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観光システムにおける 世界遺産登録の役割と機能

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Academic year: 2025

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卒業論文

観光システムにおける 世界遺産登録の役割と機能

文学部人文学科人間科学コース

社会学・地域福祉社会学専攻

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要約

近年、貴重な文化財や自然を保全し、その価値を共有することが目的であるはずの世界 遺産が、登録後に観光地としての性格を強めていくにつれて、観光客の急増や環境破壊な どさまざまな問題を抱えていることがわかってきた。今、各地の世界遺産が遺産の保護と 観光利用のバランスに悩まされている。本論文は「世界遺産観光地においてこのようなジ レンマが起きるのはなぜか」という問題意識に端を発し、世界遺産登録が観光というシス テムの中でどのような機能と役割を果たしているのかを考察している。

  これに先立って、まず第1章では観光の歴史的発展過程についてふれ、今日において観 光の支配的形態であり、本論で主に分析の対象とするマス・ツーリズムの発生と特徴につ いてまとめている。さらに社会学・人類学的な視点から、観光をすることがどのような意 味をもつのかにも言及している。次にこれまでの観光研究において観光がどのように評価 されてきたかを整理した。初期には「富をもたらすもの」として特に発展途上国で擁護さ れてきた観光であるが、すぐにホスト社会にあたえる文化社会的・環境的な負のインパク トが認識され始め、現在ではこういった影響を改善するためにも、観光に関するより体系 的な知識を獲得することが観光研究において求められている。

  第2章では、観光現象をより体系的にとらえるため、観光システムという概念を紹介し ている。ここではまず先行研究を参考に、ミクロな視点から、観光を構成する3要素「ゲ スト・ホスト・ブローカー」の存在を整理した。さらにマクロな概念として、「観光」をそ れらの諸要素が相互に作用しあう「システム」としてとらえる観光システムモデルを示し ている。さらに、観光システムモデルを念頭においた上で、要素間の関係に焦点を当てた 先行研究の視点を整理する。それらの視点は、ゲスト(観光行為者)単体の考察、ホスト

―ゲスト2要素間の対立・相互作用の視点、ブローカーを含めた3要素間の不均衡な力の 構造に注目した全体的な構造レベルの視点、の3つに分けられる。

第 3 章では、世界遺産とは何か、その発生過程や理念、しくみなどについて概観した。

世界遺産と観光は深い関係があるといわれているにもかかわらず、それに関する研究はま だ少ない。そこで世界遺産登録とそれにまつわる現象を、観光システムの中で議論するた めに、新たなシステムモデルを提示した。新たな観光システムモデルでは、「世界遺産登録 が、観光の従来の構成要素に加えて、第4の要素として何らかの影響を与えている」とい うことが前提になっている。ここで筆者独自の問題設定として、「一度世界遺産に登録され

(3)

ると、観光システムにどのような影響を与えるか」という問いを設定した。

これらの仮説を検証するために、第4章・第5章では、各地の世界遺産観光地で報告さ れている事例を研究・考察している。第4章では、白神山地、屋久島、ガラパゴスの3つ の自然遺産と、白川郷・五箇山の合掌造り集落、プラハ歴史地区の2つの文化遺産を事例 として取り上げ、世界遺産を所有する地域において起きている、保全か観光利用かという さまざまな葛藤の形を具体的に取り上げている。続く5章ではまず、世界遺産のもつ価値 の多様性を指摘し、その価値を「生活利用価値」、「観光利用価値・非観光利用価値」、「保 全価値」に分類した。そして人によって享受できる価値が異なる、という点に注目して、

具体的にどの価値とどの価値が対立しているのかを分析、さらに類型化した。すると、対 立は、単純に構成要素間の対立ではなく、構成要素内部でも起きていることがわかった。

また、対立する価値は両立が難しく、実際にはどれかが阻害されているケースが多いこと がわかった。なかでも、ゲストの価値がホストの価値に対して優勢であるパターンが多く、

それが過剰な観光利用を招き、ホスト社会の負担になっていることもわかってきた。

一連の分析を通して明らかになったことは、観光システムにおける世界遺産登録は、保 全へのゴールではなく、ホスト社会にとってむしろさまざまな葛藤への始点となってしま うおそれがある、ということであった。最後は、このような事態を改善するためには、構 成要素間の相互理解のもとに、複数の対立する価値を共存させ、均衡を保つ努力を重ねる ことが重要な課題となるだろうことを示して本論をとじた。

