管理栄養学科 所感
家政学部の教育目標と教育方針の下、管理栄養士を養成するにあたり、教育の責任、教 育の理念と目的を明確にした授業展開、成績評価法、教育姿勢と教授法の改善を可視化 することができた。
氏名 安藤 明美
家政学部家政学科の教育目標は、本学の教育目標と教育方針の下、「真心・努力・奉仕・感謝」の四大精神の実践を通して社会的に自立して生きていく上で 必要な①スキル・リテラシー・教養等に関する一般的知識・技能と②家政に関する専門的知識・技能と③建学の精神・社会人基礎力・pisa 型学力を統合的に身 に付け、社会に出てからは、これらの知識・技能をベースに生涯学習社会の中で自己の潜在能力をさらに開発しながら、職場と地域の課題解決に貢献できる人 材を育成することである。
イ 家政学専攻の教育目標は、家政学部の教育目標の下、これからの社会の新しいライフスタイルのデザインを提案することによって、人々の日常生活を衣・
食・住の面から支援することのできる人材を育成することである。
ロ 管理栄養士専攻の教育目標は、家政学部の教育目標の下、管理栄養士の資格を生かして、チーム医療、健康増進・疾病予防、食育・栄養指導又は健康をテ ーマにした食品の研究・開発等で活躍することによって、人々の日常生活を健康の面から支援することのできる人材を育成することである。
ハ こどもの生活専攻の教育目標は、家政学部の教育目標の下、保育士・幼稚園教諭・小学校教諭の資格を生かして、こどもたちの学力および社会性・社会力 の基礎・基本を育てることによって、人々の日常生活を子育ての面から支援することができる人材を育成することである。
1 教育の責任
表1
科目名 開講学年・学期 年度 受 講 者
数 備考 未来へつなぐアウトリーチスタートア
ップ・Ⅰ 1 年 2020 135 オ ム ニ バ ス 科 目
未来へつなぐアウトリーチⅡ・Ⅲ 2 年・3 年 2020 0 オ ム ニ バ ス 科 目
栄養教育論 2 年前期 2020 46 管 理 栄 養 士 法 規程科目 栄養教育論実習 2 年後期 2020 46
卒業研究 3年後期~4 年前期 2020 2 1.ディプロマポリシーの観点より
1) 管理栄養士専攻の教育目標の下、管理栄養士の資格 を生かして、疾病予防、食育・栄養指導等で活躍するこ とによって、人々の日常生活を健康の面から支援するこ とのできる管理栄養士を育成すること。
2) 管理栄養士は人を対象とした職であり人との関わり 方として、思いやりの心、慈しむ心「真心」を持ち、疾 病予防・改善への知識・技能の修得を常に実践する「努 力」の姿勢、自己の持つ時間と労力を費やす「奉仕」の 姿勢、そして、与えられた環境に「感謝」する心、即ち 四大精神を育成する教育を責任としている。
2.カリキュラムポリシーの観点より
1)1 年生を対象に「未来へつなぐアウトリーチ」を必須科目として 2016 年立ち上げた。この科目により、本学の教育目標、教育方針である① 建学の精神(四 大精神:真心・努力・奉仕・感謝)、社会人基礎力、pisa 型学力を修得して、職場と地域の人々と協働して課題を解決していくことができる教育の基盤として いる。
2)管理栄養士養成施設である家政学部管理栄養士専攻に 2002 年 4 月就任以降、厚生労働省が設定している管理栄養士法施行規則および栄養士法施行規則の専 門分野科目である「栄養の指導、栄養と健康」分野の『栄養指導論、栄養指導論実習』、『食事計画論、食事摂取基準論』、「栄養教育論」分野の『栄養教育論、
栄養教育論実習』」およびキャリア教育の一環として本専攻独自の科目「管理栄養士への道、管理栄養士特論(栄養教育論)、応用栄養英語」等を担当している。
この栄養教育論の分野は、①健康・栄養状態・食行動・食環境に関する情報を収集・分析すること。②総合的評価・判定に基づく栄養教育プログラムを作成す る能力を修得すること。③人とのコミュニケーション能力を身に付ける教育することを責任としている。(資料 1 2020 年度シラバス)
卒業研究は 2003 年以降現在まで担当している。受講生は 2014 までは6~8名、2015 年以降は 2 名を担当している。研究テーマは、管理栄養士を目指す学生 であり、栄養管理とストレスとの関連性を栄養教育の観点から研究を行い管理栄養士としての資質を身に付けることを教育の責任としている。(資料 2 卒業研 究テーマ)
2 教育の理念と目的
