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日本国内における生物多様性オフセットの類似事例に関する研究

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日本国内における生物多様性オフセットの類似事例に関する研究

A study on similar cases of biodiversity offsets in Japan

芦朋也

,小畠雅史

,田中章

**

Tomoya ASHI,Masashi KOBATAKE,Akira TANAKA

Abstract

Environmental Impact Assessment regulations of national and local governments, mitigation measures, companies’ activities and quantitative ecological impact assessment methods are checked from the point of the relationships with “biodiversity offset”. As a result, first, 10 local governments positioned mitigation hierarchy more explicit than nation’s in EIA regulations. Secondly, concept of "reduction"

is widely used in companies’ activities and concepts of "compensation" are also seen. Thirdly, quantitative ecological impact assessment methods are checked and more than three -quarters contain concepts of "quality" and "space". It is highly expected to stipulate clearer mitigation hierarchy in National EIA law and it will be driving force of biodiversity cons ervation in Japan.

「キーワード:生物多様性オフセット、ミティゲーション・ヒエラルキー、環境影響評価法、環境影響 評価条例、CSR」

「keywords:Biodiversity offset, Mitigation Hierarchy, Environmental Impact Assessment Act,Assessment regulations of local governments, CSR」

1.背景と目的

生物多様性オフセットは、米国魚類・野生生物調 整法(1958)を起点とし、1969 年国家環境政策法

(National Environmental Policy Act :

NEPA)のミティ

ゲーション方策として確立された「代償ミティゲー ション」と同義である。その後その普及に伴い、近 年、国際社会で統一的に生物多様性オフセットと呼 ばれるようになった(田中,

2011)

。この生物多様性 オフセットはノーネットロス政策と共に、

53

ヶ国以 上で制度化されていることが分かっている(田中、

大田黒,2010) 。

環境影響評価法では、 「今後の環境影響評価制度の 在り方について」 (中央環境審議会答申, 2010) 、 「環 境影響評価法に基づく基本的事項等に関する技術検 討委員会報告書」 (環境省総合環境政策局, 2012)に おいて「生物多様性オフセットは、生物多様性の損 失を最小限とする手段の一つとして有効な一面もあ り、諸外国において導入が進められている一方で、

代償措置の定量的な評価手法や代償措置実施後の回 復が担保できるのか不透明な段階でもある。こうし た段階において生物多様性オフセットを導入するこ とは、より優先すべき回避や低減が疎かとなる可能 性もあり、より慎重な検討を要する。既に国内で行 われている定性的な事例を集積しつつ、海外におけ る定量的なオフセットの事例の収集・整理を進め、

我が国における定量的なオフセットの導入可能性に

ついてさらに調査研究を進めることが必要である」

としている。

磯山ら(2010)は、環境影響評価法対象事業にお ける環境保全措置を対象に調査し、 「回避⇒低減⇒代 償」というミティゲーション・ヒエラルキーとの関 係性を分析した。また、環境省(2011)では、環境 影響評価法対象事業の代償措置を場所、種類、規模、

時点といったタイプ区別している。

一方、地方自治体の環境影響評価条例や企業の

CSR

活動では、CBD COP10 前後からの生物多様性 保全の認識の広がりとともに、生物多様性オフセッ トを含むミティゲーション・ヒエラルキーの概念、

それらの実施に不可欠な生態系の定量評価が散見さ れるようになった。

以上の背景から本研究では、日本の生物多様性オ フセットに関連制度、活動、評価の動向を把握する ことで、今後の生物多様性オフセット導入のための 基礎的資料とすることを目的とした。

2.研究方法と研究期間

まず、環境影響評価法およびその基本的事項を整 理・分析した。地方自治体の環境影響評価条例につ いては、

47

都道府県及び環境影響評価制度を有する

31

市町村区の計

78

地方自治体を対象とした。

企業の生物多様性保全に関わるCSR 活動について は、生物多様性オフセットに類似しているものを抽

東京都市大学大学院 環境情報学研究科 環境情報学専攻 **東京都市大学 環境学部 環境創生学科

(2)

