解析学 B 演習問題 (No. 6)
25/May/2005
1
z =x+iy とする。関数 f(z) = u(x, y) +iv(x, y) が領域Dで正則かつu,v はC2級であるとする。このとき、u, v は調和関数であること、即ち
∆u:= ∂2u
∂x2 + ∂2u
∂y2 = 0, ∆v := ∂2v
∂x2 +∂2v
∂y2 = 0 をみたすことを示せ。
2
実数値関数 ϕ(x, y) と ψ(x, y) が調和関数であるとする。このとき、u= ∂ϕ
∂y − ∂ψ
∂x, v = ∂ϕ
∂x +∂ψ
∂y
とおけば、f(z) =u(x, y) +iv(x, y) で定義される関数 f は正則関数になることを示せ。
板書用問題
28.
f および f¯が領域Dで正則ならば,fは定数関数であることを示せ。29.
f(z) = u(x, y) +iv(x, y) が正則関数であるとき、∂(u, v)∂(x, y) = |f0(z)|2 が成立つこと を示せ。
30.
f が領域Dで正則かつ f(z)6= 0 (∀z ∈D) ならば,log|f(z)| は Dで調和関数に なることを示せ。31.
関数 f(z) =u(x, y) +iv(x, y)が領域Dで正則かつu, v はC2 であるとする。この とき、∆|f(z)|2 = 4|f0(z)|2 が成立つことを示せ。32.
u(x, y), v(x, y) を C2級の実数値関数とする。(1) 複素関数 f(z) :=u(x, y) +iv(x, y) または f¯(z) :=u(x, y)−iv(x, y) が正則ならば、
積 uv は調和関数であることを示せ。
(2) u(x, y),v(x, y) が調和関数ならば、積uv も調和関数となるか。
解析学 B 演習問題 (No. 6) 解答
25/May/2005
1
f =u+iv が正則だから、u,v はCauchy-Riemann方程式をみたす。また、u, v が C2級だから、 ∂2v∂x∂y = ∂2v
∂y∂x が成立つことに注意すると
∂2u
∂x2 = ∂
∂x (∂u
∂x )
= ∂2v
∂x∂y, ∂2u
∂y2 = ∂
∂y (∂u
∂y )
=− ∂2v
∂y∂x =− ∂2v
∂x∂y. よって、∆u= 0 が成立つことが示せた。∆v = 0 も同様に示すことができる。
2
ϕ, ψ は C2級の関数なので、定義から u, v は C1 級の関数である。従って、u,v が Cauchy-Riemann方程式をみたすことを示せばよい。u, v を偏微分すると∂u
∂x = ∂2ϕ
∂x∂y − ∂2ψ
∂x2, ∂u
∂y = ∂2ϕ
∂y2 − ∂2ψ
∂y∂x,
∂v
∂x = ∂2ϕ
∂x2 + ∂2ψ
∂x∂y, ∂v
∂y = ∂2ϕ
∂y∂x+ ∂2ψ
∂y2.
∂2ϕ
∂x∂y = ∂2ϕ
∂y∂x, ∂2ψ
∂x∂y = ∂2ψ
∂y∂x および∂2ϕ
∂x2 + ∂2ϕ
∂y2 = 0, ∂2ψ
∂x2 +∂2ψ
∂y2 = 0 に注意すれば、
∂u
∂x = ∂v
∂y, ∂u
∂y =−∂v
∂x が成立つことが分かる。よって、f は正則となる。
感想.
1
も2
もよく出来ていたので、特にこれ以上の感想はなし。解説. 前回の演習問題では、実数値関数 uを具体的に与えて、これを実部とするような 正則関数を求めてもらったが、uは何でもよい訳ではなくて調和関数である必要があると いうのが今回の問題である。
1
では、u, v がC2級という仮定を置いたが、実はf が正 則ならば、u,v は無限回微分可能という強い結果が出てくるということが後日判明する。正則関数の実部と虚部が調和関数であることから、正則関数の性質と調和関数の性質が関 連している部分もあることが予想されるだろう。
調和関数の性質を一つ。有界領域D で C2級で、D で連続で定数関数でない調和関数 は、最大値・最小値を ∂D でしか取らないことが知られている(最大・最小値原理) 。こ れを用いることで、∂D で定義された連続関数U を与えたときに、D 上の調和関数u で
∂D 上 u(x, y) =U(x, y)をみたすものを求める問題 (Dirichlet問題)の解は、存在すると してもただ一つであることも分かる。