教育の責任の下、教育の理念と目的は、「栄養管理が必要な学習者の『食の自立(食行動の形成と確立)』ができる能力を学生に修得させ、学習者(患者)自 らが栄養管理できるように栄養教育ができる管理栄養士を育成する」ことである。
1.学生に求めること
1)目的を達成する必要な専門知識の修得
①行動科学の理論・モデルを理解し、活用することができる。②栄養カウンセリング技法と行動変容技法を理解して、活用することができる。③栄養ケア・マ ネジメントを理解することができる。④栄養教育プログラムを作成することができる。⑤チームワーク・コミュニケーション能力を活用して、栄養教育ができ ることでる。
2)目的を達成するに必要な能力の修得
四大精神、社会人基礎力(能力レベル3以上)を意識した日常生活を送る習慣をつけることができる。
‣家政学・行動科学の視点で、課題発見し課題解決に修得している知識と技能を活用する pisa 型学力を習慣化することができる。
2.自分自身に求めること
①成績評価に該当する項目は、学生が評価の根拠を把握できるようにルーブリックを提示することができる。
②学生が提出したレポートは、丁寧に確認してコメントを必ずいれて返却することができる。
③学生には無限の可能性があり、学生の潜在能力を引き出すのは、教師の仕事であると常に意識することができる。
④学生に積極的な声かけをし、コミュニケーション能力を育成するために友達感覚にならないように意識することができる。
⑤四大精神、社会人基礎力、pisa 型学力を実践することができる。
⑥学生の名前を覚えるために、出席チェック、挙手、指名して学生の名前と顔を記憶することができる。
⑦常に明るい表情で学生に接することを心が得ることができる。
3 教育方法 1. 授業の重点目標
管理栄養士法施行規則に基づいた科目を管理栄養士専攻では、人体における生理学、栄養学、食品学の専門基礎分野を学び、疾病予防・疾病治療に関する専 門分野へと段階的に積み上げ教育で設定している。学習者(患者)が摂取エネルギーの過剰または不足を改善することができる『食の自立(食行動の形成と確 立)』する方法を修得し、栄養管理することができる栄養教育プログラムを策定することに重点を置いている。栄養管理とは、食物の摂取量を管理することよ り、血液検査値、血糖値、コレステロール値、体重などから自分の健康は自分の力で行動するコーチングである。
2. 目標達成への教育方法
1) 管理栄養士としての基本的な知識の修得率を確認することの重要性
今年度は、新型コロナウイルス感染症予防対策として、非対面授業を実施した。方法は、google classroom を使い、Meet で開始時に出席と本時の授業内容 を説明した後、授業ビデオを流し、授業終了 15 分前に Meet で授業内容について、質疑応答を行った。
授業構成は、第一に、栄養教育で活用する専門知識・技能を講義科目より修得することが必要である。生活環境の異なる患者への教育には、できるだけ多く の専門知識・技能について理解することが重要である。したがって、前期の栄養教育論ではレポートによる評価ではなく、単元ごとに確認テスト、学期末試験 を実施している。これにより学生は自己の知識・技能の修得状況を明確にすることができる。また、試験により目に見える学修成果を可視化することにより、
試験結果が低い学生は、患者に活用するための知識が不足していることを自覚し、自己の甘え(努力不足)を断ち切る支援につながると考える。
2)本時の授業を充実させる予習・復習の習慣化
授業は、予習(Preparation)・本時の授業(Classwork)・復習(Review)(PCR)の3区分で構成している。また、予習・復習・本時の授業では PCR シートで 自己の持つ潜在能力を開発するエネルギー源として、社会人基礎力を活用している。社会人基礎力の 12 の能力要素の内、7つの能力を活用している。予習(P)
は、主体性・実行力、本時の授業(C)では、発信力・傾聴力・課題発見力、復習(R)では、創造力・規律性である。本時の知識定着と内容を理解するために 予習は、主体的に教科書から知識の習得ができる働きかけをし、さらに教科書以外の情報源から学修内容を深く学ぶ取り組みを支援している。本時の授業では、
