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機能未知タンパク質PRMT10 の前立腺組織における生理

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Academic year: 2023

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—        —15 機能未知タンパク質

PRMT10

の前立腺組織における生理 機能の解析

大阪府立大学大学院生命環境科学研究科 助教 原田直樹

   

前立腺がんは,欧米の男性において最も発症頻度の高い がんである.前立腺がんの発症には,食習慣と関連がある ことや高齢者で多いことから,食の欧米化と高齢化が著し い日本でもその罹患率は増加の一途をたどっている.それ ゆえに,前立腺がんの予防法や治療法の確立に向けた基礎 から応用,開発までの幅広い研究が必要とされている.

男性特有の生殖器官である前立腺の発達には,男性ホル モンであるテストステロンやジヒドロテストステロン

(DHT) の生理作用が重要な役割を果たす1).男性ホルモ ンがアンドロゲン受容体 (AR) に結合することで,AR は コアクチベーターと呼ばれる転写因子群と複合体を形成し て標的遺伝子の発現を調節する.標的遺伝子の多くは発現 を正に調節されるが,負に調節されるものもある.テスト ステロンを産生する精巣を摘出する去勢を行うと前立腺の 発達が顕著に抑制されることから,前立腺における男性ホ ルモンシグナルの重要性が伺える.

前立腺がんの治療薬開発を念頭に置いた AR 作用機序の 全容解明が必要とされる背景には,AR 機能を制御する転 写共役因子も創薬のターゲットとなりうるとの考えがあ る2).ステロイドホルモン受容体スーパーファミリーの一 員である AR は,他の受容体と同様に,転写活性化を担う N 末端ドメイン,プロモーター上のアンドロゲン応答配列 に結合する DNA 結合ドメイン,核内移行シグナルを有す るヒンジ領域とリガンド結合ドメインから構成されるが,

N 末端ドメインは他のステロイド受容体との相同性が低 い.そこで,AR特異的な転写制御について調べるために,

N 末端ドメインに結合する転写共役因子を探索し,前立腺 における役割を解明することを目的として研究を行った.

これまでの研究経過

AR の N 末端ドメインの一部(アミノ酸配列1‒98)をベ イトとした酵母two-hybrid スクリーニングを行った結果,

タンパク質アルギニンメチル基転移酵素 (protein arginine methyltransferase: PRMT) 10 の 部 分 配 列 を 獲 得 し た.

PRMT10 は,全長845 アミノ酸で構成され,ゲノムデー タから PRMT7 と相同性を持つ PRMT ファミリーが持つ 特 徴 的 な モ チ ー フ を 有 す る タ ン パ ク 質 で あ る と し て PRMT ファミリーの一員として位置づけられた3).しかし,

PRMT10 はメチル基転移酵素活性の有無を含めて詳細な 機能について報告のない機能未知のタンパク質である.本 研究課題では,PRMT10 について,その発現様式や前立 腺での AR 機能に及ぼす作用を検討した.

方法・結果

PRMT10

の組織分布

Wistar 系雄性ラット(10週令)の各組織から RNA を抽 出して cDNA を合成し,RT-PCR によって PRMT10 の発 現する組織について検討を行った.その結果,PRMT10 は,生殖器官である前立腺,精巣や精巣上体,さらに副腎 と小脳で発現が高いことが判明した.また,PRMT10 の 組織分布は AR の組織分布と類似性があった.

前立腺組織内における

PRMT10

の発現と局在

前立腺がんは,主に前立腺の上皮細胞で発生する.そこ で,前立腺組織における PRMT10 の分布を検討するため に,免疫組織染色を行った.パラフィン切片を作製して,

抗PRMT10抗体および抗AR 抗体を用いて染色した結果,

AR は報告どおり主に上皮細胞に高発現し,その多くが核 に局在した.一方で,PRMT10 も同様に上皮細胞の核内 に多く局在することが明らかとなった.また,PRMT10 は上皮細胞だけではなく,ストローマ細胞にも発現するこ とが判明した.

LNCaP

細胞における

PRMT10 

の発現制御

前立腺がん細胞株LNCaP を用いて,PRMT10 の発現に 及ぼす DHT の影響を検討した結果,PRMT10 タンパク質 の発現は,DHT 濃度依存的に減少することが判明した.

DHT による PRMT10 の発現抑制は,アンドロゲンアンタ ゴニストであるビカルタミドの存在下や siRNA により AR をノックダウンした細胞では観察されなかった.DHT による PRMT10 の減少は,mRNA レベルでも観察され た.これらの結果から,DHT は AR を介して転写レベル で PRMT10 の発現を抑制すると考えられた.

前立腺がん細胞の増殖に及ぼす

PRMT10

の役割

PRMT10 の LNCaP 細胞の増殖へ及ぼす影響について検 討を行った.siRNA により PRMT10 をノックダウンした LNCaP 細胞の増殖能についてアラマーブルーを用いて評 価した結果,PRMT10 をノックダウンすることで DHT に よる細胞増殖促進作用が失われることが判明した.この結 果から,前立腺がん細胞において,PRMT10 は AR の機 能を促進する因子として機能することが明らかになった.

さらに,この実験系を用いてメチル基転移酵素の基質とな

(2)

—        —16 る S-アデノシルメチオニンを添加して,LNCaP 細胞の増 殖を指標とした PRMT10 のメチル基転移酵素としての活 性の有無について評価を行ったが,S-アデノシルメチオニ ンによる影響は認められなかった.

ま と め

本研究により,PRMT10 が AR と類似した組織分布を 持ち,前立腺上皮細胞で両タンパク質が高発現することが

明らかになった.PRMT10 の発現レベルは AR機能によっ て抑制されたことと PRMT10 のノックダウンが DHT に 依 存 し た LNCaP 細 胞 の 増 殖 を 抑 制 し た こ と か ら,

PRMT10 は自身の発現調節を介して AR 機能及び前立腺 組織の恒常性を制御する因子であると考えられた(図1).

謝   辞

本研究を遂行するにあたり,ご支援を賜りました公益財 団法人農芸化学研究奨励会に深謝いたします.

   

1) Heinlein C. A. and Chang C., Androgen receptor in pros- tate cancer. Endocr. Rev., 25, 276‒308 (2004).

2) Shiota M., Yokomizo A., Fujimoto N. and Naito S., An- drogen receptor cofactors in prostate cancer: potential therapeutic target of castration-resistant prostate cancer.

Curr. Cancer Drug Targets., 11, 870‒881 (2011).

3) Wolf S. S., The protein arginine methyltransferase family:

an update about function, new perspectives and the physiological role in humans. Cell. Mol. Life Sci., 66, 2109‒2121 (2009).

1 前立腺上皮細胞における PRMT10 の機能と発現制御.

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