• Tidak ada hasil yang ditemukan

複素関数論補遺

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2024

Membagikan "複素関数論補遺"

Copied!
17
0
0

Teks penuh

(1)

大阿久 俊則

1 複素数の数列と級数

αn C として(複素)数列 n} を考察する.

定義 1.1 αn C (n= 0,1,2, . . .)とする.

(1) 複素数列 n}α C に収束するとは,任意の正の実数 ε に対して,ある自然 数 N が存在して n N ならば n −α| < ε が成立することである.このとき

nlim→∞αn = α と表す.

(2) 複素数列 n}Cauchy列(基本列)であるとは,任意の正の実数 εに対してあ る自然数 N が存在して,n, m ≥N ならば n−αm| < ε が成り立つことである.

補題 1.1 複素数列n} が収束すれば,n} は有界である.すなわち,ある実数M 0 が存在して,任意の n についてn| ≤M が成立する.

証明: n} が複素数 α に収束するとすれば,ある自然数 N が存在して n N のとき

n−α|< 1,従って

n|= |(αn−α) +α| ≤ |αn−α|+|α|< |α|+ 1 (∀n ≥N) が成立する.よって

M = max{|α1|,|α2|, . . . ,|αN−1|, |α|+ 1} とおけばよい.□

命題 1.1 複素数列n} がある極限値に収束することとn} が Cauchy列であることと は同値である.

証明: αnα C に収束すると仮定すると,任意の正の実数 ε に対してある自然数 N が存在して,n≥N ならば n−α|< ε が成立する.よって m, n ≥N ならば

n−αm|= |(αn−α) + (α−αm)| ≤ |αn−α|+|α−αm| <2ε が成立するから n} は Cauchy列である.

1

(2)

逆に n} は Cauchy列であると仮定する.任意の正の実数 ε に対してある自然数 N が存在してn, m N ならば n−αm| < ε が成立する.αn = an+ibn (an, bn R)と おくと,|an−am| ≤ |αn−αm| かつ|bn−bm| ≤ |αn−αm| であるから,{an}{bn} は 共に実数のCauchy列である.実数列については収束することとCauchy列であることは 同値である(「連続と極限」)から,実数列 {an} はある a R に,実数列 {bn} はある b∈R に収束する.よって αn =an+ibnα:= a+bi に収束する.□

定義 1.2 αn C (n= 0,1,2, . . .)とする.

(1) 無限級数

k=0

αk が(ある複素数 S に)収束するとは,部分和の数列 Sn :=

n k=0

αk

S に収束することである.

(2) 無限級数

k=0

αk が絶対収束するとは,無限級数

k=0

k| が収束することである.

補題 1.2 無限級数

k=0

αk が収束すれば,数列 n} は 0 に収束する.

証明: 部分和を Sn とすると,数列 {Sn} は Cauchy列であるから,任意の正の実数 εに 対してある自然数 N が存在して,n, m N のとき |Sn−Sm| < ε が成立する.特に  n > N のとき

n|= |Sn−Sn1|< ε であるから n} は 0 に収束する.□

命題 1.2 絶対収束する無限級数は収束する.

証明: n} を複素数列として Sn =

n k=0

αk, Tn =

n k=0

k|

とおく.

n k=0

αk が絶対収束すると仮定すると,数列 {Tn} は Cauchy列であるから,任意 の正の実数 ε に対して,ある自然数 N が存在してn > m≥N のとき Tn−Tm < ε が成 立する.従って n > m≥N ならば

|Sn−Sm|=

n k=m+1

αk

n k=m+1

k|= Tn−Tm < ε

が成り立つ.従って {Sn} は Cauchy列であるから収束する.すなわち,無限級数

k=0

αk

は収束する.□

(3)

1.1 αを複素数とするとき,等比級数

k=0

αk が収束するための必要十分条件は|α| <1 であることである.また,|α|< 1 のとき,この等比級数は絶対収束する.証明)|α| <1 であればlimn→∞|α|n = 0 であるから,

Sn :=

n k=0

αk = 1−αn+1

1−α 1

1−α (n→ ∞)

である.一方,|α| ≥1 ならば n|= |α|n 1 であり,αn が 0 に収束しないから,無限 級数

k=0

αk は発散する.

命題 1.3 (d’Alembert の判定法) αn C かつ αn ̸= 0 (n = 0,1,2, . . .)として,r :=

nlim→∞

n+1|

n| が存在するかまたは r = であると仮定する.

(1) r < 1 ならば無限級数

k=0

αk は絶対収束する.

(2) r > 1 (r = の場合も含む)ならば無限級数

k=0

αk は発散する.

