伝え合う言葉 平成 24 教 内容解説資料
検討の観点 内容の特色
1 教育基本法との関連
◎教科の目標に照らして,教育基 本法との関連が図られている か。
○全ての学年において,教育基本法第2条に基づいて教材を選定,開発を実施している。
第1号 真理を求める態度,豊かな情操と道徳心への配慮。
例 重松清『タオル』(2年 P22)/『文章名人4 感謝の気持ちを形にするには』(2 年 P182)
第2号 創造性,及び自主・自立の精神と勤労を重んじる態度の育成。
例 平井伯昌『言葉の上達は競技を上達させる』(1年 P136)/田崎真也『感覚を言語化する』 (2年 P140)/香山リカ『言葉は私の聴診器』
(3年 P130)
第3号 正義と責任,自他の敬愛と協力の尊重。
例 野矢茂樹『自分の頭で考える?』(1年 P90)/内田樹『学ぶ力』(2年 P130)/窪島誠一郎『無言館の青春』(3年 P46)
第4号 生命の尊重と環境の保全への寄与。
例 中村匡男『花の形に秘められたふしぎ』(1年 P16)/福岡伸一『アオスジアゲハとトカゲの卵』(2年 P12)/星野道夫『悠久の自然』
(2年 P82)/龍村仁『ガイアの知性』(2年 P88)
第5号 伝統や文化の尊重と国際理解への寄与。
例 橋本典明『言葉がつなぐ世界遺産』(1年 P124)/『月と古典文学』(1年 P190)/山口仲美 『古典の中の擬声語・擬 態語』(2年 P197)/『場をふまえて効果的に話す』(3年 P154)/佐佐木幸綱『古典の歌,現代の歌』(3年 P192)
2 教科の目標および学習指導要領への対応
◎教科の目標達成および「生きる 力」の育成が図られているか。
① 日常生活や社会生活の中で,生きて はたらく「言葉の力」を確実に身につ けるための工夫がされているか。
②思考力・判断力・表現力の向上が図ら れているか。
③人と人,人と社会がしっかりと伝え合 うための知識や技能を,しっかりと 身につけるための工夫がされている か。
④伝統文化を継承する心を育てている か。
○「生きる力」を育む「言葉の力」を着実に身につけるため,次の 4 つのキーワードで編集されている。
1 身につける。
2 考える。
3 伝え合う。
4 文化を継承する。
◎学習指導要領を基準に,今日の 国語科に課せられた,さまざま な課題に対応しているか。
①読むこと(読解力)の向上
②漢字学習の徹底
③読書との連携
④伝統文化を受け継ぐ心
⑤地域や学校などの,
多様な学習実態への対応
○国語科に課せられたさまざまな課題について,以下のように対応している。
① 「読むこと」の教材は,質の高い必修教材に加え,豊富な補充教材が設定されており,「基礎・基本」の定着と同時に,生徒の学習進度に合わせた「補充」
または「発展」的な指導がしやすいように配慮されている。また,教材末に設定された「みちしるべ」( 学習の手引き)は,評価の観点別(「読むこと」「国 語の特質」「関心・意欲・態度」)に整理されており,指導者と学習者の双方が学習目標を共有し,「読解力」を高めることができるように考慮さ れている。
②中学校で学習する 1130 字(追加された常用漢字も含む)の常用漢字のすべてを,未提出の漢字がないように網羅して学習できるように配慮さ れている。また,漢字についての知識・理解を整理した「漢字の広場」を適宜設け,系統的な漢字学習を可能にするよう配慮されている。漢字 に関する付属資料は,小学校の学年別配当漢字が入った「常用漢字表」,「書き順」「部首名」「総画数」「音訓」「用例」を網羅した「学年別新出 漢字一覧表」,小学校6年生の学習漢字の習得状況を確認するための「小学校6年で学習した漢字」など,充実している。
③各教材末の「みちしるべ」(学習の手引き)に,関連図書紹介コラム「読んでみよう」が設けられており,「国語」の学習と「読書活動」の連携が 図られている。また,各学年の教科書末の「データベースコラム」に,各学年にふさわしい「読書案内」が設定されており,国語学習を豊かに する紹介図書の総数は,170 冊を超えている。
④各学年の古典作品は,「読むこと」と「伝統的な言語文化」の両方に系列化されており,日本の伝統文化を継承する心を育てることができるよう 配慮されている。
⑤領域ごとに教材が配列され,それらを組み合わせることによって地域や学校の実態に合わせて適切な学習計画を選択することができ,より多様 なカリキュラム作成ができるよう配慮されている。
3 学習・指導への配慮[ 分量・配列]
