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病理学講座
プロフィール
1. 教室員と主研究テーマ
教授 松坂 賢一 Dental implantの基礎研究
講師 國分 克寿 エクソソームに反映されたがん特異的遺伝子変異の診断法の確立 助教 中島 啓 口腔癌の伸展機構の制御
中條 貴俊 ジルコニアの光効果による細胞接着の制御 明石 良彦 幹細胞を用いた機能的な唾液腺組織の再生 大学院生 山本 圭 口腔炎症性疾患における病態学的解明
2. 成果の概要
1) 唾液腺腫瘍の診断におけるホメオボックス転写因子であるengrailed homeobox 1(En1)の 有用性を検討した。免疫組織化学的染色を行い、腺様嚢胞癌(AdCC)51症例と他の唾液腺腫 瘍143症例についてEn1の発現を検索した。その結果、En1発現細胞の割合のカットオフ値 を25%に設定した場合、AdCC 51症例すべて、多型腺癌(PAC)9症例中8症例および唾液 腺導管癌1症例がEn1陽性であり、その他の腫瘍はEn1陰性であった。これにより、En1は 唾液腺腫瘍の診断においてAdCCおよびPACの診断マーカーとなることが示唆された。
Baba et al. Pathol Int 71(2): 113-123, 2021.
2) 線維芽細胞増殖因子7(FGF7)がヒト歯髄幹細胞(hDPSC)の分化に与える影響を検索した。
その結果、in vitro実験ではFGF7を添加した培地で培養したhDPSCのBmi1 mRNAの発現量が 優位に減少し、AQP5 mRNAとαSMA mRNAの発現量が優位に増加した。さらに、in vivo実験 では損傷を与えたラット顎下腺にFGF7を添加した培地で培養したhDPSCを移植すると、Bmi1 陽性細胞がほとんどみられなかったが、AQP5 陽性細胞とαSMA 陽性細胞の数が優位に増加し、
AQP5陽性細胞の集塊形成が認められた。これにより、FGF7で処理されたhDPSCがAQP5陽性 細胞とαSMA陽性細胞に分化することが示唆された。
Clin Exp Dent Res 7: 344-353, 2021.
3) 含歯性嚢胞の裏装上皮にみられる化生細胞のCK7およびCK17の発現と培養歯原性上皮細 胞の機械的な力に対するRNA 発現を検索した。その結果、裏装上皮の表層で CK7陽性細胞 およびCK17陽性細胞がみられ、化生細胞である粘液細胞や線毛細胞でCK7陽性細胞の数が 優位に高値を示した。また、培養ブタマラッセ上皮遺残細胞に遠心力で負荷を加えるとCK17 mRNA の発現量が優位に増加した。これにより、含歯性嚢胞の裏装上皮にみられる化生細胞 のCK7およびCK17の発現が機械的な力によって誘発される可能性が示唆された。
Sumi et al. JJSEDP 13(1): 3-13, 2021.
4) 外力により損傷した抹消神経の再生において、細胞増殖因子であるbFGFの作用を検索した。人 工的に部分損傷を作成したウサギの下歯槽神経に対して、歯周治療再生剤として使用される recombinant human basic FGF (rhbFGF)を 含 む 薬 剤 を 応 用 し 、 形 態 学 的 変 と S-100、
neurofilament陽性細胞数を計測した。その結果、形態学的変化では細胞増殖と軸索様構造が認め
られた。S-100、neurofilament陽性細胞数は bFGF群で対照群よりも増加が見られ、S-100 陽性 細胞の方がより早期に有意に増殖を認めていた。これにより、rhbFGFはシュワン細胞の増殖を惹 起し、追随して起こる軸索成長に対し有効であることが示唆された。
Nemoto et al. J Oral Maxillofac Surg Med Pathol 33(3): 348-353, 2021.
