解析学 B 演習問題 (No. 5)
18/May/2005
1
z =x+iy とする。つぎの関数が正則かどうか調べよ。正則である場合は、f0(z)を z の式で表せ。(1) f(z) = x(x2−3y2) +iy(3x2−y2) (2) f(z) = sinhz
2
u(x, y) = 2x3 −6xy2+x2 −y2 −1 を実部にもつような正則関数 f(z) をすべて求 めよ。板書用問題
18.
z =x+iy とする。つぎの関数が (適当な領域で) 正則かどうか調べよ。正則であ る場合は、f0(z)を z の式で表せ。(1) f(z) = (x2−y2−3x+2)+i(2xy−3y) (2) f(z) = zlog|z| (3) f(z) = coshz
19.
つぎの関数を実部にもつような正則関数 f(z) をすべて求めよ。(1) u(x, y) = (x−y)(x2+ 4xy+y2) (2) u(x, y) = sinxcoshy (3) u(x, y) = 2 sinx
ey +e−y −2 cosx
20.
f(z) =u(x, y) +iv(x, y),z =x+iy (u, vは実数値関数) と表したとき、f(z)が正 則かつ、u(x, y)−v(x, y) = (x−y)(x2+ 4xy+y2) を満たすとき、u と v を求めよ。21.
f(z)が領域 D で正則かつ f0(z) = 0 (∀z ∈D) をみたしているとする。a∈D と し、V ={z ∈D|f(z) = f(a)} とおく。(1) V は D の開集合であることを示せ。
(2) V =D、すなわち f は定数であることを示せ。
22.
f(z)を Cで定義された連続関数で、z = 0 で微分可能かつf0(0) = 1, f(z+w) = f(z)f(w) (z, w∈C) を満たすものとする。(1) f(0) の値を求めよ。
(2) f(z) は正則であることを示し、f0(z)を必要ならば z,f(z)を用いて表せ。
(3) f(z) = ez を示せ。
23.
f(z) =u(r, θ) +iv(r, θ), z =r(cosθ+isinθ) (u, vは実数値関数) と表す。(1) Cauchy-Riemann 方程式は
∂u
∂r = 1 r
∂v
∂θ, ∂u
∂θ =−r∂v
∂r
となることを示せ。
(2) f(z) が正則なとき、zf0(z) = r (∂u
∂r +i∂v
∂r )
= ∂v
∂θ −i∂u
∂θ が成り立つことを示せ。
24.
f(z) =R(cos Θ +isin Θ), z =x+iy と表す。(1) Cauchy-Riemann 方程式は
∂R
∂x =R∂Θ
∂y, ∂R
∂y =−R∂Θ
∂x
となることを示せ。
(2) f(z) が正則なとき、f0(z) f(z) = 1
R
∂R
∂x +i∂Θ
∂x = ∂Θ
∂y − i R
∂R
∂y が成り立つことを示せ。
25.
f(z) =R(cos Θ +isin Θ), z =r(cosθ+isinθ) と表す。(1) Cauchy-Riemann 方程式は
∂R
∂r = R r
∂Θ
∂θ, ∂R
∂θ =−rR∂Θ
∂r
となることを示せ。
(2) f(z) が正則なとき、zf0(z) f(z) = r
(1 R
∂R
∂r +i∂Θ
∂r )
= ∂Θ
∂θ − i R
∂R
∂θ が成り立つことを 示せ。
26.
D を領域とする。正則関数 f(z)が D上で f(z)6= 0 かつ arg(f(z)) =定数 をみた しているならば、f(z) は D 上で定数であることを示せ。✎ ヒント:演習問題 24
27.
f(z) = log|z|+iargz は領域 D= {z ∈C :z 6= 0, −π < argz < π} において正 則であることを示し、f0(z) を求めよ。✎ ヒント:演習問題 23
解析学 B 演習問題 (No. 5) 解答
18/May/2005
1
(1) u(x, y) =x(x2−3y2), v(x, y) =y(3x2−y2)とおくと、u, v は C1級の関数で、ux(x, y) = 3x2−3y2, uy(x, y) =−6xy, vx(x, y) = 6xy, vy(x, y) = 3x2−3y2. よって、u, v はCauchy-Riemann方程式 ux=vy,uy =−vx をみたすので、f は正則であ る。演習問題No.4 より,f0(z) = ux(x, y) +ivx(x, y) = 3(x2−y2) + 6ixy= 3z2.
