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感染症法下での高度病原体の分譲活動と輸送方法の課題

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(1)

─ 127 ─ Microbiol. Cult. Coll. 26(2):127─129, 2010

1.はじめに

 病原微生物の保有は感染症法で厳しく管理されてい る.法律ができてから特定病原体の 2 種,3 種の分譲 はほぼゼロになっている.この感染症法の下で特定病 原体の収集保存を行っているカルチャーコレクション として実績の蓄積と,利用者に負担のかからない運用 の問題点と課題について取り組んでいる現状を紹介す る.

2.菌株分譲と輸送の課題

 感染症法で指定された特定病原体は表 1 に示した基 準で国に届け出るようになっている.2 種病原体はあ らかじめ保有菌種の許可を申請しておけば,同じ菌種 の株が増減しても厚生省への届け出の必要はない.し かし,すでに保有届をしている菌種の菌株を収集,あ るいは分譲する際は所属都道府県の公安に,菌株の輸 送計画書を届け出なければならない.3 種病原体は保 有後 7 日以内に届けることになっているが,輸送は 2 種と同様所属都道府県の公安に輸送計画書を届け出な ければならない.

 輸送計画書は単に届け出ではなく,公安から詳細に 輸送手順,輸送経路,安全対策,事故の連絡系統など 細かくチェックを受ける.専用の輸送車の準備,専門 家の同伴,事故の際のマニュアルと連絡網,所定経路 の交差点の通過時間など初めて計画書を作る場合は大 きなストレスになる.実質的に経験のない輸送業者は 途中で輸送計画書の作成をギブアップすることが多 い.岐阜から東京の感染症研究所に菌株を輸送するの に,引き受けて業者へ支払った経費は約 30 万円,北 海道から中部空港を経て岐阜まで菌株を輸送するのに

約 50 万の経費がかかった経験がある.

 公安とのやり取りで感じたのは,2 種と 3 種の病原 体ごとに公開された個別の輸送計画書がなく,1 種の 輸送に作成された前例の計画書をいただき,それに準 じて申請をするように指示された.これには大きな不 満を感じた.1 種,2 種および 3 種では当然輸送計画 に違いがあってもよいはずである.

 このような手間と経費がかかる輸送計画が必要にな れば,当然,誰も 2 種,3 種病原体の分譲依頼や ,  寄託をする人はなくなる.実際に感染症法が施行され て以来,2,3 種の特定病原体の分与を依頼する人は 皆無になった.このような経験から 2 種,3 種の病原 体の輸送方法の改善を国に求める必要があると実感し ている.感染症法の改訂の際には輸送に対する下記の 私案を参考に議論を深めていただきたい.

3.感染症下での新しい分譲体制

 このような制約の中で高度病原体の分譲を継続しよ うとしても実績が蓄積されない.菌株の収集に当たる 経費は保存機関が支払うとしても,今後は分譲を依頼 してくる研究者や教育者の利用は見込めない.頻度の 高い特定病原体は医療現場では教育研究には重要な標 準となる菌種であるが,このままでは特定病原体を取 り扱った経験のない教育者が増加することを懸念して いる.

 そこで Gifu University Type Culture Collection

(GTC)では特定病原体の菌株の新規分譲は,次の 2 つの方向へ転換しようとしている.

1) 弱毒株を作り,レベルダウンして検査技師や医学 部の教育用菌株として分譲を促進する.

2) 特定病原体の DNA の分譲を推進し,研究者の層 を増やす.

感染症法下での高度病原体の分譲活動と輸送方法の課題

江崎孝行

岐阜大学大学院再生医科学病原体制御分野 〒501-1194 岐阜市柳戸 1-1

Collection and transport of high risk pathogens under regulation of Japanese infectious disease law

Takayuki Ezaki

Department of Microbiology, Gifu University Graduate School of Medicine, Yanagido 1-1, Gifu, 501-1194, Japan

E-mail: [email protected]

(2)

実務担当者会議報告

─ 128 ─ 1)の弱毒株は感染症法では 2 つの菌種に属する株 が法律の対象外として承認されている.Bacillus anthracis の病原因子欠損株でワクチン株として利 用されている.もうひとつは Franciella tularensis のワクチン株が除外株として指定されている(表 3-1).問題はこのような株が法律を除外されても,

レベルダウンを承認していないことになる.両方 の菌種は BSL 分類では BSL3 に所属するため,ワ クチン株を公式にレベルダウンする必要がある.

