豊橋技術科学大学 前野
金型内通電加熱を用いた 熱間チューブガスバルジ成形
熱間ガスバルジ成形
熱間ガスバルジ ハイドロフォーミング
拡管率 20%
拡管率 132%
熱間ガスバルジと
ハイドロフォーミングの張出し性の比較
100 200 300 400 500 600
50 100 150 200 250
0 20 40 60 80 100
0 温度/℃
引張強さ/MPa 破断伸び/ %
1.7×10-1 ε=· 1.6×10-3
0
A6063高温引張試験結果
熱間チューブガスバルジ成形における 温度分布と変形挙動
豊橋技術科学大学 前野 智美
自動車を軽量化するためにアルミ中空部品が採用されるようになってきている.管 材の成形にはハイドロフォーミングがよく用いられているが,延性が低いアルミニ ウム合金管は破裂しやすく大きな拡管は容易ではない.アルミニウム合金は高温で 変形すると,延性が向上して成形が容易になる.圧力媒体を液体ではなく,気体に することで温度の制限をなくしたアルミニウム合金管の熱間ガスバルジ成形が行わ れている.この成形はハイドロフォーミングと似ており,内圧により管材を膨らま せると同時に軸押しを加えて金型形状に成形している.管材を加熱しているため,
ハイドロフォーミングよりもかなり低い圧力で拡管することができ,延性も向上し
ているため大きな拡管ができる,本講演では,アルミニウム合金管の熱間ガスバル
ジ成形における成形事例について説明する.
管の加熱 金型内でバルジ成形 ヒーター
金型 パンチ パンチ
空気圧
熱間ガスバルジ成形
V~ V
直接通電加熱 高周波誘導加熱
電極
コイル
•安価
•電極への放熱がある
•電極設計が簡単
•加熱効率が非常に高い
•高価
•電極への放熱がない
•コイル設計が難しい
•直接通電加熱より少し低い 管の加熱方法
熱間ガスバルジ成形事例
ホンダ 2004年10月 レジェンドに搭載
フロントサブフレーム リヤサブフレーム 国内における熱間ガスバルジ成形事例
直接通電加熱
拡管成形 φ95→φ160 3MPa 予備成形
最終成形
最終成形 予備成形 拡管成形 国内における熱間ガスバルジ成形事例
エアサスペンション ケース部品 アルミ合金 10MPa
サスペンション部品 アルミ合金 VW トゥアレグ
ポルシェ カイエン
HEAT form GFU
海外における熱間ガスバルジ成形事例
アルミ 2-10MPa サイクルタイム 17sec 予備加熱10sec アルミ 2-6MPa
サイクルタイム 22sec 予備加熱15sec
Hot metal gas forming 1999~2003 アメリカ 誘導加熱 Tube hot forming 2004~2007 伊・西・蘭 直接通電加熱 Heat forming 2002~ 独 HEATform社 誘導加熱
T-Shape
アルミ
ステンレス
HEATform
海外における熱間ガスバルジ成形事例
成形装置内通電加熱 熱間ガスバルジ成形
φ22.0
1.0
100
Oリング 素管 パンチ
電極 空気
初期内圧p0 =0.2-0.8MPa 通電容量I =3.0~9.0kA 軸押し速度v=0~40mm/s
成形装置内通電加熱熱間ガスバルジ成形方法
モーター
通電ケーブル
パンチ
可動式電極 管材
圧力センサ リンク機構
サーモグラフィ 成形装置内通電加熱熱間ガスバルジ
成形装置外観
軸押し速度 v=20mm/s,ストローク s=24mm
パンチ パンチ
電極 電極
成形装置内通電加熱熱間ガスバルジ成形
おけるフリーバルジ変形挙動 初期内圧が成形に及ぼす影響
(b) p0=0.4MPa
(d) p0=0.8MPa (a) p0=0.2MPa
(c) p0=0.6MPa
溶融 溶融
初期内圧p0/Mpa Expansion ratio
0 10 20 30 40 50 60 成形時間
0 20 40 60 80
0.2 0.4 0.6 0.8
拡管率r /% 成形時間/s
拡管率
r
および成形時間と初期内圧の関係(d) I=5.5kA
(b) I=4.0kA (a) I=3.0kA
(c) I=5.0kA (c) I=5.5kA
(c) I=6.0kA
通電電流が成形に及ぼす影響
通電電流I[kA]
拡管率
40 45 50 55 60
バルジ長さ
0 20 40 60 80
3 4 5 6
拡管率r /% バルジ長さl /mm
ø22.5 ø22.5
ø22.0
拡管率とバルジ長さに通電電流の影響
温度分布に及ぼす 通電加熱条件の影響
100 200 300 400 500 600
0 20 40 60 80 100
電極からの距離長さ /mm
温度/˚C 5kA7kA
9kA
温度分布に及ぼす電流値の影響
電極 電極
素管
600˚C 500 400 300 200 100 0 軸押し無しにおける通電加熱の様子I=5.0kA
電極からの距離/mm
端部の温度低下 600˚C 500 400 300 200 100 0 0
100 200 300 400 500 600
20 40 60 80 100 1.0s
3.0s 2.0s
5.0s
温度/˚C 4.0s
1.0s
3.0s
5.0s 電極付近での温度低下 I=5.0kA
1.0 10
SUS304製 リング
純銅
管材
a=8, 4
b=10,7.5 断熱・発熱効果 温度分布均一化
