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臨床応用を志向したヘテロ環含有合成医薬品の創薬研究

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1 平成27年度 千葉科学大学 薬学研究科 博士論文要旨

臨床応用を志向したヘテロ環含有合成医薬品の創薬研究

Drug discovery and clinical application of the heterocyclic compounds

薬学専攻 溝井 健太 Kenta Mizoi

[目的]

創薬研究において重要な科学とは「科学的な情報に基づいて天然から有効な成分を分離し, 化学合成し, そ の誘導体や関連化合物の中からリード化合物を見出し, 臨床応用するために受容体や酵素との作用を考慮し ながら分子変換や修飾をする事により, 新しく副作用の少ない薬を求める. さらに, この物質の分子構造と それに由来する生物活性の関係について, 生命科学の情報に基づき, 薬の創製を目指す事」である. 従って

「医薬品創薬は有機化学だけでなく, 薬理学, 生化学, 毒性学, 薬物動態学, 製剤学, 基礎医学などが関与す る学際的な学問である点が特徴」である.1 本研究の目的は, 「有機化学」と「薬物動態学」の視点から臨床 に応用が可能な創薬研究を目指す事である.

一般に, ヘテロ環 (複素環) 化合物とは, 「2 種類或いはそれ以上の元素を環構成成分とする環状有機及び 無機化合物の総称」である.2 ヘテロ環化合物は, 核酸塩基やアミノ酸, ビタミンなどのヒトの生活に欠かせ ない化合物の構成成分となっている. そして, 現在臨床で使用されている医薬品においてもヘテロ環含有医 薬品が大部分を占めている. それらの合成医薬品は, 母核となる骨格に側鎖を導入したり, 化合物同士をカ ップリングさせたりする事で合成される. 従ってヘテロ環の化学について研究を行う事は, 臨床応用を目指 した創薬研究において有用であると考えられる.

臨床で使用されているヘテロ環の代表例としてインドールがあり, indometacin (NSAIDs) やpindolol (

受容体遮断薬) などの合成医薬品の部分構造として利用されている. インドールの化学において最も重要な ものはC3位に対する求電子置換反応である. 代表的なものはアルキル化, アシル化反応である. この様なイ ンドールの官能基化は, 医薬品やアルカロイドの合成過程において重要なステップである. Hamana &

Sugasawaは, boron-Lewis acid (B-LA) が効果的にニトリルを活性化し, 求電子試薬として種々の置換オレ

フィンと反応する事を見出した.3 本研究では, まず始めに Hamana & Sugasawa らの報告に基づいて B-LAとニトリルとの組み合わせがインドールのC3位に対してどの様な反応性を持ち, 有用な置換基導入法 に成り得るかを目的とし, 解明を試みた.

一方, 近年, 副作用の軽減やbioavailability (BA) の改善を目的とした, 医薬品のプロドラッグ化研究が盛 んに行われている. 例えば valaciclovir (抗ウイルス薬) は, 小腸からの吸収改善を目的としたプロドラッグ である. この様に, 極性基を修飾する事でBAを改善する事は可能である. そこで本研究ではBAの低いヘテ ロ環含有医薬品としてatorvastatin (脂質異常症薬) をリード化合物とした. ところで, 薬物代謝酵素である

carboxylesterase (CES) は, エステル型やアミド型プロドラッグの生体内変換において重要な役割を有して

いる.4 その知見を基に, CES で代謝活性化されるプロドラッグを合成し, 評価する事を考えた. 多くの論文 は販売されている医薬品についてCESの基質特異性を評価しているが, 置換基の違いによる評価はほとんど 成されていないため, プロドラッグ設計において, それらの知見も重要であると考えられる. 本研究では, 二 つ目の目的として小腸からの吸収後, 肝臓で代謝活性化を受けるプロドラッグの設計に役立つ情報を得るた めに, アトルバスタチンプロドラッグの置換基の違いによるCESの基質特異性について解明を試みた.

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2 [方法, 結果]

–3-Functionalized indoleの新規合成法の開発–

1) 3-Acylindoleの合成 PhBCl2 存 在 下 で, 様々な置換イ ンドール 1 と種々 のニトリル 2 とを 反応させた. イミ ニウム中間体 3 を 加水分解する事で アシル体 4を得た (Scheme 1, route A).

一つ目に, 求電子試薬であるニトリルは電子密度が低下すると, アシル体の収率が上昇する結果が得ら れた (entry 1, 2). 二つ目に, インドールの1位に電子供与基を有している場合 (entry 1) はアシル体が高 収率で得られたが, 電子求引基を有している場合 (entry 4) は反応が進行しなかった. 一方, 5位に電子求 引基を有している場合 (entry 7) はアシル体が高収率で得られたが, 電子供与基を有している場合 (entry 8) は低収率となった (Table 1).

