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第五章調査活動による当事者参加

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第五章 調査活動による当事者参加  

抜﹁参加する福祉﹂と当事者調査   

岡本栄一は︑社会福祉に関する制度や活動を﹁参加する福祉﹂と﹁保障する福祉﹂とに分けて考えることを  丁ユ  提唱している︒﹁参加する福祉﹂とは︑ボランタリズムと市民的自由を基盤とした直接的市民参加体系であり︑  

﹁保障する福祉﹂とは︑法律と条例を基盤とした制度的保障体系であるとされる︒そして︑この両者の協同と  

括抗によって﹁人間性豊かな社会の創造﹂がなされるのだというのである︒  

﹁参加する福祉﹂は︑彼によれば︑﹁運動的参加﹂と﹁参画的参加﹂および﹁活動的参加﹂から構成される︒﹁運  

動的参加﹂とは︑ソーシャル・アクションを通じて︑社会福祉制度の充実を求めるような参加である︒﹁参画  

的参加﹂とは︑自治体や福祉施設の政策・方針の決定過程に積極的に介入するという形での参加である︒さら  

に︑﹁活動的参加﹂とは︑ボランタリー・サービスの柔軟性や即応性等をもってしか充足できない市民的二−  

ズを満たしていくという形の参加なのである︒   

父子福祉会のような当事者組織の活動は︑このような﹁参加する福祉﹂ の理念を極めて具体的に体現したも  

のとなっている︒とくに︑本章で取り上げている調査活動において︑それは顕著に現れているといえるだろう︒   

まず﹁運動的参加﹂の面であるが︑当事者である会の役員自身が︑直接足を運び︑いままで埋もれていた父 149   

鷲 調査活動と当事者  

(2)

子家庭のニーズを明らかにし︑行政機関へはもちろん︑広く一般市民にも父子家庭のもつさまざまな問題の探 150  

刻さを訴えた意味は大きい︒自らが集めたデータによって起こすソーシャル・アクションは︑当事者側に強い  

確信をもたせるものとなり︑運動として有効性の高いものとなることが期待できるだろう︒   

さらに﹁参画的参加﹂に関しては︑自分たちの目でさまざまな家庭の問題をとらえたうえで︑現状の政策・  

制度を批判し︑これから求められる具体的な政策の提案を打ち出している︒   

当事者の参画的参加は︑おそらく当事者組織の存在なくしては︑ありえないことであろう︒しかも︑この場  

合︑自分たちが収集したデータに基づいて描いた提言を片手に持った形での参加である︒行政機関のデータや︑  

後で述べるように委任された研究者が単独で作成したデータでは︑なにかしら自分たちが最も主張したかった  

﹁状況のニュアンス﹂が表現されていない場合がありうるのである︒いわば﹁かゆいところに手が届く﹂よう  

な︑当事者の立場にたった政策・制度をつくりあげるためには︑このような当事者組織による調査活動は必ず  

必要になるだろう︒   

最後に﹁活動的参加﹂ についていえば︑この調査活動によって︑父子福祉会の役員たちは︑市内の多くの父  

子と出会うことができたのである︒地域社会で孤立しがちな父子家庭も︑同じ立場の者たちの訪問であったか  

らこそ初対面でも心を開いて受け入れられたのだろう︒それは︑ある意味では ﹁友愛訪問﹂ であった︒この調  

査により︑多くの父子が互いに知りあい︑励ましあったのである︒とくに︑自分たちの近隣に同じような苦労  

をしている父子がいることを知り︑隣近所の三〜四組の父子が︑ひとつの小グループを形成することもあった︒  

もちろん︑父子福祉会の存在や理念の普及にもつながり︑父子福祉会の会員数は大きく増加した︒﹁活動的参加﹂   

(3)