出し整理・分析した。対象としては、 「企業と生物多 様性イニシアティブ」 (以下

JBIB)の正会員36

社 及びネットワーク会員

16

社、経団連生物多様性宣言 賛同企業の建設会社(全

35

社)の計

80

社とし、そ れらの

CSR

活動報告書から抽出した。

生態系定量評価手法については、既存文献調査に より生態系定量評価手法の国内の現状を整理した。

なお、生物多様性オフセット類似事例では、磯山 ら(2010)で抽出された

2003

年から

2008

年まで の環境影響評価書で生物多様性オフセット的保全活 動の記載がある

32

件を含め、新たにウェブサイトや 既存文献から該当する事例

23

件を抽出した。

期間は

2010

4

月から

2013

8

月までである。

3.研究結果

3.1 環境影響評価法における「代償措置」

環境影響評価法における環境保全措置は基本的事 項 「第五 環境保全措置指針に関する基本的事項」

に示されている。 「環境保全措置の検討に当たっては、

環境への影響を回避し、又は低減することを優先す るものとし、これらの検討結果を踏まえ、必要に応 じ当該事業の実施により損なわれる環境要素と同種 の環境要素を創出すること等により損なわれる環境 要素の持つ環境の保全の観点からの価値を代償する

ための措置の検討が行われるものとすること。 」と規 定されている。1997 年施行のこの規定は

2001

年、

2005

年、2012 年の改正では変更されていない。な お環境影響評価法に基づく基本的事項に関する技術 検討委員会報告書(2012 )では「回避、低減、代償 措置のプライオリティについては、より『回避』を 優先すべきとの指摘もあるが、前回改正時において 既に『回避、低減、代償措置の順にプライオリティ が高い』と整理された上で現行の規定ぶりとされて いる」としている。

3.2 環境影響評価条例における「代償措置」

47

都道府県の環境影響評価条例に関する技術指 針における環境保全措置は、東京都、埼玉県、群馬 県、山梨県、長野県、兵庫県を除く

41

道府県では国 の基本的事項と概ね同じである。表

1

に上記

1

5

県の環境影響評価条例の技術指針における環境保全 措置の位置づけを示す。

東京都では、 「回避、低減、代償」に加えて、 「環 境の創出に係る措置」の検討を環境保全のための措 置として位置づけている。また、埼玉県では代償措 置の検討は、創出する環境の目標(位置、種類、量 等)等を明示することとしている。群馬県と山梨県 では環境保全措置は「回避⇒低減(最小化)⇒代償」

表 1.都道府県の環境影響評価条例における環境保全措置の位置付け

都道

府県 条例名 改正年 技術指針における代償措置の位置づけ(抜粋)

東 京 都

東京都環 境影響評

価条例 2013

計画段階環境影響評価の段階から回避若しくは低減又は代償が図られるように計画を策定する。環境 保全のための措置に係る検討事項は次の事項とする。①環境影響の回避若しくは低減又は代償を図る措 置、②良好な環境の創出に係る措置。

埼 玉 県

埼玉県環 境影響評

価条例 2013

代償措置を講ずる区域は、対象事業実施区域内又はその近傍とし、創出する環境の内容は対象事業と により損なわれる環境の内容と同種のものとすること。また、代償措置の検討は、代償措置により創出 する環境の目標(位置、種類、量等)等を明らかにできるよう整理すること。

群 馬 県

群馬県環 境影響評 価条例

2013

環境保全対策は次に示す考え方に基づき、回避、低減、代償の順に、事業者が実行可能な範囲におい て検討を行うこととする。

1.回避:事業の全部又は一部を実施しないこと若しくは事業の全部又は一部の位置を変更すること等に よって、環境影響の発生を回避する。

2.低減:事業の程度又は規模を制限すること、事業の実施方法を変更すること等によって、環境影響の 発生の程度を低減する。

3.代償:事業の実施により損なわれる環境を同一の場所で修復、再生する。また、事業の実施により損 なわれる環境と同種の環境を異なる場所で創出するなどにより、損なわれた環境の価値又は機 能等を代替する。