証明: (1) r < R < 1 をみたす実数 R がとれる.R−r > 0 であるから,収束の定義によ り,ある自然数 N があって,n≥N ならば

n+1|

n| −r

< R−r 2 が成立する.従って三角不等式により

n+1|

n| = n+1|

n| −r+r

n+1|

n| −r

+r < R−r

2 +r = R+r 2

が成立する.ここで m = (R+r)/2 とおけば m < R <1 であり,n ≥N のとき,

n| =N||αN+1|

N|

N+2|

N+1|· · · n|

n1| ≤ |αN|mnN

が成立する.そこでcn =N|mnN とおけば{cn}は公比 mの等比数列であるから

k=1

ck

は収束する.これと k| ≤ ck より,

k=1

αk は絶対収束する.

(2) 1 < r < とすると,r > R > 1 をみたす実数 R がとれる.r −R > 0 であるか ら,ある自然数 N があって,n≥N ならば

r− n+1|

n| n+1|

n| −r

< r−R 2

(4)

が成立する.従って

n+1|

n| > r−r−R

2 = R+r 2

が成立する.ここで m = (R+r)/2 とおけば m > R >1 であり,n ≥N のとき,

n| =N||αN+1|

N|

N+2|

N+1|· · · n|

n−1| ≥ |αN|mnN が成立する.従って n → ∞ のとき n| → ∞ となるから,

k=1

αk は収束しない.□

定義 1.3 複素数列 a0, a1, . . . と複素数 z0 に対して,無限級数

k=0

ak(z−z0)k (1)

のことを z0 を中心とするべき級数(power series) という.(「べき」の漢字は「冪」,略字 として「巾」を用いることもある.)べき級数(1)に対して

R:= sup

{|z−z0| z C,

k=0

ak(z−z0)k は収束する }

をその収束半径(radius of convergence)という.(右辺の集合が上に有界でないときは R=

とする.)R = 0 のときは z = z0 のときのみ収束する.R > 0 であることと (1)が収 束するようなz ̸= z0 が存在することとは同値である.R >0 のとき(1)を収束べき級数 (convergent power series)という.

命題 1.4 べき級数(1)の収束半径を R とする.複素数 z|z−z0| < R を満たすとき (1)は絶対収束し,|z−z0| > R ならば(1)は発散する.特に R= ならば,(1)は任意 の z C について絶対収束する.

証明: z0 = 0 としてよい.z C が |z| < R を満たすとする.収束半径 R の定義により

k=0

akz1k が収束し |z| < |z1| ≤ R を満たす複素数 z1 が存在する.このとき数列 {akz1k} は 0 に収束するので有界であるから,ある実数 M >0 があって|ak||z1|k ≤M が任意の k 0 について成立する.従って

|akzk|= |ak||z1|k (|z|

|z1| )k

≤M (|z|

|z1| )k

(∀k≥0)

が成立する.これと |z|< |z1| より

k=0

akzk は絶対収束することがわかる.

一方,|z| > R とすると R の定義により

k=0

akzk は収束しない.□

(5)

べき級数(1)の収束半径 R は正であるとする.|z−z0|< R のとき f(z) :=

k=0

ak(z−z0)k

と定義すれば,f(z) は開円板 U(z0;R) = {z C | |z−z0| < R} で定義された複素関数 である.

命題 1.5 複素数列 {ak}k0 について ak ̸= 0 (∀k)であり,かつR := lim

k→∞

|ak|

|ak+1| が存在 するかまたは R= であれば,べき級数

k=0

ak(z−z0)k の収束半径は R である.

証明: z0 = 0 としてよい.0 でない任意の複素数 z に対して

k→∞lim

|ak+1zk+1|

|akzk| =|z| lim

k→∞

|ak+1|

|ak| = |z|

RR= 0 のときは に発散)

が成立する.従って d’Alembert の判定法により,|z| < R ならば

k=0

ak|z|k は収束し,

|z|> R ならば発散する.以上によりべき級数(1) の収束半径はR である.□

1.2 lim

k→∞

k

k+ 1 = 1 であるから,べき級数

k=1

kzk の収束半径は 1 である.

定理 1.1 (べき級数の項別微分定理) べき級数f(z) :=

k=0

ak(z−z0)kの収束半径をR >0 とする.f(z) はU(z0;R) ={z C| |z−z0| < R} で正則であり,

f(z) =

k=1

kak(z−z0)k1

が任意の z∈U(z0;R) について成立する.この右辺のべき級数の収束半径も R である.

