「論理と集合」演習問題
逸見豊
1 集合
1.1 演習問題
集合の表し方として,{1,2,3}のように要素を並べて表す方法と,{x| x∈N, x≤3} のように要素が満たすべき条件を与えて表す方法の2種類ある.前者を外延的方法と呼び,
後者を内包的方法と呼ぶ.
用いる記号を準備する
• N,Z, Q,Rでそれぞれ,自然数の集合,整数の集合,有理数の集合,実数の集合を 表すとする.ただし,自然数とは正の整数を意味する.
• 集合Aに対し,そのべき集合をP(A)で表す.
問 1.1. 次の集合を外延的方法で表せ.
(1) {x|x∈Z, −2< x≤2} (2) {x|x∈R, x3−x= 0}
(3) {x|x∈R, xy= 0となる自然数yが存在する} (4) {x|x∈R, x2=−1}
問 1.2. A={1,2,3},B ={2,3,4}に対し,A∪B,A∩B,A−Bを求めよ.
問 1.3. 実数の区間A= [1,2],B= (1,3)に対し,A∪B,A∩B,A−Bを求めよ.
問 1.4. A={2n|n∈N},B ={x∈R|2≤x <10},C={x∈R|5< x <20} に対し,
(A∩B)−Cを求めよ.
問 1.5. 実数の区間A = [6,12)に対し,B ={x| 2x∈A}, C = {x| 3x∈ A}とおく.
B∪C,B∩C,B−Cを求めよ.
問 1.6. 集合A={2,3,4},B={4,6,8},C={3,4,5,6}に対し,次の集合を求めよ.
(1) {xy|x∈A, y∈B} (2) {x2|x∈A} ∩ {2y|y∈B}
(3) {x|x∈C,任意のy∈Aに対しxy6∈B}
問 1.7. 4の倍数の集合は偶数の集合の部分集合であることを示せ.
問 1.8. Aを正の奇数全体の集合とし,Bを4の倍数である正の整数全体の集合とする.
このとき集合C={x|x= 2y+ 2, y∈A}はBと一致することを示せ.
問 1.9. 任意の集合A, B, Cに対し次が成り立つことを示せ.
(1) A∪B ⊂A∪C ⇔B−A⊂C−A
(2) A∩B ⊂A∩C ⇔A−C⊂A−B
問 1.10. 集合A={a, b, c}のべき集合P(A)を求めよ.
問 1.11. 空集合∅のべき集合P(∅)のべき集合P(P(∅)),及びそのべき集合P(P(P(∅)))を 求めよ.
問 1.12. 集合A={1,2}に対しB={x|x∈P(A), 1∈x}と置くとき,BおよびBの べき集合P(B)を求めよ.
問 1.13. A={1,2},B={2,3}とした時P(A)∪P(B),P(A)∩P(B)およびP(A)−P(B) を求めよ.
問 1.14. 集合A, B, Cに対し,A∈P(B)∩P(C)である必要十分条件はA⊂B∩Cで あることを示せ.
問 1.15. 変数xを含む命題P(x)を「xは負でない整数である」とし,Q(x)を「xy <1 を満たす正の整数yが存在する」とする.このとき集合A={x|P(x)∧Q(x)}はどのよ うになるか.またB={x2−3|P(x)∧Q(x)}はどのようになるか.
問 1.16. A={1,2,3},B={1,2}のとき,A×Bを求めよ.
問 1.17. A={1,2,3},B ={x|0< x <10}のとき,C={x|(x, x2+ 3)∈A×B}を 求めよ.
問1.18. A=P(∅)とした時A×P(A)を求めよ.また,B={(x, y)|(x, y)∈A×P(A), x∈ y}を求めよ.
1.2 略解
解答 1.1. (1){−1,0,1,2} (2){−1,0,1} (3){0} (4){}または∅ 解答 1.2. A∪B={1,2,3,4}, A∩B ={2,3},A−B ={1}
解答 1.3. A∪B= [1,3),A∩B= (1,2],A−B ={1} 解答 1.4. A∩B={2,4,6,8}なので(A∩B)−C={2,4}
解答 1.5. B= [3,6), C= [2,4)なので,B∪C= [2,6), B∩C= [3,4),B−C= [4,6) 解答 1.6. (1){8,12,16,18,24,32} (2){16} (3){5,6}
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解答 1.7. Aを4の倍数の集合とし,Bを偶数の集合とする.定義より,任意のx∈Aは x= 4n(n∈N)と表される.よって,x= 2(2n)であり,x∈Bとなり,AがBの部分集 合であることがわかる.
解答 1.8. C⊂B及び,C⊃Bを示す.
任意のx∈Cはx= 2y+2 (y∈A)と表すことができる.ここでAの定義よりy= 2n−1 (n∈N)と表されるので,x= 2y+ 2 = 2(2n−1) + 2 = 4nとなり,nは正の整数なので,
x∈Bとなり,C⊂Bがわかる.
一方,x∈Bとすると,x= 4m(m∈N)と表すことができる.よって,x= 2(2m−1)+2 であり,2m−1∈Nなので,x∈Cとなり.C⊃Bがわかる.
以上よりC=Bとなる.
解答1.9. (1) (⇒): x∈B−Aとすると,x∈Bかつx6∈A. x∈Bよりx∈A∪B. よっ て,A∪B⊂A∪Cよりx∈A∪Cとなり,x∈Aまたはx∈Cを得る.ここでx6∈Aな ので,x∈C−Aとなり,以上よりB−A⊂C−Aを得る.
(2) (⇐): x∈A∪Bとすると,x∈ Aまたはx∈ B. x∈ Aならばx∈ A∪C. 一方 x6∈Aならばx∈Bよりx∈B−A. B−A⊂C−Aなのでx∈C−A. 特にx∈Cなの でx∈A∪C. 以上よりA∪B⊂A∪Cを得る.
解答 1.10. P(A) ={∅,{a},{b},{c},{a, b},{a, c},{b, c}, A}.
解答1.11. P(∅) ={∅}なのでP(P(∅)) ={∅,{∅}}. さらにP(P(P(∅))}={∅,{∅},{{∅}},{∅,{∅}}}. 解答1.12. P(A) ={∅,{1},{2}, A}なので,B={{1}, A}. さらにP(B) ={∅,{{1}},{A}, B}.
解答 1.13. P(A) = {∅,{1},{2},{1,2}}, P(B) = {∅,{2},{3},{2,3}}なので,P(A)∪ P(B) ={∅,{1},{2},{3},{1,2},{2,3}},P(A)∩P(B) ={∅,{2}},P(A)−P(B) ={{1},{1,2}}.
解答 1.14. A ∈ P(B)∩P(C) ⇔ A ∈ P(B)かつA ∈ P(C) ⇔ A ⊂ BかつA ⊂C ⇔ A⊂B∩C.
解答 1.15. A={0},B={−3}
解答 1.16. A×B={(1,1),(1,2),(2,1),(2,2),(3,1),(3,2)} 解答 1.17. x∈C ⇔x∈Aかつx2+ 3∈Bなので,C={1,2}.
解答 1.18. A = {∅}, P(A) = {∅,{∅}} なので,A×P(A) = {(∅,∅),(∅,{∅})}. B = {(∅,{∅})}.
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