山 梨 県

山梨県環 境影響評

価条例 2013

環境影響評価は、事業の実施が環境に必ず影響を及ぼすことを前提に対象事業区域及びその周辺の環 境を悪化あるいは低下させないため、事業の実施が環境に配慮しながら行われるよう、回避、最小化、

代償の順で検討すること。

1.回避:ある行為の全部又は一部を行わないことにより、環境影響をできるかぎり回避すること。

2.最小化:ある行為の実施の規模又は程度を制限すること、若しくは影響を受けた環境を修復、再生又 は復元することにより、環境影響をできるかぎり最小化すること。

3.代償:代用的な資源又は環境を置き換え若しくは提供することにより、環境影響を代償すること。

長 野 県

長野県環 境影響評

価条例 2009

環境影響評価において、環境に対する影響の緩和を考慮するに当たっては、次に示す考え方に基づき、

回避、最小化、修正、低減及び代償の順に検討する。

1.回避:全部又は一部を行わないこと等により、影響を回避する。

2.最小化:実施規模又は程度を制限すること等により、影響を最小化する。

3.修正:影響を受けた環境を修復、回復又は復元すること等により、影響を修正する。

4.低減:継続的な保護又は維持活動を行うこと等により、影響を低減する。

5.代償:代用的な資源若しくは環境で置き換えたり、又は提供すること等により、影響を代償する。

兵 庫 県

環境影響 評価に関

する条例 2013

ミティゲーション手法は、環境への影響を極力低減するため、①回避、②最小化、③修正、④低減、⑤ 代償の順に検討を行う手法であり、名称・定義は CEQ(アメリカ環境審議委員会)の名称・定義に準拠 する。

注:改正年は条例、施行規則、技術指針の内最も新しい改正年を示す。

(3)

の順に検討することを明記し、その定義も示してい る。長野県と兵庫県では「回避⇒最小化⇒修正⇒低 減⇒代償」の順に検討することを明記し、その定義 も示していた。

31

市町村区の環境影響評価条例の技術指針にお ける環境保全措置の位置づけは、仙台市、千葉市、

逗子市、神戸市を除く

27

市町村区では国の基本的事 項と概ね同じである。表

2

に上記

4

市の環境保全措 置の位置づけを示す。仙台市と千葉市では「回避」 、

「低減」 、 「代償」の定義を示している。さらに逗子 市では、市内の自然環境毎に評価・ランク分けをし、

ランクごとに保全目標を示している。神戸市では代 償措置を実施する場合の留意点を示していた。

結局、環境影響評価法(基本的事項)では未だ明 確にされていない「回避」 、 「低減」 、 「代償」の定義 と優先順位、即ちミティゲーション・ヒエラルキー が、東京都、埼玉県、群馬県、長野県、兵庫県、仙 台市、千葉市の

5

都県

2

市では明示され、埼玉県と 神戸市では代償措置の留意点が明示されていること がわかった。また、逗子市のみであったが、ノーネ ットロスに準じる定量的保全目標を位置付けていた。

