歯周病学講座
プロフィール
1.教室員と主研究テーマ
教 授 齋藤 淳 歯周病原細菌の宿主細胞侵入の解析
講 師 富田 幸代 シタフロキサシン投与による歯周炎急発部位の細菌叢の変化と薬剤感受性 の検討
衣松 高志 下顎頭におけるプライマリーシリアの発現について
助 教 大井 麻子 ニコチンが宿主および歯周病原細菌に及ぼす影響と歯周病との関連性 (A05-0410-72)
髙山 沙織 ウナギガレクチンの歯周病原細菌に対する阻害効果 (A06-0410-76)
勢島 典 発生からみた歯周組織再生のメカニズム(A00-0410-57)
石井 善仁 脳由来神経栄養因子(BDNF)と自己組織化ペプチドの併用による歯周組織 再生について
色川 大輔 PDGFと β-TCP併用による歯周組織再生のメカニズム (A06-0410-77)
江川 昌宏 ジルコニアチタンの歯周病原細菌に対する初期付着 渡邉 直子 歯周組織再生療法の臨床研究
細井隆太郎 歯周病患者における治療前後での患者 QOLの解析 後藤 弘明 歯周形成手術の臨床研究
レジデント 野田 克哉 歯牙再植への rhPDGF-BBの応用(A09-0410-84)
守内 大剛 エナメルマトリックスタンパク質を応用した歯肉退縮療法の臨床研究 鈴木 香里 喫煙が歯周病に及ぼす影響
岡村 祐利 異種移植材が歯周組織に及ぼす影響
大学院生 今村健太郎 喫煙による宿主細胞と歯周病原細菌の相互作用に及ぼす影響について 喜田 大智 細菌の細胞への侵入、プロテアーゼ産生による組織破壊について 備前島崇浩 糖尿病が歯周組織再生に与える影響について
太田 功貴 Porphyromonas gingivalisの ECFシグマファクターの機能解析 鈴木 瑛一 骨芽細胞の分化における PI3K-Aktシグナル伝達経路の役割 武内 崇博 歯周組織再生における自己組織化ペプチドの応用
青木 栄人 iPS細胞から骨芽細胞への分化経路における Runx2の役割 安田 紀章 ラット歯根膜におけるプライマリーシリアの発現と局在について 山田 晃輔 PLGA/β-TCP応用後の歯周組織治癒に糖尿病が及ぼす影響
久永 幸乃 分化誘導した iPS細胞と自己組織化ペプチドハイドロゲルが歯周組織の治 癒に及ぼす影響
吉川 幸輝 Porphyromonas gingivalisの細胞付着における HagB,HagC遺伝子の 機能解析
2.成果の概要
1) 慢性歯周炎の急性部位に対するシタフロキサシン経口投与の臨床的および細菌学的効果について 本学千葉病院保存科および慶応大学病院歯科・口腔外科に来院し、慢性歯周炎の急性症状を呈する患 者 20名を対象とし、シタフロキサシン(STFX)経口投与前後に歯肉縁下プラークサンプルの細菌検査を 行った。歯周炎の急発部位では、慢性歯周炎の歯周ポケットに存在する嫌気性菌が多く検出され、STFX 投与後はそれらの多くは抑制される傾向を示し、PDも有意に減少した。歯周病原細菌については、培養 法と PCR法での検出パターンが異なっていた。STFXは、慢性歯周炎の歯周ポケット内からの臨床分離株 に対しても、標準菌株とほぼ同等の抗菌力を示した。STFX投与後に LVFX、AZM、CAMにおいて耐性菌が 検出されたが、これら耐性菌の消長については追跡検査を行っている。
MicrobPathog71-72:1-7,2014,日歯周誌 56:39-48,2014.
2) TGF-β1による骨芽細胞分化調節における Aktの機能の解明
MC3T3-E1細胞において、OBM単独培養と比較して TGF-β1複数回投与による ALP活性、骨芽細胞分化 マーカーmRNAの有意な減少がみられた。活性型 Akt導入細胞では、TGF-β1複数回投与時に ALP活性の 有意な増加がみられた。またすべての培養条件において OsteocalcinmRNA発現量の有意な上昇がみら れた一方で、複数回の TGF-β1投与により、投与回数依存性の mRNA発現量の減弱が認められた。石灰 化度に関しても、Akt活性状態において、アリザリンレッド染色強度の上昇がみられたが、TGF-β1複 数回投与により僅かな染色強度の低下が認められた。これら TGF-β1と Aktとの関係は、Akt優性阻害 遺伝子導入実験においても裏付けされた。さらに Aktの活性化が MAPK、Smad経路に影響を与えている ことが示された。以上の結果より、Aktの活性化は TGF-β1による骨芽細胞の分化調節において、主に ALPが発現する分化前期に必須な因子であり TGF-β1による ALPの活性化を相加的に増強することが示 唆された。
PLoSONE.9(12):e112566,2014.