第五車 調査活動による当事者参加  

は︑この調査活動のもっとも大きな収穫のひとつであると思われる︒  

傷調査への当事者組織の関わり方   

当事者組織による調査活動は︑このように﹁参加する福祉﹂的意義をもつものであるが︑それが専門的研究  

者との共同作業となる場合︑共同の仕方によって当然︑調査のあり方も大きく追ってくる︒ここでは︑当事者  

組織の調査への関わり方を︑以下のように三通り考え︑それぞれの場合での︑調査の﹁参加する福祉﹂的意義  

と︑調査の有効性への影響という二つの側面について考察してみたい︒ただし︑ここに取り上げている枚方市  

父子福祉会の調査の場合︑以下の三通りの関わり方がすべて行なわれたことに注意したい︒   

まず第一に当事者組織が専門的研究者に調査を委託する場合である︒当事者組織の関わりが﹁調査の委託﹂  

だけに限定されているなら︑行政機関や専門的研究者が単独で行なった調査と比べても︑内容・結果ともにそ  

れほど大きな違いは現れてこないだろう︒しかしながら︑その委託によって︑当事者組織が専門的研究者との  

﹁つながり﹂をつくることができた場合︑その﹁運動的参加﹂ の点で前進が見られたというべきである︒   

また︑委託した当事者組織が広く当事者たちの心をとらえている場合︑行政機関や大学などの研究機関が単  

独で行なう調査と比べて︑調査対象者の拒否的態度は少なくなると予想され︑そのため︑調査結果の有効性が  

高くなると考えられる︒   

さらに︑研究者は︑当事者組織の存在によって︑調査の分析に関しては︑具体的な政策提言までを含む内容  

豊かなものとするように求められるだろう︒﹁研究のための研究﹂ ﹁調査のための調査﹂などという自己目的的  

な研究・調査を許さず︑実践的なプラクティカルな調査分析を要求されるのである︒  

151   

(4)

第二に︑当事者組織の役員が調査員になる場合である︒枚方市父子福祉会の調査では︑役員が調査対象であ 152  

る父子家庭を一軒一軒訪問し︑調査用紙を配布・回収した︒この訪問時に︑補足的説明を行なったり︑不充分  

な回答については追加的に質問したりした︒このように︑調査に際して︑個々の対象者の自宅を訪問し︑その  

対象者と対面的︵faceエ○−㌻ce︶関係をもつようになれば︑その場合︑﹁参加する福祉﹂としての意味はかなり  

大きくなる︒   

まず︑当事者組織の役員は︑地域に埋もれた父子家庭のニーズを明らかにしていく︒彼らは調査活動を通じ  

て︑地域から孤立し︑自らも心を閉ざしがちな父子家庭に積極的に関わろうとする︒それは︑当事者組織の会  

員の拡充につながり︑また会員相互の関係を強化することにも役立った︒とくに︑自分たちの隣近所にどういっ  

た父子家庭が生活しているのかを調査員が知り︑その調査員を中心として校区レベルの小地域に父子家庭の小  

グループができたことは注目に値するだろう︒   

そして︑面接した役員の調査後の感想にもあるように﹁一度訪問すると︑相手が話し続けて一時間や二時間  

では終わらないことが多かった﹂ のである︒社会的に孤立しがちなその父親たちは︑﹁同情﹂や﹁憐れみ﹂ の  

気持ちではなく︑また﹁役所的な冷たさ﹂ でもなく︑同じ立場の同等の人間としての共感をもって︑自分たち  

の気持ちや毎日の苦労話を聞いてくれる人たちを求めていたのだろう︒訪問調査した父子福祉会の役員は︑そ  

の意味で共感性に満ちた最良の ﹁耳﹂ であった︒この調査によって︑多くの父子家庭の父親たちに﹁仲間的カ  

ウンセリング︵peercOunSeling︶﹂ の機会が与えられたことは特筆すべきことである︒   

こうして︑ニーズを明らかにするために役員たちが調査対象の家庭に出向いて行き︑﹁仲間的カウンセリング﹂   

(5)