3.3 民間企業による生物多様性保全活動 民間企業

80

社の

CSR

活動報告書から生物多様性 保全活動を抽出し内容を分析した結果、行動指針、

ビオトープ造成、植林・植樹、森林・里山整備、種 の保全、評価手法に類別できた。さらにこれらの活 動と生物様性オフセットの関係性を見るために「質」 、

「空間」 、 「種」 、 「回避」 、 「低減(最小化) 」 、 「代償」

の観点から分類した。表

3

にその結果を示した。

80社中43社で生物多様性保全の行動指針を定め

ており、そのうち「回避」が含まれるもの

8

件、 「最 小化」が含まれるもの

21

件、 「代償」が含まれるも のを

3

件確認した。 ビオトープ造成活動は

27

件確認 でき、 「空間」と「種」の概念が含まれる活動は共に

10

件、 「質」の概念が含まれる活動は

4

件、開発事 業に伴う悪影響を「低減」する目的で実施されたも のが

1

件確認出来た。

植林・植樹事業は

21

件確認でき、そのうち

11

件は「種」の概念が含まれる。中には日本国内の開 発事業に伴う悪影響を海外での植林事業で「代償」

しようとしている例もあった。森林・里山整備は

19

件確認でき、10 件は「空間」の概念を含み、4 件は

表 2.市町村区の環境影響評価条例における環境保全措置の位置付け

市町

村区 条例名 改正年 技術指針における代償措置の位置づけ(抜粋)

仙 台 市

仙台市環境影

響評価条例 2013

環境保全の及び創造のための措置は、事業の計画及び実施の各段階に応じ、以下の回避・低減、代償の考 え方にそって、事業者が実行可能な範囲において検討を行うこととする。環境の保全及び創造のための措置 の検討は、回避・低減を優先し、その結果を踏まえ代償を検討する。

1.回避:事業の全体もしくは一部の配置又は内容を変更すること、又は事業の一部を実行しないこと等によ って、影響の発生を回避する。

2.低減:事業の程度又は規模を制限すること、事業の実施方法を変更すること等によって、汚染物質量や自 然の損壊等影響要因の発生の程度を最小化する。

3.代償:事業の実施により損なわれる環境要素について、損なわれた環境要素を同一の場所で修復、再生す る。また、事業の実施により損なわれる環境要素について、損なわれた環境要素と同等又はそれ以 上の機能、価値を有する環境要素を近傍において確保、提供又は創出するなど代替の環境要素によ り影響を代償する。

千 葉 市

千葉市環境影

響評価条例 2010

環境保全措置は、事業の計画及び実施の各段階に応じ、以下の回避、低減を優先し、その結果を踏まえ代 償を検討する。

1.回避:事業の全体もしくは一部の配置又は内容を変更することによって、影響の発生を回避する。

2.低減:事業の程度又は規模を制限すること、事業の実施方法を変更すること等によって、汚染物質量や自 然の損壊等影響要因の発生の程度を最小化する。また、汚染物質の除去装置の設置や修景緑化等適 切な対策を講じることにより、発生した影響要因による影響の程度を最小化する。

3.代償:事業の実施により損なわれる環境要素について、損なわれた環境要素を原則として同一の場所で修 復、再生する。また、事業の実施により損なわれた環境要素をと原則として同種の環境要素を創出 することにより、損なわれた環境要素の価値、機能等を代替する。

逗 子 市

逗子市の良好 な都市環境を つくる条例

2009

事業者は評価に当たっては、対象事業実施区域について機能の総合評価により策定された10m メッシュご との自然環境ランク及び環境保全目標に基づき、対象事業に係る環境保全目標量を算定する。

環境保全目標総量=A ランク環境個別目標量+B ランク環境保全個別目標量+C ランク環境保全個別目標量 A ランク環境保全個別目標量=A ランク分布面積×おおむね80%

B ランク環境保全個別目標量=B ランク分布面積×おおむね60%

C ランク環境保全個別目標量=C ランク分布面積×おおむね40%

神 戸 市

神戸市環境影 響評価等に関 する条例の一 部を改正する

条例

2013

自然環境に関する環境保全措置については、以下の点に特に留意する。

①希少種等を保全することとする場合、当該希少種等が放置によって消失するおそれがあるときは、可能な 限り早期から環境保全措置を実施する必要があること

②代償措置として希少種等を移植することとする場合、現在の生息・生育環境と移植を予定する場所の条件 の違いや移植に関する難易度について事前に十分確認するとともに、移植後の維持管理体制についても十 分考慮しておく必要があること

③自生種により緑地の回復・復元を行うこととする場合、その地域に固有の遺伝子を持つ自生種の供給シス テムが必ずしも確立していないことから、可能な限り、早期からこれを確保するための手立てについて検 討し、事業計画に組み入れておく必要があること