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目次

序章・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

第1章 観光の歴史と観光研究の成果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

1.1 近代観光の発生と展開  1

1.1.1 観光の歴史的変遷  1

1.1.2 マス・ツーリズム(mass tourism)の起源と特徴  3

1.1.3 観光の意味―儀礼的行為としての観光  4

1.1.4 本論文における観光の定義  6

1.2 観光研究の時系列的展開・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 1.2.1 擁護の土台  6 

1.2.2 警告の土台  7  1.2.3 適正の土台  7  1.2.4 知識の土台  8

第2章  観光システムモデルと関連研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 2.1 観光の構成要素・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

2.1.1 ゲスト(ゲスト社会)  9    2.1.2 ホスト(ホスト社会)  9  2.1.3 ブローカー  10

2.2 観光システムモデル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 2.3 観光システムモデルにおける諸研究の視点・・・・・・・・・・・・・・・・・10

2.3.1 ゲスト単体の考察  11

2.3.1.1 Cohenの役割行為理論  11

2.3.2 ホスト―ゲストの2要素間の相互作用関係  12

      2.3.2.1 イマニュエル・デュカのホスト―ゲストの接触状況  13 2.3.2.2 UNESCOの見解  13

      2.3.2.3  ドクシーのイラダチ度モデル  13

2.3.2.4 バトラーのホスト―ゲスト関係の類型化モデル  13

2.3.2.5 スミスの観光者類型論  14

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2.3.2.6 デモンストレーション効果(負の効果)  15       2.3.2.7 正の効果  16

2.3.3 観光システムの不平等な構造(ホスト―ゲスト―ブローカ3要素間の不均等な力関

係)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 2.3.3.1  ブリトンの囲い込み観光モデル  17

2.3.3.2  マシューズのネオ植民地主義・新帝国主義論  18

2.4 文化の商品化にかんする議論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19

第3章  世界遺産観光地における新しい観光システムモデル・・・・・・・・・・・ 20 3.1 世界遺産とは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

3.1.1  世界遺産の起源  20

  3.1.2  世界遺産条約の理念と目的  20   3.1.3  認定の流れ  21

3.1.4  登録基準  21

  3.1.5  世界遺産基金(WHF: World Heritage Fund)  23   3.1.6  遺産の保護と所有権について  23

3.1.7 登録数の地域格差  24

3.2 観光と世界遺産・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27

3.2.1 世界遺産は観光資源化しやすいという性質  27

3.2.2 本論文の問題設定と新しいシステムモデル―第4の要素としての世界遺産  28

第4章  事例研究―遺産の保護と利用をめぐる対立・・・・・・・・・・・・・・・ 29 4.1  白神山地の事例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29

  4.1.1  保護と利用をめぐる県民の対立  29

4.1.2  入山者増加とその弊害  30

4.2  屋久島の事例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31

4.2.1  観光客の増加とキャパシティ不足の問題  31

4.2.2  保護よりも利用を促進してしまう予算体制と政策  32

4.3  ガラパゴスの事例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33

4.3.1  遺産保全と地域住民の利害とのバランス  33

(6)

4.4  白川郷・五箇山の合掌造り集落の事例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34 4.4.1 観光客による集落の占領  34

  4.4.2 観光依存型の産業構造へ  35

4.5  プラハ歴史地区の事例・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35

4.5.1  観光客受け入れの限界状態と観光の負の効果  36

第5章  考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37 5.1  世界遺産の価値の多様性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37   5.1.1 生活利用価値  37

5.1.2 遺産としての利用価値―観光利用価値と非観光利用価値  38

5.1.3 遺産としての保全価値  38

5.2  対立構造の分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39   5.2.1 構成要素間対立型(a)  39

a-1: ホスト―ゲスト間の対立(白川郷・五箇山の合掌造り集落、プラハ歴史地区)40

a-2: ホスト―行政間の対立(ガラパゴス)  41

5.2.2 構成要素間の対立と要素内対立の複合型(白神山地、屋久島)(b)  41

5.3 ホスト社会の苦悩・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 5.4 世界遺産の「商品化」の問題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 5.5 分析のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44

おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45

参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46

参考URL・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48

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