課題を提示して予習で得た知識を活用してペアーワークを行い自己の考え、意見を整理して分かりやすく発信する。発信された内容をさらに深堀するコメント ができるよう傾聴する。授業内で知識の定着、理解が不十分な点を明確にして、授業外で課題を解決する。復習では本時の学修内容に沿った課題を提示して、
修得した知識・技能を最大限に活用して、課題を解決する提案ができる創造力への発揮を支援している。
PCR シートの評価は、栄養教育論は毎週、栄養教育論実習は学修の到達目標の項目別に評価を行っている。評価は記述内容を添削と採点および社会人基礎力 の 7 つの能力要素を評価して返却している。(資料 3 PCR シート、評価ルーブリック)
3)小テスト(確認テスト)の実施
単元ごとに知識の定着と理解度を確認する試験を実施している。多くの知識の定着は多種多様の生活スタイルを持つ学習者一人ひとりに適応した食行動変容 への教育を実施することができる。確認テストで成績不振の学生には、再度確認テストを課題とし知識の定着と理解度を上げる支援をしている。
4)卒業研究の充実
卒業研究は、食行動が社会に及ぼす課題をテーマとして個別に設定し、論理的な道筋で研究され、誰も納得できる客観的内容があり、今までに研究されてい ない新規性があること、そして、その研究した内容は社会へどのような波及効果があるかについてチャレンジさせている。研究の計画は、課題解決の手法を論 文購読することより課題の背景、課題解決の実験方法を検索し、実験プロトコルの作成、実験、データ分析、統計処理を行い結果・考察する。この進捗状況を 毎週「プログレス」時間として設定し、ディスカッションを行うことでコミュニケーション能力とプレゼンテーション能力の育成を目指している。
個人及び集団を対象とし、栄養の評価・診断・計画に基づいた栄養食事療法・情報提供・食環境整備・食育活動等により、生涯を通してその人らしく生を全 うできるように支援することである。3 年半で修得した知識と技能を栄養の指導へと転換することを目的に卒業研究を実施しています。テーマは「Ca 摂取が血 糖値に及ぼす影響と栄養教育法の検討」「イミダゾールジペプチドが学修ストレスに及ぼす影響」です。研究目的、方法については取り組む中で、それぞれ説 明をしている。
3.シラバスに記載している学修内容の概要 (資料 4 シラバス)
栄養教育論は理論の理解、実習では課題解決の手法を学ぶ 開講時期・科目 教育方法
2 年前期 栄養教育論
患者の食行動の形成と確立を誘導する栄養教育的専門知識・技能を理解する。予習・復習および pisa 型学力・四大精神・社会人 基礎力の育成には学修行動特性評価シート(PCRシート)を活用し、家政学部統一のルーブリックで評価している(学生は完全 に誘導された課題解決姿勢、知識と技能の修得を評価)。
2 年後期 栄養教育論実習
食行動の形成と確立を患者の症例を元に、課題を栄養教育の専門知識・技能を活用して解決するプロセスを学ぶ。
授業は、各自が担当する症例の栄養教育プログラムはワークシートを活用して完成させる。その後、グループ(3~4人)となり、
さらに自己の栄養教育プログラムについてディスカッションすることでブラッシュアップする。社会人基礎力の育成は学修行動特 性評価シート(PCRシート)を活用し、学部統一のルーブリックで評価している。(半ば誘導された課題解決姿勢、知識と技能 の活用を評価)
3 年後期~4 年前期
卒業研究 自ら課題を発見して、解決する。(自ら課題を発見して課題解決する姿勢)
4 授業改善の活動
1.2020 年度より毎週の授業内容を PP にまとめ google ドライブにアップロードして、各自スマートフォンで閲覧
①予習・復習および授業中に確認できるようにしている。また、授業時間以外は、登下校途中、授業の前後で確認していたと学生は述べていた。(資料 5 スマ ホ場面)
①授業ビデオを作成して、遠隔授業を実施した。学修内容の理解度を上げるディスカッションは、授業終了 15 分前よりリアルタイムで実施した。
②講義は授業内容を PP にして、スクリーンに提示しながら進める、その後、各自スマホで PP の内容を繰り返し確認しながら学修を進めることができた。
2.確認テストを Chapter ごとに実施している。(資料 6 資料 4 に同じ)
①前年度まで、毎週確認テストを実施していたことより、本時の授業時間が少なくなり理解度を上げるディスカッション時間の確保が不足した。そこで、Chapter ごとの確認テストに切り替えた。学生間のディスカッション時間を 10 分程度増やし、思考力の時間をとることができた。