3)ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットの歯周組織創傷治癒に fibroblastgrowthfactor(FGF)-2が及 ぼす影響
糖尿病が歯周組織再生に与える影響を検索する目的で、糖尿病ラットに欠損を作成し FGF-2を応用し た。FGF-2群では、欠損部の根面に対し、斜走する歯根膜様のコラーゲン線維束が観察された。PCNAに よる免疫染色では FGF-2応用で両群とも陽性細胞の割合が有意に増加した。HPCのみの応用では健常群に 比べて糖尿病群で VEGF陽性細胞の著しい増加が認められた。FGF-2応用により健常群では VEGF発現の亢 進が認められた。糖尿病群でも同程度の VEGF発現を認めたが、HPCのみの群との有意差はなかった。α- SMA陽性血管に関しては FGF-2群で有意に増加した。糖尿病群での μCTによる解析では FGF-2応用によ り糖尿病群でも骨体積、骨梁幅が有意に増加した。以上の結果より、今回の FGF-2応用は糖尿病ラット において細胞増殖を促進し、VEGFの発現を制御することにより歯周組織の治癒を促進することが示唆さ れた。
JClinPeriodontol42:62-71,2015.
4)歯列不正を伴う中等度慢性歯周炎患者に対し歯周外科治療と矯正治療を行った一症例
歯列不正を有し咬合性外傷を伴う中等度慢性 歯周炎患者に対し、歯周外科治療と矯正治療を行った症 例について報告する。患者は 31歳女性。下の前歯が揺れているという主訴で来院した。初診時、主訴の
#42は 7mm、また#14はプロービングデプス 10mm以上の歯周ポケットを認め、動揺度は 2度であった。
エックス線所見として、#14、42には歯根膜腔の拡大、根尖に及ぶ垂直性骨吸収像を認めた。 中等度慢 性歯周炎、咬合性外傷と診断し、プラークコントロール、全顎的なスケーリング・ルートプレーニング、
#14の抜歯を行い、#15~17、26の歯肉剥離掻爬術を施行後、#42を抜歯、全顎矯正治療を行い、サポー ティブペリオドンタルセラピーに移行した。歯周基本治療から歯周外科治療と治療が進むにつれて炎症 のコントロールが改善され、さらに矯正治療を行うことで歯列不正を改善・歯槽骨レベルを平坦化でき、
管理しやすい口腔環境を整えることができた。
歯科学報 114(3):264-271,2014.
5)咬合性外傷を伴う重度慢性歯周炎患者に歯周外科手術を行った一症例
プラークコントロール不良と咬合性外傷を伴う広汎型重度慢性歯周炎患者に対し、咬合調整と歯周外 科治療を行い良好な結果が得られた。初診時、全顎的な歯肉の発赤を認め、主訴の#45、46には 10mm以 上のプロービングデプス(PD)、#44、45は動揺度 3度、#46は動揺度 1度であった。エックス線写真で は、全顎的な水平性骨吸収、#44~46には根尖まで及ぶ骨吸収を認めた。広汎型重度慢性歯周炎及び咬合 性外傷と診断し、保存不可能な#44~46を抜歯し治療用義歯を装着した。プラークコントロール、全顎の スケーリング・ルートプレーニングを行い、炎症除去後にも#14に早期接触が認められたため咬合調整を 行った。その後、PD4mm以上が残存した部位に対しフラップ手術を行った。再評価後、欠損部に対し補 綴処置を行いサポーティブペリオドンタルセラピーに移行した。歯周ポケットの減少と咬合への配慮に
植により歯肉増大を行い、機能性・審美性を改善させた後、固定性補綴を行い良好な結果を得た。患者 は 54歳女性で上顎前歯部の歯肉腫脹を主訴としていた。予後不良の#11を抜歯した後、歯肉の陥没が認 められ、その状態は Seibertの分類で ClassⅠと診断した。同部位の形態不良は、患者にとってコンプ レックスとなっており、前歯部欠損を固定性補綴装置で治療するにあたり陥没の改善を必要とした。結 合組織移植による歯肉増大術を試みたが思うような結果が得られず、合計 4回の歯肉増大術によって機 能面での改善と患者の満足を得ることができた。手術後 1年以上経過したが、現在まで変化無く維持さ れている。本症例を通して、歯肉増大術は歯周環境の長期的な安定のための一手段として重要であるが、
適切な診断のもと、明確な治療成果を見据えた治療計画が必要であると思われた。
日歯周誌 56(2):209-216,2014. 3.学外共同研究
担当者 研究課題
学外研究施設
研究施設 所在地 責任者 齋藤 淳
色川 大輔
天然骨ミネラルを併用した GTR法に よる骨内欠損への歯周治療に関する 多施設臨床研究
二階堂歯科医院 清水歯科クリニッ ク
KNBDental Office
