた。本章 で は こ れら を踏 ま え 小学校教員養成課程に在籍する学生の観察・実験に関する技能の向上を目指した取 り組みにおける今後 の展望 につ いて考 察 を 加え る。

理 科実 験ゼ ミは 、現 教育 学部 3年生が 理科 およ び理 科教 育法 受講後 に、問 題解 決型 の授 業を 構 想 、実 施す るた めに は、自身 の観察・実験 に関 する 技能 を向上 させ るこ とが 必要 であ ると い う 問題 意識 に基 づい て実 施に至 った。特に 今回 のゼ ミでは 、理科実験計画シートを作成し、準備の 段階から理科の見方・考え方を学生自身が整理したことで、この問題意識を共有することができた。ま た ゼ ミ終 了後 に実 施し た ア ンケー トから 、参加 者は実 験器 具を 適切 に扱 う力 が身 につ いた り、実 験 の注 意点 のポ イン トが 分かっ たりす るな ど実 験に 関す るこ とを成 果とし て実 感し てい た 。そ の 他に も 、児童 目線 で予 想や 方法 を推 測で きる よう にな った りする など、児 童に 関する こと に お いて 成果 を実 感し てい るとい う回答 もあ った 。実験 ゼミを 実施 する に至 った 当初 の目 的で あ っ た 、学 生の 観察 、実 験に 関す る技能 を向 上 さ せる 場と して 一定の 成果が あっ たこ とが 窺え る。

今 回は 、本学 教育 学部に おい て学 生が 主体 的に 運営 する ゼミ の形式 で 、観 察 、実 験の 技能向 上 に関 する 取り 組み を行 った。他の小学校教員養成大学においても、学生の観察、実験の技能向上を目 指し、主に正規の授業内において様々な実践がされている。例えば、岩間・松原(2019)においては、「初 等教科教育法理科」の授業を、第1分野(物理、化学)、第2分野(生物、地学)をそれぞれ専門とする教 員 2 名で担当することで、教員の専門性を生かしたより質の高い観察・実験を取り入れた授業を行なって いる。また本講義では授業後に、器具の基本的な操作を確認するテストも実施している。また鶴 ケ谷(2019)

で は 、理 科の 教科 に関 する科 目に おい て 、ポ ート フォ リオ 評価を 取り 入れ 、毎時 間の 学習 履歴 を 記入 する こと を行 なっ ている 。これ によ って 、観察・実験を 学ぶ 意味や 必然 性を 学生 自身 が 明 確に 理解 する よう にな った 。講 義後 には 苦手 意識 も軽 減し たこと が窺え る記 述も 見ら れた と い う。さ らに、森本(2019)は、「小 学校 理科 」「初 等教 科教 育法 理科」の 両方 にお いて、理科 の 自由 研究 と科 学お もち ゃ製作 を取り 入れ てい る。学生 は自 由研 究に 取り 組む 中で 、自 ら課 題 を 見つ けて デー タを 取っ たり 、科 学お もち ゃの 製作 を行 った りする ことで 、多様 な発 想を持 ち 、 試 行錯 誤を 体験 でき てい たこと から有 効な 取り 組み であ ると 考察さ れてい る。

このように学生の観察、実験の技能向上を目指した取り組みは、他の小学校教員養成大学においても数 多く実施、検討されているが、今回本学で行なった取り組みは学生によるゼミ形式での運営という点が特 長的である。本学においては、教科 に関す る科 目「 理科 」で はお よび 教職 に関 する 科目「理 科教 育 法 」を 受講 した 学生 自身 が、観察・実 験の 技能 向上 の必 要性 を感じ て、実 施を して いる 。学 生 た ち は 「 理 科」 に お いて 基 本 的な 知識 や 科 学 的 な見 方 ・ 考え 方 を 理解 し、「 理科 教 育 法」 に お い て小 学校 での 問題 解決 型での 授業づ くり につ いて の理 解と 、そ れに 基づ いて 模擬 授業 の実 施、

