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薬理学講座
プロフィール
1. 教室員と主研究テーマ
教 授 笠原 正貴 1) 低酸素応答活性化を応用した新規組織再生法の開発 2) 口腔癌代謝関連因子と口腔癌診断
助 教 高橋 有希 1) 低ホスファターゼ症の遺伝子治療
―硬組織石灰化不全に対する新規治療法の開発―
楊 隆強 1) 歯牙および骨組織に対する新規再生技術の開発 2) 臨床応用に向けた新規再生医療材料の開発
山本 恵史 1) 口腔疾患患者の唾液含有エクソソームの特徴を利用した液性診断法の開発 2) 診断情報最大化を指向したヒト唾液エクソソームの密度と形態による
サブタイプ分け
2. 成果の概要
1) 低酸素応答活性化を応用した新規組織再生法の開発
増殖する細胞や癌細胞は解糖系を亢進させ、低酸素応答を活性化させる。低酸素応答は組織レベルで、赤 血球を増加させ、血管新生を促進する。低酸素応答の活性化が、再生困難な組織再生に寄与するかどうかを 検証することが本研究のテーマである。本研究では、マウスから採取した脂肪由来幹細胞について検討を行 っている。低酸素処理をした脂肪由来幹細胞は増殖能が高く、骨芽細胞に分化する能力が高いことがわかっ た。局所応用ができるドラッグデリバリーシステムと合わせて組織再生に有用であるかどうかを検討中であ る。
2020 年度科学研究費助成事業(文部科学省科学研究費補助金・基盤(C))
2)低ホスファターゼ症に対する新規胎児遺伝子治療の確立
低ホスファターゼ症の現在の治療法では、胎生期に症状が進行する本疾患には対応できない。一方で、組 織非特異的プロモーターによる胎児遺伝子治療は、ウイルスベクターにより遺伝子導入されたすべての臓器 で酵素が過剰に発現するため、安全面での課題が残されている。そこで本研究では、治験で安全性が確認さ れている筋肉に限定した遺伝子発現の下、胎児遺伝子治療法を検討することで、安全性を確立した新規胎児 遺伝子治療法の開発を目的とした。本年度は、筋肉特異的プロモーター制御下での治療遺伝子であるアルカ リホスファターゼ遺伝子発現プラスミドの構築を行った。
2020 年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)若手研究 B
3) ACG スポンジ生体材料を用いた生理機能のある歯髄組織再生法の開発
現在、生理機能をもつ歯髄組織再生法は歯髄疾患の治療方法として注目されている。組織再生のためには、
足場はとても重要な役割がある。そこで本研究は、ACG スポンジを用いた新しい足場の作製方法を開発した。
本法で作製される ACG スポンジは、先行論文で作製される他の足場よりも簡便で安全であり、生体安全性が 優れ、細胞毒性もない。加えて、簡単な熱処理で ACG スポンジの 3 次元安定性も向上するため、足場として 組織欠損部の形を維持することができるという特徴を持つ。今後は動物実験を行い、in vivo 試験によって 歯髄組織再生における ACG スポンジの足場としての効果、有効性を検討していき、臨床応用までの発展を計 画していく。
2020 年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)若手研究 B
4) 診断情報最大化を指向したヒト唾液エクソソームの密度と形態によるサブタイプ分け
Exosome とは細胞から放出されるナノ粒子で体液に多量に存在する。放出した親細胞由来のタンパク質な どを含有していることから、採取が簡便な唾液に含まれる exosome を疾患診断に応用するための実験を行な っている。当該年度では全唾液から exosome を密度勾配遠心にて精製し、96 時間という長時間の遠心での精 製を実施することで、全唾液 exosome の密度を決定することに成功した。またウェスタンブロットや銀染色、
マススペクトロメトリーによってタンパク質の網羅的解析も行い、これらのタンパク質と密度を組み合わせ た、唾液 exosome の詳細なグループ分けをおこった。すると、全唾液には大きく分けて 3 種類のサブグルー プが存在することが初めてわかった。今後も唾液 exosome の性質を明らかにするし、疾患応用に必要なデー
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2020 年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)若手研究 B
3. 学外共同研究
担当者 研究課題
学外研究施設
研究施設 所在地 責任者
笠原 正貴 低酸素応答活性化を応用した新規 組織再生法の開発
慶應義塾大学 医学部医化学教室
東京都
新宿区 加部 泰明
笠原 正貴 口腔癌代謝関連因子と口腔癌診断
独立行政法人 国立がん研究 センター
東京都
中央区 平岡 伸介
高橋 有希 低ホスファターゼ症の胎児酵素補 充療法
国立研究開発法人 国 立 成 育 医 療 研 究 センター
東京都
世田谷区 梅澤 明弘
楊 隆強
Guided regeneration of periodontal bone defects by biphasic calcium phosphate bioactive materials and the mechanisms
四川大学 華西口腔医学院
中国
成都 楊 恵
山本 恵史
口腔疾患患者の唾液含有エクソソ ームの特徴を利用した液性診断法 の開発
公益社団法人 有明がん研究所
東京都
江東区 芝 清隆
4. 科学研究費補助金・各種補助金
研究代表者 研究課題 研究費
科研費の場合は種目も記載
笠原 正貴 低酸素応答の活性化を局所適用によって確立させる新規唾 液腺組織再生法
文部科学省科学研究費 基盤研究(C)
高橋 有希 低ホスファターゼ症に対する新規胎児遺伝子治療の確立 文部科学省科学研究費 若手研究 B
楊 隆強
An innovative method to achieve functional dental pulp regeneration with the complex scaffold of atelocollagen gelatin sponge and treated dentin matrix
文部科学省科学研究費 若手研究 B
山本 恵史 診断情報最大化を指向したヒト唾液エクソソームの密度と 形態によるサブタイプ分け
文部科学省科学研究費 若手研究 B
5. 研究活動の特記すべき事項
学術学会に相当しない団体が開催するセミナー・研究会・カンファレンス等における発表・講演
講演者 年月日 演 題 会合の名称 開催地
高橋 有希 2021. 3. 2 低ホスファターゼ症の遺伝子 治療~骨の改善を目指して~
東京大学・東京歯科大学 合同研究報告会
東京都 千代田区
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6. 教育に関する業績、活動
共用試験
氏 名 年月日 種 別 役 割 開催地
山本 恵史 2021. 1.16-
17 大学入試共通テスト 試験監督 東京都
千代田区
山本 恵史 2021. 2.17 2021. 3.10
東京歯科大学
第 4 学年 CBT 試験監督 東京都 千代田区