証明: z0 = 0としてよい.z∈U(0;R) を固定して.r = R− |z| >0, R1= R−r

2 とおく.

z|z|< r

2 を満たす複素数とする.このとき |z+ ∆z| ≤ |z|+|z|< R−r+r 2 = R1

かつ |z| = R−r < R1 が成立する.R1 < R より R1 < R2 < R を満たす実数 R2 をと れば,

k=0

|ak|R2k は収束するから,ある正の実数 M が存在して任意の k 0 について

|ak|R2k ≤M が成立する.

f(z+ ∆z)−f(z)

z =

k=0

ak

(z+ ∆z)k−zk

z

=

k=1

ak{(z+ ∆z)k1+z(z+ ∆z)k2+· · ·+zk1}

(6)

ここで gk(∆z) = (z+ ∆z)k1+z(z+ ∆z)k2+· · ·+zk1 とおくと,

|akgk(∆z)| ≤ |ak|{

|z+ ∆z|k−1+|z||z+ ∆z|k−2+· · ·+|z|k−1}

≤ |ak|kRk−11 = k|ak|Rk−12 (R1

R2

)k1

M R2

k (R1

R2

)k1

が成立する.べき級数

k=1

kzk1 の収束半径は 1 であるから,無限級数

k=1

k (R1

R2

)k1

は収束する.従って |z|< r

2 のとき

k=1

akgk(∆z) は絶対収束する.特に∆z = 0とすれ ば

k=1

akgk(0) =

k=1

kakzk1 も絶対収束する.

さて,ε を任意の正の実数とする.

k=1

k (R1

R2 )k−1

は収束するから,ある自然数 K が 存在して

k=K+1

k (R1

R2

)k1

=

k=0

k (R1

R2

)k1

k=K+1

k (R1

R2

)k1

< R2

が成立する.一方 limz0gk(∆z) =kzk1 であるから,ある正の実数δ < r

2 が存在して,

|z| < δ ならば任意の k= 1,2, . . . , K について

|akg(∆z)−kakzk1| < ε K が成立する.以上により |z|< δ ならば

f(z+ ∆z)−f(z)

z

k=1

kakzk1 =

k=1

{akgk(∆z)−kakzk1}

K k=1

|akgk(∆z)−kakzk1|+

k=K+1

{|akgk(∆z)|+k|akzk1|}

K k=1

ε

K + 2M R2

k=K+1

k (R1

R2

)k1

< K ε

K + 2M R2

R2

=ε+ 2ε= 3ε

を得る.ゆえに f(z) は U(0;R) で正則であり,f(z) =

k=1

kakzk1 が成立する.特に f(z) は U(0;R) で収束するから f(z) の収束半径は R 以上である.一方,

|akzk| ≤ |z||kakzk1| (∀k 1)

であるから,f(z)(を表すべき級数)が収束すれば f(z) も収束する.よってf(z) の収 束半径は f(z) の収束半径 R以下である.以上により f(z) の収束半径は R であること が示された.□

(7)

この定理の f(z) を表すべき級数のことをべき級数 f(z) の項別微分(termwise differ- entiation)という.

1.1 べき級数 f(z) :=

k=0

ak(z−z0)k の収束半径を R > 0 とすると f(z) は U(z0;R) において複素微分の意味で何回でも微分可能であり,任意の自然数 n について,n次導 関数 f(n)(z) は U(z0;R) で正則である.そして f(n)(z0) =n!an が任意の非負整数 n につ いて成立する.

証明: 定理1.1を f(z) の導関数に次々に適用して n回項別微分すれば,

f(n)(z) =

k=n

k(k−1)· · ·(k−n+ 1)ak(z−z0)nk

が任意のz ∈U(z0;R) について成立することがわかる.z = 0を代入してf(n)(z0) =n!an を得る.□

1.3 f(z) :=

k=0

zk = 1

1−z の収束半径は1 であるから, U(0; 1) において 1

(1−z)2 = f(z) =

k=1

kzk1

が成立する.同様して n を1以上の自然数とするとき,f(z) を n回微分して n!

(1−z)n+1 = f(n)(z) =

k=n

k(k−1)· · ·(k−n+ 1)zkn (|z| <1) を得る.この右辺のべき級数の収束半径も 1 である.

問題 1.1 次のべき級数の収束半径を求めよ.

(1)

k=1

2k

k2zk (2)

k=1

k(1 +i)kzk (3)

k=0

k!

(2k)!zk (4)

k=1

k!

kkzk

問題 1.2 f(z) =

k=1

1

kzk, g(z) =

k=0

zk とおく.

(1) f(z) の右辺のべき級数の収束半径は 1 であることを示せ.