検 討を 行な った 。本 年度 は、これ らの 講義 後に ゼミ が実 施で きたこ とで、結果 的に 、学 生自 身 が 観察・実験 の技 能向 上の必 要性 を感 じた 上で 、ゼミ に参 加する こと がで きた 。教科 に関 する 科 目が 開講 され る 1、2 年次 の段 階で は、 学生 は模 擬授 業等 の経験 はほと んど なく 、問 題解 決 型 授 業 に 関す る 理 解も 薄 い 。 し た がっ て 、 今 後も 「 理 科実 験 ゼ ミ」 は、「 理 科」「 理 科教 育 法」

終 了後 に行 うこ とが 適切 である と考え られ る。1、2 年次 での「理 科」では 小学 校で 理科 授業 を

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小学校教員養成課程に在籍する学生の観察・実験に関する技能の向上を目指した取り組み

-「理科実験ゼミ」の成果と展望-

行 う上 での 基本 的な 知識・技 能を、3年 次前期 の「 理科 教育 法」では 問題 解決 型の 授業 づく り へ の理 解 、指 導案の 作成 およ び模 擬授 業の 実施 を 行 う。そし て 、問 題解決型 授業 に自 身の 観察 、 実 験の 技能 向上 が必 要で あるこ とを理 解し た上 で、3年 次後 期以 降、「 理科 実験 ゼミ 」で その 技 術 を磨 いて いく 。現段階 では 3者 をこ のよ うに 位置 づけ なが ら開講 してい くこ とが 適切 であ る と 考え られ る。

他の小学校教員養成大学において実施されていることを踏まえ、今後は「理科実験ゼミ」においても操作 を確認し合うテストや、学生自身が学習履歴を明確にできるポートフォリオなどを取り入れていくことが 必要である。観察実験器具操作の経験のみでは授業指導の自信にはつながらず、観察実験器具操作の自信 が授業指導の自信と関係している(遠藤・田口 2016)という報告もある。この報告からも、今後は理科実 験ゼミにおいても、観察、実験器具の操作を経験することに加え、その操作に自信を持てるという状況まで を見据え、学生の観察・実験に関する技能向上を行なっていきたい。

宮崎国際大学教育学部学部生

付記・謝辞

本研究は、JSPS科研費「私立大学小学校教員養成課程における理数科指導力向上に関する研究」(課題番

号20K1412)、若手・女性研究者奨励金「小学校教員養成課程における理数科指導力向上に関する研究」の

助成を受けたものです。

引用文献

安 藤秀 俊(2013). 『 小学 校理 科教育 法― 基礎 知識 と演 習― 』, 大 学教育 出版.

岩 間淳 子・ 松原 静郎 (2019). 「教 員の 資質 向上 に向 けた 魅力あ る授業 を目 指し て –観察 、実 験 の重 視及 び探 究的 な学 習の推 進を柱 に –」, 『理 科の 教育 』,12,17-20.

遠 藤 有 莉 ・ 田口 瑞 穂 (2016).「 小学 校 教 員 養 成課 程 学 生に お け る実 験器 具 操 作 と 理科 指 導の 自 信の 有無 の関 係」, 『日 本科 学教育 学会 研究 会研 究報 告』,Vol.31, No.13, 101-104.

科 学技 術振 興機 構理 科教 育支援 センタ ー(2011).「 平成22年度 小学 校理 科教 育実 態調 査集 計 結 果」https://www.jst.go.jp/cpse/risushien/elementary/cpse_report_015A.pdf

(2021年2月 1日閲覧 )

鶴 ケ谷 柊子 (2019). 「 小学 校教員 養成 課程 にお ける 理科 への苦 手意識 軽減 の取 り組 み –学生 の 状況 を見 取り 、授 業を 構成・ 改善す る –」,『 理科 の教 育』,12,21-24.

森 本弘 一(2019). 「小 学校 教員養 成課 程に おけ る学 生の 理科の 資質能 力向 上の 試み 」『 科学 教 育研 究』, Vol.40, No.1, 34-38.

文 部科 学省 (2017).『 小学 校学 習指 導要 領理 科編 』.

(10)

付録1.

理科実験ゼミ 計画表

理科実験ゼミシートは、取り扱う内容を「各分野・学年で働かせる見方・考え方」「単元名」「学習問題」

「本単元で見方・考え方を働かせられる場面」「児童の立場に立った予想」「方法(児童の立場に立った方法 含む)」「結果」「考察」「まとめ」の順で整理したものである。

Referensi

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