◎ 「学習指導要領」の教育課程に 照らして,生徒の学年ごとの発 達段階への配慮,教材の量は適 切か。
①学年ごとの発達段階は,
どのように考慮されているか。
②小学校の教科書との関連が 図られているか。
③全体の分量・各領域ごとの教材の 配列は適切か。
④2学期制,少人数学級,習熟度別学習 など,多様な学校現場の実態に対応 するための「弾力的な扱い」と,「学 習の重点化」が両立しているか。
⑤地域性への配慮
○学習指導要領の教育課程に照らして,生徒の発達段階,教材の量などが適切に配慮されている。
① 「方法を知る」(習得)→「比べる・関係づける」(思考)→「ものの見方や考え方を広げる」(活用)を3年間繰り返しながらステップアップを図っ ていけるよう,教材配列,および学習活動が設定されている。
② 教育出版発行の『ひろがる言葉 小学国語』との関連性(別紙「『ひろがる言葉 小学国語』関連一覧」参照)に限らず,小学校学習指導要領と の関連を図った教材配列,学習の系統が設定されており,義務教育9年間で学習すべき国語の力が明確に示されている。
例 1年1学期
・中村匡男『花の形に秘められたふしぎ』(P16)→小学校の学習で親しんだ自然科学のテーマで段落構成の復習ができるよう配慮。
・今江祥智『暗やみの向こう側』(P26)→ 小学校で親しんだ児童文学作家の作品。場面の移り変わり,登場人物の心情の変化を読み取る復 習ができるよう配慮。
③教科の時間の中で無理のない基本的な学習計画が立てられるよう,必修教材の教材数は,
○読むこと—各学期に,詩・説明的文章・文学的文章・読書(メディア)を1本ずつ配置。(ただし,2学期には古典教材がプラス)
○話す・聞く—3
○書く—2(文章名人+全過程)
○ 伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項—8〜 10
となっている。また各学年の配当時間の合計は,書写の時間を引いた,残りの時間内に収まるように設定されている。
④ 学習指導要領に示された国語科の領域ごとに教材を並べ,領域どうしのリンクを示すことにより,多様な学習計画の作成が可能になるよう考慮 されている。一方,教材ごとに学習指導要領の指導項目が適切に配置されており,教科書の「弾力的な扱い」と「学習の重点化」の双方が両立 している。
⑤ 各領域の教材の話題,および題材は,特定の地理的,地域的な偏りがないよう配慮されている。また,どの地域にあっても,同様の学習効果が 得られるよう,教材選定や学習活動の設定が配慮されている。また,次の教材は,生徒が,自ら生活する地域の伝統や文化はもちろん,他の地 域に暮らす人々の生活に興味や関心をもつきっかけとなるよう配慮されている。
○1年 橋本典明『言葉がつなぐ世界遺産』(P124)
○2年 照屋林賢/一戸謙三『季節をうたう』(P248)
○3年 司馬遼太郎『無名の人』(P272)
平成 24 年度版
検討の観点と内容の特色
身につける
考える 伝え合う
文化を継承する
「生きる力」を育む
言葉の力
検討の観点 内容の特色
4学 習 ・ 指 導 へ の 配 慮 [ ]
①挿絵や写真
挿絵・図版・写真は,学習者の意欲を高めるもの,文章の理解を助ける資料性の高いもの,また,学習活動の手順や留意点などをわかりやすく 整理して示したものなど,学習上必要なものを,適所に取り上げてある。なお,文学作品の挿絵については,作品の世界を生かし,学習者の想像 力を高めるものにかぎって掲載し,華美・過剰にならないよう配慮しながら適所に取り上げてある。さらに,本文中のグラフ,表,図などについては,全ての学習者に正確に内容が伝わるよう,カラーユニバーサルデザインに配慮し,編集されている。
②表記・表現
表記・表現については,3学年にわたって基準を統一し,正しい表記の仕方・用法が身につくよう考慮して提示している。紙面は,読みやすさを 配慮した字詰め,行数を採用している。ただし,短詩型文学は原作表記のままを原則とし,文学教材の一部についても原作の表記を尊重する場合 がある。漢字は,教材末に設定した「この教材で学ぶ漢字」と「関連させて覚えよう」で学習するが,より多く常用漢字に触れる機会をつくるため,本文では中学校で学習する常用漢字の全てを使用し,教材ごとにルビを付している。
③活字
活字は,流麗で読みやすく,鮮明で,読んで疲れにくい文字の形,大きさで印刷されている。特に明朝体やゴシック体の場合,本文を視写する 際を考慮に入れて,字形,画数などに配慮する必要から,特別な字体を開発している。④製本・印刷