注:改正年は条例、施行規則、技術指針の内最も新しい改正年を示す。

(4)

「質」の概念が含まれていた。 「種」の保全に関して は

29

件確認でき、その多くが絶滅危惧種や猛禽類の 保全活動であった。開発で野生生物種に及ぼす影響 の「低減」に努めている事例も

9

件確認出来た。

CBD COP10

前後で、企業の生物多様性保全活動

は活性化しつつあり、悪影響に対するミティゲーシ ョンなど生物多様性オフセットにつながるような目 的の明確化された活動が出てきている。

3.4 生態系の定量評価手法について

環境アセスメント図書を含む公開されている報告 書や冊子、研究事例などから、国内における生態系 の定量評価手法を整理した結果、確認できた生態系 評価手法

19

件を表

4

に示した。

この中には、建設会社が、開発行為をする際、生 態系への影響に対する配慮を行うために作成したも のが

8

件ある(表

4

の*印) 。

これらの手法について、HEP の評価視点である

「種」 、 「質」 、 「空間(面積) 」 、 「時間」の観点(田中,

1998)

の有無を調べた。 その結果、 全体の

79%で

「質」

と「空間」の観点を含む一方、 「時間」の観点を含む

ものは全体の

32%であった。

3.5 生物多様性オフセット類似事例の動向 明らかとなった生物多様性オフセットの概念を含 む自治体環境影響評価条例、アセス対象事業、企業 活動の合計

70

件を表

5

に示すとともに、 日本地図上 にプロットした(図1) 。

これによると日本全土に行われていることがわか り、特に東京都、愛知県、福岡県で

4

分の

1

以上の 事例が確認出来た。

表 3.企業の CSR 活動としての生物多様性保全活動における生物多様性オフセットとの関係性

概念

事業の分類 質 空間 種 回避 低減(最小化) 代償 実施

件数 行動指針 0%(0) 0% (0) 0% (0) 17%(8) 53%(24) 6%(3) 45件 ビオトープ造成 15%(4) 37%(10) 37%(10) 0%(0) 5% (1) 0%(0) 27件 植林・植樹 5%(1) 19% (4) 52%(11) 0%(0) 5% (1) 5%(1) 21件 森林・里山整備 21%(4) 53%(10) 10% (2) 0%(0) 0% (0) 0%(0) 19件 種の保全 3%(1) 10% (3) 100%(29) 7%(2) 31% (9) 0%(0) 29件 評価手法 100%(8) 56% (5) 89% (8) 0%(0) 0% (0) 0%(0) 8件 その他 20%(2) 10% (1) 60% (6) 10%(1) 20% (2) 0%(0) 10件 注:括弧内はその概念を含む実施件数を示す。

表 4.日本国内における評価手法の整理

名称 開発者 開発年 質 空間 時間 種の

特定 HEP 米国連邦魚類野生生物局(U.S.Fish and Wildlife Service) 1980年 ○ ○ ○ ○ Habitat Hectares オーストラリア、ヴィクトリア州 2003年 ○ ○ ― ― CASBEE 日本サステナブル・ビルディング・コンソーシアム(JSBC) 2003年 ○ ○ ― ○

SEGES 公益財団法人都市緑化機構 2005年 ― ○ ― ―

エコロジカルネットワーク評価技術* 鹿島建設株式会社 2007年 ○ ○ ― ○

JHEP 公益財団法人日本生態系協会 2008年 ○ ○ ○ ○

BESCLE 株式会社インターリスク総研、地域環境計画株式会社、住

友林業緑化株式会社 2010年 ○ ○ ― ○

UE-NET* 清水建設株式会社 2010年 ○ ○ ― ○

生物多様性コンサルティング 特定非営利法人バードライフ・アジア、株式会社損保ジャ

パン・リスクマネジメント社 2010年 ○ ○ ○ ― 土地利用通信簿 企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB) 2010年 ○ ○ ○ ○ 生物多様性ポテンシャルマップ 日本環境アセスメント協会 2010年 ○ ○ ― ○

