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巻頭言 Top Column - J-Stage

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Academic year: 2023

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化学と生物 Vol. 50, No. 1, 2012

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「大変ですね」「まるでギャンブルみたい ですね」,これは,筆者が長年にわたって 探索研究に従事してきたことを明かすと決 まって返ってくる答えである.筆者は,学 生時代から会社における研究生活を通じ 22年間微生物が生産する生理活性物質の スクリーニングに直接携わり,その後も管 理部門などで医薬の探索研究に関わった.

つまり30年近く探索一筋の生活を送って きたわけであるが,一度たりとも「苦し い」とか「大変だ」と思ったことはない.

ましてギャンブルみたいだなどと評される ことには強い違和感を覚えるのである.微 生物の培養液の中から精製に苦労を重ねた 末に新規物質にめぐり合えたときの感動 や,仮に既知物質であっても今までにない まったく新しい生理活性を見いだしたとき の喜びは,探索研究に従事したことのない 人たちには恐らくおわかりいただけないの ではないかと思う.

探索研究は,農芸化学という学問体系の 中でも最も農芸化学らしい研究手法の一つ だと思われる.農芸化学の大先輩である坂 口謹一郎博士が,日本農芸化学会創立60 周年記念式典に寄せられた講演原稿の一部 に「(日本の農芸化学においては)泥の中 から何かをつかんで立ち上がらねばなら ぬ,実物を実験によってつかむことから出 発するというのが,我々が鍛えられた研究 の行き方であります.かの有名な道元禅師 が成仏のモットーとして強調された「只管 打座」という言葉が,この泥まみれでモノ を求める努力を表わす,非常に適切な唯一 の言葉であると感ずるのであります」とあ る.筆者などはこの言葉に感動すら覚える のである.

新しい医薬品の開発は,臨床試験の難易 度にもよるが,だいたい9年から17年くら いかかるといわれている.その間,膨大な 時間と経費がかかり,それに携わる人の数

もおびただしいものになる.その一方で,

新薬開発の成功確率はきわめて低いという のも特徴である.研究を始めてから製品に 至る確率は25,000 分の1程度といわれる が,新規研究テーマ立ち上げに必要な初期 リード化合物の探索段階を考慮すると,全 体としての成功確率はさらに低いのが現実 に思える.そのような言い方をすると,

リード化合物の発見は,これから始まる長 い創薬のプロセスのたかが最初の小さな一 歩に過ぎないと聞こえるかもしれないが,

これなくしては何も始まらない,いわば創 薬の原点となるきわめて重要な一歩なので ある.

製薬会社といえば,求められる人材とし ては当然薬学系の出身者が中心になると思 われるだろう.確かに研究開発における薬 理,安全性,毒性,分析代謝,そして製剤 などに関する研究は薬学系の出身者に即戦 力を期待するかもしれない.近年,就職試 験で面接を行なうと,特に精製を経験した 学生は少なくなったように思われる.しか し,創薬の原点となる探索研究は,農芸化 学出身の人たちにこそ最も馴染みやすく,

そして大いに活躍が期待される領域なので ある.探索対象が,微生物や化合物ばかり ではなくタンパク質や遺伝子であっても同 じことだと思う.このことは今までの実績 から論を俟たないが,筆者の拙い経験から も確信をもって言えることである.また,

米国で顕著な実績を上げている親しい研究 者が「米国で成功するにはまともに同じ条 件で戦ってはダメで,日本人研究者は,

“精製”というプロセスを研究の中に組み 込んだほうがよい.欧米人はコツコツと時 間をかけてモノをとるなどということは好 まないから」とも言っている.

最も農芸化学らしい研究手法である泥臭 い探索研究を大いに勧める所以である.

巻頭言

Top Column

探索研究の勧め

松田 譲

協和発酵キリン株式会社

Top Column

Referensi

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