2) 1-(1H-indol-3-yl)alkylamineの合成

PhBCl2存在下で, 様々な置換インドール1と種々のニトリル2とを反応させた. イミニウム中間体3を

NaBH3CNで還元した後, トリフルオロアセチル化を行い, アミン体5を得た (Scheme 1, route B).

Scheme 1. Syntheses of 3-acylindole (4) and 1-(1H-indol-3-yl)alkylamine (5)

Table 1. Synthesis of 3-acylindolea,b

(3)

3 アシル体と, それに対応するアミン体の収率には相関性が見られた (Table 2). 従って, このアシル化反 応及び還元反応は, 共通中間体3を経由している事が示唆された.

–Atorvastatinプロドラッグの合成と評価–

1) Atorvastatin esterの合成

アトルバスタチン6と第一級脂肪族アルコールにFischerエステル化反応を用いて, エステル体7a-fを

得た (Scheme 2). これらのアルコールは簡便に導入できた. しかし, それ以外のアルコールでは分子内の

縮合反応が優先し, ラクトン体7lが得られる結果となった.

そこで次に, メチルエステル7aを原料とし, アトルバスタチンのアセタール保護体8を合成した. この アセタール保護体8と種々のアルコールとを用いて, EDCによる縮合反応を行い, エステル体7g-kを得た

(Scheme 3). アトルバスタチンのジオール部位をアセタール保護し, EDCを用いる事でラクトン体7lの生

成を抑え, 目的のア ル コ ー ル を 導 入 す る 事 が 可 能 と な っ た.

Table 2. Synthesis of 1-(1H-indol-3-yl)alkylaminea,b

Scheme 2. Esterification of atorvastatin

Scheme 3. Synthesis of atorvastatin ester via an acetal-protected intermediate (8)

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4 2) アトルバスタチンプロドラッグのヒトミクロソーム存在下における代謝活性化能の評価

アトルバスタチンのエステル体 7 を 用 い て, human liver microsomes (HLM), 或いはhuman small intestine microsomes (HIM) 存在下で反応させ, HPLC を用いて加水分解活性を測定し

た (Scheme 4). その結果, アトルバスタチンエステル7は主にHLM存在下で代謝活性化を受けた. 特に, 第一級脂肪族エステル7a-eは置換基の炭素鎖の伸長に伴い, 加水分解活性が低下する結果が得られた. 一 方, 芳香族エステル7i-kはHLMのみならず, HIM存在下においても加水分解活性が高くなる結果が得ら れた (Figure 1).

次に, 加水分解活性の高かったメチルエステル 7a を基質とし, ヒトにおいて発現量の多い human

CES1b, human CES1c, human CES2, 或いは human AADAC 存在下での加水分解活性を測定した

(Scheme 4). その結果, メチルエステル7aはCES1特異的に代謝活性化を受けた (Figure 2).

[結論]

本研究の結果, PhBCl2がLewis酸として働き, ニトリルとインドールとがFriedel–Craftsタイプの反応を 起こす事を明らかにし, その最適条件の検討及び基質汎用性に関する調査を達成した.5 これにより, 同じ基 質から 2 通りの化合物を合成する経路が確立され, ニトリルの窒素原子を活かす事が可能となった. 本法は インドール含有医薬品の合成ツールとして, 今後利用される事が期待される.

また, アトルバスタチンエステルの置換基の違いによるHLM, HIM存在下での加水分解活性の変化が明ら かとなった. 更に, これらのエステルはCES1特異的に代謝活性化される事が明らかとなった.6 これにより, 小腸で代謝されずに肝臓で代謝活性化を受けるプロドラッグ医薬品を開発するための有用な結果が得られ た.

[引用文献]

1. 北泰行, 平岡哲夫, 創薬化学 –有機合成からのアプローチ–, 第1版, 東京化学同人, 2004, pp. 3–5.

2. 國枝武久, 松永朝文, 日比野俐, 前波勇, 村上泰興, ヘテロ環の化学 –医薬品の基礎–, 第1版, 化学同人, 2002, p. 1.

3. Hamana H., Sugasawa T. Chem. Lett. 1985, 14, 571–574.

4. Hosokawa M., Molecules 2008, 13, 412–431.

5. Mizoi K., Mashima Y., Kawashima Y., Takahashi M., Mimori S., Hosokawa M., Murakami Y., Hamana H. Chem. Pharm. Bull. 2015, 63 (7), 538–545.

6. Mizoi K., Takahashi M., Haba M., Hosokawa M. Bioorg. Med. Chem. Lett. 2016, 26 (3), 921–923.

Scheme 4. Hydrolysis reaction by microsomes or CESs

Figure 1. Enzyme activity assays of microsomes Figure 2. Enzyme activity assays of CESs

Referensi

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