(2) f(z) =g(z) が任意の z ∈U(0; 1) について成立することを示せ.

(3) f(z) = Log (1−z) が任意の z U(0; 1) について成立することを示せ.ここで,

Logz は C\ {x |x R, x 0} における logz の主値を表す.(主値が定義できるこ とも示すこと.)(ヒント:両辺の導関数を考察せよ.)

(8)

2 一致の定理

命題 2.1 f(z) を C の開集合 D で正則な関数として z0 D とする.任意の非負整数 k = 0,1,2,3, . . . について f(k)(z0) = 0 であれば,ある正の実数 R が存在して,任意の z ∈U(z0;R) について f(z) = 0 が成立する.

証明: U(z0;R) D となるような正の実数 R をとる(D は開集合だからこのような R は存在する).定理6.1と仮定によって,任意の U(z0;R) に対して

f(z) =

k=0

1

k!f(k)(z0)(z−z0)k = 0 となる.□

定理 2.1 (一致の定理) f(z) を C の(弧状)連結開集合 D で正則な関数とする.SD の部分集合とする.ある z0 DS の集積点である,すなわち,任意の正の実数 ε に対して0< |ζ−z0| < εを満たす ζ ∈S が存在すると仮定する.このとき,f(ζ) = 0 が 任意の ζ ∈S について成立すれば,f(z) = 0 がすべての z∈D について成立する.

証明: z0 ∈DS の集積点とする.f(k)(z0) = 0 が任意の非負整数 k について成立する ことを示そう.もしそうでなかったとすると,

f(z0) =· · ·=f(m1)(z0) = 0, f(m)(z0) ̸= 0

となるような非負整数mが存在する.m≥1 ならばz0f(z)のm位の零点であるから,

f(z) = (z−z0)mg(z), g(z0)̸= 0

を満たす U(z0;r) (∃r > 0)で正則な関数 g(z) が存在する.m = 0 のときは g(z) = f(z) とすればよい.g(z) は z0 で連続であるから,ある正の実数 δ r が存在して任意の z U(z0;δ) について g(z) ̸= 0 が成立する.従って複素数 z が 0 < |z−z0| < δ を満 たせば f(z) ̸= 0 である.一方 z0S の集積点であるから0 < −z0| < δ を満たす ζ ∈S が存在し,仮定により f(ζ) = 0 となる.これは矛盾であるから最初の主張が示さ れた.従って命題2.1により,RU(z0;R) ⊂D を満たすような正の実数とすれば,任 意の z∈U(z0;R) についてf(z) = 0 が成立する.

C

U(z0;R) D z0

z1

ϕ(t0)

S

U(ϕ(t0);R0)

(9)

z1D の任意の点とする.D は弧状連結であるから,D 内の曲線 C :z =φ(t) (a≤t≤b)

であって φ(a) = z0 かつ φ(b) = z1 であるようなものが存在する.f(z) = 0 という性質 が曲線C に沿って伝わることを示す.実数の区間 [a, b] の部分集合 I

I ={t∈[a, b]| f(φ(s)) = 0 (0 ≤ ∀s≤t)}

によって定義し t0 = supI とおく.前半の議論より ta に十分近いときは f(φ(t)) = 0 であるから t0> a である.t0= b であることを背理法で示そう.t0 < b と仮定する.

S0 =(t) |a≤t < t0}

とおくと φ(t0) はS0 の集積点であり,任意のζ ∈S0に対して f(ζ) = 0が成立する.従っ て前半の議論によりf(k)(φ(t0)) = 0 がすべての非負整数 k について成立し,よって R0

U(φ(t0);R0) ⊂D を満たすような正の実数とすれば,任意の z ∈U(φ(t0);R0) につい

f(z) = 0 が成立する.φ(t) は連続関数であるから,ある正の実数 δ が存在して

t0−δ < t < t0+δ ⇒ |φ(t)−φ(t0)|< R0

が成立する.これとt0の定義によりa≤s < t0+δ を満たす任意のsについてf(φ(s)) = 0 が成立することになる.これは t0 の定義に反する.従って t0 = b であるからf(z1) = f(φ(b)) = f(φ(t0)) = 0 を得る.z1∈D は任意であったから定理の主張が示された.□

f(z), g(z)が連結開集合Dで正則であるとき,f(z)−g(z)に対して一致の定理を適用す ることができる.たとえば,D を Cの連結開集合であって D∩R̸= であるようなもの として,f(z) とg(z) を D で正則な関数とする.もし f(x) =g(x), すなわちf(x)−g(x) が任意の x D∩R について成立すれば,f(z)−g(z) = 0 すなわちf(z) = g(z) が任 意の z ∈D について成立する.あるいは,さらに条件をゆるめて f(x) =g(x) が任意の D∩Q について成立すれば同じ結論が成立する(Q は有理数全体の集合).実際 D が開 集合であることから D R は R のある開区間 I = (a, b) (a < b) を含み,I の任意の点 はI Qの集積点となるからf(z)−g(z) に一致の定理を適用すればよい.