医 療 法 人 貴 和 会 銀座ペリオ・イン プラントセンター
東京都 中央区 江戸川区 中央区 中央区
二階堂雅彦 清水 宏康 小延 裕之 松井 徳雄
齋藤 淳 石井 善仁
抗体 DEPIM法を使用した歯周病原細 菌の新規検出機器の臨床応用に関す る研究
[経済産業省課題解決医療機器等開 発事業「歯科における QOL向上に向 けた機器の研究開発」(平成 23年 度採択)の一部として実施]
パナソニックヘル スケア株式会社
横浜市 濱田 了
髙山 沙織 齋藤 淳
歯周病治療における歯周病原因菌簡 易検出キット(DK13-PG-001)の有 用性に関する多施設共同研究
新潟大学大学院医 歯学総合研究科摂 食環境制御学講座 日本大学松戸歯学 部歯周治療学講座 鶴見大学歯学部歯 周治療学講座 昭和薬品化工株式 会社 開発研究部 デンカ生研株式会 社 試 薬 研 究 開 発 部
新潟市
松戸市
横浜市
東京都 中央区 新潟市
吉江 弘正
小方 頼昌
五味 一博
小野 一弘
秋石 和宏
担当者 研究課題
学外研究施設
研究施設 所在地 責任者 髙山 沙織
齋藤 淳
米ペプチドによるデンタルプラーク 形成抑制試験
(農林水産省委託プロジェクト研究
「米タンパク質の新規生体調節機能 性の先導的開発と機構解析」の一部 として行われた。学内代表者:加藤 哲男)
新潟大学工学部 新潟工科大学
新潟市 新潟市
谷口 正之 斎藤 英一
4.科学研究費補助金・各種補助金
研究代表者 研究課題 研究費
齋藤 淳 喫煙が歯周病原菌の宿主細胞侵入に及 ぼす影響の分子メカニズム解明
文部科学省科学研究費補助金・基盤研究(C)
衣松 高志 プライマリーシリアの特性を応用した 新規歯周組織再生治療の確立
文部科学省科学研究費補助金・若手研究(B)
石井 善仁 増殖因子と自己組織化ペプチドを併用 したインプラント周囲炎の新規治療法 の開発
文部科学省科学研究費補助金・若手研究(B)
5.研究活動の特記すべき事項
学会招待講演・特別講演・教育講演
講演者 年月日 演題 学会名 開催地
齋藤 淳 2014.6.7 歯周組織再生の現在とこれから 第 297回東京歯科大学学 会例会
東京都 千代田区 齋藤 淳 2014.7.6 抜歯と保存 それぞれのタイミ
ング
OsteologyJapan 東京都 新宿区 齋藤 淳 2014.10.19 診療室におけるエッセンシャル
オイル配合洗口液の使用 -感 染予防から治療後のケアまで-
第 57回秋季日本歯周病 学会学術大会
神戸市
学術学会に相当しない団体が開催するセミナー・研究会・カンファレンス等における発表・講演
講演者 年月日 演題 会合の名称 開催地
齋藤 淳 2014.7.26 歯周治療における抗菌療法と組 織再生の現在
平 成 26年 度 横 浜 市 西 区・中区・南区歯科医師 会学術講演会
横浜市
齋藤 淳 2014.10.25 どうすれば成功する?歯周再生 平成 26年度東京歯科大 立川市
齋藤 淳 2014.11.30 ペリオドンタルメディシンの概 念を臨床に生かす
平成 26年度東京歯科大 学同窓会熊本県支部蘇山 会学術講演会
熊本市
齋藤 淳 2014.12.6 歯周病治療における抗菌療法
-その有用性と限界-
平成 26年度東京歯科大 学 同 窓会 愛媛 県 支部 総 会・学術講演会
松山市
齋藤 淳 2014.1.17 明日からすぐできる歯周組織再 生療法
平成 26年度千葉県保険 医協会学術研究会
千葉市
齋藤 淳 2014.2.22 歯周病治療における細菌検査と 抗菌療法
第 23回茨城県歯科医学 会
水戸市
齋藤 淳 2014.3.10 糖尿病と歯周病 -双方向性の 関係-
平成 26年度内科・眼科 スモールミーティング講 演
松戸市
齋藤 淳 2014.3.28 歯周組織再生の基礎と臨床 平成 26年度東京歯科大 学 千 葉市 同窓 会 (水 葉 会)学術講演会
千葉市
6.教育講演等教育に関する業績、活動
共用試験
氏名 年月日 種別 役割 開催地
富田 幸代 勢島 典 石井 善仁
2015.3.1 平成 26年度東京歯科大学 第 4学年 OSCE 器材係 東京都 千代田区
衣松 高志 2015.3.1 平成 26年度東京歯科大学 第 4学年 OSCE 評価者 東京都 千代田区 大井 麻子
色川 大輔
2015.3.1 平成 26年度東京歯科大学 第 4学年 OSCE 補助係 東京都 千代田区
7.社会的貢献・社会に対する活動
医学の啓蒙を目的とする講演会(市民を対象とするもの)
講演者 年月日 演題 講演会名 開催地
齋藤 淳 2014.1.31 お口の健康と糖尿病の関係 北 多 摩 西部 保健 医 療圏 糖 尿 病 連携 推進 協 議会 市民公開講座
立川市