生物多様性チェックリスト* 株式会社熊谷組 2010年 ○ ― ― ○

生物多様性簡易評価システム 東急建設株式会社 2011年 ○ ○ ― ○

緑地生態計画技術* 大成建設株式会社 2011年 ○ ○ ○ ○

生態系ネットワーク計画* 株式会社竹中工務店 2011年 ○ ○ ― ○

生物多様性評価システム* 戸田建設株式会社 2013年 ○ ○ ― ○

あいちミティゲーション定量評価ツール 愛知県 2013年 ○ ○ ○ ○

いきものナビ* 株式会社大林組 2013年 ○ ― ― ○

生物多様性影響評価マニュアル* YKK株式会社 2013年 ○ ― ― ○

注:1.「*」は企業の CSR 活動報告書の調査で明らかになったものである。

2.「○」はその概念の記載がある、「―」はその概念の記載がない。

1.国内における生物多様性オフセット類似事例の分布図

(5)

4.まとめと考察

環境影響評価法の基本的事項における「回避」 、 「低 減」 、 「代償」という環境保全措置について、環境影 響評価法に基づく基本的事項に関する技術検討委員 会報告書(2012)では「回避」 、 「低減」 、 「代償」の 順にプライオリティが高いと示されているというも のの、それらの定義と優先順位、即ちミティゲーシ ョン・ヒエラルキーは、少なくとも事業者を含む国 民レベルにはわかりにくく、早期の明確化が必要で ある。今回の結果からもわかるように、一方、自治

体や企業では生物多様性オフセット的な動きが散見 されつつある。今後は、回避しても低減しても残る 悪影響が何なのか、また、それらをどこまで代償し なければならないのかなどのノーネットロスを含む 定量的基準の提示も併せて必要である。

地方自治体の環境影響評価条例の技術指針におけ る環境保全措置に関しては、 「回避」 、 「低減(最小化) 」 、

「代償」の定義及びミティゲーション・ヒエラルキ ーが明確に位置付けられている自治体も出てきてい る。さらに代償の留意点や定量的な環境保全目標が 表 5.日本国内おける生物多様性オフセット類似事例一覧

類 プロジェクト名 実施年 都道

府県 プロジェクト名 実施年 都道

府県

条 例

逗子市の良好な都市環境をつくる条例 1992 神奈川 埼玉県環境影響評価条例 2013 埼玉 興津川の保全に関する条例 1993 静岡 仙台市環境影響評価条例 2013 宮城

志木市自然再生条例 2001 埼玉 東京都環境影響評価条例 2013 東京

神戸市環境影響評価に関する条例の一部を改正する条例 2009 兵庫 長野県環境影響評価条例 2013 長野 千葉市環境影響評価条例 2010 千葉 環境影響評価に関する条例 2013 兵庫

群馬県環境影響評価条例 2013 群馬 山梨県環境影響評価条例 2013 山梨

環 境 影 響 評 価 対 象 事 例

徳島飛行場拡 張整備事業及び徳島空港周辺整備事業 2000 徳島 成田新高速鉄道線建設事業 2005 千葉 北九州学術・研究都市北部土地区画整理事業 2001 福岡 祓川水系伊良原ダム建設事業 2005 福岡 帯広市稲田・川西土地区画整理事業 2003 北海道 美保飛行場拡張整備事業 2005 鳥取 東通原子力発電所1・2号機新設 2003 青森 一般国道444号佐賀福富道路 2006 佐賀 仙塩広域都市計画 (仮称)名取市下増田臨空土地区画整