② Chapter ごとの確認テストに切り替えたことにより、正解でない問題について授業内で振り返りの時間を 15 分程度とり、学生からの質問時間を確保するこ とができ、さらに知識の定着を図ることができた。
③確認テストの問題は、学修内容と到達目標に対応させて、管理栄養士国家試験の出題傾向の高い項目を中心に、理論の理解とその活用法に重点を置き出題し ていたが、さらに記述式問題を追記して思考力、判断力を育成する問題を出題した。キーワードを覚えるだけではなく、内容を理解し、活用する力をつけるこ とができた。
3.予習・復習の習慣化とコミュニケーション能力
PCR シートを使い社会人基礎力と pisa 型学力を発揮させることで育成している。(資料 7 資料 3 に同じ)
①本時の学修目標を意識させ、目標を達成するためには学修内容を知ることであり、学修内容を理解して臨むことが必要であることより、主体的に取り組む姿 勢とそれを実行する必要性を育成した。主体性とは、指示がなくても予習学修をすることであるが、予習はどのような学修をしておくことが必要かを提示して、
実行させる習慣に取り組んだ。主体的にできているかは、不明であるが指示された学修内容については、ほぼ記載はできていた。その内容についての確認は、
ペアーで、その後クラス全体へ発信する。またペアーワークでは、相手の意見、考えについて深掘りの質問をした。
②本時の授業(C)では、本時の学修の核となる項目について課題を提示する。課題は、知識の獲得、活用、課題解決する pisa 型学力の育成を意識して出題し た。この一連の流れの中で、自己が理解できていなかったことを自己の課題発見として、授業後自学自習した。
ここでは、修得した知識を活用して、意見交換をすることで自己の考えを整理して発信し、相手の発信内容を「なぜ、どうして、どのようになど」と傾聴し て、相手の意見・考えについてさらに深堀する質問した。コミュニケーションが中々取れない学生には「なぜ、どうして」の疑問詞を浮かべて話を聴く支援を したが、声に出して相手に質問することができない学生もいた。しかし、8 割以上の学生は質問シートに記載はできていた。
③復習(R)は、本時の授業の知識を活用して、課題を解決する能力を育成する出題をした。これは pisa 型学力の育成への取り組みとして実施した。解答が思 考力を問われる「症例へ行動技法を使い行動変容を促す」問題などは、取り組む学生が減少していた。キーワードを覚えるだけでは、課題解決はできない、思 考力、判断力する必要性に少しは気づいたと思われる。
④学生の社会人基礎力の育成手法として学修内容を把握した後、どの能力を発揮して授業に取り組むか宣言して授業に取り組ませた。実施方法は、①②③で行 った。社会人基礎力は、7 つの能力を学生の自己評価と教員による評価を実施している。学修成果の評価基準は、家政学部統一のルーブリック 1.1 および詳細 ルーブリックを用いている。
学生への返却時には、①②③の学修成果評価と社会人基礎力のレベル評価について、ルーブリックを提示して振り返りを実施している。結果については、6 学生の学修成果に記載する。
5 学生の授業評価
2020 年度 授業アンケート結果(n=67)
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17
18
栄 養 教 育 論
1
4.4 4.6 4.2 4.3 4.4 4.4 4.3 4.3 3.9 3.8 3.8 3.8 3.8 3.3 3.4 3.6 3.6 ストロール力
2
3.9 3.6 3.7 3.7 3.8 4.0 3.8 3.7 4.0 3.9 4.0 3.9 3.9 30.3分 49.1分 3.7分 3.7 ストロール力
栄 養 教 育 論 実 習
1
4.5 4.6 4.2 4.3 4.4 4.4 4.5 4.0 4.0 3.5 3.5 3.6 3.8 3.2 3.3 3.4 3.7 発信力2
4.5 4.3 4.4 4.3 4.4 4.6 4.4 4.2 4.1 4.1 4.2 4.1 4.1 37.7分 47.4分 4.1 4.2 創造力①質問 1~8 までは、教員の授業に関する問である。栄養教育論は 3 レベルと令和 2 年度は低値であった。