表紙は堅牢で,紙は再生紙,印刷は植物を原料とした大豆油インキを使用している。大豆油インキは,通常インキの成分である石油系溶剤の一 部を大豆油で置き換えたもので,石油資源の保護に役立つ,古紙の再生がしやすい,大気汚染やアレルギー反応の原因となる揮発性有機化合物が 少ないなど,多くの特性をもつ。さらに,印刷には,バイオマス技術を使って発電したグリーン電力を使用している。これらにより,学習者の健康 と地球環境に配慮しつつ,鮮明で読みやすい仕上がりとなっている。5 領域ごとの内容と特色
①読むこと
身につけるべき力が明示され,「読解 力」の向上に貢献できるか。
各学年の教材は,詩・古典・説明的文章・文学的文章・メディア(読書)の4本が3回繰り返されて配列されている(ただし,2学期には古典教 材がプラスされる)。なお,「読むこと」と他領域へのリンクによって,より弾力的な学習が可能である。
「みちしるべ」(学習の手引き)は,「確かめよう」「考えよう」の2段階に整理されており,今まで身につけた技能を確認して「活用」し,今,身 につけるべき技能を,課題を考えることをとおして「習得」することができるように配慮されている。
○文学的文章教材
定評のある作家,作品を積極的に採用している。また,各学年で近代文学の名作を解説付きで掲載し,学習者の「読書力」「読解力」の向上に 努めようとしている。
1年 宮沢賢治『オツベルと象』(P50)/ヘルマン=ヘッセ『少年の日の思い出』(P110)/芥川龍之介『蜘蛛の糸』(P138)・『トロッコ』(P260)
2年 太宰治『走れメロス』(P110)/夏目漱石『坊っちゃん』(P142)
3年 魯迅『故郷』(P102)/森鷗外『最後の一句』(P132)/村上春樹『バースデイ・ガール』(P260)
○説明的文章教材
多様な視点,さまざまな分野から題材を取り上げ,生徒が主体的に課題に取り組む姿勢をつくれると同時に,思考力と判断力を身につけ,「読 解力」を向上させることができるよう教材化されている。
【生命・環境】2年 福岡伸一『アオスジアゲハとトカゲの卵』(P12)/龍村仁『ガイアの知性』(P88)
【 思 考 】1年 池谷裕二『笑顔という魔法』(P84)/野矢茂樹『自分の頭で考える?』(P90)
【 現代社会 】3年 内山節『歴史は失われた過去か』(P80)/毛利衛『文化としての科学技術』(P84)
【 平 和 】3年 窪島誠一郎『無言館の青春』(P46)/吉永小百合『語り継ぐもの』(P256)
②話すこと・聞くこと
日常生活や社会生活でのさまざまな 機会をとらえ,「聞く」「話す」「話し合う」
ことの基礎・基本が養えるよう工夫さ れているか。
各学年とも,「聞く」「話す」「話し合う」の3系列で教材を設定している。特に,「聞く」ことが「話す」ことに付随して行われるということなく,
系列として独立している。「聞く」系列では,学習者どうしのコミュニケーションを図る手だてとして「対話」を行うための言語活動例が多数示さ れている。その他,「安全マップの発表例」「推薦図書を決定する話し合い」「ボランティア活動の提案」「地域活性化についての話し合い」「中学校 生活をしめくくるスピーチ」「環境を守るための話し合い」など,生徒に身近で無理のない内容となっている。
「話す・聞く」系列 ○「聞 く」 『聞き方入門』(友達の話を聞く)
『自分の考えと比較して聞くには』 (積極的に聞き取る)
『人の話を聞き自分の表現に生かす』(講演を聞く)
○「話 す」 『事実と意見を区別して話す』(わかりやすく報告する)
『効果的な資料を使って話すには』(調べたことを発表する)
『場をふまえて効果的に話す』(自分の思いを語る[スピーチ])
○「話し合う」 『意図を正確に伝えるには』(話題や方向を捉えて話し合う)
『目的に沿って話し合うには』(司会や提案者を立てた話し合い)
『意見を生かして話し合うには』(説得力のある意見を述べ合う)
③書くこと
「何を」,「何のために」書くのかという,
相手意識や目的意識が明確で,書く技 能を「どのように」つけるのかが系統立 てて扱われているか。また,生徒の興味・
関心をひくような学習活動,内容,話題 になっているか。
「書くこと」の教材は,各学年とも作文の全ての過程をおさえた「全過程」と,5〜7本の短作文が1つにまとまった「文章名人」の2系列で構成さ れている。各学年の教材とも,「何を」「だれに」「どのように」書くのかを明確に示している。「全過程」は,学習指導要領に示された言語活動例を中心 に「書くこと」の学習を行い,「文章名人」は,「書く過程」をおさえながら,楽しく,確実に書く技能を習得できるように構成されている。