ワクチン株のほかに 2 種,3 種,4 種病原体には弱 毒株が多く作成され,報告されている.これらの 株を感染症法から除外し,さらにレベルダウンす る作業が必要になっている.そのための議論のた たき台として利用してもらいたいと願って表 3 に はレベルダウンの案を示した.

 どこがこの責任を担ってレベルダウンを行うかは細 菌,ウイルス,カビとその専門の学会で議論を深めて,

見識を示してもらいたいと願っている.4 種病原体は 法律では輸送の対象外になっているが,実験室での取 り扱いが病原体取り扱い基準やカルタヘナ法で BSL2 あるいは BSL3 で取り扱うことになっているため,幅

広い教育機関での使用を促進するためのレベルダウン が要望されている(表 3-2).表 3-2 には代替となる菌 株情報も記載している.目的に応じて特定の因子を もった安全な他の株を使って教育するのに有効と考え られる.現状の感染症法では特定病原体の核酸の輸送 取り扱いは法律の対象外になっているため,分譲希望 者には菌株が必要なのか,DNA が必要なのかを確認 し,DNA の分譲を促進している.

4.GTC の今後の活動方針

 GTC では 2 種,3 種,4 種の病原体は全コレクショ ンの 3 割を占め,特定病原体の保有比率は高い.さら に感染症法の 1 類から 5 類感染症をおこす菌種まで広 げると保有株の 5 割が感染症法に関連している.残り 5 割は日和見病原体や研究用に収集した菌株で占めら れており,保有株の 5 割は他の恒久的な保存機関でも 問題なく保有できる株である.文科省の NBRP の支 援を受けて分譲保存活動を行っているが,スペース,

スタッフに制限があり,今後はこの 5 割の株は他の機 関に移譲し,GTC では感染症法の対象菌種に絞り込 んで保存分譲活動を継続する計画でいる.

病原体の輸送計画書の私案

輸送関連項目 一種 二種 三種

公安への事前通知  必要 必要 不要

公安への事後通知(7 日以内) 対象外 対象外 対象

 指定の輸送容器 必要 必要 必要

 輸送方法の記載 必要 必要 必要

 指定の搬送車両 必要 不要 対象外

郵送・宅配業者を使用した輸送 不可 可能 可能 指定車両での輸送経路計画書の提出 必要 選択可能 不要

 緊急時の連絡網 必要 必要 対象外

 輸送道路と通過時間の提示 不要 不要 対象外  緊急時の消毒薬の携帯 要 要 対象外  搬送車両内の容器固定法の記載 要 不要 対象外

 専門家の同乗 要 不要 対象外

耐性結核菌,ブルセラ菌の輸送を通じて要求された項目を参考に 私案を記載した.今後の感染症法の改訂の際の議論の資料に利用 してもらいたい.

1

 特定病原体と輸送

項目 一種 二種 三種 四種

代表的菌種 出血熱ウイルス群 炭疽菌,ペスト菌,野兔病

菌,ボツリヌス菌,毒素 多剤耐性結核菌,ブルセラ 菌,リケッチア,コクシエ エラ

出血性大腸菌,コレラ菌,

チフス菌,結核菌,赤痢菌 指定菌種の保有 国が指定した機関 事前に申請し保有が許可さ

れた機関 保有後 7 日以内に届け出 届け出不要,事故の際は報 告

輸送制限 事前に公安に申請 事前に公安に申請  事前に公安に申請  不要(事故の際は届け出)

注意:表の特定病原体は一種のウイルス以外は代表的な細菌のみを掲載した.