(2) 定義より,
f(z) = sinhz = ez−e−z
2 = ex−e−x
2 cosy−iex+e−x 2 siny.
u(x, y) = ex−e−x
2 cosy, v(x, y) = −ex+e−x
2 siny とおくと、
ux(x, y) = ex+e−x
2 cosy, uy(x, y) =−ex−e−x 2 siny, vx(x, y) =−ex−e−x
2 siny, vy(x, y) = −ex+e−x 2 cosy.
よって、u, v はCauchy-Riemann方程式 をみたさないので、f は正則でない。
2
v(x, y) ==f(z)とおく。f(z) =u(x, y) +iv(x, y) と表される正則関数を求める。u, v は Cauchy-Riemann方程式をみたすので、vx(x, y) =−uy(x, y) = 12xy+ 2y, (1) vy(x, y) =ux(x, y) = 6x2−6y2+ 2x (2) が成立つ。(2)より、v(x, y) = 6x2y−2y3+2xy+ϕ(x)と書ける。但し,ϕ(x)は変数がxのみ の実数値関数。これを(1)に代入すると、12xy+2y+ϕ0(x) = 12xy+2yとなり、ϕ0(x) = 0、
すなわちϕ(x) = C (Cは実数定数)を得る。従って、v(x, y) = 6x2y−2y3+ 2xy+C と なるので、求める f は、
f(z) = (2x3−6xy2+x2 −y2−1) +i(6x2y−2y3+ 2xy+C) = 2z3+z2−1 +iC.
ただし、C は実数定数。
感想.
1
(1)はよく出来ていた。f0(z) を z の式で表すには、x = (z + ¯z)/2, y =(z−z)/2i¯ を代入して整理すればよい。
(2)は、sinh ¯z の実部、虚部を正しく計算できた人はだいたい正解していた。せっかく正
しくf(z)を変形したにもかかわらず、v(x, y) = ex+e−x
2 sinyやv(x, y) = (ex+e−x) siny としてしまい、「f は正則」とした答案も複数あった。それから、これは間違いでもなんで もないのだが、cos(−y), sin(−y) としたまま、最後まで計算している答案が複数あった。
cos(−y) = cosy, sin(−y) = −siny としておいた方が後の計算が簡単なように思うのだ が、そうでもないのだろうか。
2
もよく出来ていた。解答例の(1)より、v(x, y) = 6x2y+ 2xy+ψ(y)、(2)より、v(x, y) = 6x2y−2y3+ 2xy+ϕ(x). 但し、ψ(y)は変数がyのみの実数値関数、ϕ(x)は変数がxのみの実 数値関数。この2式を比べて、ϕ(x) = 2y3+ψ(y). よって、ϕ(x) = 2y3+ψ(y) =C (C は実数定数)と書ける。
としてもよい。C を単に定数と書いた答案もあったが、C が実数でない場合は、答えが 正しくないので、C が実数であることを明記しておかなければいけない。また、ϕ(x) を 整式や多項式と書いた答案もあったが、yで偏微分して消えれば良いだけなので、整式と は限らない。
解説. 演習問題 No.4 で扱ったように、正則関数 f(z) = u(x, y) + iv(x, y) に対して、
f0(z) = ux(x, y) +ivx(x, y) = vy(x, y)−iuy(x, y) が成立つ。実部、虚部を比較する事 により、Cauchy-Riemann方程式、ux = vy, uy = −vx が得られる。逆に、C1 級の関数 u, v がCauchy-Riemann方程式を満たせば、f(z) = u(x, y) +iv(x, y) で定義される関数 f は正則となる。従って、f が正則かどうかを調べるためには、f の実部uと虚部v が
Cauchy-Riemann方程式を満たすかどうかチェックすればよいことになる。演習問題No.3
のように、極限 lim
z→z0
f(z)−f(z0)
z−z0 が存在するかどうかを調べることと比べれば、随分と チェックし易くなったことに注意しよう。
z, ¯z は独立変数ではないが、形式的に合成関数の微分法を適用して、z, ¯z に関する
“偏微分”を
∂
∂z := 1 2
( ∂
∂x −i ∂
∂y )
, ∂
∂z¯ := 1 2
( ∂
∂x +i ∂
∂y )
と定義する。この記号を用いると、f(z) = u(x, y) +iv(x, y) としたとき、
f が正則 ⇐⇒ u, v がCauchy-Riemann方程式をみたす⇐⇒ ∂f
∂z¯ = 0 が成立つことや、f が正則 =⇒f0(z) = ∂f
∂z および ∂z
∂z¯ = ∂z¯
∂z = 0、 ∂z
∂z = ∂z¯
∂z¯= 1 が成立 つこともすぐにチェックできる。暇なときにでも確認しておいてください。