これから,たとえば C で正則な関数 f(z) であって,R のある開区間 I に属する任意 の実数(有理数としてもよい)x に対して f(x) =ex となるようなものは,2章で定義し た f(z) =ez しかないことがわかる.

2.1 f(z) を C の連結開集合 D で正則な関数であって定数関数ではないものとする.

z0 Df(z) の零点,すなわち f(z0) = 0 であるとすると,ある正の実数 ε が存在し て,0 < |z−z0| < ε ならば f(z) ̸= 0 である.この事実を,「定数でない正則関数の零点 は孤立している」という.

証明: 結論を否定すると,任意の自然数n に対して0< |zn−z0|< 1/n かつf(zn) = 0を 満たす zn ∈D が存在することになる.このとき S ={zn | n= 1,2,3, . . .} とおけば,z0

S の集積点だから一致の定理により f(z) は D で恒等的に 0 となり仮定に反する.□

(10)

命題 2.2 D を C の連結開集合とする.f(z) と g(z) が D で正則であり f(z)g(z) が D で恒等的に 0 ならば,f(z) または g(z) の少なくとも一方は D で恒等的に 0 である.(す なわち,D で正則な関数の全体が和と積についてなす環は整域である.)

証明: f(z)は D で恒等的に 0ではないとすると,f(z0)̸= 0 を満たすz0 ∈D が存在する.

f(z)は連続であるから,ある正の実数r が存在してf(z)̸= 0が任意のz ∈U(z0;r)につい て成立する.仮定よりf(z)g(z) = 0 が任意の z∈D について成立するから,z ∈U(z0;r) ならば f(z) ̸= 0 より g(z) = 0 でなければならない.U(z0;r) は D内に集積点を持つ (U(z0;r) の各点がその集積点である)から,一致の定理によって,g(z) = 0 がすべての z ∈D について成立する.□

3 べき乗関数とその積分

x が正の実数でaが実数のとき,xa は正の実数であるから対数をとるとlogxa =alogx となる.従ってxa = exp(alogx)と表せる.そこで,一般にαを複素数の定数,zをC\{0} に属する複素数の変数とするとき

zα = exp(αlogz)

と定義する.logz= log|z|+iargz は C\ {0} では多価関数となり,(α が整数でなけれ ば)exp(αlogz) の値を1つに決めることができない.そこで,たとえば D+ = C\ {x R| x 0} においては,−π < argz < π によって Logz = logz を定めればexp(αLogz) の値を一つに決めることができる.これを D+ における zα の主値または主枝という.特 に x が正の実数のときは x D+ であり Logx = logx は通常の対数(実数)であるか ら,α が実数ならば xα (の D+ における主値)は実数値をとる.正則関数の合成関数と して zα の主値は D+ で正則である.

また,D = C\ {x R|x 0} において0 <argz < 2π によって Logz = logz の値 を決めたときのexp(αLogz) のことを zαD における主値または主枝という.これは D で正則な関数である.

3.1 D+ = C\ {x∈R|x 0} における z12 の主値を f(z) = exp (1

2Logz )

とすると,

f(2) = exp (1

2Log 2 )

= exp (1

2log 2 )

= exp(log

2) =

2, (log 2 は通常の実数の対数)

f(i) = exp (1

2Logi )

= exp (1

2 π 2i

)

= cosπ

4 +isinπ

4 = 1 +i

2

D =C\ {x R|x 0} における z12 の主値を g(z) = exp (1

2Logz )

とすると,

g(1) = exp (1

2Log (1) )

= exp (1

2πi )

= cosπ

2 +isinπ 2 = i

(11)

3.2 D = C\ {x∈R|x 0} における zi の主値を f(z) = exp(iLogz) とすると,

f(2) = exp(iLog 2) = exp(ilog 2) = cos log 2 +isin log 2, f(1) = exp(iLog (1)) = exp(i·πi) =eπ

べき乗関数の主値に対しては,たとえば zαβ = (zα)β など実数のときに成立する等式は 必ずしも成立するとは限らないので注意が必要である.

命題 3.1 一般に複素数 α に対して,zαD+ = C\ {x R | x 0} またはD = C\ {x R| x≥0} における主値を表すこととすると次が成立する.