熱伝導率・小 電気抵抗率・大
SUS304製リングの導入
電極 電極
素管
600ºC 500 400 300 200 100 0 リング挿入による均一加熱
20 40 60 80 100 100
200 300 400 500 600
0
温度/ºC
1.0s
3.0s
5.0s
600℃
500 400 300 200 100 断熱・発熱効果 0
電極からの距離/mm リングあり リングなし
1.0s 2.0s 3.0s 4.0s 5.0s
リングありにおける温度分布履歴
リングなし r=125%
v=25 /mm・s-1, s=30mm
リングあり 132%
40 /mm・s-1, 32mm
36.4 54.0
軸押しありの熱間ガスバルジの管材I=5.0kA
通電加熱熱間ガス型バルジ
銅電極 スプリング
φ22.0 1.0φ33.050
B A
A-B φ33.0 A6063‑T5 外径22.0mm,肉厚1.0mm
熱間ガス型バルジ成形方法
A-B
耐熱ガラス
ビデオカメラ 金型
管材 A
B 金型
電極 管材
変形挙動測定用金型
耐熱ガラス
ビデオカメラ 金型
管材
熱間ガス型バルジ成形
4 5 6 7 8
0.5 1.0 1.5 2.0 2.5
通電電流I /kA 初期圧力p0/MPa
03 9
(a)溶融
(b)良好
(c)割れ 66% 78% 80% 84%
充満率 最適条件
成形形状に及ぼす初期圧力と通電電流の影響
耐熱ガラス
ビデオカメラ 金型
管材
軸押しありの熱間ガス型バルジ成形
‑0.5
‑0.4
‑0.3
‑0.2
‑0.1 0 0.1
0 10 20 30 40 50
金型端からの距離 /mm
肉厚ひずみ
t=2.0s 2.5s
3.0s 測定箇所
肉厚ひずみに及ぼす軸押し開始時刻の影響
(v=20mm/s,s=10mm)
0 5 10 15 20 25
10 20 30 40
軸押し速度 v/ mm・s-1
軸押しストロークs/ mm
(a) しわ
(b) 折れ込み
(c) 良好 0.92mm
0.81mm 0.81mm 0.78mm 平均肉厚 最適条件
成形形状に及ぼす軸押し速度と 軸押し量の影響
‑0.5
‑0.4
‑0.3
‑0.2
‑0.1 0 0.1
0 10 20 30 40 50
金型端からの距離 /mm
肉厚ひずみ
s=15mm 10mm
0mm 測定箇所
肉厚ひずみに及ぼす軸押し量の影響
温度低下防止による 充満率の向上
小穴による金型内の管材温度測定方法
管材 金型
金型への熱伝達 放射温度計
周囲の金型接触によって 穴部分も温度低下する 5
φ3 A
赤外線透過用小穴 A
金型内の管材の温度測定
600℃
500 400 300 200 100 0 温度
低熱伝導型と電流密度増加による 温度低下防止
セラミックス 1.7
(ホトベール)
16.3 SUS304
51.6 SS400
熱伝導率
(W/mK)
型材質
(b) SUS304型(J =106A/mm2,τ=7.5s)
(c) セラミックス型(J =76A/mm2,τ=8.0s)
(a) SS400型(J =106A/mm2,τ=4.0s)
通電開始から時刻t/s
金型に接触
600°C 500 400 300 200 100 0 温度
金型内の管材の温度履歴 SUS金型(J =106A/mm2,t =7.5s)
金型端からの距離x /mm
15 20 30 40 45
10 25 35
x 金型
2 4 6 8
05
金型内の管材の温度履歴 セラミック(J =76A/mm2,t =8.0s)
0 2 4 6 8
通電開始から時刻t/s
金型端からの距離x /mm 金型に接触
600℃
500 400 300 200 100 0 温度
x
金型 5 10 15 20 25 30 35 40 45
電流密度増加による温度低下防止
0 30 60 90 120 150
2 4 6 8
電流密度/A・mm-2
通電開始からの時間t/s 増加なし
金型接触
60 75 90 105 120 0.5
1.0 1.5 2.0 2.5
電流密度J/A・mm-2 初期圧力p0/MPa
045 135
増加あり
5.5
各温度低下防止方法によって 得られた製品断面形状
0 2 4
y/ mm
5 10
x/ mm 15
SS400金型
(J=106A/mm2, 4.0s)
SUS304金型 +電流密度増加 セラミックス型
(J=76A/mm2, τ =8.0s)
SS304金型
(106A/mm2, 7.5s)
各温度低下防止方法による 金型角部充満率と投入電力量
0 50 100 150 200 250
SS400 セラミックス SUS304
+電流密度増加
投入電力量/kJ
0 20 40 60 80 100
金型コーナー部充満率/%
SUS304
• 熱間ガスバルジ成形は冷間のハイドロフォーミング に比べ6倍以上の拡管率が得られた.
• SUS304製リングの導入およびリング形状の最適化 を行い,均一加熱が可能となりバルジ変形範囲を 拡大することができた.
• 軸押しを拡管前に行うことで,肉厚ひずみを減少で きた.
• 軸押しを行うことで肉厚ひずみを約30%低減できた.
• 金型材質,及び通電方法を最適化することで管材 が金型に接触したときの温度低下を防止して金型 充満率を向上することができる.
ま と め