②質問9以降は学生の学修内容に関する問である。両科目とも予習時間(質問 14)は 60 分未満で、目標時間を 90 分以上としているが到達していなかった。
PCR を活用した予習はテキスト、インターネットの内容をコピーペーストする作業で終わっていた。講義科目では毎回の確認テストが必要であった。
③有意義な授業とは感じている割合は、令和 2 年度は上昇した。栄養教育は人の行動心理を行動科学の視点から行動変容を促す科目である。科目の年次配当 が 2 年生であることから、ライフステージ別の栄養管理、疾病別の栄養管理の臨床栄養等を学修しない前に栄養教育を実施することはハードルが高いと考え る。したがって、新カリキュラムでは年次配当を 2 年次後期、3 年次前期に変更した。
④社会人基礎力で発揮できなかった能力要素は、講義科目はストレスコントロール力であった。講義は質問に対して考える時間を多くとり、発信への促しで はなく、強制的に取っていたことをストレスと感じていたと思われる。実習は発信力から創造力へと変化した。ペアーワークで自己の考えを伝える促しをし たことより、学生は強く感じていたと思われた。
⑤受け身的に講義を受ける姿勢を改善するために、どんな意見でも重要であるという姿勢に立ち、学生が意欲的に取り組めるディスカッションの工夫をする。
6 学生の学修成果
学修成果は、栄養教育論と栄養教育論実習の 2018 年度と 2020 年度の成績分布表を図に示す。
1.栄養教育論 1)成績評価(表)
①シラバス評価配分は筆記試験、小テスト(確認テスト)、学修態度(社会人基礎力)で分析した。2020 年度と 2018 年度では相違はみられない。
②2020 年度は、2018 年度より 70 点以上 90 点未満が低い状況にあった。これは、成績評価でも述べたが試験問題を思考判断能力問題に切り替えたことによる ものと考える。2020 年度も同様、思考判断能力を測定する問題を実施することで比較する。
③社会人基礎力(学修態度)評価は、2018 年度より 2020 年度では課題発見力を除き 6 つの能力要素で高くなっていた。しかし、課題発見力、創造力、傾聴 力はレベル3に到達していない。
2)課題と改善
①主体性と実行力が高いと成績評価も高くなると仮定した、主体性と実行力は 2018 年度より
2020
年度は高い、筆記試験、小テストの結果には反映されてい ない。この原因として小テスト、筆記試験の出題内容を用語の理解問題から思考判断力を判断する出題へと 4 割ほど変更したことにあると考える。したがっ て、2020年度の授業は、予習で用語理解(小テストで確認)、授業で思考判断の学修、復習では自己の理解不足を発見して自学できる構成とする。②授業時の思考判断力の育成は、学修内容に対応した課題を出し、ペアーワーク、全体のディスカッションへの取り組みより、傾聴力を活用して深掘りの質 問ができるように課題数を増やす取り組みをする。
2.栄養教育論実習 1)成績評価
①栄養教育論実習は、前期の栄養教育論で獲得した知識を活用して、症例の食生活の課題を解決する栄養管理プログラムを完成させることを目的に実施して いる。したがって、評価範囲はシラバスに記載しているように筆記試験、小テスト(確認テスト)、レポート、成果発表、社会人基礎力(学修態度)から基 礎知識の獲得状況、応用力と判断力、プレゼンテーション力および管理栄養士としての行動特性で評価している。
②総合得点は 2020 年度と 2019 年度より高くなった、相対度数では、2020 年度は、2019 年度より 80 点以上の割合が高くなった。栄養教育論実習は、栄養教 育論が基礎となる科目であり、この講義科目で思考判断能力を育成する授業展開することにより 80 点以上の学生数が増えた原因と考えられる。
③社会人基礎力(学修態度)評価は、2020 年度は前年度と変化はみられなかった。
④課題発見力と傾聴力のレベルアップはみられた。2020 年度は授業内で学生への質問回数を 2 倍ほど増やしたことにある。そして、質問に対して答えは持っ ているが、自ら挙手をすることができない学生には 1 度指名して発信させる促しをすることで自信を持たせたことにあると思われる。
2)課題と改善
①総合得点をさらに上げるには、成果発表におけるプレゼンテーション力を上げる取り組みが必要である。「原稿を見ながら棒読み、目線が聴衆に向かない、