(1) z ∈D+ または z∈D のとき zαzβ =zα+β. 特に (zα)1= zα. (2) n を整数とすると,z ∈D+ または z∈D のとき(zα)n = z. (3) zαD+ および D で正則であり d

dzzα= αzα1 が成立する.

証明: (1) 複素数の指数関数の性質より

zαzβ = exp(αLogz) exp(βLogz) = exp(αLogz+βLogz) = exp((α+β)Logz) =zα+β 特にzαzα= z0 = exp(0) = 1 より zα= (zα)1 が従う.

(2) n >0 のときは(1)を用いて,

(zα)n = z| {z }α· · ·zα

n

= zα+···+α = z

n <0 のときはこの式が n−n として成立するから(1)より (zα)n = 1

(zα)n = 1

z = z n= 0 のときは z0 = 1 だから成立する.

(3) 正則関数の合成関数に対する微分の公式と d

dzLogz = 1 z より d

dzzα = d

dz exp(αLogz) = α

z exp(αLogz) =αz1zα =αzα1

定理 3.1 (一般2項定理) α を複素数の定数として,zαD+ = C\ {x R|x 0} に おけるべき乗関数の主値とすると単位円板 U(0; 1) ={z C| |z|< 1} において

(1 +z)α =

n=0

(α n

) zn,

(α n

)

:= α(α−1)· · ·(α−n+ 1) n!

とTaylor展開される.

(α n

)

を一般2項係数という.

(12)

証明: f(z) = (1 +z)αU := C\ {x R| x ≤ −1} で正則であるから,特に単位円板 U(0; 1)で正則である.f(n)(z) =α(α−1)· · ·(α−n+ 1)(1 +z)αn であるから,定理10.1 により U(0; 1) において

f(z) =

n=0

f(n)(0) n! zn =

n=0

α(α−1). . .(α−n+ 1)

n! zn

が成立する.□

べき乗関数を含む広義積分の計算をしよう.

3.3 a1 < a < 1 かつ a ̸= 0 を満たす実数として

0

xa

x2+ 1dx の値を求めよ う.zαD = C\ {x R| x 0} における主値としてf(z) = zα

z2+ 1 とおく.R >1, 0 < ε <1, 0< δ < π として,

CR,δ : z= Reit (δ ≤t≤2π −δ), Cε,δ :z = εeit (δ ≤t≤2π−δ)

とする.CR,δ, 「Re−δiεe−δi を結ぶ線分」,−Cε,δ, 「εeδiReδi を結ぶ線分」をつな いでできる閉曲線を CR,ε,δ と表す.

−R

CR,ε,δ CR,δ

−Cε,δ C1

−C2

−ε i

−i

δ →0

−R

CR,ε,0

−ε i

−i

CR,ε,δ は星形開集合 D に含まれるから留数定理により

CR,ε,δ

f(z)dz = 2πiResz=if(z) + 2πiResz=if(z) = 2πiia

2i + 2πi(−i)a

2i

= πia−π(−i)a =πexp (πi

2 a

)−πexp (3πi

2 a )

を得る(−i の偏角は 3

2π であることに注意).一方,εeδiReδi を結ぶ線分を C1 とお き,εeδiReδi を結ぶ線分を C2 とおくと,向きを考慮して

CR,ε,δ

f(z)dz =

CR,δ

f(z)dz−

Cε,δ

f(z)dz+

C1

f(z)dz

C2

f(z)dz

(13)

が成立する.δ 0, R→ ∞, ε→0 としたときの,右辺の各項の振る舞いを考察しよう.

まず z ∈D のとき|za| = |exp(aLogz)| = exp(Re (aLogz)) = exp(alog|z|) = |z|a であ ることと |z2+ 1| ≥ ||z|21| に注意すると a < 1 より

CR,δ

f(z)dz

2(π−δ)R Ra

R21 2π Ra1 1 1 R2

−→ 0 (R −→ ∞)

を得る.また a >−1 より

Cε,δ

f(z)dz

2(π−δ)ε εa

1−ε2 2πεa+1

1−ε2−→0 (ε−→ 0) も成立する.次にパラメータ表示

C1 : z =teδi (ε≤t≤R), C2 : z =teδi (ε≤t≤R) を用いて,

C1

f(z)dz−

C2

f(z)dz =

R ε

(teδi)a

(teδi)2+ 1eδidt−

R ε

(teδi)a

(teδi)2+ 1eδidt

ここで D に属する複素数の偏角は 0 と 2π の間であるからarg(teδi) = δ, arg(te−δi) = 2π −δ であることに注意すると,δ 0 のとき