「全過程」
『情報を選び効果的に伝えるには』(図表を用いた説明)-調べたことをレポートにする。
『立場を決めて意見を述べるには』(意見文)-どのような根拠をあげ,どのように書くかを明確にした意見文を書く。
『文章を書きものの見方や考え方を深めるには』(批評)-「書く」ことをとおして,自分のものの見方や考え方を広げる。
「文章名人」
○ 「書くプロセス1〜5」 日常生活の中で役立つ技能を身につけ,「書くプロセス」を理解する。
「課題設定・取材」「構成」「記述」「推敲」「交流」という「書く」過程を学習しながら,「読書ノート」「随筆」「鑑賞文」「案内文」「報告文」など のさまざまな文章を書く。
○ 「相手意識1〜5」 社会生活の中で役立つ技能を身につけ,「相手意識」を深める。
「地域レポート」「投書への意見文」「物語の創作」「詩の創作」「手紙」 など。
○ 「目的意識1〜5, ∞」 社会生活の中で役立つ技能を身につけ,「目的意識」を培う。
「文章の形態の選択」「投書の比較と意見文」「文体練習」「私の作品集をつくる」など。
④伝統的な言語文化と国語の特質 に関する事項
国語の学習がより確かなものになる よう,他領域と関連づけて学習ができる 工夫がされているなど,基礎的な事項 として位置づけてあるか。
基礎的な事項として「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」を位置づけるため,以下のような点で配慮されている。
○ 「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」の教材がまとめて掲載され,国語学習の基礎として,日本の伝統文化や言葉についての知識を理 解し,活用できるよう工夫されている。
○ 「読むこと」「話すこと・聞くこと」「書くこと」の教材の全てに「国語の特質」に関する目標が設定されており,常に言葉の学習を自覚しながら,
領域の学習ができるよう配慮されている。また,「伝統的な言語文化」に関する教材は,「読むこと」の古典教材と関連させて学習できるようにテー マ,内容等が構成されている。
○漢字の学習のために設定されている「この教材で学ぶ漢字」,及び「関連させて覚えよう」は,教材と関連させて漢字を学習したり,漢字をテー マ別に学習したりすることにより,生徒の興味関心を高め,漢字学習を系統的に行うことを可能にしている。
⑤読書
読書活動と「読むこと」との関連が図られ,
その他,さまざまな機会をとらえ,読書へい ざなうような工夫がなされているか。
○ 「読むこと」の教材末の「みちしるべ」(学習の手引き)で関連図書が紹介されており,読書による学習の深化,拡充が図れるよう工夫されている。
○各学年の「データベースコラム」で,その学年にふさわしい「○年生のための読書案内」が設定されており,さまざな機会を通じて読書活動が 行えるよう配慮されている。なお,紹介図書の全ては,学習者の興味・関心を喚起し,また図書館等での検索がしやすいよう表紙写真つきで掲 載されている。
⑥付録
国語の学習を,生徒自ら拡充,深化さ せるのに,必要かつ,十分で,信頼性の ある資料が掲載されているか。
「付録 言葉のとびら」は,本編の教材と関連させて補充・発展の学習が適宜行えるよう,適切な補充教材が十分な数だけ掲載されている。また,国語 科の学習の基礎的・基本的な知識や理解を広げたり深めたりするのに役立つ,「データベースコラム」をはじめ,以下のような豊富な資料が掲載されている。
○漢字関連資料
○データベースコラム
[伝統文化] 十二支と月の呼び方/平家物語と武将たち/中国名所案内
[学び方] 国語辞典と漢和辞典/図書館で本を探そう/引用の仕方
[言語] ローマ字/点字/世界の文字/手話
[話すこと・聞くこと][書くこと] アイディアの出し方/表現テーマ例集/発表を工夫する/話し合いの仕方/原稿用紙の使い方と推敲/レポー トの書き方/新聞の作り方/使ってみたい表現カタログ/課題作文の書き方/自己 PR 文の書き方
[情報] アンケートをとろう/インタビューをしよう/ウェブニュースを読む/見つめる新聞広告/江戸時代のメディア戦略
○学習語句一覧表
○索引
○巻末折り込み 小倉百人一首/近代文学史年表/古典文学史年表/(発展)文語文法活用表
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