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3. 学外共同研究
担当者 研究課題
学外研究施設
研究施設 所在地 責任者
松坂 賢一 生体材料に対する生体細胞動態に関
する研究 北海道医療大学 石狩郡
当別町 安彦 善裕 松坂 賢一 口腔病変の病態解明に関する研究 松本歯科大学 松本市 村上 聡
國分 克寿
エクソソームに反映されたがん特異 的遺伝子変異を利用する診断法の確 立
Dana Farber 癌研究所、
Harvard大学
Boston,
USA Irene Ghobrial
中島 啓 IQGAP1による細胞伸展制御の分子 基盤解明
Toronto大学 歯学部
Toronto,
Canada Christopher A.
McCulloch
4. 科学研究費補助金・各種補助金
研究代表者 研究課題 研究費 科研費の場合は種別も記載
國分 克寿 唾液に含まれる癌細胞由来分泌小胞を用いた口腔がん診 断法の確立
文部科学省化学研究費 基盤研究(C)
中島 啓 IQGAP1が細胞外マトリックスリモでリングを制御する 文部科学省化学研究費 若手研究
5. 研究活動の特記すべき事項 シンポジウム
シンポジスト 年月日 演 題 学会名 開催地
松坂 賢一 2021. 6.
6
実践 口腔細胞診Beginner's講 座 LBC(Sure Path)による口 腔細胞診
第62回日本臨床細胞学
会 千葉市
國分 克寿 2021.
8.22
細胞外小胞に内包される遺伝情報 の解析と診断への応用
シンポジウム「口腔・顎顔面領域 疾患への遺伝子検査導入の展望に ついて」
第14回日本口腔検査学
会総会・学術大会 Web
学会招待講演・特別講演・教育講演
講演者 年月日 演 題 学会名 開催地
松坂 賢一 2021. 6. 5 これまでの私の研究とこれから の病理学講座の展開
第311回東京歯科大学学
会 Web
松坂 賢一 2021.11.13 卒業した君たちへ 東京歯科大学同窓会 Web
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学術学会に相当しない団体が開催するセミナー・研究会・カンファレンス等における発表・講演
講演者 年月日 演 題 会合の名称 開催地
松坂 賢一 2021. 4. 3
口腔粘膜疾患 チェアサイド・
ベッドサイドで行う診断と対応 新たな攻略法LBC
川越市歯科医師会 Web
松坂 賢一 2021.12. 7 骨補填材の生体反応と高齢者の
臨床検査データの特徴 文京区歯科医師会 東京都 文京区
松坂 賢一 2022. 1.16 細胞診と発がんメカニズム 埼玉県歯科医師会 Web
6. 教育に関する業績、活動 教育ワークショップ・FD研修
氏 名 年月日 ワークショップ名 役 割 開催地
中島 啓 2022. 2.19 第41回カリキュラム研修ワー
クショップ 受講者 Web
松坂 賢一 2022. 3.19 第25回 試験問題作成に関する
ワークショップ タスクフォース 東京都
千代田区 明石 良彦 2022. 3.19 第25回 試験問題作成に関する
ワークショップ 受講者 東京都
千代田区
共用試験
氏 名 年月日 種 別 役 割 開催地
松坂 賢一 2022. 2.18 2021年度東京歯科大学 第4
学年CBT 副責任者 東京都
千代田区 松坂 賢一 2022. 2.26-27 2021年度東京歯科大学 第4
学年OSCE 評価者 東京都
千代田区 國分 克寿 2022. 2.26-27 2021年度東京歯科大学 第4
学年OSCE 補助係 東京都
千代田区 中條 貴俊 2022. 2.26-27 2021年度東京歯科大学 第4
学年OSCE 補助係 東京都
千代田区 明石 良彦 2022. 2.26-27 2021年度東京歯科大学 第4
学年OSCE 補助係 東京都
千代田区
他の大学・研究機関等における学生・大学院生を対象とする講義・実習
担当者名 年月日 テーマ・演題 大学・機関 所在地
松坂 賢一 2021.10.27 歯科インプラントと病理 松本歯科大学 Web
松坂 賢一 2021.11. 2 歯科インプラント治療の病理学
考察 北海道医療大学 Web