(teδi)a = exp(aLog (teδi)) = exp(alogt+aδi) −→exp(alogt) =ta

(teδi)a = exp(aLog (teδi)) = exp(alogt+a(2π −δ)i))−→ exp(alogt+ 2πia) =e2πiata となるから,δ 0 とすると

C1

f(z)dz−

C2

f(z)dz −→

R ε

ta

t2+ 1dt−

R ε

e2πiata

t2+ 1 dt= (1−e2πia)

R ε

ta t2+ 1dt ここで R→ ∞, ε→0 として以上をまとめると

0

ta

t2+ 1dt= lim

R→∞0

R ε

ta

t2+ 1dt = 1 1−e2πia

( πexp

(πi 2 a

)−πexp (3πi

2 a ))

= πexp (πi

2 a

) 1−eπia

1−e2πia =πexp (πi

2 a

) 1−eπia (1−eπia)(1 +eπia)

= πexp (πi

2 a ) 1

1 +eπia = π

exp (πi

2 a )

+ exp (−πi

2 a

) = π 2 cosπ

2a 問題 3.1 次のべき乗のD =C\ {x R|x 0} における主値を求めよ.

(1) ( 1)

13

(2) i

13

(3) ( i)

13

(4) i

i

問題 3.2 (1−z)12 の主値の z = 0 におけるTaylor展開を求めよ.

問題 3.3

0

√x

x3+ 1dx の値を求めよ.

(14)

4 Riemann 球面上の正則関数と有理形関数

Riemann球面 C = C∪ {∞} において正則関数や有理形関数を考察しよう.Riemann

球面は1次元複素射影空間とも呼ばれ,P1(C) とも表される.

C の2つの開集合 U = C とV = (C\ {0})∪ {∞} に着目する.V は複素数平面から 0 を除いて無限遠点 を加えた集合である.立体射影によってC を2次元球面 S2 と同一 視すると.US2 から北極 N を除いた集合であり,VS2 から南極 S を除いた集合 である.

V からCへの写像 φw =φ(z) =z1 (z∈V) によって定義する.ただしφ() = 0 とする.φV から C への全単射である.w平面 Cにおいて w = 0 は z = に対応 すると考えることができる.(Reimann球面は1次元複素多様体と呼ばれるものの一つで あり,U, V は Cの座標近傍と呼ばれる.)U ∩V =C\ {0} である.

f(z) があるR >0 に対して{z∈C| |z|> R} で正則であるとき,無限遠点 f(z) の孤立特異点であるという.g(w) =f

(1 w

)

とおくとg(w)は 0< |w|< 1

R で正則である.

w = 0 が g(w) の除去可能特異点あるいは m位の極であるとき,z = f(z) の除去 可能特異点あるいは m位の極であるという.特に z =f(z) の除去可能特異点であ るとき,f(z) は z = で正則であるという.

定理 4.1 f(z) が Riemann球面全体で(すなわち Cおよび で)正則ならば f(z)は定 数関数である.

証明: f(z) は C で正則だから,

f(z) =

n=0

anzn (∀z C) とTaylor展開できる.このとき

g(w) :=f (1

w )

=a0+

n=1

anwn

g(w) の w = 0 における Laurent展開であるが,仮定により w = 0 は除去可能特異点 であるから,任意の n≥1 に対して an = 0 でなければならない.従って f(z) =a0 とな り f(z) は定数関数である.□

f(z) が C で有理形であるとは,任意の z0 C について,f(z) が z0 の近傍で正則で あるか z0f(z) の極であることと定義する.このとき特に z = f(z) の除去可能 特異点または極である.

定理 4.2 Riemann球面 C における有理形関数は有理関数である.

証明:極は孤立しているから,f(z) の Cにおける極の集合は集積点を持たない.Riemann 球面は球面 S2 に同相であるからコンパクト集合であり,C の無限部分集合は集積点を持

(15)

つ.従って f(z) の極は有限個しかない.それらのうち とは異なるものを z1, . . . , zm

とし,zk における f(z) の Laurent展開の主要部を gk(z) とする.このとき g(z) :=f(z)−g1(z)− · · · −gm(z)

は C で正則であるから C において

g(z) =

n=0

bnzn

という形にTaylor展開できる.このとき g

(1 w

)

=b0+

n=1

bnwn

w = 0 における Laurent展開であるが w = 0 は g (1

w )

の高々極であるから,g (1

w ) は w の有理関数である.従って g(z) は z の有理関数である.z1, . . . , zm は極であるから g1(z), . . . , gm(z) も有理関数である.以上により f(z) は有理関数である.□

C で定義された有理形関数 f(z) について,極での値を と定義すれば f(z) は C か ら C への写像と見なすことができる.