声に張りがない」などが課題である。プレゼンテーションのデモンストレーションの時間を 90 分程度とっているが、その時間を原稿作成に時間を費やしてい る。今後は原稿提出期限を決めて、プレゼンテーションのデモンストレーションの時間を確保する。
②社会人基礎力(学修態度)の向上は、思考力と判断力を育成する質問を増やし、課題を発見する力と解決への創造力を育成するための深掘りできる傾聴力 を発揮する授業展開を実施する。
3.今後の課題
‣社会人基礎力を除く成績評価と各能力要素との関連性を分析する。
栄養教育論 成績評価 評価配分 50% 40% 10%
年度 総合得点 筆記試験 小テスト 社会人基礎力 主体性 実行力 課題発見力 創造力 発信力 傾聴力 規律性
平均(n=82) 71.1 34.9 29.0 7.3 3.2 2.9 2.5 2.4 2.9 2.7 3.7
SD 14.7 6.5 9.0 1.6 0.7 0.8 0.8 0.7 0.7 0.6 0.6
平均(n=65) 70.5 35.5 27.0 8.1 3.8 3.3 2.4 2.9 3.4 2.9 3.9
SD 13.1 7.9 6.8 0.7 0.2 0.3 0.7 0.5 0.3 0.7 0.1
平均(n=46) 83.9 76.3 - 7.6 3.0 2.5 3.0 2.5 3.3 3.3 3.7
SD 7.3 6.9 - 1.9 0.3 0.3 0.7 0.4 0.5 0.5 0.3
2018 2019 2020
0 20 40 60 80 100
総合得点 筆記試験 小テスト 社会人基礎力 2018 平均(n=82) 2019 平均(n=65) 2020 平均(n=46)
得 点
成績評価
0 1 2 3 4 5
主体性 実行力 課題発見力 創造力 発信力 傾聴力 規律性
2018 平均(n=82) 2019 平均(n=65) 2020 平均(n=46)
レベ ル
社会人基礎力(学修態度)
栄養教育論(総合計-社会人)
相対度数
年度 30-39 40-49 50-59 60-69 70-79 80-89 90-
2018年度 0.00 0.04 0.15 0.20 0.24 0.28 0.10
2019年度 0.00 0.03 0.17 0.26 0.25 0.17 0.12
2020年度 0.00 0.00 0.00 0.07 0.25 0.41 0.27
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
30-39 40-49 50-59 60-69 70-79 80-89 90-
2018年度 2019年度 2020年度
相 対 度 数
学修評価=総合得点—社会人基礎力(点)
栄養教育論実習成績評価
年度 総合得点 筆記試験
(20%)
小テスト (20%)
レポート (30%)
成果発表 (10%)
学修態度
(10%) 主体性 実行力 課題発見
力 創造力 発信力 傾聴力 規律性
2018 平均(n=80) 76.8 15.7 12.3 24.5 17.3 7.0 3.2 2.8 2.6 2.5 2.1 2.9 3.5
SD 8.8 2.5 3.5 4.4 2.2 1.7 0.7 0.9 1.0 0.7 0.8 1.1 0.5
2019 平均(n=64) 78.1 15.7 15.6 24.3 14.6 8.0 3.7 3.2 2.7 2.9 3.2 2.9 3.7
SD 9.8 2.2 3.3 4.0 2.4 1.6 0.7 0.7 0.9 0.8 0.8 1.0 0.6
2020 平均(n=44) 74.5 12.7 14.5 25.4 15.1 6.8 2.6 3.3 2.6 2.7 1.8 2.4 3.5
SD 12.4 2.9 3.7 5.8 3.4 1.8 1.1 1.2 1.1 1.0 1.1 0.9 1.0
0 20 40 60 80 100
総合得点 筆記試験(20%) 小テスト(20%) レポート(30%) 成果発表(10%)学修態度(10%) 2018 平均(n=80) 2019 平均(n=64) 2020 平均(n=44)
得点
0 1 2 3 4 5
主体性 実行力 課題発見力 創造力 発信力 傾聴力 規律性
2018 平均(n=80) 2019 平均(n=64) 2020 平均(n=44)
得 点
学修態度
栄養教育論実習(総合得点-社会人)
相対度数
年度 40-49 50-59 60-69 70-79 80-89 90-