(3)

─ 129 ─

Microbiol. Cult. Coll. Dec. 2010 Vol. 26, No. 2

3‑ 1

 感染症法除外株(現行)

 

B SL

レベルの新提案(私案) 菌 名感染症法 現状の BSL

新提案特 徴

NBRP 保存株

文献 Bacillus anthracis炭疽菌34F2株法律2種除外株BSL3BSL1Lost two virulent plasmidsGTC 34F2vaccine strain Bacillus anthracis炭疽菌Davis株法律2種除外株BSL3BSL1Lost two virulent plasmidsGTC 3P0882vaccine strain

Francisella tularensis subsp. tularensis B38

株法律2種除外株BSL3BSL1Vaccine strainGTC 3P0824vaccine strain

Francisella tularensis subsp. holarchtica LVS

株法律2種除外株BSL3BSL1Russian vaccine LVS strainGTC 3P0827vaccine strain

3‑ 2

 安全性を高めた教育用菌株と

B SL

レベルの新提案(私案) 菌 名感染症法

BSL 現行

新提案特 徴

NBRP 保存株

文献 Mycobacterium bovis BCG strain4種病原体BSL2

B SL 1

Vaccine strainGTC 3P0554vaccine strain Salmonella enterica var. Typhi Ty21a4種病原体BSL3

B SL 1

Vaccine strainGTC 3P0628vaccine strain Citrobacter freundii Vi positive特定種外BSL2

B SL 2

チフス菌のVi 抗原の代用GTC 07891 Salmonella enterica var. Typhi Vi, Noninvasive4種病原体BSL3

B SL 2

O9, 12: Z66, rpoS, sipB, invA, ViGTC 3P0626Zhao L, et al. 2001 Microbiol. Cult. Coll.

17

: 13-21 Vibrio cholerae O1 毒素欠損株4種病原体BSL2

B SL 1

CT toxin非生産株not ready  Vibrio cholerae O37 毒素非生産株特定種外BSL2

B SL 1

CT toxin非生産株GTC 13052 Escherichia coli O157: H7 毒素非生産株4種病原体BSL2

B SL 1

O157: H7 Shiga毒素非生産株GTC 03904Itoh Y, et al. 1999 Microbiol Immunol.

43

(7): 699-703 Shigella dysenteriae O1 毒素欠損株4種病原体BSL2

B SL 1

Shiga toxin株<デンカ生研<感染症研究 所GTC 14808  Shigella dysenteriae O2 侵入因子欠損株4種病原体BSL2

B SL 1

Shiga toxin, invasion plasmid<デンカ 生研<感染症研究所GTC 14809  Shigella flexneri 1a 侵入因子欠損株4種病原体BSL2

B SL 1

Shiga toxin, invasion plasmid<デンカ 生研<感染症研究所GTC 14821  Shigella boydii 侵入因子欠損株4種病原体BSL2

B SL 1

Shiga toxin, invasion plasmid<デンカ 生研<感染症研究所GTC 14834  Shigella sonneii 侵入因子欠損株4種病原体BSL2

B SL 1

Shiga toxin, invasion plasmid<デンカ 生研<感染症研究所GTC 14852  Coxiella burnetii Nine Mile strain3種病原体BSL3

B SL 1

Nine Mile strain Clostridium sporogenes特定種外BSL2BSL2 C.botulinum毒素非生産の類縁菌として培 養,集落観察GTC 06096 Clostridium botulinum toxin A 欠損株2種病原体BSL2

B SL 1

Toxin A欠損株not ready  Clostridium botulinum toxin C 欠損株2種病原体BSL2

B SL 1

type C (C1, C2)毒性なしGTC 03342 Burkholderia thailandensis特定種外BSL1

B SL 1

B.pseudomalleiの類縁菌で類似集落形成GTC 3P0407 Burkholderia pseudomallei purM欠損株2種病原体BSL3

B SL 1

CDC approved excluded strain,

D

purMBp82, Bp190Katie LP, et al. 2010 Infection and Immunity

28

: 3136-3143 Yersinia pseusdotuberculosis特定種外BSL2BSL2 Type strain,Y.pestisの類縁菌として性状, 集落観察GTC 0118 Corynebacterium diphtheriae 毒素欠損株特定種外BSL2

B SL 1

毒素非生産株<感染研分与株GTC 14870 Bordetella pertussis 毒素欠損株特定種外BSL2

B SL 1

毒素非生産株<感染研分与株GTC 14871 BSL1:日和見感染をおこす可能性が残されている株 新提案レベルは2010年度の日本細菌学会総会のバイオセーフティー委員会で審議されたたが,まだ理事会承認には至っていない.

Referensi

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