第五重 調査活動による当事者参加  

が行なわれるような︑相互的信頼を最大限にしうる状況において︑この調査が行なわれたのである︒このこと  

は︑調査対象者の拒否的感情からくる虚偽の回答も少なく︑かなり正確な応答が得られることにつながったの  

ではないかと考えられる︒もちろん︑同じ状況・立場にある者が調査員となるのであるから︑過剰同一視  

㌻完r⊥︵︼entiニca︵l〇コ︶ や投影︵pr〇J芝5.コ︶というマイナス要因も働きうるであろうが︑それは調査項目の記述  

の仕方等に詳細な注意を払えば防止できるはずである︒   

最後に︑調査の分析過程に当事者組織が関与する場合であるが︑それには︑調査項目を設定する段階での関  

与︵調査前関与﹀と︑調査後その結果を評価する段階での関与︵調査後関与︶ の二通りがあると思われる︒   

﹁参加する福祉﹂ の観点からいえば︑どのようなことがらを調査の対象とするのか︑さらにどのような項目  

設定をすべきかといったことを当事者組織内で論議しあうことは︑﹁運動﹂ の課題の明確化を促進させるとい  

う意味で非常に重要である︒   

また︑調査後の結果の評価の段階において関与することは︑それに続くソーシャル・アクションを﹁自信を  

もって﹂推進することにつながるだろう︒いわば ﹁人から与えられた武器﹂ で闘うのではなく︑﹁自分で作っ  

た武器﹂で闘うわけである︒しかも︑調査の結果をもとに当事者の二㌧スの内容を組織内で討議することによっ  

て︑組織が今後どのように活動を展開していけばよいかを明らかにすることができる︒   

さらに︑調査の有効性という点においては︑﹁専門的研究者﹂ による項目設定に ﹁生活者﹂ による項目設定  

というプロセスを付加することによって︑より﹁福祉学的﹂ になるのではないか︒すなわち︑社会福祉学は人  

間と社会の﹁客体的﹂関係だけではなく︑その﹁主体的﹂関係を問題にしなければならない︒とすれば﹁生活 153   

(6)

者﹂による項目設定は決して非科学的なものではなく︑専門的研究者の援助のもとに︑より現実的に﹁生活者﹂ 154  

の生活を把握する︑いわば﹁生活感に満ちた﹂項目設定となるのである︒   

この調査においても︑試験的調査︵︻︶ニOtSurVey︶が父子福祉会の会員を対象に行なわれたが︑その際︑会員  

から項目設定に関する多くの意見が出されたのである︒調査項目の内容そのものについて︑会員同士で討議が  

なされ︑その討議の過程で会員たちは︑より明確に自分たちの問題を把握するようになった︒﹁調査票が読み  

やすいかどうか﹂といったレベルではなく︑﹁調査における問題︵意識︶ の設定﹂という高度なレベルにまで  

当事者が参加しているのである︒  

グ﹁問題の定義﹂を行なう当事者調査   

当事者組織が調査に関わることは︑﹁参加する福祉﹂を充実させ︑同時に調査の有効性を向上させるという  

大きな可能性をもっている︒それは︑専門的研究者や行政機関等が単独で調査を行なう場合と比較すれば︑よ  

り明らかになる︒すなわち︑当事者組織と専門的研究者との連帯︑当事者組織の会員拡充︑会員の相互交流の  

活発化︑運動課題の明確化︑﹁仲間的カウンセリング﹂ の供給といったことを可能にするのである︒   

また︑調査の有効性という点から言えば︑対象者の拒否や拒否感情の低下︑相互的共感によって個人の内面  

︵ヱ  に迫る調査ができるということ︑岡村理論でいう﹁社会関係の主体的側面﹂から調査項目設定が可能である︑  

といったメリットが想定されるのである︒   

社会福祉調査が単なる社会調査と異なるもっとも大きな点は︑前者はその調査の過程︑すなわち調査活動と  

いう行為そのものが︑なんらかの福祉的意義をもたなければならないということであろう︒すなわち︑それは   

(7)

第五章 調査活動による当事者参加  

彷当事者の組織化と社協   

前節では︑当事者組織における調査活動の意義についてのべたが︑ここでは当事者組織への援助機関として  

の社会福祉協議会の立場から︑当事者調査を捉えてみよう︒   

まず︑実態調査が組織化を目指して実施される点に注目する必要がある︒すでに紹介した春日井市の調査活  

動の例では︑第二回目の調査は組織化が前提となっている︒また枚方市社協では︑父子家庭に続いて組織化を 155    ニーズをもつ当事者を単に受動的な﹁対象者﹂として規定するのではなく︑当事者の社会的主体性を最大限に  喚起させるものでなければならない︒  

ヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽ  さらに︑忘れてはならないのは︑調査活動を当事者組織が行なうということは﹁問題の定義﹂を当事者が社  

ヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽ  会的に提出しているのだということである︒従来︑当事者運動は﹁問題の解決﹂を行政機関等に迫る形のもの  

が多かったが︑これからの当事者運動は﹁何が問題なのか﹂﹁何がニーズなのか﹂ということを社会的に提起  

︵6﹀  する力︵︵ニel︺eニコiti〇nSヨ〜lChニをもたなければならない︒﹁何が問題なのか﹂ということを当事者側から再定義  

することこそ︑ノーマリゼーションの出発点であると筆者は考える︒とすれば︑当事者組織にとって︑当事者  

調査活動は︑その社会変革的機能を充分に発揮させるための根幹的活動であるといえるだろう︒  

$ 当事者調査と参加型社協  

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