定理 4.3 C における有理形関数 f(z) から定まる C から C への写像が全単射であるた めの必要十分条件はf(z) が1次分数変換であることである.

証明: 1次分数変換は C から C への全単射であることは4章で示したから,有理形関 数 f(z) が C からC への全単射であると仮定して f(z) が1次分数変換であることを示 せばよい.定理4.2により f(z) は有理関数である.f() = と仮定しても一般性を 失わない.実際,f() = γ ̸= としてg(z) = 1

f(z)−γ とおくと g() = であり,

φ(w) = 1

w−γ は1次分数変換であるから,g = φ◦ f も C から C への全単射である.

従って g(z) が1次分数変換であることが示されればf = φ1◦g も1次分数変換である ことがわかる.

そこで,f() = と仮定する.f は単射であるから z C のとき f(z)C であり,

f(z)は Cに極を持たない.有理関数f(z)の分母がもし 1次以上であれば代数学の基本定 理により分母の値が 0になるような複素数が存在するから f の値は となる.以上によ り f(z) は多項式でなければならないことがわかる.f(z) = 0 を満たす複素数はただ一つ であるから,それを α とすると,ある c∈C\ {0} と自然数 n があってf(z) =c(z−α)n と表される.

ここで,n 2 と仮定する.ζ = exp (2πi

n )

とおいて,α と異なる複素数 z1 に対して z2−α= ζ(z1−α) すなわちz2 = ζ(z1−α) +α によって z2 を定めるとz1 ̸=z2 かつ

f(z2) =n(z1−α)n = c(z1−α)n = f(z1)

Referensi

Dokumen terkait

Cの開集合Ω上で定義された正則関数f: Ω→Cの実部uと虚部 vが Laplace方程式 uxx+uyy = 0, vxx+vyy= 0 を満たすことを示せ。uとv がC2 級であることは認めて良い。 後で一般に正則関数は冪級数展開出来ることを証明するので、その系としてuと v は C∞ 級であることが

本日の内容・連絡事項 前回紹介した一致の定理 定理 21.9 の証明を解説する。 宿題 10 の解説を行う。 円環領域で正則な関数はLaurent展開できる、という定理を紹介し、簡単 な例を説明する。その定理を用いて孤立特異点の留数が定義できる 次回 授業。それ以降、「複素関数」の最後まで、留数定理とその応用が話題の 中心となる。講義ノート [1] の

3.14.3 同じ強さ反対向きの渦の対 等しい強さを持ち、回転の向きが反対の点渦をz =a,−aに置いて重ね 合わせた流れの複素速度ポテンシャルは fz :=iκlogz−a z+a... 3.14.5 2 重湧き出し doublet 同じ強さの湧き出し・吸い込み対の流れの複素速度ポテンシャルは fz

さらに ε, N の取り方が x に依存せず14.4が成り 立つ場合, 関数列 fnxは fxに一様収束するという.. 一様収束の概念は関数列の級数 ∑∞ k=1

注意 24.9 つづき 3 続き cの⇒の証明には準備例えば Riemannの除去可能特異点定理 が必要であるそれはこの科目の最後の頃の講義で説明する。それが出来 れば、a, b, cの⇐は一斉に証明できる。 4 真性特異点という言葉は、孤立特異点でない場合にも使われる。ここの条 件が成り立つ場合は「孤立真性特異点とは」と呼ぶ方が紛れがないかもし れない。

Mathematica の勧め 現象数理学科 Mac にインストールされている Mathematica は、数式処理系と 呼ばれるソフトウェアである。プログラミング言語処理系の一種でもあるが、多 くのプログラミング言語 例えば C, Python, MATLAB, … は、数値計算はでき ても数式の計算はできない。

このlogとLog−zの間には Log−z = logz −iπ という関係があるa。 Y を定義するためには、差が等しければよいので−2πi1 Log−zの代わりに −2πi1 logz を用いることも可能である。しかし、logの説明が面倒なためかLog はただ単に「主値」と言えば済む、Log−zを使うことが多いようである。 a実際、z=reiθ

この式に慣れるべき!加法定理よりは指数法則の方が楽だし 図形的に把握することを勧める 次のスライド。 注意 3.2 教育的指導 eiθ を見ると、ほとんど反射的に5を使って、cos, sinで表現して計算する人が毎年 かなりの数いるが、複素指数関数で表現できているものは、たいていの場合は、複素指数 関数のままで計算する方が便利である。いつもcos,