2018年度 0.04 0.07 0.32 0.49 0.07 0
2019年度 0.03 0.06 0.34 0.44 0.13 0
2020年度 0.09 0.07 0.25 0.41 0.14 0
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
40-49 50-59 60-69 70-79 80-89
2018年度 2019年度
2020年度 相
対 度 数
学修評価=総合得点—社会人基礎力
愛知学泉大学ティーチングポートフォリオ 2020 年度 7 授業科目に関連した教材開発
1. 学生は、学修内容を理解する時間の確保できる教材として、google Chrome マイドライブに毎週の学修内容をアップロードして授業に取り組むことがで きるようにした。マイドライブの授業内容は、学生のスマートフォンにアップロードする。授業は、これによりパワーポイント(PP)を使い授業展開している が、授業が進む中で学修内容をもう一度見返したい場合、学生は個別に見返すことが可能となった。(資料 7 スマホ 画面)
2. 栄養教育論と栄養教育論実習では、PCR シート(P(予習)、C(本時の授業)R(復習))を作成して、本時の授業の予習、復習を実施している。これにより 学修内容をどれだけ理解し、課題発見と課題解決ができたかについて、自己の学修成果を可視化することが可能となった。また、PCR シートの評価は、ルーブ リックを用い、全体評価と毎回実施するためのルーブリックで改善点を可視化することが可能となった。各章ごとに確認テストを実施、学生の解答の傾向を詳 しく調べ、それを元に誤答例や評価基準を作成して次週の授業で説明をしている。(資料 8 誤答例)
3. 管理栄養士国家試験ガイドラインに即した学修内容の強化を図るため本学と同様の学修課題を持つ他大学の栄養教育論を担当する教員と協働で以下の教 材を刊行している。
①栄養教育論 新版「ヘルス 21 栄養教育・栄養指導論」(第1版第 3 刷)医歯薬出版
②栄養教育論実習 栄養教育・栄養指導論 演習・実習 (初版第 4 刷発行)株式会社みらい 8 指導力向上のための取り組み
①FD 研修会を開催して、本学の教員方針の周知、社会人基礎力(学修態度)の育成している。
②FD 研修会を開催して 2018 年9月4日(火)、「学修行動特性評価の方法―担当科目の実践例―」をテーマに報告している。学修支援として PCR(予習・本時・
復習、社会人基礎力の育成)と PCR を評価するルーブリックについて提案している。
9 今後の目標
今後の社会は知識社会化を中心として形成され、この知識社会化は情報を蓄積して活用する段階から情報を加工して、創造性へと統合する段階へと展開され ると考えられる。したがって、この社会に対応するための能力として学修力、思考力、創造力、課題発見力、課題解決力を高める教育が必要となる。家政学部 では、教育目標として pisa 型学力・社会人基礎力を活用して、学生の学修力、思考力、創造力、課題発見力、課題解決力を高める教育を展開している。この 展開をさらに向上させる教育の実践を目標とする。以下にその具体的方法について記述する。
①予習において、学修内容の知識と内容を理解して本時の授業に臨む。本時の授業では、予習内容の復習を 90 分授業中の 45 分程度実施する。その後の 45 分 は、食と健康に関する社会の課題をテーマに課題を提示して、修得した知識を活用して課題発見と課題解決するために思考力、創造力を発揮できるよう教授す る。
②予習の知識の習得を小テストで確認する。これにより未修得知識を明確にすることができ、予習の復習をすることで知識の定着を図る。
③学修力は、社会人基礎力の主体性と実行力を発揮させ、予習への課題として教科書レベルと教科書以外からの知識の習得の学修行動を繰り返すことで育成す る。
④深い学びは思考力、創造力、課題発見力、課題解決力をさらに高める学修行動として、①の内容をグループディスカッションすることで発信力と傾聴力(質 問力)で育成する。
10 添付資料
資料 1 2020 年度シラバス
資料 2 卒業研究テーマおよび要旨 資料 3 PCR シート、評価ルーブリック 資料 4 資料 1 に同じ
資料 5 資料 1 に同じ 資料 6 資料 3 に同じ 資料 7 スマホ 画面 資料 8 誤答例