理事業 (仮称)名取市関下 土地区画整理事業 2003 宮城 都市計画道路出雲仁摩線 2006 島根

福間駅東土地区画整理事業 2003 福岡

豊岡都市計画道路1・4・1号北近畿豊岡自動 車道 日高都市計画道路1・4・1号北近畿 豊岡自動車道 八鹿都市計画道路1・4・2 号北近畿豊岡自動車道北線

2006 兵庫 筑後川水系小石原川ダム建設事業 2004 福岡 函館圏都市計画道路 1・4・3 新外環状線 2006 北海道 一般国道11号大内白鳥バイパス(仮称) 2004 香川 一般国道50号 前橋笠懸道路 2007 群馬 酒田都市計画道路1・3・1酒田余目線及び3・2・3

酒田余目線 2004 山形

都市高速道路外郭環状線(世田谷区宇奈根 練馬区大泉町間 世田谷区宇奈根~練馬区大 泉町間)

2007 東京 都市計画道路仁摩温泉津線 2004 島根 東海環状自動車道(いなべ市北勢町) 2007 三重 都市計画道路浜田三隅線 2004 島根 名古屋都市計画事業 茶屋新田土地区画整

理事業 2007 愛知

一般国道464号北千葉道路(印旛-成田)建設事業 2005 千葉 1・4・2号大和北道路 2008 京都

新石垣空港整備事業 2005 沖縄 京奈和自動車道建設 2008 奈良

仙台市高速鉄道東西線建設事業 2005 宮城 一般国道468号首都圏中央連絡自動車道

(大栄-横芝)建設事業 2008 千葉 都市計画道路鳥取青谷線 2005 鳥取 都市計画道路 ひばりヶ丘袋線 2007 鹿児島 都市計画道路 阿久根川内線 2005 鹿児島 肱川水系山鳥坂ダム建設事業 2008 愛媛 都市計画道路 出水阿久根線 2005 鹿児島 豊川水系設楽ダム建設事業 2008 愛知 計

画 名古屋市都市再生特別地区運用指針 2010 愛知 曽於市農村環境計画 2011 鹿児島

個 別 の 代 償 事 業

広島市五日市地区港湾環境整備事業 1986 広島 九州大学新キャンパス造成(仮称) 2000 福岡 京都市道高速道路1号線計画 1994 京都 徳島飛行場拡 張整備事業及び徳島空港周辺

整備事業 2000 徳島

奥只見発電所・大島発電所増設 1995 福島 北九州学術・研究都市北部土地区画整理事業 2001 福岡 北九州学術・研究都市北部土地区画整理事業 1995 福岡 敦賀発電所3,4号機増設計画 2002 福井 長野冬季オリンピックアルペン滑降競技場・ジャンプ台

建設工事 1997 長野 新研究開発施設建設プロジェクト 2006 愛知

常陸那珂港の整備事業 1998 茨城 (仮称)上郷開発事業 2007 神奈川

宮川流域下水道(宮川処理区)の浄化センター設置 1998 三重 虎ノ門・六本木地区第一種市街地再開発事業 2009 東京

(仮称)高規格道路 第二柏林台における代替池の造成 1999 北海道 「六甲山森林整備戦略策定業務」に係る委託

事業者の公募要綱 2011 兵庫

流山都市計画事業新市街地地区一体型特定土地区画整理

事業 1999 千葉 岩手河川・海岸構造物の復旧等における環

境・景観配慮に向けた基本的な考え方(案) 2012 岩手

行徳可動堰の改修 2000 東京

行 動 指 針

株式会社 ブリヂストン 生物多様性に関する取り組み

姿勢 2010 東京 味の素株式会社 生物多様性行動指針 2012 東京

RICOHの環境経営 2010 東京

注:環境影響評価対象事例に関しては、磯山ら(2010)、環境省の「環境影響評価情報支援ネットワーク」に記載されてい る事例から引用

(6)

定められている自治体もあった。これらの先進的な 自治体の制度の存在は、今後、環境影響評価法にお けるミティゲーション・ヒエラルキーの規定をより 明確化し、生物多様性オフセット(法では代償措置)

の導入を促進することを後押しするだろう。

企業の生物多様性保全活動を収集・分析した結果、

多様な生物多様性保全活動が増加しつつあった。生 物多様性に関する行動指針として、 「低減(最小化) 」 の概念は広く普及している一方、数は少ないが

3

社 が「代償(生物多様性オフセット) 」の概念を行動指 針に示していた。今後、CBD COP10 以降の時代の 流れの中で、企業においても生物多様性オフセット に類似した実際の活動が出てくるだろう。その場合、

国や自治体の適切な制度的裏付けは、企業の活動を 支援し一挙に活性化させることになると考えている。

生物多様性オフセット的な活動の活性化とともに、

HEP

に代表される生態系やハビタットに対する影 響を定量評価する手法の必要性が増すであろう。今 回、確認された国内の生態系の定量評価手法の

4

分 の

3

以上が「質」および「空間」の概念を含んでお り、 「質」 、 「空間」 、 「時間」の

3

つの概念を含んでい る評価手法も

3

分の

1

確認できた。このような手法

2010

年の

CBD COP10

開催を境に増加傾向にあ

り、生態系の定量評価手法は

HEP

やその派生型手 法をはじめとして日本に蓄積されつつある。今では 生態系の定量評価が一般的に行われている米国にお いても、1990 年代、様々な生態系評価手法が

HEP

を土台として誕生したが、これは

HEP

が物理的空 間であるハビタットの「質」 、 「空間」 、 「時間」を総 合的に評価する仕組みであるからである(田中,

2003)

今回の調査を通して千葉県、静岡県、広島市など において、里山の土地所有者と里山管理活動を行う 団体や企業などの間を仲介する情報バンク的な仕組 みが確認された。これらの仕組みは田中(2010)が 提唱している、生物多様性オフセットの経済手法で ある生物多様性バンキングを日本的に改良した 「里 山バンキング」実現のためのひとつのステップと位 置付けることができる。今後、生物多様性オフセッ トの導入と併せて、生物多様性バンキングの導入も 同時に図ることがより戦略的な生物多様性保全の実 現につながると考えている。

引用文献

磯山知宏、江藤祥平、田中章(2010)日本における代償ミティ ゲーション(生物多様性オフセット)の実施動向.環境アセ スメント学会,2010年度研究発表会要旨集,p127-132.

環境省(2011)平成22年度代償措置に関する評価手法等調査 業務報告書,363pp.

環境省(2012)環境影響評価法に基づく基本的事項等に関する

技術検討委員会報告書

http://www.env.go.jp/policy/assess/5-4basic/report.pdf.201 3.08.26.

環境省(2013)環境影響評価支援ネットワーク.

http://www.env.go.jp/policy/assess/index.html.2013.08.26.

田中章(1998)生態系評価システムとしてのHEP.島津康男編,

「環境アセスメント-ここが変わる」,環境技術学会,

p81-96.

田中章(2003)米国ミティゲーションバンキングにおけるクレジ

ット評価方法の現状.環境アセスメント学会2003年度研 究発表会要旨集,p135-140.

田中章(2006)HEP入門 ―〈ハビタット評価手続き〉マニ ュアル― Theory and practices for Habitat Evaluation Procedure(HEP) in Japan,朝倉書店 p.266

田中章(2009)生物多様性オフセットと評価方法.環境監査研 究会18周年記念シンポジウム基調講演論文,p1-15.

田中章(2011)生物多様性オフセット制度化の国際的広がりと 今後の課題:CBD COP10での動向を含めて,東京都市大 学環境情報学部紀要,第十二号, p27-32.

田中章、大田黒(2008)諸外国における自然立地のノーネット ロス政策の現状.環境アセスメント学会,2008年度研究発 表要旨集,p47-51.

田中章、大田黒信介(2010)戦略的な緑地創成を可能にする生 物多様性オフセット~諸外国における制度化の現状と日本 における展望~.都市計画,Vol.159,No.5,p18-25.

中央環境審議会(2010)今後の環境影響評価制度の在り方につ いて.

https://www.env.go.jp/council/seisaku_kaigi/epc013/

mat01_3.pdf.2013.0826

Referensi

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